僕の想い人は婚約者ではなく婚約者の側近でした。

小町 狛

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第2章

20話~迷宮②~

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誠と歌羽が1日を満喫していた頃、龍仁朗と瑛里華も渋谷を中心にあらゆる所を行き交い、瑛里華にとっては最高な、龍仁朗にとっては嵐の様な1日となっていた。










「瑛里華様!も、もう宜しいと思うのですが!?」

「まだダメよ~。...あ、このワンピースにして、この小物と合わせれば...Ok!very beautifull!」

「Okじゃありません!私はマネキンではないのですよ!」

「あら、龍仁朗チャンはマネキンじゃないのは知ってるわよ。



お姫様よ!!!」

「(怪奇思考.....!!!!!)

お姫様でもありません。私は側近という職があります。」

「もう龍仁朗チャンたら冷たいんだから~!あ、そのドレス脱いだら買うからね!」

「ま、またご購入をされるのですか!?」

「当たり前じゃない!今日は龍仁朗チャンのためにお金を使うって決めているんだから!」

瑛里華の突拍子のない発言に疲れつつも、なんとか龍仁朗は勢いについていけるようになっていた。

龍仁朗は今、ドレス専門店でコーデをされているが、それまでに数々のジャンルの服屋で数々のコーデをされて、龍仁朗の服が大量買いされていた。その資金は全て瑛里華の自腹で成立しており、セレブの財力に龍仁朗は驚かされていた。

(さすが日本トップクラスのグループの夫人であり、海外でファッションデザイナーとして成功しているお方なだけあって、お金が有り余っているな...。流石、瑛里華様だ...。だとしたら、社長はもっと...!?)

そう考えていると、瑛里華は渡されたマーメイドドレス3着が入っている袋を腕から掛けて次の場所へ向かおうとした。

「さあ龍仁朗チャン、車をだして!ここの服屋は全部回ったから、次の場所へ行くわよ!」

「あ、あの、まだ服を買うのですか?アメリカへ帰られる時のためにお金は制限された方が宜しいかと...,」

龍仁朗は心配になって尋ねると、龍仁朗よりも少しばかり背の高い瑛里華は、龍仁朗を我が子に向けるような眼差しで見つめ、肩に優しく手を置いた。

「貴方は本当に心から相手を思いやる精神を持っているのね。大したものだわ。私のことは心配しなくて大丈夫。帰るためのお金をちゃんと別でとっといてあるから。今日は貴方のためにお金を使わせて頂戴ね。」

「瑛里華様...。有難うございます。」

2人の間に暖かな雰囲気が流れ始めた頃、瑛里華は優しい母の顔からいつも通りのギラギラした顔に戻り、龍仁朗を車に押し込み、助手席に乗り込んだ。

「へ!?あ、あの!?」

「龍仁朗チャン、今何時か分かる?」

「え、11時50分...です。」

「じゃ、お昼にしましょ!銀座の服屋に行ってないから、お昼を銀座で食べて、そこから服屋を回ることにしましょ!」

「私もう色々な服を着るのは...ちょっと疲れたというか...。」

瑛里華のマシンガントークは龍仁朗の必死の断りも遮った。

「ありがとうってことは了解したって意味よね!はいじゃあ次は銀座にシュッパ~ツ!」

「そんなぁ~~!!! 

(ちょっとでも許さなければよかった~~!)」

龍仁朗は半ベソをかきそうになりながら銀座へと車を走らせた。






昼になり、龍仁朗と瑛里華はイタリアンの店で昼食をとっていた。龍仁朗はボロネーゼ、瑛里華はピザを食べながら瑛里華が一方的に会話をしていた。かなり一方的だが、会話の内容は誰が聞いても楽しく、疲れない話で、瑛里華の喋りも上手かった。

龍仁朗は瑛里華の高い会話力に感心した。

「瑛里華様はお話が上手ですね!私も見習いたいです。」

「ウフフ、龍仁朗チャンは真面目ね。話し方はね、教わるものじゃないのよ。」

龍仁朗は察したかのように薄く微笑む。

「多くの人と会話をするしかない...と仰りたいのですね?」

瑛里華はケラケラと笑い、龍仁朗に優雅に微笑んだ。

「その通りよ、よく分かってるじゃない!そう、多くの人と会話を沢山することで、どうすれば皆とうまくコミュニケーションがとれるか自然に分かってくるから。仕事も恋も同じ。その仕事を知ることで、好きな人のことを知ることで、何かが見えてくるものなのよ。」

