僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第2章

16話~仕切り直し~修正3/28

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「誠さんはサーモンが好きなんだ。じゃあ、海鮮丼とか大好物だったりして!」

「ああ。海鮮丼は好きだが好物と言えるほど好きではない。」

「へぇ~!じゃあ、なにが好きなの?」

「サーモン丼。」

「テッカテカァ!油でテッカテカじゃない!」

「それがいいんだ。」

「以外だなぁ...!」

歌羽は楽しそうにクスクスと笑った。誠はそれを横目で見つめ、やんわりと微笑んだ。

「...楽しいか。」

「はい!とっても!先ほどまで誠さんは暗い顔をしていたから...。」

「...ああ、さっきまでは気が乗らなかった。」

歌羽はその言葉を聞いて顔を曇らせた。

「ごめんなさい。私が楽しませることが出来ないから...。」

「でも、今は楽しい...かも。」

歌羽は誠の顔を見上げると、誠が気難しそうな顔をしていた。

「こうでも言わなきゃお前、喜ばないだろ。

...こんなこと俺がいうタチじゃないのに。」

慣れないことをして難しそうな顔をする誠を見て、歌羽は目を輝かせながら笑顔を取り戻していく。

「う、うわぁ...!なんか、新鮮!誠さんが初々しいぞ~!!!」

「おいデカイ声でそれを言うな!」

「なんだよ~誠さんもカワイイ所あるじゃん!以外だなぁ!」

「だからイチイチ声がデカイ...!」

誠と歌羽が漫才のようなことをしているのを、会場にいる人達は微笑ましく眺めていた。

龍仁朗も同様で、ニコリと笑いながら二人を見つめていたが、その笑顔には悲しみが少しばかり出ていた。

(お嬢様、元気になられてよかった...。誠様もお嬢様と仲を深めようと努力してらっしゃる。)

「...お嬢様が幸せそうで何よりです。」

そう龍仁朗は呟いた。

「とっくにケジメがついたような顔つきですね。龍仁朗さん。」

「っ!今宮様!」

龍仁朗は声に釣られて振り向くと、そこには今宮が立っていた。

龍仁朗は慌ててお辞儀をする。

「...はい。ケジメはつけました。

私はお嬢様の側近として人生を歩んでいく...大体、私が人を好きになるなんて厚かましいことなのです。...私は何度もお嬢様を泣かせてしまった、最低な人間です。」

今宮は眼鏡を静かり掛け直すと、龍仁朗を見据えたまま口を開いた。





「そう言っている割には複雑そうな顔をしていますね。




...自分の行動と意志があってないような顔をしている。」

龍仁朗は目を丸くした。

「な、何を仰っているのですか...!?

私が自分の心に嘘をついていると?」

「まあ、簡単に言ってしまえばそういうことです。」

「そんな...そんなことはありません...。」

動揺している龍仁朗を見て、今宮は表情を暗くする。

「...貴方がそんなに辛くなることなんてないのに。











私なら貴方を悲しませることはしません。」

今宮の以外な言葉に龍仁朗は固まる。

「...え?

いきなり...何を...。」

「私は、貴方は笑顔が誰よりも似合う女性だと思っています。それは誠様も、歌羽様も、誰もがそう思っています。

笑顔で溢れていることで、龍貴方は美しい。それなのにここ最近、貴方から笑顔がなくなっている。

私はそんな貴方を見るたびに悲しくなってくる。」

龍仁朗は辛そうに話す今宮を見て胸が苦しくなった。

「そうだったのですか...。

やはり私は皆様をいつも悲しませている...!お嬢様のことも、誠様のことも、何もかも上手くいかない...!!」

自分を責め始めた龍仁朗を見兼ね、今宮は手際よく二本のグラスに入ったシャンパンを用意し、一本を龍仁朗に渡した。

「自虐的になってはいけません。そうすると全てが上手くいかなくなりますよ。

今日は楽しい交流会にするはずだったのでは?」

「今宮様...。」

「私は笑顔の龍仁朗さんを見ているとこちらも自然に笑顔になりますので、笑顔の方がよろしいと思いますよ。



辛い時も笑顔でいれば必ず道が拓けてきますので。

...それと、様付けはやめて下さい。言われ慣れてないので...。」

今宮のさりげない優しさに、龍仁朗は顔を綻ばせた。

「...そう、ですね。

笑顔が一番ですよね。気づかせてくださり有難うございます。」

龍仁朗はそう言ってお辞儀をして顔ををあげると、微かに笑みが戻っていた。

しかし、今宮はその笑顔を素直に喜べなかった。

(ああ...私の声は届いていないな。

龍仁朗さんの心情はまだ整理されていない...。






私では龍仁朗さんに手を差し伸べることはできない...か。)

今宮は気持ちを抑えて龍仁朗に微笑みかけた。

「そうです。貴方には笑顔が一番です。まだまだ交流会は続きますのでお互い頑張りましょう。」

「はい。そうですね...。

頑張りましょう。」

龍仁朗は薄い笑みを残して仕事があるからと言って去って行った。

今宮は龍仁朗が去るのを見て、早足でホールを出てとある連絡先に電話をかけた。






ープルルルー







「もしも...」

『ハァーイ!!!!あら、征二チャンじゃない!お久しぶり~!』

スマホ先の明るい口調の女性に今宮はため息をつく。

「相変わらず食い気味で話を進めるのは直ってないのですね...



