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第10話 平和じゃない国へようこそ

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 竜司とルルーはエルフの長老達から逃げる事に成功した。ほぼ撃退したが。
 
「ちょっと待てくれルルー」

「あれか、ステータス付与か」

「そそ」

 竜司は橋を渡りきると、眼の前に広がる草原を見ながらそう言った。
 森から解放される気持ちよさは測りしれないものだった。

 竜司はエンチャント師の力を使って、いつものステータス付与を始めた。今回のスキルポイントは300ポイントだった。

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ステータス レベル40→42
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ジョブ:エンチャント師
サブジョブ:ヒモ→男
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HP:50→146→150
MP:70→100
攻撃力:70→100
防御力:70→100
素早さ:70→100
賢さ:70→100
器用さ:70→100
幸運:70→100
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《肉体》
屈強右腕+10→勇者右腕+0
巨大左腕+10→屈強左腕+0
巨大右足+10→屈強右足+0
巨大左足+10→屈強左足+0
巨大胴体+10→屈強胴体+0
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《魔法》
ファイアーボール
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《装備》
銀剣+10→金剣+0
鋼斧+10→銀斧+10→金斧+0
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《アイテムボックス一覧》
薬草5本
魔法書【ファイアーボール】
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《スキル一覧》
【進化】+10を次に進化
【他者】他の生き物にスキルポイント付与
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残スキルポイント+6
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 まずレベルが42上がった。今までのように一気に上がりづらくなっているようだ。
 それはゲームあるあるだが、ここはゲームの世界なのか?
 サブジョブはヒモから男になった。ちょっと嬉しいけど複雑。
 
 ステータスはHPを+4上げた。MP、攻撃力、防御力、素早さ、賢さ、器用さ、幸運を+30上げた。
 屈強右腕を+10上げて勇者右腕+0に進化し、巨大左腕、巨大右足、巨大左足、巨大胴体は+10して、屈強シリーズになった。そのおかげで、巨人化と思える体の大きさは引き締まり小さくなった。

 銀剣を+10にして金剣にして、鋼斧を+10にして銀斧にして、銀斧を+10にして金斧に進化した。
 はたから見ると、金色の剣と金色の斧を持つ、金持ち戦士にしか見えない。
 スーツを着用しているおかげで、怪しさが際立っている。
 そう竜司は思っていた。

 最後の残スキルポイント+6出来たので、ルルーに付与する事にした。

「ルルー聞いてくれ」

「なんだ?」

「ルルーも強くなれるかもしれないんだ」

「ほう」

「何を強化して欲しい?」

「それなら、MPだけを上げて欲しい、それさえあれば魔法が使い放題だ」

「了解した」

【他者のステータスに付与する場合、あなたと同じようにはいきません、3ポイントで1段階と呼ばれており、強化するだけのステータスしか見れません、MPならそれしか見る事が出来ません】

「なるほどな、と言う事は、MPを2段階強化でいいな」

「助かる」

====ルルー====
MP=2段階強化
===========

「本当に見えないんだな」

「そもそも私のステータスがそう簡単に見られたら、竜司をぶち殺すわよ」

「いや、あ、うん、すみませんでした」

「さて、行くとしよう、あそこの大きな城はきっと人間の王国にちがいない」

「人間の王国ね、人間はエルフをどう見てるの?」

「それはもう分からないな」

「ルルー、君は可愛いから危険だ。フードを着用するように!」

「そ、そうか、照れるな」

 竜司の脳裏には男達の危険な眼差しが想定されていた。

 2人は歩き続ける。
 草原を歩き続ける。
 モンスターが一切出てこない。
 歩き続ける。
 モンスターが一切出てこない。

「どういう事やねん、宝石!」

【しょうがないでしょう、あなたの強すぎるオーラがモンスターを逃がしています】

「そうなのか?」

【これではクエストが発生しません、どうします?】

「どうしようもねーよ」

【さて、目的地の国が見えてきましたよ】

「へいへい」

 竜司とルルーがたどり着いた国。 
 その城門にはなぜか衛兵すらいなかった。
 2人は普通にスルーして入る事が出来た。
 一通りの少ない通路。
 馬車1つ通っていない。
 
