モニターワールド

MIZAWA

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第28話キャラバン隊メンバー

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 僕はモニター画面を切り替えた。
 そこには錬三さんが利度さんの牧場にいた。
 牧場には繁殖に成功したのか、
 たくさんの動物たちがいた。
 しかもどうやらモニターワールドの世界では、
 動物たちの成長が早くなっているようなのだ。
 もしかしたら人間たちの成長スピードも上がっている可能性はある。
 
 それを実証できるほど、僕たちはとても暇ではない。

1人の男性が馬用のわらに包まれて眠っていた。
 錬三は利度さんに質問して、麦わらのところにやってきた。
 麦わらでたくさんの餌場にはたくさんの馬がいて、
 馬になめられながらも、1人の男性、つまり団さんはほんやりとしていた。

『団どの、どうか力を貸してほしい』
『めんどいからやだ』

 とダンさんは錬三さんの助力してほしいという提案をめんどいからといって両断した。

 僕は苦笑を押し隠しながら、
 にかりと笑って見せた。

『だってええええ、こうやって馬たちに囲まれているなんて最高だよ』
『どうか、力をかしてほしい』
『錬三君、もう少し時代を見据えてみないかね? 自分がいた時代ではサムライが人を平気で殺す。だがこの場所にはサムライはいない、なんと最高な場所なのだろうかね』
『この村を発展させるためにあなたの力が必要なのです』
『そもそも錬三君、自分たちは発展を目指しているのかな? もうすでに江戸の村よりは発展していると思うのだがね?』
『うむ、あなたの交易の達人としての力が必要なのです』

 すると先ほどまでの反応とは違った反応が返ってきた。
 錬三さんも真剣なまなざし、
 次に団さんが背中をぽりぽりとかきながら。

『いいだろう、この交易の達人として力をかそう』

 とてつもなく彼は単純バカで、そしてわかりやすい人格のようだ。

『にて、どこで、どこにものを運ぶんだ?』
「そこから先は僕が説明します」
『これは、初めてですな神様、どうかよろしくです』
「いえ、今回のこと引き受けてくれてありがとうございます。団さん」
『いえいえ、気になさらず、して、どこに何を運ぶんです?』
「現在わかっている獣人の村はこの二か所です。どうやら獣人たちはそれぞれの派閥をつくって、元いた獣人の村から分裂してしまったようです。海事さんがお世話になった獣人の村に行ければいいとおもうのですが、結構な距離で、分裂進化により僕では把握できない、モンスターやいつの間にかやってきた宇宙怪獣などの驚異があります。荷物をいかにして安全に届け交易するかにかかっておりまして、逃げ足がすごいときいたあなたの力が必要なのです」

 僕の長い説明に、彼はこくんこくんと頷くと。

『わかりました。神様、この交易の達人のダンにお任せください、では、出発は速いほうがいいでしょう、錬三殿いきましょう』
『神様ありがとうです。 このわしもがんばりたいですなぁ。では五郎との待ち合わせ場所に向かいます。神様は荷車とそこにつめる野菜と果物とたちの手配をお願いします』
「まかせてください」

 僕はまたモニター画面を切り替えた。
 そこにはいっぱいのお茶を飲んでいる。
 農民組がいた。
 農民組とは、千恵子さんのおばあさんを筆頭に、数十名で作られた女性たちだけの農民チームだ。

 そこには手伝いで薬師の姫元さんもいた。
 彼女は薬草を摘むという仕事をしている。

「千恵子さん、ついに地下倉庫に保管している作物たちをつかって交易ができます。おねがいがあるのですが、その作物を僕が用意する荷車に入れてほしいのです」
『ふむ、わしらがつくった作物がいろんな奴らに食われることはとてもうれしいことじゃ、みんな聞いてくれ、神様がわしらの作物を獣人族に交易品としてだすようだ。みんなのがんばりが認められたということじゃ』

