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1巻
1-2
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だがヘザー・キャシディという名前には、聞き覚えがある気がした。そして彼女の以前の所属を確認して、合点がいった。コンスタンス王女の近衛騎士隊長を務めていた女だ。平民だが、王女が気に入って傍に置いたと噂で聞いている。
数か月前、ヒューイは上層部から「新人を一人、コンスタンス王女の近衛隊に入れるように仕上げてほしい」と言われていた。難しい注文だった。平民隊長の下につきたいと思う者など、まずいないからだ。実際ヘザーの下には「騎士の仕事なんて結婚までの腰かけ」と考えているような、熱意のない女騎士ばかりが集まっていたらしい。隊員の入れ替わりは目まぐるしく、結婚が決まった女騎士たちがいっぺんに辞めた時期があった。それで人手が足りなくなったようだった。
だんだんと当時のことを、鮮明に思い出してきた。
そのときヒューイが抱えていた新人騎士は血筋や家柄の良い者たちばかりで、平民隊長の下につかせるのは難しかった。本人が快く引き受けてくれたとしても、親が「うちの子を平民の下につけるなんてけしからん」と王宮に乗り込んでくる場合がある。だからヘザーの下につけるのは、ニコラスがちょうどよかった。彼は貴族の庶子で、父親からの庇護や援助は金銭的なもののみという話だ。騎士としてはかなり未熟だったが、ニコラスがちょうどよかったのだ。
そしていま。コンスタンス王女がいなくなり、ニコラスが戻ってきた。これは仕方がない。彼を立派な騎士に仕上げることができず心残りだったので、むしろ再教育は望むところである。ヘザーについては、上層部は彼女の振り先に困ったのだろう。そこでヒューイのもとで下働きでもさせておこうと考えたわけだ。
「そのヘザーって娘、けっこう美人だって聞いたぜ」
ベネディクトのセリフにヒューイは首を傾げた。遠目にしか見たことはないが、鮮やかなオレンジ色の髪をした背の高い女騎士が、王女の傍に控えていたことは知っている。しかし。
「……この職務において、容姿は関係ない」
「そうか? 場が華やいでいいじゃん」
「僕は能力のほうを重視する」
もちろん外見は大切だ。だがヒューイが重視するのは身だしなみや清潔感の類であって、性別や顔の作りのことではない。そう告げるとベネディクトはにやりと笑った。
「じゃ、女でもいいじゃん。おまえにとって大事なのは、性別や容姿じゃなく能力なんだろ? 近衛隊長まで務めあげた女騎士だ。その辺の男よりも使えるかもしれないぜ」
ベネディクトはそう言うが、ヘザーが近衛隊長を務めていたのは、王女の強い後押しがあったからだ。本人の実力とは言えない。
そこでヘザーの経歴を確認すると、彼女は十九歳のときに騎士になったようだった。一方、十九歳の頃の自分はまだ学生である。この点ではヒューイよりも先輩と言えよう。それに王女の後ろ盾があったのだとしても、平民出身の女が七年も居座れるほど近衛騎士の仕事は甘くないはずだ。体力や根性はそれなりにあるのかもしれない。ヒューイはそう考え直した。
だが、僕の助手だって甘くはないぞ……そう心の中で呟いたとき、自分の机に戻ろうとしていたベネディクトが何かを思い出したように振り返る。
「ああ……っと、それからな」
「まだ何かあるのか?」
「城下に『七色のしずく』って酒場があるだろ?」
大勢でばか騒ぎしたい輩が行くような大衆酒場だ。付き合いで仕方なく入ったことがあるが、騒がしく俗っぽい場所はヒューイは好きではない。
「うちの若い騎士たちが、店に迷惑をかけるような飲み方をしてるらしい。店主から苦情が来てた」
ヒューイは騎士たちの風紀係も務めている。もともとは司令部所属の騎士が交代で務めていた役割だが、ヒューイが当番のときに著しい成果をあげたので定着してしまったのだ。
ヒューイは懐中時計を確認して答えた。
「わかった。仕事が片付いたらそこへ向かう」
***
「うおっと、でけえ女だな!」
歓楽街にある酒場「七色のしずく」の扉を開けると、ヘザーの姿を目にした一人が小馬鹿にするように言った。その男は明らかにヘザーよりも身長が低い。こういう男は見おろしてやるに限る。
ヘザーはちょっとつま先に力を入れ、胸を張って男を見おろす姿勢をとった。好きででかくなったわけではない。だがこんな風に揶揄されて肩身狭そうに縮こまるのもヘザーの流儀ではない。
ヘザーの態度に男は一瞬だけ怯んだが、すぐに後方にいる仲間たちに呼びかけた。
「おい、アルド! お待ちかねのヘザーちゃんだぜ!」
男たちのいるテーブルの中央には、例の大柄な騎士が座っていた。アルドという名前らしい。
「しかし、デカい女だよなあ」
「けど、結構美人じゃん。俺、ばかデカい女って聞いてメスゴリラみたいなの想像してたぜ」
「なんだよ、メスゴリラって」
「知らないのか? 異国の珍しい動物を集めた見世物小屋があるだろ? そこにさ……」
アルドの仲間たちはヘザーに対して言いたい放題である。抗議したい気もしたが、まずはまっすぐアルドの前に立ってテーブル越しに彼を見おろした。
「私の勝負の相手は何人?」
アルドを含めると男は六人いる。昨夜の倍の人数だが、なんとかなるだろう。しかしアルドは椅子にふんぞり返って笑う。
「ああ? 俺一人に決まってるだろ。こいつらは、言わば証人さ。あんたはレナを誑かしたことを、俺に土下座して詫びるんだからな」
「だから、私はあなたの恋人を奪った覚えはないわよ。それに……言っとくけど、私を負かしたところで、あなたの恋人が戻ってくるわけじゃないのよ」
こんなに短気で威圧的な男では愛想も尽きるだろう。そう思っての発言だったが、アルドは舌打ちをしてから吐き捨てるように言った。
「レナとあのガキ、二股かけてる奴がよく言うぜ」
