僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第1章

第6話~気付き~

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「お前、こんな所で何しているんだ?」

「あっ、えっと...。(龍仁朗探していた途中で勝手に妄想して泣いていましたテヘペロなんて言えないッッ....!!)」

歌羽が目を泳がせていたら、誠は歌羽の横を見た。

「今日はあの側近の龍仁朗っていう奴はいないのか。」

「えっ?」

歌羽は目を丸くした。

(誠様が私と龍仁朗の事を覚えている?龍仁朗と私なんか興味なさそうだったのに...。)

「わ、私と龍仁朗の事、覚えていらしたんですね。ありがとうござ...。」

「皆様、お騒がせして申し訳ありませんでした。この方は私の知り合いですので、責任持って家まで送ります。申し訳ございませんでした。」

「えっ、はっ?なに話進めてんの?私まだ話してんだけど。」

誠はあまり覇気のない声で謝罪をした。

今まで歌羽を心配していた人々はホッと安堵をして再び歩き始めた。

謝罪をし終わった後、再び誠は歌羽の方を振り向いて冷たく言い放った。

「で、お前ここで何してたんだよ。どうせ側近の龍仁朗の事で泣いていたんだろ。」

誠のぞんざいな言い方に歌羽は眉間にしわを寄せ、威勢良く立ち上がった。

「何よアンタ、その言い方!もっと優しい言い方あるんじゃないの!?ホント失礼!」

「おい、声が大き...。」

「うるさいうるさい!!
もーーー頭きた!!!私はね、歌羽っていう名前があるの!!

う・た・は!!!!

聞こえますかぁクソ坊ちゃああああん!?!?」

「まだ俺言い終わってないだろ...。」

「アンタだって今私がお礼言い終わらないうちに話し始めたじゃない!!!」

「だから声大きい。」

歌羽はわざと静かな夜の銀座で、誠を大声でまくした立てた。

令嬢とは思えない下品な言葉づかいと大声に誠は不快そうに目を瞑った。

「それより俺の質問に答えろ。お前は何でここにいるんだよ。」

誠のゲンナリとしながら言った質問に、歌羽は顔をゆっくりと青白くさせた。

「そうだ、龍仁朗っ!!!龍仁朗が帰ってこないの!!!午前中にビルを出たまま!!」

「はっ?」

「何処に行ったかは分からないけど、5時前には帰ってくるって言ってたのに、まだ...まだ帰ってこないの!!!」

歌羽は呼吸を荒げながら涙目になっていく。

「お、落ち着け。まず、ここから移動しよう。」



2人は道の真ん中から離れて近くにあった公園に移動した。

興奮状態の歌羽を落ち着かせながら、誠は一言ずつ丁寧に話し始めた。

「いいか?お前の側近は午後3時から午後5時半くらいまで寺崎財閥にいたんだ。おれはビル内にいたお前の側近を見た。」

誠は歌羽にそう言うと、歌羽は鋭い目つきで誠を睨んできた。

「....こんな時に冗談やめて!」

「は?何でこんな時に冗談を言わなきゃならない。」

「龍仁朗がそんな所に長居するわけないでしょ!ふざけないで!!」

「いやそんな所って何だよ。」

「私を慰めたいのか面白がっているのか知らないけど、全っっっ然そのギャグ面白くないから!このクソ童貞!!!!!」

「ギャグで言ってねえし。つうか童貞言うなお前令嬢だろ。23歳のまま童貞になっちゃった気持ち考えた事あんのか。」

歌羽は目頭を熱くさせてこう言い放った。

「私こんな茶番をしに来たんじゃないの!!!」

(いや俺もだから。)

歌羽は誠の肩を弱々しく掴んだ。

「お願い!!!一緒に龍仁朗を探して欲しいの!もし龍仁朗が拉致とかされてたら...私...。」

今まで押さえ込んでいた感情が溢れ出し、歌羽は身体中を震わせながら泣き始めてしまった。

誠は頭を軽く掻きながら困っていた。

「おい、こんなところで泣くな。

おれも探すから、そんな最悪の状況を余り考えずに、心当たりのあるところを探していこう。」

歌羽にとって、それは予想外の返答だった。

歌羽は泣くのを少し抑えて、しゃくりながら声を漏らした。

「本当...に?」

誠は歌羽を真っ直ぐ見つめて薄く微笑む。

「ああ、約束する。側近の龍仁朗は絶対見つかる。」




ートクンー




歌羽の中で、柔らかく、小さく何かが跳ねた。

(誠様の笑顔、初めて見た...。)

誠と歌羽のいる公園だけが砂時計の砂がゆっくりと細かく落ちていくように、ゆっくりと時間は流れていくが、感情だけが走り抜けていく感覚を歌羽は覚えた。

誠は歌羽を再び無の顔で話しかける。

「おい、どうした?顔が火照っているぞ。」

「へっ、ふぇっ!?」

(な、何で顔赤くなってるの!?)

歌羽は動揺してしまい、素早く立ち上がった。

「いいいい、いえ!!ななな、何でもありましぇん!!」

「しぇん?」

「あっ...。(いやあああ!!噛んじゃったあああ!!!)

