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3章 オレタチの終着点

第47話 異団の傭兵団②

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★★★ペロンク★★★

 父親がいた。父親は最高なコボルト族の道化師だった。
 皆を笑わせて石ころを投げられて。
 ぼこぼこに腫れた顔をよく見せてくれて笑っていた。
 そんな父親が最高だった。
 
 そんな父親になれたかな。
 きっとなれたよね。
 ヴァンロードと一緒に最高なサーカスが出来た。

 大勢の人間と異種族が一緒に不安をかき消した。
 あんな最高なサーカスを舞台をやりたい。

 皆がいればなんだって笑いあえる気がした。
 
「だからぼくは皆を守らないといけない」

「団長は【レベル99999:エレメンタルトランプ】をくれたから」

「これは至る所にエレメンタルを付与できる最高なトランプ。ぼくの力を使えば援護が出来るバファーになれる。だよね団長」

 ペロンクは四方にトランプを浮遊させる。

「スキル:トランプコントロールでこんな事も出来る」

 遠いところまでトランプを浮遊させてコントロールする事が出来る。

 至る所にトランプを配置していく。
 どのようにして仲間達を助けるかを考え。
 トランプの道と言う物を考え始める。

「ここでオオカミ人間化しても、きっと足手まとい、ぼくが出来る事をやろう」

 ペロンクは今すぐにでも動き出したい気持ちを抑えて。
 トランプコントロールしてじっくりと仲間達が戦うのを観察していた。


★★★リナテイク★★★

 家族が死んだ。
 その後魔力を吸い込まれるだけの生きた奴隷だった。
 多くのエルフが死んだ。
 世界終の葉っぱをとる為に。本当に多くの。
 でもリナテイクだけが魔力を吸い込まれても死ななかった。
 なぜなら、スキル:魔力増幅とスキル:魔力オーバーの連打のコンボがあったから。

 そんな時に助け出され、ジョブチェンジに目覚めたリナテイク。
 その力で今、とんでもない敵と戦おうとしている。

「レベル99999:変幻自在の棒」

 言葉に出して呟く。
 団長が魂を込めて製作してくれた武器。
 これは職業に合わせて武器が変化してくれる。
 魔力で武器と防具を補う事も出来るが。武器だけこれで変化させると大分楽だった。

 リナテイクはスキルジョブのホーリーアーチャーに変身すると。
 武器は変幻自在の棒で弓にする。

 弓矢を構えて、呼吸を整える。
 弓矢の扱い方を教えてくれた人の記憶を呼び起こす。
 誰だっただろうか。
 暖かい呼吸が脳裏に揺れる。

 ゆっくりと呼吸を繰り返して。
 目標に向けて、発射する。
 もちろんホーリーアーチャーだからジンガダンへ向けて。

 ★★★ブレイク★★★

 エルフレイク城の地下ダンジョンにて多くのエルフを殺した。
 ゾンビを使役して。
 遥かな昔の話。10人の英雄がいた時代。
 その1人のリーダーである殺戮王ラバンドラッドに恐怖を抱いて。
 逆らう事が出来ず。
 グール族だとばれたら死ぬ。

 エルフを殺すのは楽しくない。
 人を殺すのも楽しくない。
 周りから見たら楽しく殺しているように見える。
 それでも栄養失調のような顔のブレイクはいつも1人。

 片隅で研究を繰り返し。
 かつて愛したエルフがいた。
 人間とエルフのハーフのラニアーダー。
 彼女を失ったのは自分の手で間違って殺したから。
 鎧姿。気づかなかった。
 死体を実験に使うとき絶叫した。
 全てが終わったと思った。
 よみがえらせる為に、愛しい彼女の体を治療しようとした。

 それでも動かなかった。
 死体はうんともすんとも言わなかった。
 理論は正しい。肉体を蘇生すれば魂は戻るはず。
 だが無理だ。
 そこには魂がなかった。

 いや違う。
 世界終の葉っぱに可能性がある。

 だがそれを見ていた奴がいた。
 殺戮王だ。
 彼は死体を燃やした。
 もう戻ってこない。

 悲鳴を上げる事も許されず。

 そうしてブレイクも死に。

 自分が見つけ出した研究は後世に伝えられ、自分が見つけた研究で自分たちは蘇った。

 その時ブレイクは心の中で悲鳴を上げた。

 死体を燃やされなければ彼女は蘇っていたのだと。

「だが、今を生きるのも悪くないな」

 巨大な骨の姿になったボーン卿が命を懸けて戦う姿。
 勇者イルカスに小指で吹き飛ばされる姿には笑ったが。

「そうだよな、ラニアーダー。待っててくれ。人形のような姿でも戦いようはいくらでもある。ボーン卿サポートするぞ」

 ボーン卿の体が自動で立ち上がる訳ではなく、無数のゾンビが立ち上がらせる。

「すまないな」

「これくらいしかできないがな【レベル99999:怨念の鎖】これを団長から貰ってるから使わせてもらうさ」

 怨念の鎖とは怨念を抱けば抱く程、怨念のイメージの力を他に与える事が出来る。
 例えば、他の人間に怨念のイメージを叩きこんで狂わせる事も出来る。
 精神攻撃系の武器だが。使いようによってはゾンビに怨念の力を与えて、圧倒的力を引き出す事が出来る。
 その分怨念の力が必用だが。
 ラニアーダーを失った怒りと死にきれなかった怨念がブレイクの力となった。

「そんな所ですかねーまったく、変な所をよく見てますよ団長は」

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