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第1章
第7話~意識~
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ここは亜麻音グループビルの大浴場ー。
広い大浴場に、龍仁朗と歌羽は2人で浴槽に浸かっていた。
歌羽は誠のことを嬉しそうに話していた。
「でねでねっ、私が泣いていた時に、微笑みながら慰めてくれたの!」
「そうですか。誠様にもそのような優しさがあったのですね。
(あのカス、調子こきやがって...。)」
「私もビックリしちゃった!あ、それとね、私たちの名前を覚えてくれていたの!」
「え?お嬢様の、名前を...?」
龍仁朗は目を丸くした。
「そうなの!信じられないよね!私を見て、しっかり歌羽って言ったし、龍仁朗のことも覚えていたのよ!!」
龍仁朗はあの冷たい誠が歌羽のことを興味を持ってくれたと思い、和やかな気持ちになった。
「そうですか...お名前を言ってもらえたのですね。」
「うん!私、完全に嫌われていると思ってたから....。
これで少し、希望を持てたよ。
そして、もう一つわかったことがあるの。」
歌羽が急に声を小さくしたので龍仁朗は心配になった。
「また、何かお辛いことが...?」
「いいえ、違うの。
誠様はね...。
とっても、優しい方だってこと。」
歌羽はそう言うと、龍仁朗から目を逸らし、鼻の先まで湯船に浸からせて泡を立て始めた。
歌羽の言動に龍仁朗は眉をひそめる。
「お嬢様...もしかして
誠様にご好意を持たれましたか?」
ーバシャンッッッー
歌羽は慌てて浴槽から立ち上がった。
歌羽の声は上ずっていた。
「ちょっ、ちょっと!!誤解を生むようなことを言わないでよ!!」
「いやいや、誤解ではありませんよ!むしろ好ましいことですよご好意をお持ちになる事は!」
龍仁朗はキレの良いツッコミを思わず入れてしまった。
歌羽は龍仁朗に手を思い切り動かしながら反論することを止めない。
「そそそ、それはそうだけど!!私は少し異性の相手と話しただけで恋に落ちるようなヤワな女じゃないもん!」
「でもお嬢様、誠様の話をしている時はとても楽しそうにしていましたよ。」
龍仁朗の言葉に歌羽は口を閉じたまま顔がますます赤くなった。
「ウッ!
そ、その時は....その...。」
大浴場に静寂が訪れる。
龍仁朗は歌羽を少し見据えた後、クスリと大人びた笑みを見せた。
「...お嬢様、誠様の偏見が取れましたね。」
歌羽は顔を赤らめたままゆっくりと弱々しく湯船に浸かった。
「..........。うん。
好きに、なっちゃったかも。
まだ、分からないけどね...。
可笑しいかなぁ。」
目を伏せていた歌羽に龍仁朗は上品に首を横に振る。
「いえお嬢様、可笑しくありません。恐らく誠様は少しお話ししただけでも直ぐに感じる優しさが溢れているのでしょう。
(私は感じなかったが。)
歌羽様は誠様が婚約者でもありますから、知らぬうちに誠様の様子を敏感に察知しようとしていたのだと思います。」
「う~ん、そうなのかなぁ...。
龍仁朗は頭がいいんだね、凄い考察力だよ。」
「ありがとうごさいます。」
少し時間が経つと、歌羽は龍仁朗と目を合わせて照れくさそうにはにかんだ。
「えへへ、なんか恥ずかしいなぁ。こんな話するのって。」
「そうですね、照れくさくなるものだと思います。私はお嬢様が誠様に心を開いてくれたことが嬉しい限りです。」
歌羽はフフフと笑いながら再び立ち上がり、出口まで歩いて行った。
落ち着いた手つきで歌羽は戸を閉めて出た後、龍仁朗は前髪を掻き上げて長いため息をついた。
「はぁー....上手くいっているようだな。良かった。
(それにしても、誠様がお嬢様のお名前を覚えていらしたとは...。今まで不思議なくらいに興味を示さなかったのに。
自分で覚えようとしたのか?)
龍仁朗が色々と考えていた矢先に、浴場で龍仁朗の携帯が鳴り出した。
龍仁朗はベルの音に少し身震いしながらも、素早く通話開始のボタンを押した。
「は、はいっ!亜麻音グループの龍仁朗でございます。」
『おい、明日は仕事を入れるなよ。2時に代々木公園前に集合だ。遅れるなよ。』
「......................。
ハァ?」
冷たい声の主は誠だった。
(相変わらず神出鬼没だなオイ!!)
龍仁朗は慌てて声を出す。
「ちょっ、お待ちください!!!そ、その、代々木公園前に集合、とは?」
誠は淡々と話し始める。
『ッ....。それは...。』
珍しく声を詰まらせる誠に龍仁朗は違和感を覚えた。
「誠様?」
『....。
お前の気持ちを知るためだ。』
龍仁朗は眉間にしわを寄せた。
「私の気持ち?どういう....。」
『とにかく明日は2時に代々木公園前。必ず来いよ。それと、亜麻音歌羽には言うなよ。』
ープツッー
「え!?誠様!?もしもし!?