ほんとうにそんなつもりはないのだが、これ以上説明してもきりがないのはわかっている。こちらが勝てばいいだけの話だ。相手がどんな大男でも、飲み比べで負ける気はしなかった。
「まあいいわ……さっさと始めましょ」
「そう急くなって。まずはこれで乾杯といこうぜ」
アルドはテーブルの上に置いてあったカクテルグラスをヘザーのほうへ滑らせる。ヘザーが受け取ったのを確認すると、彼は自分のグラスを掲げて乾杯のポーズをした。アルドと仲よく乾杯するつもりはなかったが、きっとこれは勝負を始める合図を兼ねてのものだろう。ヘザーは無言でグラスを口に運ぶ。すごく甘い酒だった。ひと息に飲み干し、空になったものをテーブルに戻す。アルドも同じようにグラスを空けると、手をあげてビールの注文をした。
ヘザーとアルドはほぼ同時に最初のジョッキを飲み干し、競うように二杯目のジョッキも空ける。このままでは埒が明かないと思ったヘザーは「三杯目からは、ウイスキーにしない?」と提案し、アルドもその申し入れに頷いた。
ウイスキーの水割りを二杯飲んだところで、なんだか暑くなってきた。上着を脱ごうとしてボタンに手をかけると、アルドの横にいた男がヘザーの動きをじっと見ている。彼らの前で上着を脱ぐのはなんとなく嫌な感じがして、ヘザーはさっさと片をつけて酒場を出ようと決めた。外で夜風に当たれば涼しくなるだろうと思ったのだ。
三杯目の水割りに口をつけたとき、先ほどよりも暑いと感じた。身体が火照っている。それに何よりむず痒い。身体を動かすたびに、肌が衣服に擦れる。その僅かな刺激がとても気になるのだ。一度意識してしまうと、呼吸のために胸が上下する動きですら辛くなってきた。
ヘザーは微かに呻いてグラスをテーブルに置く。三杯目の水割りはまだ半分も残っていた。
「どうした、ヘザー・キャシディさんよお……」
アルドがヘザーの様子を見てにやにやと笑いながら、自分のグラスを空ける。飲み比べで後れを取るなんて初めてのことだ。焦ったヘザーはもう一度グラスを手にしたが、先程よりも肌が敏感になっている気がした。特に、胸の先と足の間が。
おかしい。何かおかしい……考え込んでいると、男たちはこちらを観察するように無遠慮な視線をよこす。そういえば、最初に飲んだカクテル。あれは、ヘザーが酒場に到着した時点でこのテーブルの上にあった気がする。あれに何かが入っていたのだとしたら──
「なんだなんだ、早くもギブアップか?」
「どうしちゃったんだよ、ヘザーちゃあん!」
男たちは面白がるように囃し立てた。
「何か……」
何か酒に混ぜたわね。そう言いかけて結局口を噤んだ。証拠がない。それに「負けそうになったから難癖をつけた」と言い返されるかもしれない。そんなことよりも、この身体の火照りをどうにかしたくてたまらない。服を脱いで、どうにかしたい……
ヘザーの思考がおかしなほうへ向かい始めたとき、大きな音とともに酒場の扉が開いた。ひんやりとした夜風が奥のテーブルまで届く。靴音が近づいてきたかと思うと、神経質そうな怒鳴り声がヘザーたちに浴びせられた。
「おまえたちはどこの所属だ⁉ 店に迷惑をかけるような飲み方をするな! 解散、解散だ!」
「やべっ。バークレイ教官だ」
誰かがそう言い、皆一斉に立ちあがる。彼らは急いで勘定を済ませ、酒場から出ていってしまった。だがヘザーだけはテーブルの縁を握りしめたまま動けずにいた。
「おい……君も」
声をかけられて顔をあげると、ヒューイが眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる。
「さっさと宿舎に戻るんだ。王宮騎士として、風紀を乱すような真似はやめたまえ」
この真面目で厳しい教官にしてみれば、ヘザーは男たちに交じって酒場で騒ぎ、羽目を外している女のように見えたに違いない。彼の言うとおり酒場を離れるべきなのだが、少しの刺激でもなんだか辛い。ヘザーはテーブルを掴んだままもじもじと膝を擦り合わせた。
「ひょっとして、動けないほど酔っているのか? ……おい、返事をしたまえ!」
「あ、あの……でも……」
「自分の足で歩けないほど飲んだのかと、僕は聞いている。返事すらできないのか?」
尋問するような口調である。わかってはいたが、彼は見た目どおりの厳しい性格のようだ。
「ん、う……い、いまは、動けな……」
なんとか答えようとしたが、口を動かすのも辛い。最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。するとヒューイは大きく舌打ちし、ヘザーの身体を自分の肩の上に担ぎあげる。
「うあっ?」
「僕の制服に吐いたりしたら、君が弁償したまえよ」
ヘザーは酒に酔ってはいない。吐き気がするわけでもない。だが、疼く身体をどうにかしたくて、どうにもできなくて、苦しかった。彼が歩くたびに身体が揺れて、耐え難い刺激が走る。ヘザーは歯を食いしばって堪えた。
宿舎に到着する頃には、ヘザーは汗をびっしょりかいていた。それに足の間が濡れている気もする。頭がおかしくなりそうだった。
「君の部屋はどこだね? ……おい、答えたまえ!」
答えられずにいると、ヒューイはヘザーの身体を抱え直すようにして揺らす。びりびりとした刺激に襲われたヘザーは思わず呻く。
「ふ、ううっ……」
「おい! 気分が悪いのか?」
ヒューイが大きな声で何か言っている。だが内容が理解できない。それほどまでにヘザーは切羽詰まっていた。彼が今夜何度目かになる舌打ちをしたと思ったら、ヘザーの身体は何か柔らかいものの上に放り投げられる。ベッドのようだ。身体を横たえることができて、少しだけホッとする。
「気分はどうなんだね」
ヒューイがヘザーの顔を覗き込んでくる。
気分? 最悪でもあり最高でもある。甘美な刺激に雁字搦めにされたままの状態がずっと続いているのだから。だから、どうにかしてほしい。このムズムズを……!
