上 下
31 / 37

31話 魔人島探検②

しおりを挟む
 その村はとても小さい村だった。
 人間が4人くらい住む事が出来るくらいの広さでもあった。

 井戸が真ん中にあり、
 2つの小さな小屋があり、
 1つの大きな家があった。
 その大きな家は3階建てのようだった。

 とても大きいが屋敷ほどではなかった。
 小さな畑の区画もあって、
 最近収穫した後があった。
 井戸水はとても綺麗なもので、
 不思議な感じがした。

 2つの小さな小屋の中には何もなく、
 少し前まで色々と備蓄されていたのだろうと思わせる野菜の屑があった。

 ダークコングのビックフットとスモールゴリは、
 周りを見渡している。

「女の臭いがします」
「これは魔人の臭いでうす」

 ビックフットとスモールゴリが冷静な分析をしながら、
 僕は相手が魔人である事を知ったので、
 倒す事も考える必要があるだろうと思い、
 腰に差しているエンジェルスタッフの魔法剣を握ろうとしたまさにその時。

「そこまでだ」

 その声は鋭い程の女性の声だった。
 その女性は両耳が竜のようになっており、
 頭からは竜の角のようなものが曲がりくねって生えている。
 衣服は軽装備を重視したもので、
 そいつは屋敷の屋上からこちらに狙い定めている。
 長弓と呼ばれる武器だ。

 遠いい距離の獲物を狙う為の長弓を、今僕に定めている。
 戦ってもいい気がしたが、
 ここまで知的的なのに攻撃を仕掛けたら本当のバカだと思った。

「こちらは何もしない、降りてきたらどうだ」
「ほう、こちらの居場所を掴んでいたが、それなら降りるしかなかろう、その2体のダークコングがこちらに来られても困るしな」

 しばらくすると屋敷の屋上から壁伝いに降りてくる1人の美女、

 軽装備だと思っていたが、スカートがすごく短くて、
 中身がぎりぎりで見えそうで見えなくて、
 胸なんて巨乳と言って良い程の大きさでもあった。

 緑色と黒色の民族衣装みたいな軽装備を身に着けている彼女は長弓をしまうと、ククリナイフのようなものを取り出す。

「それでお前は人間なのか」
「そうだよ、僕は人間で無人島を育成している」

「なるほど、突如現れた無人島の1つだな」

「僕の視線ではそっちが突然現れたように見えたが?」
「こっちではそっちが表れたように見えた」

「なるほど、この村には君だけなのか?」
「そうだ。この村は数10年前に滅びたんだ」
「なるほど」

「うちもそろそろ滅びる時が来たのかもしれない」
「なぁ、君が良ければ僕の無人島で住んでみないか?」
「ほう、そこでうちを手籠めにするつもりだろ」
「そのつもりはない、その島にはモンスターと錬金術師の女性がいるくらいだ」
「モンスターと共存するのか?」

「そうだ」

「そうだぜ」
「そのとおり」

「これは驚いた。うちにもモンスターの言葉が理解出来るぞ」
「それは僕の【拡散】というスキルのおかげで、僕がモンスター言語を理解するからそれが拡散されているんだよ」

「ほう、そういう事もあるのか、まだまだ世界は広いなぁ」

「それにしてもべっぴんじゃのう」

「なにすらっと爺ちゃん出てくんだよ」

「な、それはなんだ。映像なのか?」

「うむその反応いいね、わしとしては最高の部類、その巨乳を包みこみたいのう」
「ばあちゃんに殺さるぞ」
「うひひ、妻はここにはいないのさ」
「いたらどうするんだよ」

「逃げるさ」

 突然先程から静かだった祖父が出てくる事で、 
 その場が和んだ。今日は緑色のホログラムであった。
 
「どうやら1人で島を守り続けるのは終わりのようだ。君の島に連れて行ってくれ、そこで1から始めようと思う、まぁここにいたらずっと1人なんだがな」

「それはそれで嬉しいよ」

「うちは【狩人の達人】と呼ばれ、レイという名前がある。分かるだろうが竜の角と竜の耳がうちを竜魔人である証となっている。狩の事なら任せてくれ」

 レイは右手を差し出した。
 僕も右手を差し出すと、
 僕とレイの右手は繋がり、
 2人の絆が深まったような気がした。

「よき事じゃ、ご主人様はとても暖かい」
「そうだなビックフット」
「スモールゴリもな」

 後ろでは2体のゴリラが感動してくれていた。

「それで僕はこの島にいる全てのモンスターの魔石が欲しいんだ。後出来ればテイムもしたい」
「それなら、この島には全部で5種類いるぞ」
「教えてくれないか」
「もちろんだ。今日で最後だが我が家に案内しよう」

 僕とレイは彼女の家に入る事になった。
 2体のダークコングは外で見張りをしてくれた。
 レイが2個の果物を差し出すととても喜んだ。

 レイの屋敷は、まさに異世界の貴族が使うような建物だった。
 どうやらこの村が栄えていた時の偉い立場の人だったみたいで、
 レイは何者なのかととても興味が湧いてきていた。

「まずはそこのソファーに座って、今、紅茶を出すわ」
「ありがとう、紅茶は爺ちゃんがよく入れてくれた」
「そうじゃのう、わしの紅茶は最高だろう?」
「そうだね、爺ちゃんの紅茶は最高だ。ジャムを入れたりして美味しかった」
「奇遇だな、うちもジャムを入れる派だが、最近ではジャムを作ってない、数年は食べていないなぁ」

 なるほどと僕は心の中で思う、
 彼女の為に甘いものをこの世界に持ってくる事はいいかもしれない、
 少しでも仲良くなりたいしなと思っていると。

 紅茶が出された。

「この世界で何が起きているかうちなりに調べてみた。聞いてみるか?」

「ぜひ聞きたいです」

 僕は大きく頷いていた。
しおりを挟む

処理中です...