僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第1章

第9話~感情~

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「ろう...じろう...



龍仁朗!!!!」

「ふぁ!?ふぁい!!お嬢様ぁ!!!」

「もう!またボーッとしてる!まだお昼前なのに!」

「も、申し訳ございません...。」

「しっかりしてよね、もう。じゃあ、あそこの喫茶店で休憩しよっか。」

「は、はい...。」




誠から突然の告白から一夜明けたが、龍仁朗はまだ告白のことで頭がいっぱいで上の空になることが多くなった。

今は大蔵が海外出張のためにグループのビル内には用務員と龍仁朗と歌羽の二人組くらいしからいないので、2人は出掛けているところだった。

龍仁朗は半ば強制的に歌羽にコーディネートされ、お洒落な服装をしていた。

2人は喫茶店に入り、メニューを見ていた。

歌羽は目を輝かせる。

「龍仁朗は本当に美人だから、服がなんでも似合うね!特にこのワインレッドのワンピース!!
この服に目をつけて買っておいて良かったよ!」

「私は恥ずかしいのですが...。」

「そんなことないって!しかも、龍仁朗はいつもポニーテールにしてたでしょ?でも、今日は...。」

歌羽は目をもっと輝かせて龍仁朗を見つめた。

龍仁朗は呆れもせずに、即答した。

「 毛先をカールさせたハーフアップお嬢様テイスト。ですよね?」

「せいっかーーい!!!よく分かってるね!私、こういうの才能あるかも...?」

そう言って嬉しそうにしている歌羽を柔らかい笑みで龍仁朗は見つめていた。

(お嬢様は最近より一層明るくなられた....これも、誠様が心を開いてくれたおかげだ...。



.......ん?誠様?

誠様...。)

龍仁朗は誠を思い出した途端、昨日の公園での出来事を思い出してしまった。











『俺が好きなのは、婚約者の歌羽ではなく、側近のお前だ。龍仁朗。』

『...え?』

『嘘じゃ、ないからな。』

龍仁朗はすかさずその言葉を否定した。

『ば、馬鹿を言うな貴様!!貴様にはお嬢様という立派な婚約者がっ...。』

『やっぱりそう言うと思った。』

誠は龍仁朗の片手を優しく握り、体ごと龍仁朗に迫らせた。

そして、誠は人差し指を龍仁朗の唇にそっと当てた。

2人の空間には風さえも触れなかった。









『本当は...こんな事許されない。

でも俺はお前の可愛いところとか気づいちゃったから、ただの婚約者の側近とは見れなくなったんだよね。』

龍仁朗はその言葉に硬直する。

誠は龍仁朗に顔を近づけたまま、微かに微笑んだ。

『責任......


取れよ?』












回想録が終わると、龍仁朗は冷めていた体が火を付けたように熱くなっていくのを感じた。

「ねぇねぇ龍仁朗。このスイーツを食べようよ。二種類の味があるみたいだから、私は.....

えっ、龍仁朗?どうしたの?」

「何で御座いましょうか...お嬢様...。」

龍仁朗は周りの人が一目見て分かるくらい、顔を赤らめて、目を伏せながら、心臓辺りを掴んでいた。

「え?な、何!?熱でもあるの!?」

「いえ、熱はありません。朝からボーッとするので、部屋で体温計ではかりましたが、平熱でした...。」

「でも何でそんなに赤いの!?しかも何故心臓鷲掴み!?」

「えっと...とても、心臓の鼓動が...早いのです...。」

歌羽は眉間にしわを寄せて、首を捻った。

「鼓動が、早い?」

「はい、とても...。」

「うーん...。」

歌羽は悩みながらも龍仁朗の笑顔を戻そうと、ちょっかいを出し始めた。

「えぇ~?龍仁朗、それってぇ...