それをわかってほしくて、ヘザーは手を伸ばし、ヒューイの袖を掴んで見あげた。彼ならば何とかしてくれるような気がしたのだ。例えば、上に乗っかってめちゃくちゃにしてくれるとか……めちゃくちゃって、なんだろう? でも、とにかくそうしてもらえば疼きは鎮まる気がした。
「もしかして、洗面器が必要か?」
だが彼にはヘザーの苦しみがまったく伝わっていない。それがよくわかった。仕方がないのでヒューイから手を離すと、今度は自分のシャツの胸ボタンに手をやった。その様子を目にしたヒューイは、何もわかっていないくせにわかったように頷いた。
「うむ。苦しいならばボタンを一つか二つ、開けておきたまえ。僕は必要なものを持ってくる。水と洗面器と……ほかに何かあるかね?」
必要なもの? いまの自分に必要なのは、この火照りをどうするか、それだけだ。ああ、このムズムズをどうにかしたい、早く……早く‼
ボタンはなかなか外れず、苛ついたヘザーは両方の手を胸元に運んだ。バリッ……と音がして、いくつかのボタンが弾け飛ぶ。
「おい! 何をしている⁉」
ヒューイが何かを叫んでいる。だがヘザーはお構いなしに、今度は夢中でズボンのベルトを外し、前ボタンを開けた。足の間がぬるぬるする。濡れてる。絶対濡れてる。下穿きの中に手を入れると、やっぱり濡れていた。疼きの中心に指を忍ばせると、身体中に震えが走る。
「あ、ああんっ……」
一度触れてしまったら、もうヘザーの指は止まらなかった。苦悶から解放されたくて、一生懸命指を動かした。じりじりさせられた時間が長かったせいか、その瞬間はすぐにやってくる。
「んっ……ああっ」
絶頂と同時に頭の中が真っ白になる。快感に身を震わせながらヘザーは呻いた。そして息を整えながら瞬きを繰り返していると、ヒューイと目が合った。
苦悶から解放されたことで、ヘザーの頭の中がようやくクリアになり始める。いま、自分は何をしてしまったのだろう……? と。
ヒューイは、驚愕と軽蔑の眼差しでヘザーを見おろしていた。
それから一歩、二歩と後ろへ下がり、唇をわなわなとさせた。
「変態行為は休み休みにしたまえ!」
彼はヘザーに向かってそう怒鳴りつけると、乱暴に扉を閉めて出ていってしまったのだった。
ヘザーのボスは鬼教官
──変態行為は休み休みにしたまえしたまえたまえたまえ……
ヒューイ・バークレイの怒鳴り声がこだましている、ような気がする。
「う、うわああ……!」
我に返ったヘザーは、頭を抱えてベッドの上で転げまわっていた。
なんということをしてしまったのだろう。酒場ではまだ気を張っていられた。感じの悪い騎士たちに弱っている自分を見せてなるものか! という反発心を保っていられたのだ。しかし良い香りのする柔らかなベッドに身を横たえた途端、緊張の糸はぷつりと切れた。傍に誰がいるかとか、ここはどこなのかとか、そういったことはどうでもよくなってしまったのである。
そういえば、ここはどこなのだろう? ヘザーはゆっくりと身を起こし、左右を見渡した。
宿舎の中の一室のように見える。ヘザーの部屋よりも広くて綺麗だが、作りがなんとなく似ている。この部屋には私物が殆ど置かれておらず、そのせいで余計に広く感じた。ヘザーはベッドからおりると、歩きながら部屋の中を観察した。
部屋の中央には立派な机があるが、上にはインク壜とペン立てしか置かれていない。壁際のクローゼットの中には白いシャツが二枚、きっちりと畳んだ状態で置いてあった。これはおそらく騎士服の下に着るシャツだ。バリバリに糊のきいたそれを少しだけ動かして確かめてみると、胸ポケットの縁に「バークレイ」と縫いつけてあるのがわかった。
ここはヒューイの居室らしい。ヘザーが自分の部屋の位置を言えるような状態ではなかったので、彼は自分の部屋に連れてくることにしたのだろう。しかし私物らしきものは、替えのシャツと筆記用具だけだ。この部屋を使っている様子がまったくない。そこでヘザーはヒューイの姿を思い浮かべる。口調と同じでかなり神経質そうな雰囲気の男だ。きっと綺麗好きなのだろう。それにしたって限度というものがあるではないか……?
「あ、でも……」
ヘザーは思い出したようにポンと手を打った。
そういえば、王宮に仕える騎士たちには必ず宿舎の一室が与えられるが、自宅から通う人もいるらしい。だからこの部屋には生活感がないのかもしれない。そして通えるほど自宅が王宮に近いということは、ヒューイの家は高級住宅街にあるのだろう。あの若さで指導教官を務めているのだから、やはり彼は家柄の良いエリートのお坊ちゃんだ。ヘザーはそう推測した。
それから、自分を見おろすヒューイの軽蔑の表情──それを思い出して、ヘザーは急いでこの部屋を出ようとした。彼に戻ってこられてはたまらない。あんな出来事の後ですぐに戻ってくるとは思えないが、彼には二度と会いたくない。ついさっきまで、次の任務は辺境の砦の警備なのでは? と考えて、憂鬱になっていたはずなのに、いまでは王都からなるべく遠くに飛ばしてほしいと願い始めている。この際、異国の戦地でも構わない。ヒューイと二度と顔を合わせなくて済むならば、どこだっていい。
簡単に服を直して、扉に手をかけた。がらんとした居室を振り返った瞬間、
──整理整頓! 来たときよりも美しく、だ!
厳しい怒鳴り声が、ヘザーの頭の中に響いた気がした。
見渡せば、ベッドが乱れている。ヘザーが横たわったのはベッドカバーの上だったとはいえ、あそこで何をしてしまったのかを考えると……カバーは洗濯に出すべきだろう。ベッドカバーを剥ぎ取って小脇に抱え、ヘザーは今度こそ部屋を後にした。
司令部へくるようにと連絡を受けたのは、翌朝のことだった。きっと辞令がおりるのだ。
ヘザーは重い足取りで司令部へ向かった。ヒューイがいたらどうしようと考えたが、彼は新人の指導を行っているはずだし、いないだろう。いなくていい。
「あっ。隊長! 隊長も司令部に行くんですか?」
廊下を歩いている途中でニコラスに会った。彼も呼び出しを受けたらしい。
「これってやっぱり配属のことですよね? 俺、隊長と一緒がいいなあ……」
「だから、隊長って呼ぶのはやめなさいってば。私は、どこか遠いところに行きたいなあ……」
「ああ、遠くもいいですよね。王都とは違った雰囲気が楽しめるかもしれないですもんね!」
ニコラスは呑気にのたまう。でも彼ならば僻地へ飛ばされても、すぐに馴染んで順応してしまいそうだ。ニコラスの柔軟性が羨ましい。