瑛里華夫人。」

瑛里華という女性は高笑いをする。

「だって楽しいじゃないお喋りって!最高の時間よね~。

あ、そうそう。私の愛娘の歌羽が誠クンになったんだって?貴方とは縁があるわね!』

「誠様の側近は楽ですよ。

ご要望が多かった瑛里華夫人と違って。」

瑛里華は楽しそうに笑う。

『あら、随分と生意気になったわね~。また私の側近にさせてヒィヒィ言わせてやろうかしら?』

「遠慮します。



そんなことより、今日私が電話を掛けさせて頂いたのは、ある事をして頂きたくて電話をしたのです。」

『あら、何かしら?今月は結構時間空いてるから余裕あるわよ。何で言って頂戴。』

「そうですか。実は...













歌羽様の側近の龍仁朗さんのことでお願いしたいことが...。」

『あぁ~!あのチョー美人側近の子ね!歌羽から龍仁朗チャンのことが沢山聞いてるのよ~!写真も送って貰ったんだけど、中々の美人でnice bodyね!』

「そうですか。彼女の事を知っているのなら...。」

瑛里華は再び今宮の話に食い気味で会話を入れ込んだ。

『あの子にはマーメイドドレスが似合うわね!肌が白いから何色でも似合うと思うけど...あ!エメラルドグリーンとかいいかもしれないわね』

「ファッションデザイナーの生の意見、有難うございます。しかし、私はファッションの事を聞きにきたのではなくて






彼女に会って、話をして頂きたいのです。」

『...もしかして、歌羽と上手くいっていないとか?』

瑛里華の声がいきなり慎重になる。

「いえ、そうではないんです。

敢美社長から言われたのですが、

...彼女は誠様に恋愛感情を抱いてしまったのです。」

瑛里華は今宮の話を聞き入り、黙り込む。

「誠様も歌羽様という婚約者がいる中で龍仁朗さんを好きになってしまい、歌羽様はそれをお気づきなられたように見受けられました。

恐らく、歌羽様は龍仁朗さんに何かしらサインを送ったのだと思います。龍仁朗さん、深く落ち込んでいたので。」

瑛里華は優しい声で相槌を打っていた。

『そうね。歌羽は内緒にしないでハッキリと物を言う子だから、龍仁朗チャンは何か言われたかもね。』

「はい。

...龍仁朗さん、言っていました。
私は最低な人間だ。本来自分は恋をしてはいけない身分なのに...と。




私は違うと思います。人間は人を好きになって当たり前です。許されない相手に恋をしてしまうのもあり得ると思います。

誠様も龍仁朗さんのことを許されないと知っていても、確かに愛していました。寺崎財閥の御曹司だとしても、龍仁朗さんを大切な人だと認識していました。

恋は仕方のないものなのに、相手なんて自分でも分からないのに...

彼女は自分の意思を殺そうとしている...!誠様に自分の思いを打ち明けぬまま、あの思いを...閉ざそうとしている...!」

今宮の口調は益々荒くなる。

「私は暗い顔をしている彼女を見ているだけで辛くなります...!
私は笑顔の龍仁朗さんが皆様を明るくしているのを知っています!

私もその一人ですから...!

私の力では彼女が自分の意思を殺そうとすることを止めることはできません...。

なので...なので...。」

今宮が言葉を探していると、瑛里華は和やかに回答をする。

『会って話をして、彼女の意思を守って欲しい...と言うことね?』

「...!はい、そういうことでございます。」

瑛里華は少し考える声を漏らすと、明るい笑い声を出した。

『よ~し分かったわ!私の人生の極意を龍仁朗チャンに教えてあげる日が来たわね!

征二チャン!飛行機の手配をして頂戴!』

今宮は一気に顔を明るくする。

「有難うございます...!すぐに手配をいたします。」

『うふふ、宜しくね。久しぶりに歌羽と私の旦那に会えるのね~!楽しみだわ。



...それと。』

瑛里華は感心したように、けれども切なそうにこう言った。

『貴方の意思は潰しちゃってもいいの?

...言いたいこと、あるでしょ?』

今宮は目を伏せて眼鏡をかけ直した。

「やめて下さい。私のことなどどうでもいいでしょう。

...龍仁朗さんのこと、よろしくお願いします。」

『...そう。貴方も苦労してるわね。



じゃあ手配をよろしくね。お土産待っててね~!』

そう明るく締めくくり、会話は終わった。

今宮はスマホをポケットにしまい、窓から見える夜景を一瞥し、深呼吸をした。

「さ、龍仁朗さんにしてあげれることはここまでだ。他の仕事に取り掛かろう。」
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