僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第1章

第5話~高揚と絶望~

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ードクン、ドクンー

龍仁朗の心臓は爆発して飛び散ってしまうほどに鼓動が早くなっていた。

(な、何故あのような事を....。分からない。)

龍仁朗はいつもより早く歩きながら、今にも溢れそうなモヤモヤした感情を抑えようとしていた。


今宮には誠と言い合いをしていたことは言わずに、トイレに行っていたと嘘をつき、ほんのりと赤く染まった顔を伏せながら早々と帰った。

(なんだ、この感情は...。調子が狂う....。)

季節は夏を過ぎて秋を感じる季節となり、やんわりと冷えたそよ風が龍仁朗の白い肌をかすめていく。

歩いていたら、ふとほんのりと甘い匂いがする方へ龍仁朗は思わず向くと、あたかも女性向けのケーキ店が佇んでいた。

お洒落な外装で、店内にはカップルや女性が顔を綻ばせていた。

(お嬢様に伝えておいた時間を遥かに超えてしまったな。

お詫びの印にお嬢様の好きなモンブランを買っていこうかな....。)

龍仁朗はお財布の中身を確認し、優しい甘い匂いの店内に入っていった。










「お、遅い...。やっぱり私探してくる!!」

「お嬢様、どうか冷静になって下さい。今、寺崎財閥へ連絡をしているところですので...。」

「龍仁朗はそんな勝手に寺崎財閥の所へなんか行かないわ!」

歌羽は力強く係員に反発をしたら、勢いよく部屋を出てしまった。

「お嬢様!いけません!もう夜の8時でございます!!」


歌羽はビルを出て、光り輝く銀座の街を駆けていた。

銀座を歩く人々は歌羽に気づいていないように早々と歩いている。

「龍仁朗!龍仁朗!!」

歌羽は通行人とぶつかりながら辺りを見渡すが、龍仁朗の姿はどこにもない。

ブティックやレストランを覗くが、ただ客から怪しむような目つきで見られるだけだった。

(どこにもいない...。龍仁朗...どこにいるの?)

「龍仁朗...。」

歌羽はそう小さく呟いた瞬間、最悪な予想が頭に浮かんできた。

(もしかすると、龍仁朗は....誰かに拉致、された?)


頭が真っ白になる。


「イヤ....そんなワケ...。」

歌羽の脳内に、拉致をされた挙句、暴力を振るわれて瀕死状態になっている龍仁朗がハッキリと現れた。

歌羽はヨロヨロとその場に跪き、震える肩を抑えた。

異変に気付いた通行人達が歌羽を目を丸くして見つめ始めた。

(嫌だ....そんな、龍仁朗は亜麻音グループの関係者だからって、拉致されたかもしれない...。)

『あの、どうかしましたか?』

『顔が真っ青じゃないか。具合が悪いのですか?』

『では、救急車を呼んだ方が...。』

いつの間にか大勢の人達が歌羽を囲んで心配そうに見つめていた。

何人かが歌羽に話しかけているが、歌羽は龍仁朗の事しか考えていなかったので声が聞こえていなかった。


あたりが段々と騒がしくなる。

歌羽はひっそりと涙を流していた。

「龍仁朗...どこにいるの...?」








「....亜麻音、歌羽?」

歌羽の名前を呼ぶ声の方へ歌羽は顔を上げた。

そこには静かに歌羽を見下ろす誠が立っていた。





「誠、様?」
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