「おっと。キャシディさんじゃねえかよ」
司令部近くの廊下まで来たところで、ばったりと昨晩の男アルドに会った。彼はニヤニヤしながらヘザーの全身を眺めまわす。
「夕べは邪魔が入っちまって残念だったなあ?」
「ちょっと、あなたねえ……」
ヘザーはアルドを睨みあげる。彼がヘザーに薬を盛ったのではないだろうか。いや、盛ったに決まっている。昨晩ヒューイがやって来なかったら、自分はどうなっていたのだろう。
男六人に囲まれた状況であんな風になって……やがてどこかで我慢の限界が訪れて、店の中で恥ずかしい行為に及んでしまっただろうか? いや、あそこは歓楽街だ。近くには連れ込み宿のような建物もある。どちらにしても、女としてひどく惨めな思いをさせられたに違いない。アルドがした行為は恐ろしく卑劣なものだ。ただ、証拠がない。
「あんた、あの後どうしたんだ? 案外、あのお堅い教官とどっかにしけ込んだんじゃねえの?」
「そんなわけ、ないでしょう! 自分の部屋に戻って休んだわよ」
嘘は言っていない。実際にヘザーは──ヒューイの部屋経由で──自室に戻り、ベッドにもぐり込んだ。眠れやしなかったが。
「お堅い教官って、バークレイ教官ですか? 隊長、邪魔が入ったって……」
「あ、ええ……。酒場にあの教官がやって来てね……」
ニコラスに夕べのことをざっと説明していると、ヘザーたちを背後から怒鳴りつける者がいた。
「おい、扉の前でたむろするのではない! 通行の邪魔だ!」
この怒鳴り声、もう何度も耳にした。ヘザーには声だけで誰だかわかるようになっていた。しかし感じの悪いヒューイが相手でも、ニコラスは朗らかに対応した。
「あっ、バークレイ教官。俺たち、辞令を……」
「……知っている。ちょうどいい。三人とも、僕についてきたまえ」
ヒューイはニコラスとヘザー、そしてアルドをさっと一瞥すると、司令部の中へ招いた。三人一緒ということは、アルドにも辞令がおりるのだろうか? そもそも辞令のことを何故ヒューイが知っているのだろう? 司令部全体に周知されていることなのだろうか? ヘザーは俯き加減になってヒューイの後に続く。
ヒューイは立派な机の前に三人を立たせると、机を回り込み、自分はそこに座った。つまりこの男から辞令をもらうということだろうか? ヘザーは眩暈に襲われた。
ヒューイは手元の書類と自分の前に立つ三人を見比べる。
「アルド・グレイヴス。ニコラス・クインシー。君たち二人は、再教育となった。僕のもとで一人前の騎士となるべく、もう一度研修を受けてもらう」
ニコラスは素直に「はい」と返事をしたが、アルドのほうはそうではない。
「あ? ちょっと待ってくれよ。俺、何年も城下警備の任に就いてたんだぜ? なんでいま頃……」
しかしそのぼやきもヒューイの怒鳴り声に遮られてしまった。
「アルド・グレイヴス! ほんとうにわからないのか? 君は勤怠に問題がある。それに、収賄容疑もかかっているんだぞ」
お説教を横で聞いていたヘザーは驚いた。アルドの生活態度に問題があるのは頷ける。しかし収賄容疑までかかっていたとは。それほどの問題児ならば、女に薬を盛るなんて朝飯前ではないか。
「再教育中の君の態度によっては、過去の仕事ぶりまで徹底的に調べさせてもらうぞ。何かが明らかになったら、君の進退に関わる。脅すつもりはないが、言葉と態度に気をつけたまえ」
「……ちぇっ」
「その態度がいけないと言っているのだ! 返事は簡潔に『はい』! 言葉の乱れは心の乱れだ!」
「……はい」
「では、アルド・グレイヴスとニコラス・クインシーは下がってよろしい」
お説教を食らうアルドを半ばざまあみろという気持ちで見ていたが、自分がいま一人でヒューイの前に立っていることに気づくと、今度は血の気が引いた。恐る恐る顔をあげると、ヒューイもこちらをまっすぐに見据えている。
──ヘザー・キャシディ。君のような痴女はクビだ! 騎士の称号を置いてここから去れ! 風紀を乱す変態女め!
……絶対そう言われる。変な汗が噴き出してきた。だが、ヒューイはヘザーが思ってもみなかったことを言った。
「ヘザー・キャシディ。君は僕の助手として、この新人教育課で勤務することになった」
「……はい?」
「僕の助手だ。要は下働き、雑用係みたいなものだ」
自分がこの男の助手? 先ほどよりも激しい眩暈がした。何故、よりによって……と。
嫌だと答えたらどうなるのだろう? 僻地に飛ばしてもらえるだろうか。だが平民あがりの自分の希望があっさり通るとは思えない。「嫌なら騎士を辞めろ」でおしまいな気がする。
「それから、だな……」
ヒューイは顔をあげて周囲の気配を探り、苦々しそうに唇を歪めて立ちあがった。
「君には話しておかねばならないことがある……が、人目のある場所ではないほうがいいだろう。ついてきたまえ」
夕べのことだとすぐにわかった。ヘザーはふらふらと覚束ない足取りで、ヒューイの後に続いた。
テーブルが中央に置いてあり、窓が一つだけある小会議室のような部屋にヘザーは案内される。ヒューイは後ろで手を組んでしばらく窓の外を見つめていたが、やがてくるりと振り返った。
「ヘザー・キャシディ。話とは、君の素行についてだ。君は普段からああいった真似をしているのかね」
「え? ええっと……」
ああいった真似とは、なんだろう。飲み比べのことだろうか。それとも……
「自慰を見せつける趣味があるのかと、僕は尋ねているんだ」
「ち、違う……!」
「君の性嗜好についてとやかく言うつもりはない。倒錯的な行為でも合意の上で、互いの目的が一致しているのならば悪いことではないと思う。だが、僕には他人の自慰を眺めて喜ぶ趣味はない。それに宿舎の一室でそういった行為に及ぶのは、不謹慎だと思わないか?」
夕べのアレを、一つ一つそんな風に説明されると、頭をかきむしって叫びたくなる。
「ああああ……やめてやめて!」
「やめてもらいたいのは昨日の君の振る舞いだ! 時と場所を考えたまえ!」
「だから、違うの……! 私、薬を盛られて……」
「薬だと? 他人の前で自慰をしたくなる薬があるとでも言いたいのかね」
そういう限定的なものではないと思う。多分、淫らな気持ちになる薬だ。いわゆる媚薬。どのくらい流通していて、どうやって手に入れるのかまでは知らないが。
「わからないけど、とにかく、お酒に何か入っていたのよ。そうでなくてはおかしいもの! あんな……あんな風になったこと……いままでなかったんだから」
