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第六話
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レディにベッドまで送られて、あたしは枕を抱きしめて眠っていた。
あたしに幼い頃の思い出は、ほとんどない。親の顔も憶えていない、掃き溜めのような貧民窟から売られて、あの差配人の小間使になって、暗殺の訓練を受けさせられた。でも、あたしには才能がなくて、左手の腱まで切って、顔だけは並以上だからって使い捨ての暗殺者もどきにされて、あとは死ぬだけだったはずなのに。
暖かい部屋に、ふかふかのベッドに、清潔なシーツと枕、新品のコットンドレス。あたしにはもったいない、高価なものばかり与えられ、美味しい食事と優しい人たちに囲まれている。
——そんなこと、ある? しかも、あのエリアス王子があたしを愛してるだなんて、嘘でしょう?
あたしにそんな価値があるわけないじゃない。あたしは、人一人さえ殺せなかった暗殺者もどきなんだから。
ぐるぐる頭の中で、自分を責める言葉ばかりが巡る。すっかり眠気も覚めて、むくりと起き上がったところで、あたしはベッド脇に腰掛けていたエリアス王子を見つけてしまった。サイドチェストのほのかな灯りしかない部屋で、眠っているあたしのベッドの縁で、一体全体何を——と文句を言いかけて、あたしは止まった。
分かりきっている。エリアス王子は、あたしを心配してそこにいたのだ。
あたしのほうを向いて、エリアス王子は名前を呼んだ。
「レモニア」
プイッと、あたしは顔を背けた。
「あんたのせいで、何もかもめちゃくちゃよ」
それはエリアス王子のせいではないし、お門違いだと分かっていても、口から出てしまった悪態だった。
エリアス王子は神妙な顔をして、頷く。
「そうだな」
肯定されて、あたしはカッとなった。
「何がそうだな、よ! あたしは、あんたを殺すために来たのに、何をのうのうと仲良く!」
あたしは飛び起きて、エリアス王子の首に右手を突きつける。
しかし、エリアス王子は動じない。あたしを見ている。同情するような、優しい眼差しであたしを見ている。
——やめてよ、あたしが悪いのに。
「抵抗してよ」
「いいや、しない。君のことを愛している」
「馬鹿にして! あたしじゃあんたを殺せないってタカを括ってるんでしょ!」
「できないのかい?」
「できるわよ! この、クソ王子!」
激昂しても、あたしにできるわけがなかった。
右手にどれほど力を込めても、エリアス王子の首を掴むことで精一杯だ。気管を締めることさえできない。ナイフは手元にないし、あったところであたしにはもう、振るう理由がなかった。
それに、あたしはレディも、老婆のメイドも、エリアス王子も、ここにいる人たちを誰も殺したくなんてない。
そう思えば、あたしの目には涙がとめどなく溢れてきた。
「レディが、優しいんだもの。メイドたちだってあたしを慰めてくれる、気遣ってくれる。そんなの、暴力と変わりないじゃない。あたしの意思は、何にも関係ない。ただ黙って言われるままにするだけ」
あたしは結局、どうしてここにいるんだろう。望まれたから、強いられたから、どちらもあたしの意思ではない。今までだって同じだった、でも、王城の人たちはあたしに優しい。だからこそ、どうしていいのか分からないままだ。
エリアス王子は、指先であたしの涙を拭った。両目は潤んだままだが、あたしはエリアス王子の顔を数日ぶりに至近距離で見た気がする。
あたしが首に手をかけたままなのに、エリアス王子はあたしへ愛の告白をする。
「君の目が好きなんだ。殺意でも何でもいい、強い意思のこもったブラウンの瞳。素敵だ」
「……はあ?」
「君は生きている、そう思うだけで嬉しくなる。誰が死のうが生きようがどうでもよかったが、君には生きていてほしいし愛したいんだよ、レモニア」
あたしにはもう、その言葉を疑うつもりはなかった。
あたしは右手を下ろし、エリアス王子へこつんと額を当てる。
「愛してよ」
「うん」
「好きなんだったら、あたしを見てよ」
「ああ、そうする」
「殺したいほど憎たらしい、いい返事ばっかり」