龍仁朗は瑛里華の最後の言葉に反応した。

(好きな人を知ることで...何かが見えてくる。)

その言葉に突き動かされるように、龍仁朗はいつの間にか瑛里華に質問していた。

「恋をすると...何が見えてくるのですか?」

瑛里華はキョトンとした顔で見つめてきたことで、龍仁朗は自分が呟いたことに気づき、顔を伏せて赤らめた。

「す、すいません!変なことを聞いてしまって...。い、今のはなかったことに...。」

「それは自分で確かめなきゃ。恋の"何か''はその人だけにしか分からないのよ。」

瑛里華の予想しなかった言葉に顔を上げると、瑛里華は意味ありげな笑顔を頬杖をついて龍仁朗に向けていた。

「龍仁朗チャンは恋ってものを分かってないわね~。恋っていうのは教科書なんてないわよ。そんなヤワなものじゃないし...。

一人一人恋の見つけ方って全く違うから。」

「恋の...見つけ方。」

「そう。例えば好きな人が合コンで見つかったり、学校の同級生だったり、仕事先の人だったりするじゃない?恋の見つけ方はその人次第、その人の在り方次第ってこと。」

龍仁朗は瑛里華の話に聞き入っていた。

「しかも、恋っていうのは見つけただけじゃダメなの。その人と育てていかなければ枯れて腐って、いつか消えてしまう。しかも、片方の人だけの愛だけ注がれても枯れてしまう...。」

「それじゃあ、恋が実らないではないですか。」

龍仁朗の言葉に瑛里華が眉を八の字にして唸った。

「ん~...なーんか皆恋が実ると、その人と結ばれるって考えてるけど...私はそうじゃないと思うの。」

「それはどういうことですか...?」

「私はね、恋が実るっていうのは、お互い本気で愛せる...下心なんかのチンケな愛じゃない、本当の愛をお互い持った関係になることを言うんじゃないかって思うの。

告白して、付き合いましたーっていうのが恋が実るとは言わないわ。」

龍仁朗はあっとした顔で口を開く。

「それって...


運命の...人。」

瑛里華はニヤッと笑い、指を鳴らした。

「Good answer!その通り。恋人の関係っていうのは恋を実らせるまでの過程のこと。恋を見つけ出した時が恋した人との出会いだと私は考えてるわ。育てていく段階で枯れてしまえばその人とはそこまでの関係だったってこと。でも、その人と数々の困難を乗り越えて恋を実らせることが出来たなら...。

そこから愛を育んでいけるのだと...私は信じてるの。」

(そんな...考え方があったとは...。)

龍仁朗が瑛里華の恋の考え方に感心をしていると、ふと頭の中に誠が浮かんできた。

瑛里華は話を続ける。

「しかも、その人との恋を見つけたら、その人のことを沢山知らなきゃならないでしょ?お互いのことをどんどん知っていく内に恋も育っていくし、お互いのことをもっと知ろうと思ってくる...そんな中、その2人に困難が立ちはだかるのよね~...恋って難しいのよ。」

瑛里華の言葉に龍仁朗の頭の中は誠との出来事が鮮明に思い返されていた。

誠との衝突、衝突でお互いを知り、誠がもっと知ろうと歩んできた。

そこで立ちはだかる身分と現実ー。

全てが瑛里華の言うことと当てはまっていた。

(誠様は...私のことを知ろうとしていた...。私は...私は...





私も...私、も?)

混乱したかのような顔で固まっている龍仁朗を瑛里華は見つめ、クスリと笑い、龍仁朗に語りかけた。

「何か思い当たる節が、あるのかしら?私に言ってごらんなさい。

今日は龍仁朗チャンがお姫様の日よ。なんでも聞くわ。」

その言葉に龍仁朗は反応し、ゆっくりと瑛里華に目線を向けた。

龍仁朗の顔は困惑で固まっており、うっすらと赤くなっていた。

微かに震える声で、龍仁朗は瑛里華にこう言った。

「瑛里華様...私なんかが、こんなこと、あっては...ならない、のに...。」

瑛里華は優しく微笑んだ。

「家に戻りましょうか。歌羽の迎えは他の人に頼んで、2人だけで話しましょう。



とにかく、あなたがそんなに閉ざすことはないわ。絶対に。」
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