「悪酔いしただけではないのか?」
「絶対違う! それほど飲んでいないもの!」
ヒューイがじろりとこちらを睨んだ。表情からして、ヘザーの話を信じていないようだ。
「君は女一人で大勢の男たちと飲んでいたな。日頃からそういうことをしているのか?」
ヘザーは首を振る。酒場に呼び出されたのはここ二週間で五回ほど。普段からしているといえばしているようにも思えるが、近衛隊にいた頃はこんなことはなかったのだ。
「とにかく、司令部所属となったからには風紀を乱すような行動は慎みたまえ。話は以上だ」
話は終わりらしいが、ヘザーの言葉は結局信じてもらえていない。なんだか腑に落ちない。
「返事は⁉」
「は、はい!」
「……それから、君には新しい制服が必要だな」
近衛隊の制服はもう着られないので、ヘザーは稽古着で日々を過ごしている。今度からは新人教育課の制服を着ることになるようだ。各騎士団や騎士隊の制服に大きな違いはないが、袖や襟のデザイン、ラインの色や数などは微妙に異なっている。
「備品倉庫まで案内しよう。ついてきたまえ」
ヒューイはそこでヘザーの頭のてっぺんからつま先まで眺めまわした。
「サイズの合うものがあればいいのだが。なかったら、採寸して一から作ることになるだろうな」
服や靴のサイズで苦労するのは初めてのことではないので、それは別にいい。しかし自分は、これからヒューイの下で働くことになるらしい。
あーあ。最悪。ヘザーは俯いて、こっそりとため息を吐いた。
数か月前、ヒューイは上層部から「新人を一人、コンスタンス王女の近衛隊に入れるように仕上げてほしい」と言われていた。難しい注文だった。平民隊長の下につきたいと思う者など、まずいないからだ。実際ヘザーの下には「騎士の仕事なんて結婚までの腰かけ」と考えているような、熱意のない女騎士ばかりが集まっていたらしい。隊員の入れ替わりは目まぐるしく、結婚が決まった女騎士たちがいっぺんに辞めた時期があった。それで人手が足りなくなったようだった。
だんだんと当時のことを、鮮明に思い出してきた。
そのときヒューイが抱えていた新人騎士は血筋や家柄の良い者たちばかりで、平民隊長の下につかせるのは難しかった。本人が快く引き受けてくれたとしても、親が「うちの子を平民の下につけるなんてけしからん」と王宮に乗り込んでくる場合がある。だからヘザーの下につけるのは、ニコラスがちょうどよかった。彼は貴族の庶子で、父親からの庇護や援助は金銭的なもののみという話だ。騎士としてはかなり未熟だったが、ニコラスがちょうどよかったのだ。
そしていま。コンスタンス王女がいなくなり、ニコラスが戻ってきた。これは仕方がない。彼を立派な騎士に仕上げることができず心残りだったので、むしろ再教育は望むところである。ヘザーについては、上層部は彼女の振り先に困ったのだろう。そこでヒューイのもとで下働きでもさせておこうと考えたわけだ。
「そのヘザーって娘、けっこう美人だって聞いたぜ」
ベネディクトのセリフにヒューイは首を傾げた。遠目にしか見たことはないが、鮮やかなオレンジ色の髪をした背の高い女騎士が、王女の傍に控えていたことは知っている。しかし。
「……この職務において、容姿は関係ない」
「そうか? 場が華やいでいいじゃん」
「僕は能力のほうを重視する」
もちろん外見は大切だ。だがヒューイが重視するのは身だしなみや清潔感の類であって、性別や顔の作りのことではない。そう告げるとベネディクトはにやりと笑った。
「じゃ、女でもいいじゃん。おまえにとって大事なのは、性別や容姿じゃなく能力なんだろ? 近衛隊長まで務めあげた女騎士だ。その辺の男よりも使えるかもしれないぜ」
ベネディクトはそう言うが、ヘザーが近衛隊長を務めていたのは、王女の強い後押しがあったからだ。本人の実力とは言えない。
そこでヘザーの経歴を確認すると、彼女は十九歳のときに騎士になったようだった。一方、十九歳の頃の自分はまだ学生である。この点ではヒューイよりも先輩と言えよう。それに王女の後ろ盾があったのだとしても、平民出身の女が七年も居座れるほど近衛騎士の仕事は甘くないはずだ。体力や根性はそれなりにあるのかもしれない。ヒューイはそう考え直した。
だが、僕の助手だって甘くはないぞ……そう心の中で呟いたとき、自分の机に戻ろうとしていたベネディクトが何かを思い出したように振り返る。
「ああ……っと、それからな」
「まだ何かあるのか?」
「城下に『七色のしずく』って酒場があるだろ?」
大勢でばか騒ぎしたい輩が行くような大衆酒場だ。付き合いで仕方なく入ったことがあるが、騒がしく俗っぽい場所はヒューイは好きではない。
「うちの若い騎士たちが、店に迷惑をかけるような飲み方をしてるらしい。店主から苦情が来てた」
ヒューイは騎士たちの風紀係も務めている。もともとは司令部所属の騎士が交代で務めていた役割だが、ヒューイが当番のときに著しい成果をあげたので定着してしまったのだ。
ヒューイは懐中時計を確認して答えた。
「わかった。仕事が片付いたらそこへ向かう」
***
「うおっと、でけえ女だな!」
歓楽街にある酒場「七色のしずく」の扉を開けると、ヘザーの姿を目にした一人が小馬鹿にするように言った。その男は明らかにヘザーよりも身長が低い。こういう男は見おろしてやるに限る。
ヘザーはちょっとつま先に力を入れ、胸を張って男を見おろす姿勢をとった。好きででかくなったわけではない。だがこんな風に揶揄されて肩身狭そうに縮こまるのもヘザーの流儀ではない。
ヘザーの態度に男は一瞬だけ怯んだが、すぐに後方にいる仲間たちに呼びかけた。
「おい、アルド! お待ちかねのヘザーちゃんだぜ!」
男たちのいるテーブルの中央には、例の大柄な騎士が座っていた。アルドという名前らしい。
「しかし、デカい女だよなあ」
「けど、結構美人じゃん。俺、ばかデカい女って聞いてメスゴリラみたいなの想像してたぜ」
「なんだよ、メスゴリラって」
「知らないのか? 異国の珍しい動物を集めた見世物小屋があるだろ? そこにさ……」
アルドの仲間たちはヘザーに対して言いたい放題である。抗議したい気もしたが、まずはまっすぐアルドの前に立ってテーブル越しに彼を見おろした。
「私の勝負の相手は何人?」
アルドを含めると男は六人いる。昨夜の倍の人数だが、なんとかなるだろう。しかしアルドは椅子にふんぞり返って笑う。
