僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第2章

13話~真意~

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歌羽の謎の言葉に龍仁朗は戸惑うばかりだった。

「ど、どういうことですか?

いけない感情...とは?」

龍仁朗がどんなに問いただしても歌羽は顔を青ざめ、肩を震わすだけだった。

龍仁朗は益々不安になる。

「お嬢様...。



とても言いづらいことならば、無理して話さなくてよろしいですよ。

...私はここにずっといますから。」

その言葉に歌羽は過敏に反応し、突然龍仁朗のスーツの裾を引っ張って来た。

「...龍仁朗。











こんな私を許してっ....!」

「どういうことですか?」

「私...


















龍仁朗に嫉妬しちゃった。


...誠さんのことで。」







「え....?

嫉妬...?」

思いもよらない歌羽の発言に龍仁朗は目を見開いた。

歌羽は同様している龍仁朗を見て、更にスーツの裾を引っ張る力を強めた。

「私、分かったの。

誠さんは私を見ていない。誠さんの目の中にいつも入っているのは
私じゃなく...龍仁朗なんだよ。」

(そんな...そんな事は...。)

歌羽の思いもよらぬ言葉に龍仁朗は戸惑うばかりだった。

歌羽は目頭を熱くさせながらも作り笑いを浮かべた。

「今日ね、せっかくの交流会だから誠さんのこといっぱい知りたいなぁって思って一杯誠さんに話しかけたんだよ!
好きな食べ物の話をしたり、趣味の話とか...

あ!あとね、誠さんってスポーツが何でも出来るんだって!凄いよね~!最近気に入っているスポーツはテニスなんだって!私も教えて貰いたいと思ったんだ!」

「そうですか...。」

歌羽は声を震わせつつも、まだ話を続けた。

「それとねっ、それとねっ!

あ、あとね...















...あはは、困ったな。もう、話せることが無いや...。」

歌羽は今まで溜めていた涙を最後まで言い終わらない内に流してしまった。

その姿に龍仁朗は心臓をえぐられる感覚が全身に走った。

(私は...今まで何をしていたんだ。)

「もっともっと私と誠さんとの話が出てこなきゃいけないのにっ...

話もでてこなければ、誠さんが笑顔でいる姿も思い浮かべることもできない...

私の記憶の中の誠さんは







龍仁朗とにこやかに話してる誠さんだけ。」

「っ...!!!!」

龍仁朗は歌羽の最後の一言に酷く罪悪感を覚えた。

「何で私を見てくれないんだろう...何で私と話していても楽しそうじゃないんだろう...

そんな不安と悲しみで心が一杯になってたらね









その感情が、悔しさと、憎しみに変わったの。」

龍仁朗は黙って聞いていた。

歌羽は下を向いてボロボロと涙を流していたら、顔を上げて龍仁朗に訴えかけた。

「その悔しさと憎しみの矛先がねっ!

龍仁朗だったの...!!!

私は誠さんが自分に振り向いてくれないという小さな理由で龍仁朗に嫉妬して、妬んで、不満を持っていたの!!!

小さい頃からの親友なのに!!!

私の側近なのに!!!!

私のことを誰よりも理解してくれているのに!!!支えてくれているのに!!!

私はっ...私はっ....!!!」

歌羽は座っていたところから崩れ落ち、龍仁朗にしがみついた。

「こんな私が大っ嫌い!!!!!

私はどうすればいいの!?

教えてっ....



教えて!!!龍仁朗ぉ!!!」

そう言い終わると歌羽は声を上げて泣き始めた。

龍仁朗は泣きじゃくる歌羽をただ抱きしめるだけしか出来なかった。

動作は1つのことしかできなかったが、心の中には得体の知れない多くの感情が入り混じっていた。

(私は....私は...











何て愚かな考えをしていたんだ。)

龍仁朗を大きな絶望感が一気に包み込んだ。

(誠様に抱いている感情を心の中に閉じ込めておくだけで済む話ではないのに。

そんな浅はかな行為で、お嬢様は傷つかれた。





これは私の責任だ。

側近としてありえない行為。

誠様と完全に距離を置かなければ!)