い、いえ!お気になさらず!!それよりも早く龍仁朗を、さささ探しにっ...。」

小走りで公園を出ようとしたら、歌羽は入り口の段差で盛大にコケてしまった。

「ひゃああああ!!」

誠は驚きの余り、即座に立ち上がる。

(バ、バカだろっ...。)






ーポスッ。ー










「おい、大丈夫か。落ち着けって言ったろ。」



歌羽は優しく誠の腕の中に収まり、抱えられていた。


そう、世に言うお姫様抱っこである。


公園のライトの光で呆れ顔の誠がはっきりと見える。

いつもの冷徹な顔つきだが、整った顔立ちを光による陰影がより一層際立たせた。

歌羽は頭がさらに混乱する。

(ええええ!?わわわ、私がっ誠様に...お姫様、抱っこ...。)

身体中が一気に熱くなるのを歌羽は感じた。

「ま、マズイ....状況、ですぅ...。」

歌羽はダラリと体から力が抜け、誠の腕から抜け落ちそうになっていた。

危機的状況に誠は焦る。

「はっ?おい!気絶するなっ...。」






「失礼致します。」






歌羽は落ちそうなところを沢山の洋服やスイーツが入っている袋を持っている背の高い女性に再び抱えられた。

ヒラリと流れる黒髪が歌羽の頬を掠め、歌羽は目を細く開けた。



「お嬢様...係員の皆様から話は聞きましたよ。」



凛とした声に歌羽と誠は目を見開く。

「りゅ、龍仁朗?」

月明かりに照らされていた龍仁朗の表情は困惑した顔であった。

「申し訳ございません、お嬢様。私としたことが...買い物に夢中になってしまいました。帰り途中でケーキを買って帰ろうと思っていたのですが...。」

歌羽は大きい目を潤ませ、思いきり龍仁朗を抱きしめた。

「龍仁朗!!良かった、無事だったのね!!!ああ、龍仁朗っ!!」

歌羽は龍仁朗にお姫様抱っこをされている状態で龍仁朗の首に手を回して抱きしめた。

「お、お嬢様!この体勢のまま抱きつかれるとお嬢様の洋服とケーキがメチャクチャになってしまいます!」

「あっ!そ、そうね!ごめんなさい!」

歌羽は慌てて龍仁朗を離し、自分の服をはたいた。

龍仁朗は何度も歌羽に謝罪をした後、弾かれたように問い詰め始めた。

「それはそうとお嬢様。先ほど誠様に、そ、その...えと...

抱きかかえられていましたが、あれは一体何をしていたのですか!?」

龍仁朗の勢いに歌羽はたじろぐ。

「えっ!?み、見てたの?」

「見ていたというか、たまたまこの道を通っていたらその現場に出くわしてしまいまして...。」

誠は小さくため息をついた。

(....完全に勘違いされてる。)

龍仁朗の声は段々と焦りが出始めてきた。

「お二人とも見つめ合っていたので...。

っ!?

まさか、この場で不純異性交遊をっ.....!?!?!?」

歌羽は目が点になった。

「えっ、ふじゅん...え?」

龍仁朗は誠を殺気を帯びた目つきで誠を睨みつけた。

「こンのっ....



くそ童貞がああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

「それ少し前にも言われたんだよ!2人揃って同じこと言うんじゃねえよ!!!」

「黙れチンピラ低脳!!!お嬢様に乱暴をしやがって!!社会的制裁と精神的制裁と肉体的制裁と永久的制裁を加えなければならんようだな!!!!」

「最後の永久的制裁って何だよ!!!!」

「死んでも死ね!!生きていても死ね!!!とりあえず死ねぇ!」

(ヒッデェ...。)

歌羽は慌てて仲裁に入る。

「ま、待って!!龍仁朗違うの!誠様は私と一緒に龍仁朗を探そうとしてくれていたの!」

「え?私を?」

龍仁朗は予想外の言葉に動揺した。

「そうなの!で、私、焦って入り口でコケちゃって...。誠様が助けてくれたの。誠様は何も悪くないの。」

「そうだったんですか...。
























チッ。」

「おい何だよ今の舌打ち。俺を陥れようとしてたんだろ。」

龍仁朗は規律正しく誠にお辞儀をした。

「お嬢様をお守りしてくださり、ありがとうございます。」

「話変えるな。後それと今までの悪口謝れよ。」

「お嬢様。もう遅い時間ですので車を手配してもらいましょう。」

「ええ、そうしましょう。」

(この2人腹立つ...。)

誠は若干イライラしながら車の手配をし始めた。









数十分後。

誠の車よりも歌羽と龍仁朗の車が早く着いた。

歌羽は龍仁朗が見つかったことにすっかり安心したらしく、車の中へ入った途端、眠ってしまった。

龍仁朗は荷物を入れた後、ヒールの音を立てながら、誠へ近づいた。

「何だよ。まだ罵倒するのか。」

龍仁朗は顔を伏せたままモジモジしていた。

誠は疲れたように龍仁朗にたずねた。

「何だ。早く言ってくれ。俺は疲れているんだ...。」

「お嬢様の近くにいて頂き.....






ありがとう、ございます。」

「...は?」

そう言い残すと、龍仁朗は走って車の中へ入り、ビルへと戻ってしまった。

誠はポカンと口を開けたまま動けなくなってしまった。








誠が動けなくなって数分も経たないうちに誠が手配した車が到着した。

車から今宮が出てきて、誠に近寄った。

「誠様。お迎えにあがりました。さあ、中へ...。

  ?

誠様?」

今宮は口を手でおさえて、頬を赤らめている誠を不思議そうに見つめた。







「何だよ今の...。

反則だろ。」
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