原っぱの中で

序章

 私の人生、踏んだり蹴ったりだ。
踏んでも蹴ってもかたちを変えながらまた呼吸していく。ある意味気味が悪い。


"仲良しごっこ"には飽きてしまった。女特有の匂いに嫌気がさす。かと言って放り出すわけにもいかない。生きるにはそれなりの関係がどうしても必要だ。

一度、全てを終わらせるつもりで呼吸を止めたことがある。方法？ただ鼻をつまんで口を閉じるだけ。二度と吸うことがないように。
人の気配のない、寂れた公園の小さな山に寝転がった。嫌でも目に入る空の青さが、私を煽っているように見えた。逃げるように目を閉じ、横を向き、鼻をつまみ、口を閉じた。馬鹿げていると笑われるかもしれないが、これが案外いける。意識が朦朧とするし、視界は歪んでくる。死にたい人は騙されたと思って試してみてほしい。

このまま楽に死にたい、そう思った。思い残したことがちらほら過ぎる、私はただそれを暗闇の中で見つめた。
もういい、もういいの。疲れたの。ゆっくりと優しく包まれるような、なんというか色のない、味のない、眠気の中に落ちていく感覚だった。身体が軽くなった気がした。
もうこの世の全てとお別れだ。
そう思った瞬間、ふと1人の顔が浮かんでしまった。途端に、ゆらゆらと私を現実に引き戻していく、懐かしく冷たい手の感触があった。優しい言葉を投げつける君はいつだって私の邪魔をする。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿またお前か。

結局、もう二度とすることはないと思っていた呼吸を再開してしまった。思いきり酸素を取り込んでしまった。
失敗したのだ、死ぬ事にさえも。うんざりだ、本当に。