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第三十一話
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すぐに私とアレクはバルクォーツ女侯爵のもとへ向かい、事情を話しました。帝都へ呼ばれていること、アレクが父や兄に会うことを躊躇っていること、その不安を解消するために様子を見に行けないか、という提案。
すべてを聞き終え、バルクォーツ女侯爵は力強く頷きました。
「よし、任せておけ! すぐに手配する、お前たちは帝都へ向かうといい!」
これにはアレクは異を唱えようとします。
「いえ、帝都には母上がいますから、まずはそちらに泊まって相談を」
「叔母上は面白がってより場を乱すが、それでもいいのか?」
「だめです」
アレクは即答しました。アレクのお母様はどんな人なのでしょう。何となく、愉快そうな人ということは分かります。
アレクは思いっきりため息を吐いていました。
「最近会っていないから忘れていました……はあ、うちの女性陣はそういうところがあるから苦手なのです」
「何だ、弱気だな、アレク。手紙を送っておくから、帝都に着き次第、侍従長のノルドル伯爵を訪ねるといい。すべて上手くやってくれるだろう」
「ありがとうございます、ではこれで」
「おっと、アレク。私に言うべきことがあるのではないか?」
用件は済んだ、とばかりにさっさと辞去しようとしたアレクを引き留め、バルクォーツ女侯爵は顔をニマニマさせています。アレクは嫌そうな顔をしていました。
「何かありましたか?」
「うん、あった。私にはまだお前から報告が来ていない」
「はあ、何のことでしょう」
私は察しました。でも、言ってしまうと角が立つというか、アレクがなぜ言っていなかったのだろうと事情を考えると、バルクォーツ女侯爵が怒るのも無理はないと思うのです。
バルクォーツ女侯爵は叫びました。
「お前とエミーが結婚するということを、どうして私に報告しに来ないのだ!」
大変張りのある声で叱られたアレクは、渋面を隠そうともしません。多分、恥ずかしかったのと、おちょくられることが分かっていたから、できるだけ遅くしようと画策していたものと思われます。私はもう言っているのだと思っていましたが、道理で静かなはずです。
アレクはしれっと答えます。
「忘れていました」
「それで済ませるな。私のエミーを取っておいて」
「別に従兄弟殿のものではないでしょう」
「カルタバージュの住民なのだから私のものだ」
口論を始めたアレクとバルクォーツ女侯爵の間で、私はふと、とても今更ながら、あれのことは言っていなかったのでは、と気付きました。
というより、普段は誰も気にしないことです。
「いえ、私、正式にはカルタバージュの住民ではありませんよ?」
アレクとバルクォーツ女侯爵は、え、と同時に声を漏らしました。
すべてを聞き終え、バルクォーツ女侯爵は力強く頷きました。
「よし、任せておけ! すぐに手配する、お前たちは帝都へ向かうといい!」
これにはアレクは異を唱えようとします。
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「叔母上は面白がってより場を乱すが、それでもいいのか?」
「だめです」
アレクは即答しました。アレクのお母様はどんな人なのでしょう。何となく、愉快そうな人ということは分かります。
アレクは思いっきりため息を吐いていました。
「最近会っていないから忘れていました……はあ、うちの女性陣はそういうところがあるから苦手なのです」
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「ありがとうございます、ではこれで」
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用件は済んだ、とばかりにさっさと辞去しようとしたアレクを引き留め、バルクォーツ女侯爵は顔をニマニマさせています。アレクは嫌そうな顔をしていました。
「何かありましたか?」
「うん、あった。私にはまだお前から報告が来ていない」
「はあ、何のことでしょう」
私は察しました。でも、言ってしまうと角が立つというか、アレクがなぜ言っていなかったのだろうと事情を考えると、バルクォーツ女侯爵が怒るのも無理はないと思うのです。
バルクォーツ女侯爵は叫びました。
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大変張りのある声で叱られたアレクは、渋面を隠そうともしません。多分、恥ずかしかったのと、おちょくられることが分かっていたから、できるだけ遅くしようと画策していたものと思われます。私はもう言っているのだと思っていましたが、道理で静かなはずです。
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「忘れていました」
「それで済ませるな。私のエミーを取っておいて」
「別に従兄弟殿のものではないでしょう」
「カルタバージュの住民なのだから私のものだ」
口論を始めたアレクとバルクォーツ女侯爵の間で、私はふと、とても今更ながら、あれのことは言っていなかったのでは、と気付きました。
というより、普段は誰も気にしないことです。
「いえ、私、正式にはカルタバージュの住民ではありませんよ?」
アレクとバルクォーツ女侯爵は、え、と同時に声を漏らしました。
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