原っぱの中で

紫奈

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 君とはじめて出会ったのは、"ネットの中"だった。

あるサイトをきっかけに知り合い、見かけたら声をかける程度の仲だった。
お互い属すグループはなんとなく異なり、どちらかといえば君は陰を好んでいるように見えた。
比較的派手なタイプの仲良しをつくる私に、度々

「私さんの周りの人は信用出来ない」

と言ってきた。
特に不快な気にはならず、
むしろ'君が言うならそうなのかもしれない'と思った。


そんな関係を1年続けた。眠れない夜は君を探した。どうやら私は君と話すと心が落ち着くようだった。



どんな流れだったかは忘れてしまったが、ある日君と直接会うという話が出た。特に断る理由もなかったので、二つ返事で'いいよ'と返した。


約束の場所で君を探した。コンタクトをしていなかったからみんな同じ顔に見えた。君からの情報を頼りにきょろきょろと辺りを見回していると、ある1人の男の子と目が合った。私より少し背が高く、細身の君は私を見るなり寂しげに微笑みかけてきた。会釈をし、そっと近寄った私に、聞き慣れた声をかける君に、きっとこの時から惹かれていた。


迷わず2人でカラオケに行った。君も私も歌うことが好きだった。音楽を愛していた。
君の選ぶ曲を私は知らないし、私が選ぶ曲を君は知らなかった。ただ手を叩いたり身体を揺らしたりして互いの歌を聴きあった。
なんとなく君の好む系統はわかったし、多分君もそうだったと思う。曲の合間にぽろぽろと会話をこぼし、緩やかな時間を過ごした。

その後にお寿司屋さんに行った。君の提案だ。残念ながら君が食べていたものは覚えていない。
ただ'おいしいね'と言いながらもぐもぐと口を動かす君の横で、少し緊張していた私は鮮明に映し出される。

'またね'と言い合って別れた後、しばらく君のことを考えた。ただ純粋にもっと知りたい、と思った。帰りの電車の中、私の脳内を君が占領していた。

それからも、今までと変わらず見かけたら声をかける関係が続いた。変化はなかった。



君の声が好きだった。優しい歌声が好きだった。君が私の歌声を好きじゃないことはなんとなくわかってた。
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