恋なんじゃないのぉ?」

龍仁朗はその言葉を聞いた瞬間、素早く顔を上げて、歌羽を見つめた。

凛とした目を見開き、見つめた龍仁朗に歌羽は苦笑いをする。

「え?うそ、本当に...誰かに恋したの?」

「そんなことは....そんなことは....。」

龍仁朗は歌羽の声が聞こえないのか、1人で首を横に振り続けていた。

歌羽は明らかに動揺している龍仁朗を見て、恋をしていると確信した。

歌羽はすかさず肩を掴み、ニンマリとした笑顔を作った。

「龍仁朗、もう一度いうよ。


あなたは今、恋しているの!!誰かはわからないけどね。」

「こ、恋...なんて、出来るはずが...。」

歌羽はニンマリとした笑顔から、真剣な顔にチェンジした。

「龍仁朗!!!!!」

「は、はい!!!!」

「今の呼吸速度は!?」

「え、えっと、通常より早いです!」

「体温は!!!」

「は、はい!上がっております!」

「手の状況は!?」

「ふ、震えております!そして、手汗ビッショリです!!」

「では、こんな状態になってしまった原因の人をもう一度思い出して!!!」

龍仁朗は目を瞑った。

すると、1分も経たないうちに、更に動揺が多くなり、呼吸速度も体温も手の状況も今までより悪化した。

龍仁朗は目を開いた。

「お嬢様!ご覧の通りです!!」

歌羽は龍仁朗の肩にありったけの平手打ちをする。

「よおおおおおおし!!!

龍仁朗!!!!それは恋であああああああああああある!!!」

「りょうかああああああああいいいいいい!!!!??????

.....ん?

ええええええええええ!?」

2人がリズムの良い会話を大声でしていたら、喫茶店の店員が注意をしに、来てしまった。

「お客様、大声で会話をするのを控えていただけないでしょうか...。」

「あっ!す、すいません...。つい、夢中になってしまって。」

「申し訳ございません...。」

店員が去って行った後、歌羽は小声で龍仁朗に話し始めた。

「いい?そのような現象が起きるということは、恋をしている証拠なの。」

「そ、そうなのですか...?」

龍仁朗は背筋が凍る感覚を感じた。

(それはつまり....私は...ま、誠様に....?)

頭の中に誠が浮かんでくる。

龍仁朗が1人で混乱していると、歌羽は運ばれてきた2つのケーキを取り、龍仁朗に渡してきた。

「はい、どうぞ。今日は私が奢るね。」

「え!?お嬢様!困ります!!私が料金を支払います!」

「すいません、アイスティーを2つお願いします。

いいの。今日は奢らせて。」

「いや、いけません。今日は特に何もない日ですが...。」

歌羽はその言葉を聞くと、ケラケラと笑い始めた。

「お、お嬢様?」

「なに言ってるのよ!今日は記念日になったんだよ!たった今ね。」

「え?」

歌羽は無邪気に微笑む。

「龍仁朗が、また一歩可愛い女性に近づいた記念日だよ。」

龍仁朗はその言葉に顔が緩んだ。

「お嬢様...。」

「ほら、早く食べようよ!そのスイーツの感想を聞かせてね。」

「はい!」

龍仁朗はフォークを取る前に、もう一度心臓辺りを触った。

鼓動はまだ速かった。

(これが....これが、恋だと...いうのか?そしたら、私は...。)

「龍仁朗、食べないの?食べないなら私が貰うけど。」

「い、いえ!頂きます。」

(私は、もしかしたら...本当に...。)

新たに芽生えた感情に困惑しながらも、龍仁朗は歌羽との時間を心から楽しんでいた。















「誠様。」

「何だ、今宮。」

「敢美様が今すぐ社長室に来るようにと仰っていました。」

「わかった。すぐ行く。

(あいつ、どうせ亜麻音グループとのことだろ。)」

誠はそそくさと社長室に向かい、ノックをした。


「入りなさい。」


「失礼します。」

社長室の奥には、全てを見据えたような目をした誠の母、敢美が堂々と座っていた。
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