「信じられないかい?」
あたしはあっさり首を縦に振った。あまのじゃくにも、素直に答えたくなかっただけだ。エリアス王子の愛は、行動で示されたのだから、あたしはもうとっくに信じている。
右手と左手、それぞれ互いに指を絡めて、エリアス王子は恥ずかしげに、満開の花さえも恥じらうほどの笑みを浮かべた。
「レモニア、一つだけ約束してほしいことがある」
「何」
「私を襲ってほしいんだ。いや殺してもいいが、まあそれはさておき、君になら犯されても」
「ちょっと待って、馬鹿なこと口走らないで!」
「いいじゃないか別に」
「嫌よ!!! どうしてあんたの変態性癖に付き合わされるのよ!」
「伴侶は私じゃだめかな? 自慢じゃないが顔も体も性格も恥じるところはない!」
「うるさい! ちょっと黙ってて!」
この野郎、あたしの領域に一歩踏み込んできたと思ったら、とんでもない歩幅の一歩だった。
いや、結婚するのならそういうこともしないといけないのだけども、うーん。
背中をひと押しとばかりに、エリアス王子は誘惑の一言をまたあたしの耳元でつぶやいた。
「美味しいものをたくさん食べさせてあげるよ?」
子供扱いにもほどがある。ついにあたしはキレた。指を離し、エリアス王子の胸を両手でポカポカ殴る。
「この、馬鹿王子! 変態! 食べ物で釣るな!」
「ははは! 痛くも痒くもない、どちらかというと興奮してきた」
「うるせー!!!!」
エリアス王子、変態である。優秀なんだけど、ルックスも極上なんだけど、変態である。
それに、しがない元暗殺者を妃に迎えようだなんて考えるのは、後にも先にもエリアス王子くらいだ。
あたしは、レモニアという名前で、今生きている。
王城で、次の国王となることが正式に決まったエリアス王太子に「婚前交渉は一切禁止!」と約束させて、暫定王太子妃の座に就くことになってしまった。
エリアス王子はあたしをとことん甘やかす。もはや溺愛だ。それを見て、メイドも使用人も騎士も兵士も国王夫妻も、仲が良くて微笑ましいと大変喜んでくれる。あたしにとっては遺憾ながら、そうなのだ。
何でこうなったんだろう、何度もそう思ったけど、もういいや。
あたしは、エリアスに愛されているのだから。
おしまい。
あたしに幼い頃の思い出は、ほとんどない。親の顔も憶えていない、掃き溜めのような貧民窟から売られて、あの差配人の小間使になって、暗殺の訓練を受けさせられた。でも、あたしには才能がなくて、左手の腱まで切って、顔だけは並以上だからって使い捨ての暗殺者もどきにされて、あとは死ぬだけだったはずなのに。
暖かい部屋に、ふかふかのベッドに、清潔なシーツと枕、新品のコットンドレス。あたしにはもったいない、高価なものばかり与えられ、美味しい食事と優しい人たちに囲まれている。
——そんなこと、ある? しかも、あのエリアス王子があたしを愛してるだなんて、嘘でしょう?
あたしにそんな価値があるわけないじゃない。あたしは、人一人さえ殺せなかった暗殺者もどきなんだから。
ぐるぐる頭の中で、自分を責める言葉ばかりが巡る。すっかり眠気も覚めて、むくりと起き上がったところで、あたしはベッド脇に腰掛けていたエリアス王子を見つけてしまった。サイドチェストのほのかな灯りしかない部屋で、眠っているあたしのベッドの縁で、一体全体何を——と文句を言いかけて、あたしは止まった。
分かりきっている。エリアス王子は、あたしを心配してそこにいたのだ。
あたしのほうを向いて、エリアス王子は名前を呼んだ。
「レモニア」
プイッと、あたしは顔を背けた。
「あんたのせいで、何もかもめちゃくちゃよ」
それはエリアス王子のせいではないし、お門違いだと分かっていても、口から出てしまった悪態だった。
エリアス王子は神妙な顔をして、頷く。
「そうだな」
肯定されて、あたしはカッとなった。
「何がそうだな、よ! あたしは、あんたを殺すために来たのに、何をのうのうと仲良く!」
あたしは飛び起きて、エリアス王子の首に右手を突きつける。
しかし、エリアス王子は動じない。あたしを見ている。同情するような、優しい眼差しであたしを見ている。
——やめてよ、あたしが悪いのに。
「抵抗してよ」
「いいや、しない。君のことを愛している」