「今おもったのですが、荷車といっても機械のようなものだと、ダンさんが操縦できませんし、かといって馬にすると」
「いいのよ、馬で、馬がつぶれたら、また新しい馬をつくればいいのよ」
「それもそうですけど、いいんでしょうか、神様が生命を何度もつくったら」
「気にしない気にしない、あなたはたくさんの生命をすでにつくってるのよ」
「栗ちゃんのいうとおりですよね、では」

 僕はトラックとおなじくらいの荷車を出現させる。
 馬も出そうとしたら、そこに四頭の馬を引き連れた。錬三さんとダンさんがやってきた。

『神様いいわすれてました。馬はこちらで用意します。自分と相性のいい馬を利度さんからゆずっていただきました』
「それはよかった」


 本当にタイミングよく来てくれたダンさんには感謝しかなかったけど。
 そこに真鍋さんと香住さんがやってきて、五郎さんも武器をそろえてやってきた。

 千恵子さんたちは男前な人たちがやってきて、
 きゃーきゃーと騒ぎ立てていた。

 作物をみんなで協力して荷車に運ぶと。
 荷物はぎゅうぎゅうになり、
 自分たちの食糧もそこからとることとなった。
 かくしてキャラバンの完成になった。
 キャラバンのメンバーは錬三、五郎、ダン、真鍋、香住というメンバーにてなりたった。


 ここに新しい冒険が開かれる。

 たくさんの人々がキャラバンの出発を見送り、
 僕も見送ったのだが、一緒にドローンがおいかけるので、
 いつでも見ることが可能となる。
 僕はダンさんに地図を渡してある。
 その地図は海事さんがつくったものだ。
 事細かく危険な植物や動物、はたまたモンスターの群生地が描かれており。
 ダンさんは感激のあまり雄たけびをあげるほどだった。

 みんなにぎわっている中、
 僕はキャラバンと一緒に冒険を楽しんだ。
 とはいってもハエ型ドローンでキャラバンを追いかける程度だ。

 真鍋さんと香住はあたりをうかがいながら歩いている。
 団さんは馬をうまいぐあいに操って、先導している。
 馬車の上には見張り台みたいなものがあり、
 そこから錬三さんと五郎さんが回りを監視している。

 錬三さんがあたりの様子をうかがいながら、地図を見ている。

『あそこが死の沼じゃな、海事殿の分析では、肉食蛙がいるとのことじゃ』
『ですが、カエルなんて神様つくったんですか?』
「それはわかりません、さすがにすべてを把握はできません、作ってないとしたら、進化分裂だと考えたほうがいいでしょう」
『そうですか、それにしてもまいりました。四方を囲まれたようです』

 五郎さんは普通の人よりとても成長していた。
 まるで歴戦の猛者とまではいかないも、
 なんとなく気配とかで分かってしまう。

 そこには緑色の人間みたいなやつらがいた。
 オークとは少し違っており、
 なんというか。

「ゴブリンね」
「栗ちゃん、あなた」
「いえ、つくっていませんよ、ゴブリンはたぶんオークから派生したのでしょうね、同じゲーム型の生物ですから」

『神様、あれは見たことがないぞ』
『あれはゴブリンと呼ばれるいきものだ』


 冷静沈着な真鍋さん。
 僕は思い出した。


「そういえば真鍋さんと香住さんはゲームキャラで」
「そのとおりよ、よき判断ね」

『神よ、やつらをほふってよいか、見たところ、数は50くらいだろう』
「いいですよ、こてんぱんにしてください」
『承知、香住いくぞ』
『はいですわ』


『五郎と錬三さんは弓での援護を頼む、ダンさんは馬を守ってくれ、守備を香住にとらせる。攻撃を最強に任せろ』

 
 真鍋さんは自分自身のことを最強と言う癖がある。
 だが本当に最強といっていいほどの強さだと、
 ゲーム実況のなんたらさんはいっている。
 とはいえ、インターネット情報にすぎない。

