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1章 オレタチの傭兵団

第3話 人間狩り

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 リザードマンの村に皇帝陛下の配下達の人間が大勢いた。 
 現在時刻は夜中、大きなお月様が支配する世界で1人のドワーフが弓を構える。
 人間達は宴のようなものを開いていた。
 どうやらリザードマンの村を制圧した事を喜びあっているようだ。

 その時、1本の矢が巨大な焚火に命中し爆発した。
 辺りは静けさと暗闇に包まれていた。

「敵襲、ぎゃ」

 見張りの兵士が叫ぶ寸前でこと切れていた。
 なぜならドワーフ青年のオメガが高速の剣でためらいなく瞬殺したからだ。
 首がぼとりと落ちて転がっていく。
 暗闇の中の為、人間達は反応出来ない。

「こっちに何かいるぞぎゃ」
「うあああ、亡霊か亡霊なのか、ぎゃ」
「に、にげろおおおお、ぎゃ」

「逃げるな武器を持って戦え、この隊長が皇帝陛下の代わりだと思うがいい」

 1人の隊長の元に兵士達が集まり陣営を組み始める。

 オメガは冷たい眼差しでそれを眺めて、動き出す。
 全身を覆う無敵の鎧。
 銀色に光っているそれは、相手から見たら銀色の小さい死神に見えただろう。

「全身が鎧に包まれているだと」

「それで、あの身のこなしとは」

「おい、お前、今なら頭を下げれば拷問は避けてやろう」

 だがオメガは止まらない。
 人間への憎しみ、そして同胞が次から次へと死んでいく恐怖。
 それをそっくりそのまま返したいからだ。

「いいか、坊主、鎧には隙間っちゅうもんがある。こちらは180名近くの兵士で弓矢を構えると、坊主、お前は死ぬぞ」

 隊長がにんまりと笑う。
 彼は20人殺されている事に気付いているようだ。

「てええぇええええ」

 100本以上の矢がオメガの体目掛けて飛来する。
 それだけの矢なら関節部分に命中して動けなくなるだろう。
 しかし、無敵の鎧は関節部分、隙間の部分、全てに魔法のバリアが張り巡らされており。

 全ての矢を受け切ったオメガはそこに直立不動していた。

「う、そだろ」

 隊長はようやく事の次第を理解した。
 しかし、人間とは失敗しても何度でも試したくなる生き物。

「次の矢を放てー」

 また100本以上の矢が飛来する。
 その度に、オメガの体に矢が当たる音が響く。
 オメガは背中にある弓を構える。
 全身に矢が未だに飛来しているのにも関わらず。

 自分が創造した矢。
 それは盛大に爆発する矢だった。

 呼吸と共に、空気を吐き出す。

「はん、ばかめ、矢1本でどうにかなる問題でもなかろうよ」

 人間の隊長がにんまりと笑う。
 次の瞬間、矢は爆速の如く飛来し、隊長の頬をかすめ、その後ろにいる兵士達100名を吹き飛ばした。

 爆発は家5軒は吹き飛ばす勢いで炎を巻き上げる。

「ま、じかよ」

 隊長は唖然としている。

 その破壊した建物から2名のリザードマンが現れる。

「うっひょーすごいねーあんな爆発見た事ねーよ」

「ね、姉ちゃん、こわいよおおおおお」

「そんな事いってボマースキル発動してんでしょ」

「怖いから、動く、基本だけよねえちゃん」

「そこのあんた、ドワーフかな? 力かしてくんねーかい、いや力貸してやんよ」

 オメガはにんまりと笑い。
 赤い鱗のリザードマンを鑑定した。
 名前はガニーでスキルは調合とボマー。
 青い鱗のリザードマンを鑑定した。
 名前はゲニーでスキルは投擲とボマー。

 残った30名の兵士がこちらに武器を構えて向かってくる。
 2人のリザードマンの方角には50人向かっていく。
 一方で隊長は必至で叫び声を上げて指示を下している。

 オメガの精神で色々な事が起きようとしている。 
 その感覚はスローモーションのようになっていくし、それはレベルアップを意味していた。
 現在オメガのレベルは60になろうとしていた。