....一体どうしたのだろうか。」
一方寺崎財閥では、誠が自分の部屋から夜景を眺めていた。
風呂上がりらしく、少し髪が落ち着いている。
(.....明日はアイツの気持ちを知りたい。
そうしないと、後悔しそうだな。)
広い大浴場に、龍仁朗と歌羽は2人で浴槽に浸かっていた。
歌羽は誠のことを嬉しそうに話していた。
「でねでねっ、私が泣いていた時に、微笑みながら慰めてくれたの!」
「そうですか。誠様にもそのような優しさがあったのですね。
(あのカス、調子こきやがって...。)」
「私もビックリしちゃった!あ、それとね、私たちの名前を覚えてくれていたの!」
「え?お嬢様の、名前を...?」
龍仁朗は目を丸くした。
「そうなの!信じられないよね!私を見て、しっかり歌羽って言ったし、龍仁朗のことも覚えていたのよ!!」
龍仁朗はあの冷たい誠が歌羽のことを興味を持ってくれたと思い、和やかな気持ちになった。
「そうですか...お名前を言ってもらえたのですね。」
「うん!私、完全に嫌われていると思ってたから....。
これで少し、希望を持てたよ。
そして、もう一つわかったことがあるの。」
歌羽が急に声を小さくしたので龍仁朗は心配になった。
「また、何かお辛いことが...?」
「いいえ、違うの。
誠様はね...。
とっても、優しい方だってこと。」
歌羽はそう言うと、龍仁朗から目を逸らし、鼻の先まで湯船に浸からせて泡を立て始めた。
歌羽の言動に龍仁朗は眉をひそめる。
「お嬢様...もしかして
誠様にご好意を持たれましたか?」
ーバシャンッッッー
歌羽は慌てて浴槽から立ち上がった。
歌羽の声は上ずっていた。
「ちょっ、ちょっと!!誤解を生むようなことを言わないでよ!!」
「いやいや、誤解ではありませんよ!むしろ好ましいことですよご好意をお持ちになる事は!」
龍仁朗はキレの良いツッコミを思わず入れてしまった。
歌羽は龍仁朗に手を思い切り動かしながら反論することを止めない。
「そそそ、それはそうだけど!!私は少し異性の相手と話しただけで恋に落ちるようなヤワな女じゃないもん!」
「でもお嬢様、誠様の話をしている時はとても楽しそうにしていましたよ。」
龍仁朗の言葉に歌羽は口を閉じたまま顔がますます赤くなった。
「ウッ!
そ、その時は....その...。」
大浴場に静寂が訪れる。
龍仁朗は歌羽を少し見据えた後、クスリと大人びた笑みを見せた。
「...お嬢様、誠様の偏見が取れましたね。」
歌羽は顔を赤らめたままゆっくりと弱々しく湯船に浸かった。
「..........。うん。
好きに、なっちゃったかも。
まだ、分からないけどね...。
可笑しいかなぁ。」
目を伏せていた歌羽に龍仁朗は上品に首を横に振る。
「いえお嬢様、可笑しくありません。恐らく誠様は少しお話ししただけでも直ぐに感じる優しさが溢れているのでしょう。
(私は感じなかったが。)
歌羽様は誠様が婚約者でもありますから、知らぬうちに誠様の様子を敏感に察知しようとしていたのだと思います。」
「う~ん、そうなのかなぁ...。
龍仁朗は頭がいいんだね、凄い考察力だよ。」
「ありがとうごさいます。」
少し時間が経つと、歌羽は龍仁朗と目を合わせて照れくさそうにはにかんだ。
「えへへ、なんか恥ずかしいなぁ。こんな話するのって。」
「そうですね、照れくさくなるものだと思います。私はお嬢様が誠様に心を開いてくれたことが嬉しい限りです。」
歌羽はフフフと笑いながら再び立ち上がり、出口まで歩いて行った。
落ち着いた手つきで歌羽は戸を閉めて出た後、龍仁朗は前髪を掻き上げて長いため息をついた。
「はぁー....上手くいっているようだな。良かった。
(それにしても、誠様がお嬢様のお名前を覚えていらしたとは...。今まで不思議なくらいに興味を示さなかったのに。
自分で覚えようとしたのか?)
龍仁朗が色々と考えていた矢先に、浴場で龍仁朗の携帯が鳴り出した。
龍仁朗はベルの音に少し身震いしながらも、素早く通話開始のボタンを押した。
「は、はいっ!亜麻音グループの龍仁朗でございます。」
『おい、明日は仕事を入れるなよ。2時に代々木公園前に集合だ。遅れるなよ。』
「......................。
ハァ?」
冷たい声の主は誠だった。
(相変わらず神出鬼没だなオイ!!)
龍仁朗は慌てて声を出す。
「ちょっ、お待ちください!!!そ、その、代々木公園前に集合、とは?」
誠は淡々と話し始める。
『ッ....。それは...。』
珍しく声を詰まらせる誠に龍仁朗は違和感を覚えた。
「誠様?」
『....。
お前の気持ちを知るためだ。』
龍仁朗は眉間にしわを寄せた。
「私の気持ち?どういう....。」
『とにかく明日は2時に代々木公園前。必ず来いよ。それと、亜麻音歌羽には言うなよ。』
ープツッー
「え!?誠様!?もしもし!?
....一体どうしたのだろうか。」
一方寺崎財閥では、誠が自分の部屋から夜景を眺めていた。
風呂上がりらしく、少し髪が落ち着いている。
(.....明日はアイツの気持ちを知りたい。
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