そう決めているのにも関わらず、龍仁朗の心臓はチクリと痛む。

(クソッ...

この痛みはお嬢様から誠様にご好意を抱かれたと聞いた時と同じ痛みではないか...!

...まだ捨てられないというのか。)

「...最低な奴だ。私は。」

龍仁朗は誰にも聞こえないくらい小さな声でポツリと呟いた。

(私はお嬢様の側近だ。

迷うな。素早く行動に移せ。




...お嬢様の為に。)

龍仁朗は肩を震わせて泣いている歌羽の背中を優しく撫でた。

「安心してください。お嬢様は何も考えなくて良いのです。


...申し訳ございませんでした。そんなに傷ついてることを察知することが出来ませんでした。



もう二度とお嬢様を泣かせません。」

龍仁朗は最後の言葉を優しい声で、強く意志を持ったように話しながら、ハンカチで歌羽の涙を拭った。

「私は最低な人間です。


私の大切な方が傷つかれているのに気づきもせず、助けようともしなかった...。」

「そんなっ...龍仁朗は謝らなくていいんだよ!

私が勝手に考えていたことだから...!」

龍仁朗は歌羽の言葉を遮るように口を開いた。

「いえ、お嬢様の考えていることは私も考えていることになるのです。

...私はお嬢様の側近。

価値観も、物事の捉え方も、全て共有しなければならないのです。」

歌羽は真っ赤に腫れた重い目を見開いて龍仁朗を見つめていた。

「これは私の責任です。私が最善の対策を取らせていただきます...!

お嬢様は引き続き誠様と交流会をお楽しみください。」

歌羽はまだ不安そうな顔をしていた。

「そんなにあっさり終わっちゃっていいの...?
私は龍仁朗に最低な感情を持ったんだよ?
なのに...。」

龍仁朗は歌羽のドレスを整えながら穏やかな笑顔を向けた。

「そんなに1つの事にネチネチ気にしている暇はありませんよ。私はお嬢様にはいつも笑顔でいて欲しいし、誠様といつも通り、明るく接して欲しいのです。



...よし、ドレスを整えましたので、ホールへ戻りましょう。」

そう話しているが、龍仁朗は一切歌羽に顔を向けなかった。

歌羽は不安になった。

(龍仁朗...いつも私の顔をしっかり見て話してくれるのに...。

やっぱり傷ついたんだ...。)

「龍仁朗...。」

龍仁朗はドアを開けると、女神のような笑顔だった。

「さあ、参りましょう。皆様が待っておりますよ。

...ここだけの話、お嬢様がご退室された時、太蔵様は顔を真っ青にしながらお嬢様の体調をご心配されていたのですよ。」

歌羽は目を丸くした。

「え?お、お父様が?

...そうだったんだ。」

龍仁朗はクスリと笑う。

「フフ、いつも仕事の事となると冷静な方なのですが...私も驚きました。

なので、早く元気な顔を顔を見せに行きましょう。」

龍仁朗はそう言うと、歌羽がいきなり抱きしめてきた。

「お、お嬢様!?」

歌羽の顔には涙はなく、笑みが溢れていた。

「こんな...こんな私を信じてくれて、愛してくれて...



ついてきてくれてありがとう!!
大好きだよ!!!」

龍仁朗は微笑みながらため息をついた。

「何を今更...大好きなのは知っていますよ。毎日、耳にタコが出来るくらい聞いていますからね。」

「えへへ...嬉しくなっちゃって、つい。」

「ほら、こんな所で無駄話をしている暇はありませんよ。
お嬢様は誠様と談笑をしたいのではないのですか?」

そう言って龍仁朗はスタスタと歩き始めた。

「え!?それはまぁ、喋りたいけど...ま、待ってよぉ!」

龍仁朗は「遅れますよ。」と歌羽に注意を促しつつ、心の中である決心をしていた。

(私は愚かだ...自分の気持ちを少しでも優先するとこうなることは分かっていたのに。






...決めたぞ。私はお嬢様の側近だ。腹をくくるのだ。)
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