「ああ? 俺一人に決まってるだろ。こいつらは、言わば証人さ。あんたはレナを誑かしたことを、俺に土下座して詫びるんだからな」
「だから、私はあなたの恋人を奪った覚えはないわよ。それに……言っとくけど、私を負かしたところで、あなたの恋人が戻ってくるわけじゃないのよ」
こんなに短気で威圧的な男では愛想も尽きるだろう。そう思っての発言だったが、アルドは舌打ちをしてから吐き捨てるように言った。
「レナとあのガキ、二股かけてる奴がよく言うぜ」
ほんとうにそんなつもりはないのだが、これ以上説明してもきりがないのはわかっている。こちらが勝てばいいだけの話だ。相手がどんな大男でも、飲み比べで負ける気はしなかった。
「まあいいわ……さっさと始めましょ」
「そう急くなって。まずはこれで乾杯といこうぜ」
アルドはテーブルの上に置いてあったカクテルグラスをヘザーのほうへ滑らせる。ヘザーが受け取ったのを確認すると、彼は自分のグラスを掲げて乾杯のポーズをした。アルドと仲よく乾杯するつもりはなかったが、きっとこれは勝負を始める合図を兼ねてのものだろう。ヘザーは無言でグラスを口に運ぶ。すごく甘い酒だった。ひと息に飲み干し、空になったものをテーブルに戻す。アルドも同じようにグラスを空けると、手をあげてビールの注文をした。
ヘザーとアルドはほぼ同時に最初のジョッキを飲み干し、競うように二杯目のジョッキも空ける。このままでは埒が明かないと思ったヘザーは「三杯目からは、ウイスキーにしない?」と提案し、アルドもその申し入れに頷いた。
ウイスキーの水割りを二杯飲んだところで、なんだか暑くなってきた。上着を脱ごうとしてボタンに手をかけると、アルドの横にいた男がヘザーの動きをじっと見ている。彼らの前で上着を脱ぐのはなんとなく嫌な感じがして、ヘザーはさっさと片をつけて酒場を出ようと決めた。外で夜風に当たれば涼しくなるだろうと思ったのだ。
三杯目の水割りに口をつけたとき、先ほどよりも暑いと感じた。身体が火照っている。それに何よりむず痒い。身体を動かすたびに、肌が衣服に擦れる。その僅かな刺激がとても気になるのだ。一度意識してしまうと、呼吸のために胸が上下する動きですら辛くなってきた。
ヘザーは微かに呻いてグラスをテーブルに置く。三杯目の水割りはまだ半分も残っていた。
「どうした、ヘザー・キャシディさんよお……」
アルドがヘザーの様子を見てにやにやと笑いながら、自分のグラスを空ける。飲み比べで後れを取るなんて初めてのことだ。焦ったヘザーはもう一度グラスを手にしたが、先程よりも肌が敏感になっている気がした。特に、胸の先と足の間が。
おかしい。何かおかしい……考え込んでいると、男たちはこちらを観察するように無遠慮な視線をよこす。そういえば、最初に飲んだカクテル。あれは、ヘザーが酒場に到着した時点でこのテーブルの上にあった気がする。あれに何かが入っていたのだとしたら──
「なんだなんだ、早くもギブアップか?」
「どうしちゃったんだよ、ヘザーちゃあん!」
男たちは面白がるように囃し立てた。
「何か……」
何か酒に混ぜたわね。そう言いかけて結局口を噤んだ。証拠がない。それに「負けそうになったから難癖をつけた」と言い返されるかもしれない。そんなことよりも、この身体の火照りをどうにかしたくてたまらない。服を脱いで、どうにかしたい……
ヘザーの思考がおかしなほうへ向かい始めたとき、大きな音とともに酒場の扉が開いた。ひんやりとした夜風が奥のテーブルまで届く。靴音が近づいてきたかと思うと、神経質そうな怒鳴り声がヘザーたちに浴びせられた。
「おまえたちはどこの所属だ⁉ 店に迷惑をかけるような飲み方をするな! 解散、解散だ!」
「やべっ。バークレイ教官だ」
誰かがそう言い、皆一斉に立ちあがる。彼らは急いで勘定を済ませ、酒場から出ていってしまった。だがヘザーだけはテーブルの縁を握りしめたまま動けずにいた。
「おい……君も」
声をかけられて顔をあげると、ヒューイが眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる。
「さっさと宿舎に戻るんだ。王宮騎士として、風紀を乱すような真似はやめたまえ」
この真面目で厳しい教官にしてみれば、ヘザーは男たちに交じって酒場で騒ぎ、羽目を外している女のように見えたに違いない。彼の言うとおり酒場を離れるべきなのだが、少しの刺激でもなんだか辛い。ヘザーはテーブルを掴んだままもじもじと膝を擦り合わせた。
「ひょっとして、動けないほど酔っているのか? ……おい、返事をしたまえ!」
「あ、あの……でも……」
「自分の足で歩けないほど飲んだのかと、僕は聞いている。返事すらできないのか?」
尋問するような口調である。わかってはいたが、彼は見た目どおりの厳しい性格のようだ。
「ん、う……い、いまは、動けな……」
なんとか答えようとしたが、口を動かすのも辛い。最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。するとヒューイは大きく舌打ちし、ヘザーの身体を自分の肩の上に担ぎあげる。
「うあっ?」
「僕の制服に吐いたりしたら、君が弁償したまえよ」
ヘザーは酒に酔ってはいない。吐き気がするわけでもない。だが、疼く身体をどうにかしたくて、どうにもできなくて、苦しかった。彼が歩くたびに身体が揺れて、耐え難い刺激が走る。ヘザーは歯を食いしばって堪えた。
宿舎に到着する頃には、ヘザーは汗をびっしょりかいていた。それに足の間が濡れている気もする。頭がおかしくなりそうだった。
「君の部屋はどこだね? ……おい、答えたまえ!」
答えられずにいると、ヒューイはヘザーの身体を抱え直すようにして揺らす。びりびりとした刺激に襲われたヘザーは思わず呻く。
「ふ、ううっ……」
「おい! 気分が悪いのか?」
ヒューイが大きな声で何か言っている。だが内容が理解できない。それほどまでにヘザーは切羽詰まっていた。彼が今夜何度目かになる舌打ちをしたと思ったら、ヘザーの身体は何か柔らかいものの上に放り投げられる。ベッドのようだ。身体を横たえることができて、少しだけホッとする。
「気分はどうなんだね」
ヒューイがヘザーの顔を覗き込んでくる。
気分? 最悪でもあり最高でもある。甘美な刺激に雁字搦めにされたままの状態がずっと続いているのだから。だから、どうにかしてほしい。このムズムズを……!
