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第十九話

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「うん、分かっているわ。あなたも相当に紳士よ、もしベルが起きても私がしっかり保証するから、我慢して」
「姐さんがそこまでおっしゃるなら」

 ぶつくさ言いつつも、忠次はデートと採寸を了承した。ありがとう忠次、あなたが紳士なおかげでベルの乙女心は何とか傷つかない、本当によかった。

「さて、そのあいだに私は魂云々の手がかりを探しに行くわ。教会のフロコン大司教様にアポを取っているの、口が固いお方だし、我が家とも縁があるから事情くらいは聞いてくださるはず。若いころは悪魔祓い師エクソシストをなさっていたから、少しはこういう不思議なことも知っているかもしれないわ」

 毎晩図書室に籠りきりの私は、ついに自力で探す以外にもベルと忠次を何とかする方法を模索すべきだ、という結論に至った。もっと早く至ればよかったのだが、外部の人間に忠次の魂inベルの事情を知られたくないし、私としては自分の家族にもベルの家族にも秘密にしておきたかった。だって、年頃の貴族令嬢の体に男性の魂が取り憑いた、だなんて風聞が悪すぎる。もし信心深い親族がいれば、修道院送りにされたって文句は言えない。

 しかし、もうここは慎重に考慮を重ね、フロコン大司教様という奇特な人物に頼ることにした。類いまれな人格者であり、プランタン王国国教において最高位の教皇に次ぐ地位にある宗教学の権威で、なおかつ私と何度か面識がある。正確には、ヴェルグラ侯爵家と、だが。

 フロコン大司教様ならば、魂云々そのものの知識はおろか、これから私がどうすればいいかをも教えてくださる可能性が高い。とにかく、急いでいる。私は内密に手紙を送り、何とか昨日返信をいただいてアポを取れたのだ。やってみるしかない、ベルと忠次には責任も罪もないことを説明しつつ、目的を達するのだ、私。

 私が努力をしていることを忠次は認めてくれたのか、それとも本当に面倒をかけている、と思っているのか、申し訳なさそうな顔をして頭を下げてきた。

「すいやせん、姐さん。ご面倒をおかけしやす」
「ううん、気にしないで。それじゃ、大兄様を頼むわね。ベルの婿にふさわしいか、きっちり見定めてきて!」
「相分かりやした、行ってまいりやす!」

 忠次は元気よく、大兄様と待ち合わせのエントランスへと出陣していった。

 さて、私も行かなくては。
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