 真鍋さんは背中から一本の杖を引き抜いた。
 その杖でゴブリンを追い払うかのように、たたきつける。
 2体のゴブリンの首が曲っていた。
 それほどまでの威力。
 
 真鍋さんは木材の杖を首にかつぐと、
 蟹股のように歩き出し、
 近づいてくる敵をカニのはさみのようにえぐりだす。

 一方で香住さんは近づいてくる敵をダンスで翻弄する。
 ダンスのような攻撃と守りに、
 ゴブリンたちは色めきたつ。
 首を蹴られ、首がまがりながらときめいた笑顔を向けている。


 五郎と錬三さんは弓矢で片端から敵の増援を倒している。
 五郎さんの弓の制度は格段にあがり、
 錬三さんに関心させられる。


 錬三さんは【長弓】という専用武器で、はるか遠くにいる敵のゴブリンを射殺している。

 いつしか回りにゴブリンたちがいなくなると。
 僕はあたりをモニター画面で見渡すも、
 あるのはゴブリンの死体だけとなってしまった。


 真鍋さんは血がついた杖をハンカチで拭っていた。
 香住さんも足についた汚れを地面で拭いている。
 錬三さんと五郎さんは深呼吸をし、
 団さんは馬たちを励ましている。

 本当に仲がよく、
 ナイスな協力関係だと。
 この時の僕は思った。

 ちょうど戦いは数時間に及んでいたらしく。
 太陽が沈み始めていた。
 
 夕焼けの光景はとても神妙で、
 モニター越しでもその神秘性を鑑みることができる。

『錬三さん、ここいらで野営にしましょう、一応ゴブリンの死体は埋めておきます。こういうやつはアンデットゴブリンになることがまれにあるのです』


 それはゲームでの話だが、この世界は何が起こるか理解不能だ。


『よし、わしと五郎とダンで食事の準備をする。野営もする。お二人はゴブリンの死体の処理を頼む』
『任せてください』
『わたくしも死体はすきではありませんが』

 
 五郎さんが薪を集めてくる。
 森の中にはたくさんの枝が落ちている。
 一方で錬三さんは料理をつくっている。
 素材は野菜と果物。
 野菜と利度さんの牧場からとれた肉牛などを使った野菜のソテー焼きなど。
 錬三さん独特の料理が出来上がる。


 団さんは寝る場所の確保のために、テントを設立。
 テントは僕からの支給品だ。

 真鍋さんと香住さんは慎重にゴブリンの死体を見ている。

『神様、見ていますか、これはゴブリンであってゴブリンでありません』
「なぜそう思うのです?」
『最強が知っているゴブリンは肉食のため、腸はとても短いのです。ですがこいつら、とてつもなく長い、まるで草食のような、それにシカ人間のような名残もみられます』
「そうか、真鍋さんはシカ人間の解剖にたちあったので?」
『はい、正和教授の解剖に立ち会いました。これはシカ人間から進化したゴブリンです』
「そうですか、オークではなかったのですね」


 僕は頭を押さえながら考える。


「このことは皆さんには内緒でお願いします。真鍋さん香住さん」
『わかりました。ですがいつまでも隠せることではありませんよ』
『わたくしもそう思いますわ』


 五郎さんと錬三さんは肉の野菜ソテーを食べている。
 トレイは何度でも洗って使えるようになっているが、
 ここらへんには川がないのか、
 彼らは水を飲んでいない。
 その変わりの水分補給が果物のようだ。


 真鍋さんと香住さんは周りを警戒しながら、食事をとっていた。
 団さんは馬と一緒に片隅によって寝たのだが、
 結局テントを使ったのは、五郎さんと錬三さんだけで、


 真鍋さんと香住さんはキャラバンの馬車の見張り台で寝ることとなり、

 その夜はゴブリンたちの攻撃は来なかった。

 朝になって、みんなが準備をして、
 朝食をとって、それぞれが朝の身支度をする。
 そのあとみんなであたりをうかがって、
 真鍋さんはゴブリンの墓をみて、
 異変がないことをさとると、
 
 彼らはまた出発した。
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