 全身のステータスが向上した事を確認できる。

 そんな確認をしていると、眼の前で爆発が起きた。
 人間の兵士が面白いように吹き飛んでいく。

「ねえええちゃあああああんん、爆弾なげるよおおお」

「おうよ、これもつくったぜ」

 姉のガニーが作り、ゲニーが投げる。最高のコンビネーションだった。
 爆弾の塊はとてつもない威力で投擲され、爆発する。
 下手したら投げた爆弾だけで貫通してもおかしくない。

 そんな魅力的な光景を見て、ぜひ傭兵団に加えたいと思った。

「そんな事を考えている場合ではないな」

 四方に30名の人間の兵士によって囲まれる。

 高速の剣を構え、ゆっくりと歩き出す。
 兵士が武器を構えて、奇声をあげて、剣を振り落とす。
 バキンと嫌な音を立てて、剣が折れる。高速の剣が飛来した時には10回連撃され、兵士の体は斬り刻まれて絶命した。

 その行程を何度も何度も繰り返す。
 残った兵士は2名だけ。

「た、たすけてくれ、に、にげるぞ」

「き、聞いてないよ、武器が効かないよ」

 オメガはゆっくりと近づく、そして剣を振り上げザシュと振り落とす。 
 兵士の死体が1体転がる。
 最後の一人は泣き叫びながら足を引きずって逃げていく。

「おいおい、どこに逃げるんだい、あたしらリザードマンはお怒りよー」
「ねええちゃああああんん、そいつ僕がやっていいい?」

「ああ、いいさ、それでいいね、ドワーフ君」

「ああ、もちろんだ」

「た、たのむ、家族がいるんだ。頼むよ」

「いっせーのーでええええ」

 ゲニーは爆弾を顔面目掛けて投擲した。
 爆発した時には、そこに兵士の姿はなくなっていた。

「さて、あの隊長だな」

 オメガがそう呟くと、既に隊長の姿はなくなっていた。
 どうやら高速で逃げてしまったようだ。
 
「大丈夫、僕の爆弾投擲は追跡爆弾も出来るんだよ」

 ゲニーが怯えを失くして、爆弾の塊を握りしめると、思いっきり投擲した。
 爆弾は何かを追いかけるようにいなくなった。
 しばらくして、近くの森から爆発が轟いた。
 確かに隊長の悲鳴が聞こえた気がした。

「感謝するよ、ドワーフ、みんなでてらっしゃい」

 ガニーがそう叫ぶと、1人また1人とリザードマンが出てくる。
 彼等はそれぞれ怯えながらこちらを見ていた。
 オメガは顔を覆うフルフェイスの部分を解除すると。 
 リザードマン達はほっとしたようだ。
 1人のお爺さんのリザードマンが出てくる。

「村を代表して感謝しよう、食べ物は人間達に奪われてしまったが、これから魚でも釣るとしよう」

「そうですか、実はドワーフ村でも同じような事が起きています。この辺りを支配して守っていたドワーフ王国が落ちたせいでもありますが」

「そうじゃのう、ドワーフ王国の危機じゃから、わしらも動かねばならぬが」

「それなら、あたしたちが動けばいいでしょ」

「ねええちゃああんん、怖い事いわないでよおおお」

「そうじゃ、この村で最強と名高いボマー姉弟なら手配できるぞ」

 オメガは頷き。

「傭兵団を設立したくて、お二人にはぜひ来てほしいのです」

「ほう、それはおもしろそうじゃないのさ」

「ねえちゃあああんん、余計な事言わないでええええ」

「では、俺達は失礼するよ、あまり時間もないんでな」

「せめて名前を教えてくれんか、この村の命の恩人様じゃ」

「オメガ、そういう名前だ」

「はい、この心臓に刻みました」

 長老は大きな槍を構えて会釈した。
 1人また1人とリザードマンが頭を下げてくる。
 背丈の小さいドワーフ、その後ろに長身の赤い鱗のリザードマンと青い鱗のリザードマンがるんるんと付き従っていた。
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