「馬鹿にして! あたしじゃあんたを殺せないってタカを括ってるんでしょ!」
「できないのかい?」
「できるわよ! この、クソ王子!」
激昂しても、あたしにできるわけがなかった。
右手にどれほど力を込めても、エリアス王子の首を掴むことで精一杯だ。気管を締めることさえできない。ナイフは手元にないし、あったところであたしにはもう、振るう理由がなかった。
それに、あたしはレディも、老婆のメイドも、エリアス王子も、ここにいる人たちを誰も殺したくなんてない。
そう思えば、あたしの目には涙がとめどなく溢れてきた。
「レディが、優しいんだもの。メイドたちだってあたしを慰めてくれる、気遣ってくれる。そんなの、暴力と変わりないじゃない。あたしの意思は、何にも関係ない。ただ黙って言われるままにするだけ」
あたしは結局、どうしてここにいるんだろう。望まれたから、強いられたから、どちらもあたしの意思ではない。今までだって同じだった、でも、王城の人たちはあたしに優しい。だからこそ、どうしていいのか分からないままだ。
エリアス王子は、指先であたしの涙を拭った。両目は潤んだままだが、あたしはエリアス王子の顔を数日ぶりに至近距離で見た気がする。
あたしが首に手をかけたままなのに、エリアス王子はあたしへ愛の告白をする。
「君の目が好きなんだ。殺意でも何でもいい、強い意思のこもったブラウンの瞳。素敵だ」
「……はあ?」
「君は生きている、そう思うだけで嬉しくなる。誰が死のうが生きようがどうでもよかったが、君には生きていてほしいし愛したいんだよ、レモニア」
あたしにはもう、その言葉を疑うつもりはなかった。
あたしは右手を下ろし、エリアス王子へこつんと額を当てる。
「愛してよ」
「うん」
「好きなんだったら、あたしを見てよ」
「ああ、そうする」
「殺したいほど憎たらしい、いい返事ばっかり」
「信じられないかい?」
あたしはあっさり首を縦に振った。あまのじゃくにも、素直に答えたくなかっただけだ。エリアス王子の愛は、行動で示されたのだから、あたしはもうとっくに信じている。
右手と左手、それぞれ互いに指を絡めて、エリアス王子は恥ずかしげに、満開の花さえも恥じらうほどの笑みを浮かべた。
「レモニア、一つだけ約束してほしいことがある」
「何」
「私を襲ってほしいんだ。いや殺してもいいが、まあそれはさておき、君になら犯されても」
「ちょっと待って、馬鹿なこと口走らないで!」
「いいじゃないか別に」
「嫌よ!!! どうしてあんたの変態性癖に付き合わされるのよ!」
「伴侶は私じゃだめかな? 自慢じゃないが顔も体も性格も恥じるところはない!」
「うるさい! ちょっと黙ってて!」
この野郎、あたしの領域に一歩踏み込んできたと思ったら、とんでもない歩幅の一歩だった。
いや、結婚するのならそういうこともしないといけないのだけども、うーん。
背中をひと押しとばかりに、エリアス王子は誘惑の一言をまたあたしの耳元でつぶやいた。
「美味しいものをたくさん食べさせてあげるよ?」
子供扱いにもほどがある。ついにあたしはキレた。指を離し、エリアス王子の胸を両手でポカポカ殴る。
「この、馬鹿王子! 変態! 食べ物で釣るな!」
「ははは! 痛くも痒くもない、どちらかというと興奮してきた」
「うるせー!!!!」
エリアス王子、変態である。優秀なんだけど、ルックスも極上なんだけど、変態である。
それに、しがない元暗殺者を妃に迎えようだなんて考えるのは、後にも先にもエリアス王子くらいだ。
あたしは、レモニアという名前で、今生きている。
王城で、次の国王となることが正式に決まったエリアス王太子に「婚前交渉は一切禁止!」と約束させて、暫定王太子妃の座に就くことになってしまった。
エリアス王子はあたしをとことん甘やかす。もはや溺愛だ。それを見て、メイドも使用人も騎士も兵士も国王夫妻も、仲が良くて微笑ましいと大変喜んでくれる。あたしにとっては遺憾ながら、そうなのだ。
何でこうなったんだろう、何度もそう思ったけど、もういいや。
あたしは、エリアスに愛されているのだから。
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