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第3話 朽ち果てた鉄の剣

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 本田竜司はお腹が減った事にようやく気付いた。
 何か食べ物が無いかと周りを見回す。
 薬草が5本あるのだが、これ食べれるのだろうか。

【それは食べないでください、傷を治療するものですよ】

「だけどさ、俺ほぼワンパンで死ぬぞ、傷の治療所じゃないぞ」

【いつか入用になるのでね、お腹が空いたのなら、そこにいるワームでも食べなさい】


「ワームてでかああああ」

 
 そこにはこちらを獲物に定め、のしのしとゆっくりとやってくる。芋虫のワームがいた。
 口は大きく開き、牙がずらりと並び。
 ガシガシと噛み合わせていた。

「あのー俺と同じくらいの大きさなんですけど」

【焼いて食べるとおいしいですよ、あとクエストです。ワームを倒したら10ポイントですよ】

「やりますよ、あーやれば良いんでしょ」

 その時だ。地面に何かが落ちている事に気付いた。
 ゆっくりと拾うと、体にぴったしの朽ち果てた鉄剣であった。

「お、これいいじゃん」

【右腕+3】と【攻撃力+2】と【器用さ+2】で上手く持ち上げている。

「まさか、ここに来て、右腕を強化しておいて良かったぜ」

【不思議な物ですね、幸運が0なのになんで奇跡が起きてるのやら、これは奇跡ではなくて必然なら説明がつきますよ】

「まぁ、そんなもんだよな」

 そんな事を言い合っていると、ワームはゆっくりとこちらに攻めてきていた。

 竜司は朽ち果てた鉄剣を構えて、走り出すが、まだスロー領域からは抜け出せていない。
【素早さ+2】ではダメだと言う事らしい。
 それでも完璧なるスローから緩めのスローに変わっている。

 朽ち果てた鉄の剣を振り落とすと、ワームはびくんと飛び跳ねて後ろに下がる。
 鉄剣は空を斬る訳だが、体とのバランスが悪く、体事回転してしまう。

 そのまま、バランスを崩して地面に倒れてしまい、そこにワームがのしかかってくる。
 竜司は咄嗟に朽ち果てた鉄剣を上に構えると、ワームはそこに串刺しになった。
 顔中に紫の血を浴びた。
 べとべとになりながら、これが生命を殺す事なのだと竜司は悟。

 だが不思議とこの紫の血は甘くて美味だった。

 ワームは動かなくなり、スライムと同じように体事消滅し、そこには一塊の肉がぽつんと置いてあった。

「に、肉だあああああああ」

【おめでとうございます。スキルポイント10を得ましたよ】

 宝石の声など無視して、竜司は火おこしの準備を始めて、せっせと肉を焼いてたらふく満足していた。

「はふー」

 お腹が満腹になった所で、ステータスを確認する。
 竜司は芋虫を食べたという事を思い出しうえっとなっていた。

==============
ステータス レベル5
==============
HP:3
MP:2
攻撃力:2
防御力:2
素早さ:2
賢さ:2
器用さ:2
幸運:3
=================
右腕+3
朽ち果てた鉄剣+5
==============

 なぜか今更【右腕+3】が表示されている。
 
「なんかステータス表の表示が遅い気がするんだが」

【それはそうでしょう、MPがないとステータスは機能しませんからね】

「それを早くいえええええええ」

 今回上げたのはMP+2と幸運+3と朽ち果てた鉄検+5だった。レベルは5になっていた。

【賢明な判断ですね、武器自体を強化するのは本来のエンチャント師の仕事ですから、後、+10になると進化出来ますので、素材の組み合わせてランダムに進化します。弱くなる事はないのでご安心ください】

