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第1章勇者追放

14話トランクスの町をつくります! 間違えました!

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「がんばってこいやファミル、応援してるぜ」
「は、はい、……ぽ」
「おいおい、なんで真っ赤になるんだよ、毎回俺を見るたびに赤くなられては話しかけにくいぞ」
「は、そうですよね、すみません、このファミル最強になってみせます。では変態覇王師匠行きましょう」
「うむ、2人目の弟子はとても素直なやつじゃ、1人目はひどかったのにのう」
「ほっとけ」

「さぁて気を取り直して、トランクスの町をつくるぞおおお」

 ばたばたと音が聞こえたので、
 後ろを振り返ると、変態覇王とファミルがずっこけていた。

「やべ間違った。最高な町をつくるぞだったな、まずは乾燥室っと」

 俺は定位置であるマンションの屋上に到達、
 階段を上るのがとても大変だが、少しの努力となる。

―――おめでとうございます。レベルが21になりました―――
「ぶ」

 やべ階段を上っただけでレベルがあがってしまったようだ。
 なんかすげーな、
 おそらくだけど、ゾーンを使用して得る経験値はゾーンのレベル上昇となると思っていたが。どうやら全体てきなレベルにも作用されるみたいだ。

 では気を取り直して、屋上から辺りを見渡し、
 どこに乾燥室、つまり乾燥小屋を作るかを考えている。
 風向きとか考えたけどゾーンで修正してしまえばいいし、
 そうか、ゾーンで風向きとか温度を修正すれば、
 あっという間に乾燥小屋の出来上がりだ。

 あそこにとっと、
 人間の家が近くにあったほうがいいよな、 
 モンスターだと食べちゃいそうだからな。

 木々を分解して台座に石を分解合体して基盤にしてと、
 あーだーこーだ言いながら、
 あっという間に普通の家と同じくらいの大きさの乾燥小屋が完成した。

「ふうう」

「そっか畑とかも必要だな」
 
 あたりを見渡し、
 畑はスライムの家の近くがいいだろう、
 彼らにいろいろなものを食べさせて肥料もたべさせて、まぜまぜしながら消化後のものを吐き出してもらって、その吐き出したスライム肥料をばらまくのがいいだろう。
 そのスライム肥料は半透明だったはずだし、
 茶色とかの汚い色ではないだろう。
 茶色が汚いという意味ではいが。

 問題は畑の大きさだろうか。

 このミシビシ―の共存町はどんどん大きくなるだろうし、
 木々を伐採していくだろう、
 そしてさらに俺に家をつくれというだろう、

 まぁ伐採するのも俺なのだが。
 俺が作った町で沢山の人間とモンスターが幸せに生きていられれば願ったりかなったりだ。

「つーかこういうキャラだっけ? もっと冷たくて、人を脅すような、卑怯者だったような」

 それでも誰も答えてくれる存在はいない、
 俺はどうやら自分自身で変わりつつあることを悟り始めたのかもしれない。
 ということで俺は今後自由に生きることができるということ。

 勇者なんかやめてしまえば、
 と卑怯な考えがよぎっても。

「はふーやっぱりみんなの幸せが大事だ」

 人間の家が8軒 人型モンスター家8軒 スライム系4軒 マンション10階建て20部屋、ダンジョン5階層【魔法陣移動モンスターのみあり】【コアなし】 乾燥小屋 四方を囲む柵、門などをゾーンでクリエイトしたら、ちょうどお昼の12時頃になろうとしていた。

「あとは、人が来てから考えたほうが、必要経費は下げられるだろうしな。それにしてもこれは絶景だなぁ」

 10階建てのマンションの屋上から見られる。自分がつくった町はとても小さくて、本当に大きな公園程度しかないといえるだろう。
 周りには壮大な森が広がり、
 素材はたくさん眠っているのだろうし、
 モンスターたちもほとんどが浄化されているし。