「さびれすぎだろ」

「本当にただ事ではないな」

 とりあえず2人は酒場に入る事にするのだが。

「ルルーは絶対離れないように、危険な臭いがする」

「それは大丈夫だ。離れるつもりはないし、いざとなったら竜司を盾にするから、安心しろ」

「俺が安心できねーわ」

 2人は酒場の扉をくぐった。
 そこには数十名のごろつきがいた。
 2人は回れ右をしようとしたのだが。

「おいおい、兄ちゃんと姉ちゃん、一杯やってけよ」

 見た目が殺人鬼かと思えるおっさんがそう言った。
 非常に怖い、眼帯をつけており、お酒の入った入れ物を口に運んでいる。

「やっぱ、ミルクはうめーな」

 殺人鬼と思われる。もう断定。彼はミルクを飲んでいた。

「おい、兄ちゃん、ミルク飲めや、なぁ皆ミルクうめーよなあああ」

【あああああああああ】

 もはや殺人鬼の合唱が鳴り響く。
 ダメだここにいたら俺は殺される。ルルーは笑ってるし、どういう事だ。

 とりあえず2人はミルクを飲むことに。

「2人は旅人ってところかいね、ここは平和な国だったんだが、今では平和じゃない国なんだぜ」

 そりゃー皆さん殺人鬼でしょ?

「ここは俺達が守ってる。国の奴等が横暴をしてな、奴隷を集めて戦争したりしてる。難癖つけては奴隷にしてる。俺達は結構強いから奴隷にされないぜ」
 
 そりゃー殺人鬼ですからね、そりゃー強いでしょ。

「俺達は基本農作業をしている農夫だ。国の奴らも農夫には手を出せんのさ」

「すみません、殺人鬼だと思ってました」

「がっはっはっは、まぁ見た目がやばいからな、さてと、早く国から出てくんだぜ」

「なんでしたら、この国滅びさせましょうか?」

 ルルーがこちらを驚きの瞳で見ていた。

「そんなウソはついちゃいかんぜ、兄ちゃん」

「いやーメテオインパクトを右手を支えるくらいですから」

「そりゃありえないだろ、兄ちゃんダメだよ嘘ついちゃ」

「えへへ、そうですかねー」

 その時だ。扉ががたんと開いた。
 そこには兵士らしき人々が10名いて、真ん中にリーダらしき人がいた。

「おい、この国の来訪者はお前らか、今すぐ奴隷だ。早く来い」

「バカなんですかあなた達は」

 竜司が思わず突っ込むと。

「不敬罪だ。今すぐこっちだそこの女もだ」

 リーダーの兵士がルルーの右手を掴もうとすると。

「ちょっとそれはいけませんて」

 超スピードで竜司はそこに立っていた。

「女性の手をそんな乱暴にの前に、俺はまだルルーと手をつないでないんぞおおお」

 兵士を押しただけだったが。
 兵士は後ろに吹き飛んだ。
 酒場をぶっ壊して。
 そのまま隣の家に衝突して、そのまま家から飛び出て、城壁にぶち当たり、城壁が崩れた。

【……】

 その場が凍り付いた。

「こ、こいつを捕まえろおおお」

「なんかデジャブなんですけど」

 竜司がとほほと呟きながら。

「勇者右腕つかってみたいんだよなーちょっと触れてみるか」

「このやろおおおお」

 2人の兵士がこちらに走ってくると。
 竜司は勇者右腕でボディータッチする。
 なんかいやらしく胸の鎧にタッチするのだが。
 次の瞬間、鎧が吹き飛んだ。2人とも。

「あばあああ」
「がああああ」

「信じられない」

 元殺人鬼じゃないけど、そう見えたおっさん達がパクパクと笑っていた。
 ルルーは相変わらず爆笑してる。

「ぷぷ、ひひひひ、あーっはははははは」

「ルルー笑いすぎ、それじゃ魔女だぞ」

「こ、こいつ化け物だあああああ」

「またデジャブじゃんかよおお」

 竜司はショックを受けながら。

「ちょっと待ってよ、今からこの国は破壊するからしくよろ」

 彼等にはこう聞こえた。今からこの国を破壊するから死苦余露。

「た、たすけてくれえええ、魔人だ。この国に魔人と魔女がきたぞおおおお」

「竜司よどうしてくれる私は魔女ではないぞ」

「いえ、すみません、つい言ってしまってって、俺も魔人じゃねーよ」

「兄ちゃん達は何者なんだ」

 元殺人鬼じゃないけどおっさん達がきょっとんとしながら訪ねる。

「えと、ただの暇人の放浪者です」
「こっちは補助人だ」

「俺の名前はガツと言う物です。どうかお願いがあります」

 殺人鬼に見えたガツさんは土下座すると何かお願いをしてきた。
 
 それが平和じゃない国とのファーストコンタクトであった。



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