婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ

文字の大きさ
31 / 40

第三十一話

しおりを挟む
 すぐに私とアレクはバルクォーツ女侯爵のもとへ向かい、事情を話しました。帝都へ呼ばれていること、アレクが父や兄に会うことを躊躇っていること、その不安を解消するために様子を見に行けないか、という提案。

 すべてを聞き終え、バルクォーツ女侯爵は力強く頷きました。

「よし、任せておけ! すぐに手配する、お前たちは帝都へ向かうといい!」

 これにはアレクは異を唱えようとします。

「いえ、帝都には母上がいますから、まずはそちらに泊まって相談を」
「叔母上は面白がってより場を乱すが、それでもいいのか?」
「だめです」

 アレクは即答しました。アレクのお母様はどんな人なのでしょう。何となく、愉快そうな人ということは分かります。

 アレクは思いっきりため息を吐いていました。

「最近会っていないから忘れていました……はあ、うちの女性陣はそういうところがあるから苦手なのです」
「何だ、弱気だな、アレク。手紙を送っておくから、帝都に着き次第、侍従長のノルドル伯爵を訪ねるといい。すべて上手くやってくれるだろう」
「ありがとうございます、ではこれで」
「おっと、アレク。私に言うべきことがあるのではないか?」

 用件は済んだ、とばかりにさっさと辞去しようとしたアレクを引き留め、バルクォーツ女侯爵は顔をニマニマさせています。アレクは嫌そうな顔をしていました。

「何かありましたか?」
「うん、あった。私にはまだお前から報告が来ていない」
「はあ、何のことでしょう」

 私は察しました。でも、言ってしまうと角が立つというか、アレクがなぜ言っていなかったのだろうと事情を考えると、バルクォーツ女侯爵が怒るのも無理はないと思うのです。

 バルクォーツ女侯爵は叫びました。

「お前とエミーが結婚するということを、どうして私に報告しに来ないのだ!」

 大変張りのある声で叱られたアレクは、渋面を隠そうともしません。多分、恥ずかしかったのと、おちょくられることが分かっていたから、できるだけ遅くしようと画策していたものと思われます。私はもう言っているのだと思っていましたが、道理で静かなはずです。

 アレクはしれっと答えます。

「忘れていました」
「それで済ませるな。私のエミーを取っておいて」
「別に従兄弟殿のものではないでしょう」
「カルタバージュの住民なのだから私のものだ」

 口論を始めたアレクとバルクォーツ女侯爵の間で、私はふと、とても今更ながら、あれのことは言っていなかったのでは、と気付きました。

 というより、普段は誰も気にしないことです。

「いえ、私、正式にはカルタバージュの住民ではありませんよ?」

 アレクとバルクォーツ女侯爵は、え、と同時に声を漏らしました。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

婚約破棄して「無能」と捨てた元婚約者様へ。私が隣国の魔導予算を握っていますが、今さら戻ってこいなんて冗談ですよね?』

鷹 綾
恋愛
王太子アラルガンから「無能」「可愛げがない」と切り捨てられ、 夜会の場で一方的に婚約破棄された公爵令嬢エルフレイド。 だが彼女は、誰にも知られていなかっただけで―― 王国の魔導具開発、結界維持、そして莫大な魔導予算を 一人で回していた超実務型の才女だった。 追放同然で国を去ったエルフレイドを迎え入れたのは、 隣国の「氷の魔導皇帝」ゼノス。 彼は彼女の数字感覚と設計思想を即座に見抜き、 国家予算そのものを託す。 一方、エルフレイドを失った元王国は、 魔導障壁の不具合、予算破綻、偽聖女の無能露呈により 静かに、しかし確実に崩壊していく。 ――そして物語の後半、 焦点は「ざまぁ」から、さらに先へ。 裁かれない元王太子。 英雄を作らない制度。 責任を個人に押し付けない現場。 引き金を引かないという選択。 これは、 「誰かが偉かった」物語ではない。 「誰かを断罪する」物語でもない。 有能な人間が消えたあとも、世界が回り続けるようにする物語。 名前が消え、功績が語られず、 それでも街が守られ続ける―― そんな“完成した世界”に至るまでを描いた、 静かで痛快な大人向け婚約破棄ファンタジー。

「可愛げがない」と婚約破棄された公爵令嬢ですが、領地経営をしていたのは私です

希羽
恋愛
「お前のような可愛げのない女との婚約は破棄する!」 卒業パーティの会場で、婚約者である第二王子デリックはそう宣言し、私の義妹ミナを抱き寄せました。 誰もが私が泣き崩れると思いましたが――正直、せいせいしました。 だって、王子の領地経営、借金返済、結界維持、それら全ての激務を一人でこなしていたのは「可愛げのない」私だったのですから。 「承知しました。では、あとはミナと二人で頑張ってください」 私は手切れ金代わりに面倒な仕事を全て置いて国を出ました。 すると、国境で待っていたのは、隣国ガルガディア帝国の冷徹皇太子ことクライド様。なぜか彼は私を溺愛し、帝国で最高の地位と環境を与えてくれて……。

処理中です...