世界緑化大戦

百舌鳥

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邂逅

一話

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※プロローグ

3xxx年少子化、世界各地での紛争や

大戦、資源不足、疫病の蔓延など

挙げ始めればキリがないが元々微妙な

バランスで成り立っていた人の世の覇権

は終わりを告げ、今となっては野生絶滅

に指定され飼育、管理下でのみ確認され

ている個体を残すのみとなっていた。

人間が野生絶滅になるもっと前。

それと取って代わる様に新たな世界の

支配者が現れた。

それはイカでも昆虫でもなく、

ましてやエイリアンでもなく【植物】
であった。

厳密に言うならば葉緑体を持つなど

植物に見られる特徴、特性を

併せ持った人型の【植物】であり、

中でも樹木類が顕著である。

元々植物は非常に優秀な生存戦略を

有しており太古の昔から今に至るまで

世界各地に姿形を変えながら

存在しており一説によれば植物には知性があるとさえ言われてきた。 

人間という強力な世界の支配者が

その数を増やし過ぎた事により

自滅していく中、植物達は

その空いた生態系の中でそれぞれ特殊な適応放散を行ったと言われている。

その真相は判明していないが

彼等はどういう訳か人間に酷似した

脳を持ち、動かないという一つの

生存戦略を捨て四肢を持ち、

言語さえ操る様になった。

種子を風に乗せ散布する等の繁殖方法は

ごく少数の地域で確認されるのみとなり

基本的には人型らしく哺乳類に見られる繁殖方法となった。

平たく言えば【交尾】をし、

人と同じく出産方法は胎生である。

先述の通り同種同士の交配による場合

これまで通りの繁殖方法も可能ではあるが、交尾をするというのが現在最も

ポピュラーである。

また、人型であるという事から人との
交配も理論上可能であるとされているが

倫理的観点から禁忌とされており、

その結果どの様な赤子が産まれるかは
わかっていない。

彼等は感情を持ち、多少の欠如はあるが

喜怒哀楽を表現し、やがて集団での社会生活を営み始めた。

まるで人間の歴史をなぞり直すかの様に

小さな集団から始まったそれらは各地域においてやがて国となり、

人間の残してきたロストテクノロジーを

要所で流用し人間に極めて近い独自の
文化、文明を急速に発展させてきた。


G1「はぁ、行きたくないなぁ」

溜め息もつきたくなる。

春の陽気は心地の良い風を運んでくれるがこれから向かう場所は

どう足掻いた所で自分が種族として圧倒的マイノリティである所だからだ。

それに手には手錠がかかっていて全く楽しい気持ちにはならない。

G1「どうしても行かなきゃならないんですか?、これまで通り研究所で友達と管理されている方がいいんですけど・・」

樫「行かなきゃダメだよ。それにこれは 僕が決めたことではなく、上の決定だからね。僕は君を送ってちゃんと生活が出来るか監視しなくちゃならない。」

G1「えぇ、カッさんずっと俺に同行する気? 全然自由ないじゃん!」

樫「そんな事ないよ。逃げさえしなければ基本自由行動を許可されてるし、ある程度自由な状態じゃないと行動や心的変化を研究出来ないじゃないか。」

G1「いやどっちにしてもいい気はしないよね、学生なんてなったことないし、
まぁ自由過ぎても何したらいいのか
わからないけどさ。」

樫「・・・僕としては逃げなければそれでいいよ。
君が逃げると最悪僕は伐採だし、
君は長い独房生活が待っているからね。お互い協力しようじゃないか。」

G1「・・・」

少しだけ重くなってしまった空気を
肌に感じながら逃げる様に目線を車の窓の外に向けると

淡いピンク色の花弁を揺らしながら走っている女の子が見えた。

彼女はそれを見ていた俺に気づくと恥ずかしそうに白い樹皮を赤めながらゆっくり走るのをやめた。

サイドミラー越しに小さくなっていく彼女の花は春の陽気にピッタリで美しい千重咲であった。




土の廊下はひんやりとした冷たさで
少しだけ湿っているので裸足の人間には気持ち悪く感じてしまう。

廊下とは裏腹に建物全体は温室を思わせるが所々は白を基調とした素材で出来ていて無機質的である。

カッさんは2メートル程先を歩いていて職員室まで先導してくれた。

樫「もうすぐ職員室に着きますよ。緊張はしてないですか?
着いたら先生の指示に従って下さい。
私は新しく用意された住居の方に直帰していますので何かあれば連絡して下さい。」

