僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第2章

14話~サイクル~

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歌羽と龍仁朗が合流したホールは一段と賑わっていた。

誠の母、敢美は歌羽と和やかに会話しており、龍仁朗は料理を運んだり、ホールのセッティングを素早くこなしていた。

敢美はテキパキと働く龍仁朗を見て感心していた。

「ほんと、龍仁朗さんは仕事が出来るわねぇ。社長として見習いたいところが沢山あるわ。」

「そうですよね!私は容量が悪くてあんなに効率よく仕事はできないと思います...。」

「あら、分からないわよ?

おまけにとても美人ね。
私、色々な女性を見てきたけど、龍仁朗さんの上をいく美人は見たことないわぁ。」

歌羽は龍仁朗が認められ、とても嬉しくなった。

「はい!美人ですよね!私たちは10歳の時に出会ったんですけど、子供の頃からあの美しさは健全で、大人っぽくて女の私でも見惚れてしまいました!」

歌羽の話を聞き、敢美は笑った。

「あら、そうだったの。全く、歌羽さんて面白いのねぇ。これなら安心して誠を任せることが出来るわぁ。」

そう言われ、歌羽は照れ臭くなった。

「え、えへへ...。

じゃあ、私、誠さんとお話ししたいことがあるので、失礼します!」

「ええ、分かったわ。」

歌羽は一礼し、小走りで誠の方へと向かった。











「...はぁ。」

ホールの隅で誠はシャンパンが入っているグラスをただ見つめていた。

(亜麻音歌羽のことを見なきゃいけないのに、ずっと龍仁朗のことを見てしまう...。

本当に最低だな。俺は。)

自分の気持ちにモヤモヤしていたら、歌羽が突然誠の顔を覗いてきた。

「シャンパンばっか見ていて楽しい?」

「ぅわっ...!

なんだよいきなり。」

誠の目の前には歌フンワリとした笑顔で誠を見つめてる歌羽が立っていた。

歌羽悪戯っ子みたいな笑みを浮かべる。

「ねぇねぇ、誠さんってさ...







結構ネクラだよね!」

「..........。







は?」

歌羽はペラペラと話し始めた。

「だってさ、みんなと楽しむための交流会なのにずっとここでボーッとしてるし、シャンパン持ってたって飲まないし、料理も食べないし!それとそれと...。」

誠は口を挟む。

「待て、待て待て待て。

やめろ。」

「何よ。」

「お前いきなり来てズケズケ言い過ぎ。

何がしたいんだよ。」

「それは1つしかないでしょ!















誠さんと仲良くなるためだよ!」

「何故かなり結果を言うまで溜めたんだよ。」

歌羽はクスリと笑う。

「誠さんツッコミがキレッキレ~!龍仁朗みたい!!!」

「っ...そうかよ。」

明らかに態度が変わった誠を見て、歌羽一息つき、眩しい笑顔は変えずにこう言った。

「私、どんなこと言われても誠さんの事、諦めないよ?

...誠さんの事、好きだから。」

誠はその言葉に反応する。

「...お前、言うことが全部イキナリすぎる。」

「女は全てイキナリ言うもんなの!」

「くだらない事言うな。」

「くだらなくなんかないよ!

好きになるってさ、魔法にかかったようにフワァ~って全身が軽くなって、気持ちよくなって、何よりこの感情を、好きになった人を守りたい!って気持ちが出てくるんだよね~。

でも、そんな感情ってすぐ壊れやすくて、ナイーブなんだってことが、さっき分かったの。」

「...?」

「その感情が壊れた時は、自分が分からなくなって、自分も壊れちゃいそうになるんだけど...

誰かが必ず手を差し伸べてくれるの。

そしてその誰かがそのナイーブな感情を理解してくれて、その感情は治っていく。

そして...また、その感情を味わいたくなる。」

誠は黙って話を聞いていた。

「恋ってこういうサイクルが回っているんだと思うの。どんなに傷ついても、辛いことに会っても、また恋したくなる...そして、恋をする。




そのサイクルが今、誠さんで回っているの。

でね、今、一周して来たんだ。」

「一周...今...?」

「うん。傷ついて、手を差し伸べて貰って...また、誠さんと恋したくなってるの。

まあ、勝手に私が誠さんと恋したーい!って思ってるだけなんだけどね~。」

誠はその話を聞いて、重苦しく口を開いた。

「...俺、まだ、そういうことは...。」

歌羽は誠が喋り終わらないうちに口を挟んだ。

「はいはいはい!そう言うと思った!!!

いい?誠さん、恋したい気分になれないのはね




相手のことを知らないからなんだよ。

だからこの人と恋したいなぁって思えないの!」

歌羽の言葉に誠は一瞬だけ目を見開いた。

「相手のことを...しらない?」

「そう!だからね、誠さんは私のことを知らないんだよ~!

だから、私は誠さんが私のことを沢山知れるように、私も誠さんのことを知れるように、話をしたいんだ...。



手を差し伸べてくれた人を裏切らないために。」

(裏切る...?

手を差し伸べてくれた人って...?)

誠は色々と疑問が浮かんできたが、そんなことよりも歌羽の言葉がジンジンと響いていた。



『恋したい気分になれないのはね、相手のことを知らないからなんだよ。』



(そうか...そういうことなのか...。

俺は亜麻音の事を知ろうとしていなかった...。)

歌羽は黙ってしまった誠の顔色を伺いつつ、一息ついて話を続けた。

「何度も言うようだけど、私は誠さんの事を知りたいし、誠さんも私のことをもっと知って欲しいから、これから仲良くしようよ!

私のお気に入りの銀座のグルメ教えてあげる!」

「銀座...?」

「そう!銀座にはね、美味しいものが沢山あるんだよ~!
カフェとか、お寿司屋さんとか...あ、あとラーメン屋さんもあるよ! 最近、美味しいお寿司屋さん見つけたから、今度行こうよ!」

誠はグイグイ話しかけてくる歌羽をボーッと見ていると、龍仁朗がこちらへ歩いてくるのに気がついた。

「お嬢様。」

「ん、なに?龍仁朗。」

「太蔵様がお呼びです。あちらでお待ちになっております。」

「分かった!ありがとう。

じゃあ誠さん、お寿司屋さんの件、考えといてね~!」

歌羽は小走りで太蔵の元へと駆けて行った。

龍仁朗はにこやかに歌羽を見送った後、誠にかしこまった顔を向けた。

「誠様。お時間頂いてもよろしいでしょうか。」

「あ、ああ。なんだ。」

「...ここでは話せないことです。

場所を変えてもよろしいでしょうか?」

「ああ...。」

龍仁朗と誠が気付かれないようにホールを出て行くところを歌羽は太蔵と談笑をしている横目で見ていた。

歌羽は胸を優しく撫でた。

(龍仁朗...本当に迷惑かけます...。
ごめんなさい...。

龍仁朗の為にも、絶対、絶対...。)

「幸せになってやる...!」

「ん?なにか言ったかい?」

「い、いや!何も言ってないよ!」
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