それをわかってほしくて、ヘザーは手を伸ばし、ヒューイの袖を掴んで見あげた。彼ならば何とかしてくれるような気がしたのだ。例えば、上に乗っかってめちゃくちゃにしてくれるとか……めちゃくちゃって、なんだろう? でも、とにかくそうしてもらえば疼きは鎮まる気がした。
「もしかして、洗面器が必要か?」
だが彼にはヘザーの苦しみがまったく伝わっていない。それがよくわかった。仕方がないのでヒューイから手を離すと、今度は自分のシャツの胸ボタンに手をやった。その様子を目にしたヒューイは、何もわかっていないくせにわかったように頷いた。
「うむ。苦しいならばボタンを一つか二つ、開けておきたまえ。僕は必要なものを持ってくる。水と洗面器と……ほかに何かあるかね?」
必要なもの? いまの自分に必要なのは、この火照りをどうするか、それだけだ。ああ、このムズムズをどうにかしたい、早く……早く‼
ボタンはなかなか外れず、苛ついたヘザーは両方の手を胸元に運んだ。バリッ……と音がして、いくつかのボタンが弾け飛ぶ。
「おい! 何をしている⁉」
ヒューイが何かを叫んでいる。だがヘザーはお構いなしに、今度は夢中でズボンのベルトを外し、前ボタンを開けた。足の間がぬるぬるする。濡れてる。絶対濡れてる。下穿きの中に手を入れると、やっぱり濡れていた。疼きの中心に指を忍ばせると、身体中に震えが走る。
「あ、ああんっ……」
一度触れてしまったら、もうヘザーの指は止まらなかった。苦悶から解放されたくて、一生懸命指を動かした。じりじりさせられた時間が長かったせいか、その瞬間はすぐにやってくる。
「んっ……ああっ」
絶頂と同時に頭の中が真っ白になる。快感に身を震わせながらヘザーは呻いた。そして息を整えながら瞬きを繰り返していると、ヒューイと目が合った。
苦悶から解放されたことで、ヘザーの頭の中がようやくクリアになり始める。いま、自分は何をしてしまったのだろう……? と。
ヒューイは、驚愕と軽蔑の眼差しでヘザーを見おろしていた。
それから一歩、二歩と後ろへ下がり、唇をわなわなとさせた。
「変態行為は休み休みにしたまえ!」
彼はヘザーに向かってそう怒鳴りつけると、乱暴に扉を閉めて出ていってしまったのだった。
ヘザーのボスは鬼教官
──変態行為は休み休みにしたまえしたまえたまえたまえ……
ヒューイ・バークレイの怒鳴り声がこだましている、ような気がする。
「う、うわああ……!」
我に返ったヘザーは、頭を抱えてベッドの上で転げまわっていた。
なんということをしてしまったのだろう。酒場ではまだ気を張っていられた。感じの悪い騎士たちに弱っている自分を見せてなるものか! という反発心を保っていられたのだ。しかし良い香りのする柔らかなベッドに身を横たえた途端、緊張の糸はぷつりと切れた。傍に誰がいるかとか、ここはどこなのかとか、そういったことはどうでもよくなってしまったのである。
そういえば、ここはどこなのだろう? ヘザーはゆっくりと身を起こし、左右を見渡した。
宿舎の中の一室のように見える。ヘザーの部屋よりも広くて綺麗だが、作りがなんとなく似ている。この部屋には私物が殆ど置かれておらず、そのせいで余計に広く感じた。ヘザーはベッドからおりると、歩きながら部屋の中を観察した。
部屋の中央には立派な机があるが、上にはインク壜とペン立てしか置かれていない。壁際のクローゼットの中には白いシャツが二枚、きっちりと畳んだ状態で置いてあった。これはおそらく騎士服の下に着るシャツだ。バリバリに糊のきいたそれを少しだけ動かして確かめてみると、胸ポケットの縁に「バークレイ」と縫いつけてあるのがわかった。
ここはヒューイの居室らしい。ヘザーが自分の部屋の位置を言えるような状態ではなかったので、彼は自分の部屋に連れてくることにしたのだろう。しかし私物らしきものは、替えのシャツと筆記用具だけだ。この部屋を使っている様子がまったくない。そこでヘザーはヒューイの姿を思い浮かべる。口調と同じでかなり神経質そうな雰囲気の男だ。きっと綺麗好きなのだろう。それにしたって限度というものがあるではないか……?
「あ、でも……」
ヘザーは思い出したようにポンと手を打った。
そういえば、王宮に仕える騎士たちには必ず宿舎の一室が与えられるが、自宅から通う人もいるらしい。だからこの部屋には生活感がないのかもしれない。そして通えるほど自宅が王宮に近いということは、ヒューイの家は高級住宅街にあるのだろう。あの若さで指導教官を務めているのだから、やはり彼は家柄の良いエリートのお坊ちゃんだ。ヘザーはそう推測した。
それから、自分を見おろすヒューイの軽蔑の表情──それを思い出して、ヘザーは急いでこの部屋を出ようとした。彼に戻ってこられてはたまらない。あんな出来事の後ですぐに戻ってくるとは思えないが、彼には二度と会いたくない。ついさっきまで、次の任務は辺境の砦の警備なのでは? と考えて、憂鬱になっていたはずなのに、いまでは王都からなるべく遠くに飛ばしてほしいと願い始めている。この際、異国の戦地でも構わない。ヒューイと二度と顔を合わせなくて済むならば、どこだっていい。
簡単に服を直して、扉に手をかけた。がらんとした居室を振り返った瞬間、
──整理整頓! 来たときよりも美しく、だ!
厳しい怒鳴り声が、ヘザーの頭の中に響いた気がした。
見渡せば、ベッドが乱れている。ヘザーが横たわったのはベッドカバーの上だったとはいえ、あそこで何をしてしまったのかを考えると……カバーは洗濯に出すべきだろう。ベッドカバーを剥ぎ取って小脇に抱え、ヘザーは今度こそ部屋を後にした。
司令部へくるようにと連絡を受けたのは、翌朝のことだった。きっと辞令がおりるのだ。
ヘザーは重い足取りで司令部へ向かった。ヒューイがいたらどうしようと考えたが、彼は新人の指導を行っているはずだし、いないだろう。いなくていい。
「あっ。隊長! 隊長も司令部に行くんですか?」
廊下を歩いている途中でニコラスに会った。彼も呼び出しを受けたらしい。
「これってやっぱり配属のことですよね? 俺、隊長と一緒がいいなあ……」
「だから、隊長って呼ぶのはやめなさいってば。私は、どこか遠いところに行きたいなあ……」
「ああ、遠くもいいですよね。王都とは違った雰囲気が楽しめるかもしれないですもんね!」
ニコラスは呑気にのたまう。でも彼ならば僻地へ飛ばされても、すぐに馴染んで順応してしまいそうだ。ニコラスの柔軟性が羨ましい。
「おっと。キャシディさんじゃねえかよ」
司令部近くの廊下まで来たところで、ばったりと昨晩の男アルドに会った。彼はニヤニヤしながらヘザーの全身を眺めまわす。
「夕べは邪魔が入っちまって残念だったなあ?」
「ちょっと、あなたねえ……」
ヘザーはアルドを睨みあげる。彼がヘザーに薬を盛ったのではないだろうか。いや、盛ったに決まっている。昨晩ヒューイがやって来なかったら、自分はどうなっていたのだろう。
男六人に囲まれた状況であんな風になって……やがてどこかで我慢の限界が訪れて、店の中で恥ずかしい行為に及んでしまっただろうか? いや、あそこは歓楽街だ。近くには連れ込み宿のような建物もある。どちらにしても、女としてひどく惨めな思いをさせられたに違いない。アルドがした行為は恐ろしく卑劣なものだ。ただ、証拠がない。