「それは安心しているさ、たらふく食べたからちゃんと寝るよ、見張りよろしくな、宝石」

【仕方がないですね、任せてください、私寝ませんから】

 そうして竜司は鬱蒼と茂った森の中、暗闇に包まれて深い眠りについた。
 火は少しだけ灯っており、風もさほど強くなく、消える事はなかった。
 モンスターもこの辺りにはおらず、どうやらあの巨大ワームの縄張りだったようだ。
 次の日の朝になると、竜司はスーツのまま寝たので、体の節々が痛かった。
 体をくねらせながらバキバキとほぐすと、立ち上がり、朽ち果てた鉄剣+5を掴んで、目的の無い冒険を始めるのであった。

「それにしてもここ森しかねーのか、全部森だぞ」

【はい、ここ森しかないですから】

「は?」

【こちらの領域はエルフ王国の領域でして、森しかありません、川を渡るとドワーフの領域で山しかありません、山を越えると人間の領域です】

「まぁいいんだけどさ、目的の無い旅だからさ」

【クエストが発生しました。トレントを2体狩ってください、そこの巨大な木がトレントです】

「おいおいおい、まじかよ、めちゃくそでけーぞ」

【あなたなら不可能かと思われますが、きっと何かやってくれるでしょう】

「なんで投げやりなんだよ、てか、俺なら不可能て、無理だろ35歳のおっさんに何させようとしてんだよ」

【さぁ、頑張ってください、今回は20ポイントですよ】

「はぁ、やりますか」

 竜司は巨大な木の2本の前に立つ。
 ちゃんと顔はあるのだが、寝たふりをしているようだ。
 きっとこちらはトレントに気付いていないと思っているようだ。
 取り合えず、竜司は朽ち果てた鉄剣+5を深々とトレントの根っこに突き刺した。
 まるでクッキーのようにサクッとやってしまったので。

 トレントの心臓の底から轟く悲鳴が上がった。
 
 巨大なトレントはこちらをターゲットにすると、もう1体のトレントも仲間の危機だとばかりにこちらに根っこを張り巡らせてくる。

 先程串刺した朽ち果てた鉄剣+5には緑色の液体というか樹液がついている。
 少しだけグロテスクなのはピカピカに輝いていたからだ。

 トレントの根っこが鞭のようにしなる。
 思わず竜司の顔面に根っこがヒットした。
 HPが2になった。
 ほっとしたのは1のダメージで済んだ事だ。
 恐らくトレントの攻撃力は並外れて低いのだろう。

 竜司は武器を構えると、何度も何度もスローモーションでトレントをめった刺しにした。
 体中に緑色の樹液が降りかかる。
 匂いが甘くて酸っぱい臭いで、竜司にとっては苦手な臭いだった。
【右腕+3】と【朽ち果てた鉄剣+5】と【攻撃力+2】が作用しているのかダメージは与える事には成功しているし、サクサクにトレントの木肌を斬りつけている。

 しばらくすると1体のトレントが動かなくなり、消滅していった。
 そこにはトレントの枝が落ちていた。
 それは宝石の声のアイテムボックスが回収した。
 突如消えるトレントの枝。

 もう一体のトレントも同じように動かなくなった。
 ちなみにもう一体は攻撃していないので、なぜか原因が分からない。

【トレントは核となる物があり、その核を倒すと、他のトレントも消滅するという仕組みです。今回は運が良かったんですね、HPが0になってますよ】

「だからなんで、俺はHP0で死なないんだよ」

【恐らくそれで攻撃されたら死ぬのでしょう」】

「え……」

 竜司はそりゃそうだよなと気づく。

【おめでとうございます。クエストをクリアしたので20スキルポイントを得ました】

「ありがとう!」

==============
ステータス レベル8
==============
HP:10
MP:2
攻撃力:5
防御力:5
素早さ:4
賢さ:2
器用さ:2
幸運:3
=================
右腕+3
朽ち果てた鉄剣+10
==============
スライムの核3個
トレントの枝2個
薬草5本
==============

 MPが遅いので、今頃、アイテムボックスの中身がステータス表に反映される。
 今回は攻撃力を3上げて、防御力を3上げた。素早さを2上げてHPを7上げた。朽ち果てた鉄検を5上げた。
 ちょっきし20スキルポイントを使用する。

 次にやりたい事は武器の進化だった。





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