 なんとなくだけどファミルの修行の成果というやつを見てみたかった。
 俺はファミルが修行しているという森の端っこまで移動することとした。


―――浄化ミシビシ森林地帯の修行場―――

 そこには浄化されたモンスターたちが大勢いた。
 その真ん中にファミルが騒然と立っている。
 目にはハチマキのようなもので巻かれており、
 何も見えないようだ。
 空中に浮かんで指導をしているのは変態覇王だ。
 あいつは低空飛行なら飛べるようだ。

 なぜなら上空飛行にすれば、
 いろいろと見ることができるのに、
 用心深く低空飛行でモンスターたちに指導を飛ばす。

「こいつらはわしの友達みたいなもので、お主の剣術を極めるために呼ばせてもらった。昨日ではおぬしの祖先と戦わせたがつらい思いをさせてすまなかった」
「いえ、あれしきのことで戸惑っていてはディルフィル王国の王女として恥じです」
「そう思うな」

 どうやらあの幼女危険人物は祖先の魂を呼びだすことができる。
 おめーはいたこさんかとつっこみたいが、

「さて次のレッスンはここにいる100体のわしの友達をノックアウトしてくれ、殺すのは禁止、相手をこの円から吹き飛ばせばよし」
「はい」
「武器はわしが用意した木刀のみ、剣ならお主の大好きな勇者太陽につくってもらえ」
「は、はい」

(だからなんで俺のことが大好きなんだよ)

 俺にはなんのとりえもない、
 卑怯者で、いつも逃げてばかり、
 ファミルはそんな俺に助けてもらったらしい。
 その助けた記憶なんてないんだが。
 もしかしたら何かと勘違いしている可能性はあるが。

 そしてついにバトルが始まる。

 そいつは巨大なサイクロプスと呼ばれる一つ目の化け物だった。
 大きな棍棒ではなく、拳で襲い掛かる。
 どうやらモンスターたちも武器を使わず、
 まるで相撲取りのように戦っている。
 ハチマキで何も見えないファミルは。
 
「はぁ」

 空気を吐き出すような気合とともに、
 サイクロプスの顔面を叩く。
 まるで漫画のように横へとまっすぐに吹き飛ぶサイクロプス。
 サイクロプスが落下したら、まってましたとばかりに、
 ミノタウロスが入ってくる。
 先程から女の子に汗臭いモンスターばかりがやってきていた。

 それから15分間は乱闘している。
 戦い続けている。
 ファミルはまるで曲芸師のように跳躍し続ける。
 気合の言葉以外空気を吸っている気がしない、
 ただひたすら芸術のように動き続ける。

 これってスマホで録画して、動画として流したら有名になれるんじゃね?

 とか思ったり。

「なんかカンフー映画を見せられているようだよ」

「え? 太陽様の声?」
「隙あり」

「ぎゃ」

「やば」

 どうやら俺の声を聞いて驚きつつも、
 ゴブリンに頭を叩かれている。 
 なんとか吹き飛ばされておらず。
 次の瞬間、ゴブリンが円から落とされて、
 すべてのモンスターが落下したのであった。

 それでも呼吸一つ乱さず彼女はまっすぐに草むらに隠れている俺を発見していた。
 俺は拍手しながら草むらから出ると、
 変態覇王はにかりと笑って見せる。
 この幼女ボブカット目、気づいてやがった。

「こちらの修行は完了したのじゃ、そちらも完了したのかな?」
「もちろんだ」

「なら、次のステップに入ろう。避難民の救助にじゃ」
「なんか俺の目的ずれてね?」
「いや、そうとも言えぬ、お主の役目じゃ、それが前いたパーティメンバーに関係するものだとしてもな」
「まじか、ついにあいつらにいたずらしてぎゃふんといわせてやる」
「はわっわ、勇者様がまぶしい」

 なぜか気分がよくなると、
 額が輝く、
 そこにはなんも文様がないとファミルは教えてくれるも。

「ふむ」

 と変態覇王はなにかしら考えていた。


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