「あんた、あの後どうしたんだ? 案外、あのお堅い教官とどっかにしけ込んだんじゃねえの?」
「そんなわけ、ないでしょう! 自分の部屋に戻って休んだわよ」
嘘は言っていない。実際にヘザーは──ヒューイの部屋経由で──自室に戻り、ベッドにもぐり込んだ。眠れやしなかったが。
「お堅い教官って、バークレイ教官ですか? 隊長、邪魔が入ったって……」
「あ、ええ……。酒場にあの教官がやって来てね……」
ニコラスに夕べのことをざっと説明していると、ヘザーたちを背後から怒鳴りつける者がいた。
「おい、扉の前でたむろするのではない! 通行の邪魔だ!」
この怒鳴り声、もう何度も耳にした。ヘザーには声だけで誰だかわかるようになっていた。しかし感じの悪いヒューイが相手でも、ニコラスは朗らかに対応した。
「あっ、バークレイ教官。俺たち、辞令を……」
「……知っている。ちょうどいい。三人とも、僕についてきたまえ」
ヒューイはニコラスとヘザー、そしてアルドをさっと一瞥すると、司令部の中へ招いた。三人一緒ということは、アルドにも辞令がおりるのだろうか? そもそも辞令のことを何故ヒューイが知っているのだろう? 司令部全体に周知されていることなのだろうか? ヘザーは俯き加減になってヒューイの後に続く。
ヒューイは立派な机の前に三人を立たせると、机を回り込み、自分はそこに座った。つまりこの男から辞令をもらうということだろうか? ヘザーは眩暈に襲われた。
ヒューイは手元の書類と自分の前に立つ三人を見比べる。
「アルド・グレイヴス。ニコラス・クインシー。君たち二人は、再教育となった。僕のもとで一人前の騎士となるべく、もう一度研修を受けてもらう」
ニコラスは素直に「はい」と返事をしたが、アルドのほうはそうではない。
「あ? ちょっと待ってくれよ。俺、何年も城下警備の任に就いてたんだぜ? なんでいま頃……」
しかしそのぼやきもヒューイの怒鳴り声に遮られてしまった。
「アルド・グレイヴス! ほんとうにわからないのか? 君は勤怠に問題がある。それに、収賄容疑もかかっているんだぞ」
お説教を横で聞いていたヘザーは驚いた。アルドの生活態度に問題があるのは頷ける。しかし収賄容疑までかかっていたとは。それほどの問題児ならば、女に薬を盛るなんて朝飯前ではないか。
「再教育中の君の態度によっては、過去の仕事ぶりまで徹底的に調べさせてもらうぞ。何かが明らかになったら、君の進退に関わる。脅すつもりはないが、言葉と態度に気をつけたまえ」
「……ちぇっ」
「その態度がいけないと言っているのだ! 返事は簡潔に『はい』! 言葉の乱れは心の乱れだ!」
「……はい」
「では、アルド・グレイヴスとニコラス・クインシーは下がってよろしい」
お説教を食らうアルドを半ばざまあみろという気持ちで見ていたが、自分がいま一人でヒューイの前に立っていることに気づくと、今度は血の気が引いた。恐る恐る顔をあげると、ヒューイもこちらをまっすぐに見据えている。
──ヘザー・キャシディ。君のような痴女はクビだ! 騎士の称号を置いてここから去れ! 風紀を乱す変態女め!
……絶対そう言われる。変な汗が噴き出してきた。だが、ヒューイはヘザーが思ってもみなかったことを言った。
「ヘザー・キャシディ。君は僕の助手として、この新人教育課で勤務することになった」
「……はい?」
「僕の助手だ。要は下働き、雑用係みたいなものだ」
自分がこの男の助手? 先ほどよりも激しい眩暈がした。何故、よりによって……と。
嫌だと答えたらどうなるのだろう? 僻地に飛ばしてもらえるだろうか。だが平民あがりの自分の希望があっさり通るとは思えない。「嫌なら騎士を辞めろ」でおしまいな気がする。
「それから、だな……」
ヒューイは顔をあげて周囲の気配を探り、苦々しそうに唇を歪めて立ちあがった。
「君には話しておかねばならないことがある……が、人目のある場所ではないほうがいいだろう。ついてきたまえ」
夕べのことだとすぐにわかった。ヘザーはふらふらと覚束ない足取りで、ヒューイの後に続いた。
テーブルが中央に置いてあり、窓が一つだけある小会議室のような部屋にヘザーは案内される。ヒューイは後ろで手を組んでしばらく窓の外を見つめていたが、やがてくるりと振り返った。
「ヘザー・キャシディ。話とは、君の素行についてだ。君は普段からああいった真似をしているのかね」
「え? ええっと……」
ああいった真似とは、なんだろう。飲み比べのことだろうか。それとも……
「自慰を見せつける趣味があるのかと、僕は尋ねているんだ」
「ち、違う……!」
「君の性嗜好についてとやかく言うつもりはない。倒錯的な行為でも合意の上で、互いの目的が一致しているのならば悪いことではないと思う。だが、僕には他人の自慰を眺めて喜ぶ趣味はない。それに宿舎の一室でそういった行為に及ぶのは、不謹慎だと思わないか?」
夕べのアレを、一つ一つそんな風に説明されると、頭をかきむしって叫びたくなる。
「ああああ……やめてやめて!」
「やめてもらいたいのは昨日の君の振る舞いだ! 時と場所を考えたまえ!」
「だから、違うの……! 私、薬を盛られて……」
「薬だと? 他人の前で自慰をしたくなる薬があるとでも言いたいのかね」
そういう限定的なものではないと思う。多分、淫らな気持ちになる薬だ。いわゆる媚薬。どのくらい流通していて、どうやって手に入れるのかまでは知らないが。
「わからないけど、とにかく、お酒に何か入っていたのよ。そうでなくてはおかしいもの! あんな……あんな風になったこと……いままでなかったんだから」
「悪酔いしただけではないのか?」
「絶対違う! それほど飲んでいないもの!」
ヒューイがじろりとこちらを睨んだ。表情からして、ヘザーの話を信じていないようだ。
「君は女一人で大勢の男たちと飲んでいたな。日頃からそういうことをしているのか?」
ヘザーは首を振る。酒場に呼び出されたのはここ二週間で五回ほど。普段からしているといえばしているようにも思えるが、近衛隊にいた頃はこんなことはなかったのだ。
「とにかく、司令部所属となったからには風紀を乱すような行動は慎みたまえ。話は以上だ」
話は終わりらしいが、ヘザーの言葉は結局信じてもらえていない。なんだか腑に落ちない。
「返事は⁉」
「は、はい!」
「……それから、君には新しい制服が必要だな」
近衛隊の制服はもう着られないので、ヘザーは稽古着で日々を過ごしている。今度からは新人教育課の制服を着ることになるようだ。各騎士団や騎士隊の制服に大きな違いはないが、袖や襟のデザイン、ラインの色や数などは微妙に異なっている。
「備品倉庫まで案内しよう。ついてきたまえ」
ヒューイはそこでヘザーの頭のてっぺんからつま先まで眺めまわした。
「サイズの合うものがあればいいのだが。なかったら、採寸して一から作ることになるだろうな」
服や靴のサイズで苦労するのは初めてのことではないので、それは別にいい。しかし自分は、これからヒューイの下で働くことになるらしい。
あーあ。最悪。ヘザーは俯いて、こっそりとため息を吐いた。
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