そう言って小型の連絡用無線機
草フォンを手渡してカッさんは早々に
帰路に着いた。

カッさんが角を曲がり見えなくなるまで見送ったが本当は緊張と逃げ出したくなる気持ちで職員室の扉を開けたくはなかった。


G1「ぉっおはようございます。
今日からお世話になります。
人間の管理番号G1です。
担任の先生の指示に従う様言われて来ました。」


声が裏返って死ぬ程恥ずかしい。

が、それを冷ます様にこちらを物珍しい目で見ている雰囲気が嫌でも伝わる。

人間とはまた違った構造で造られた
不思議な眼がこちらをまじまじと見ていることが伝わる。

G1「あ、あのぉ・・・」

先生「あっG1君!」

職員室の端の方からパタパタと
小柄で元気そうな女性が走ってきたが床の小石につまずきそのままヘッドスライディングで僕の前を通過して行く。

それを見た周りの先生達の笑い声で空気が軟化するのがわかった。

先生「ごっごめんねぇ、私あわてちゃって。改めて初めまして!G1君!今日から貴方の担任になります【桜】と言います!わからない事があればなんでも聞いてね!」


床の土まみれな身体を払いながら屈託ない笑顔でこちらを見上げる先生は元気な声も相まって未だ少女らしさを残した雰囲気だった。

G1「先生おいくつなんですか?」

先生「!!?」

先生「なんでも聞いてとは言ったけど
年輪は教えません!
初対面の女性に失礼よ!」

そう言ってイタズラそうにクスクス笑う先生の顔はやっぱり幼く見えた。

先生に連れられてしばらく廊下を歩くと続々と登校してくる生徒達からやはり奇異の視線で見られた。

絶滅危惧種だから仕方ないことだし、覚悟はしていたがやはり気持ちのいいものではない。

視線を落とし、周りを見ない様にしながら更にしばらく進むと先生の足が止まり声がした。

先生「G1君ここが君の教室よ!クラスのみんなも大体集まってるみたいだし・・このまま入って自己紹介しましょうか!」

G1「えっ・・す、少し緊張してて、何を喋ればいいかわからないし」

先生「大丈夫!大丈夫!みんないい子達だし、名前とか、趣味とか軽く喋ればいいだけよ!」

いや、その紹介する自分の話があまりに無いから困っているんですけど・・

とは言い出せずにいると先生は既に教室のドアを開けて先に入って行ってしまった。

先生「はーいみんなおはよう!今日から新学期ね!
実は今日からこのクラスに転入生が入ります~」

「えぇ!先生本当?」 

「どんな木かな~」 

「樹形良いですか~?」 

先生「はいはい静かに~、
あんまりうるさいと入って来づらいでしょー、G1君入ってらっしゃい!」


いや種族違うし、木だと思われてるし、既に入って行きづらい雰囲気ではあるのだがぐずぐずしていてもハードルが上がるだけなので恐る恐る教室に入っていった。


緊張しているせいかぼやぁっとした全体の雰囲気しか視覚情報として入ってこない。

一つわかる事があるとすれば
人で言うところの髪が基本緑色な
せいか目には良さそうな景観である。

G1「はじめまして。人間管理研究施設から来ましたG1と言います。今日からよろしくお願いします。」

「スッゲェ!人間じゃ~ん!」 

「私初めて見た!」 

「G1って名前ですか~?」

先生「それじゃあ席は・・」

シマトネ「はい!はい!はい~!ここ空いてま~す!」

先生「じゃあG1君あそこにいる
シマトネ君の隣の席を使ってね!」

G1「はい、わかりました。」


教室奥の窓際・・せっかく静かそうな席なのに隣の奴の鬱陶しそうな雰囲気が嫌でもわかる・・

シマトネ「俺はシマトネよろしくな!名前がG1て本名?」

およそはじめましてとは言い難い距離の詰め方・・
こいつパーソナルスペースを知らんのか?
だけど正直腫れ物扱いされるよりはだいぶマシか・・・

G1「よろしく。
本名だけど言いづらいよな・・
俺が来た施設だとみんな似たような
識別番号で呼ばれてたからさ、あんまり気にならなかったけど・・」

シマトネ「じゃあ呼びずらいし、
あだ名で呼ぶよ!
・・そうだなぁ・・次郎!
次郎でいいじゃん!
みんな~こいつ今日から次郎なぁ~!」

次郎「えっっちょっまっ」

「よろしくな~次郎!」


会って早々光の速さで適当なあだ名をつけられてしまった・・これ舐められてないか?

次郎「お前あだ名絶対適当だろ?」

シマトネ「そんなことねぇよ~Gだろ?G、じー、次郎じゃん!」

まだあまりこいつのこと知らないが・・うぜぇ

先生「はい!雑談はそこまでねぇ~、
続きは休み時間にでもやりなさいー。
このまま授業を始めるからみんな教科書出して~」

「は~い」


?「ちょ~っと待ったぁぁぁぁあ!!」


先生「はぁ・・またなの~」

バァァァァアンッッッッ‼︎‼︎‼︎

?「先生!ギリギリ遅刻じゃないですよね???」



教室の扉があまりの勢いで半壊するんじゃないかと思った次の瞬間

ダッシュで飛び込んできた少女は
朝見かけた綺麗な花を咲かせ
恥じらいのある表情を見せていたあの子だった。


・・なんか印象が違うような
・・えっこういう感じ?

先生「椿・・貴方何回遅刻すれば気が済むの?」

椿「えぇ遅刻ですか~?」

先生「はぁ~しょうがないわねぇ、もう少し早く起きなさい!あと、転入生の子が今日から来てるから放課後学校案内してあげなさい。遅れてきたんだし。」

椿「えっっ!転入生来てるの?
どこどこ!?」

シマトネ「俺の隣だよ!」

椿「あっ!朝の!・・
人間なんて珍しいとは思ってたけどまさか転入生だったなんて、恥ずかしい所見られちゃった」

先生「あら?もう面識があったの?どっちにしろちょうどいいからよろしくね」

椿「は~い!」

カツ カツ カツ カツ

椿「私椿!よろしくね!」

次郎「あ、あぁよろしくな・・」

見た目の印象と違いハキハキした物言いや、物怖じしない態度・・

他の連中もそうだが、樹木種ってやつはみんなこうなのか? 

いや、単純に性格か・・
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