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グレイセル王国からの逃亡
山かな?
何かを取りに席を立っていた司祭様が、少しして一冊の本と木の板を持って戻ってきた。
「お待たせしました。さっそく始めましょう。ここグレイセル王国で使われている文字は2種類。大陸共通文字と神聖文字です」
司祭様に渡された木の板を見る。
「板の上の方に書かれているのが大陸共通文字。この国だけではなくほぼ全世界で通じる文字です」
「次に神聖文字。下の方に書かれてる文字です。これは主に聖職者が使う文字です。創造神様や女神様への祈りの言葉などに使われます。聖職者以外の方にはあまり必要とされない文字ですね」
世界中で通じる文字があるとは思わなかった。これは是が非でも読み書きを習得したい。
「板にはどちらも女神プリシアと書かれています」
文字を見比べると、どちらの文字も前世の記憶にかすりもしない記号が並んでいた。
「文字は左から右に読みます。左からめ、が、み、ぷ、り、し、あですね」
ん?これはもしかすると?いやまだ早い。
「司祭様。女神様のめという文字は女神様と書く時だけの文字ですか。メイスのめでも同じ文字になりますか?」
「ルカの言う通りメイスのめも同じめです。面白いことに気づきますね」
この後いくつか質問したり実際に文章を読んだ結果、大陸共通文字が表音文字であることがわかった。見た目は変な記号っぽいけどひらがなと同じだ。ちなみに神聖文字はカタカナみたいなものだった。
5日後、僕は大陸共通文字を完璧に読み書きできるようになった。なんなら時間が余ったので神聖文字も覚えた。
「ルカ!あなたは天才です!代書屋の才能があります!ピーターさんには上手く言っておくので冬に仕事がない日はぜひ教会に来て下さい!美しく字を書く練習をしましょう」
やりすぎてしまった。まさかここまで賞賛されるとは…。
「私は今まで正式な書面以外、文字は読めるように書ければ十分だと思っていましたが、考えが変わりました。これからマリアに大陸共通文字を華麗に、美しく書くよう指導しに行きます」
マリアごめん。僕がノリで大陸共通文字と神聖文字を超カッコよく書いたら司祭様はすごく感動したみたいで清書の鬼になってしまった。
本当にごめん。次にマリアに会うときは謝罪から入ろうと決意した。
心地よい風に冷たさを感じるようになった。収穫祭が近い。夏に文字を覚えたと思ったらもう秋だ。
その間にいろいろあった。
司祭様が厳しくなったのはお前のせいだとマリアにボコボコにされたり、僕に代書屋の才能があると聞いた父が「農家の子は農業だけを…」とぶつぶつぶつぶつ壊れたテープのように呟き続けたり、司祭様から魔力を使い切ったら魔力量が上がると教わったから、寝る前に試しに使い切ったら大寝坊して母に一日中罵られたり。
うん、司祭様と関わると碌な事にならないと学んだ。
そんなことより収穫祭といえばアイザック兄さんだ。
正確な日にちはわからないが、そろそろ来るだろう。剣を教わりたいが、兄さんと会って話しをするのも普通に楽しみだ。
アイザック兄さんはわずか8歳で伯爵様の私兵にとスカウトされた逸材だ。魔物を狩らせたら領内で右に出るものはいないと言われるほどの兵士で、その戦いっぷりは化け物狩りをする化け物と評されるほど。
僕も強くなるために魔法と身体を鍛えている。アイザック兄さんは言うなれば僕の未来の姿だ。僕が10年後どれだけムキムキになるか兄さんを見たらわかるだろう。
「ただいま」
仕事を終えて家に帰る。扉を開けると知らない男の人がリビングの椅子に座っていた。
くすんだ金髪に日に焼けた肌。スッと通った鼻筋に力強い眉、意志を感じる緑の目。
着ている服はシンプルだけど上等な生地を使っている事がわかる。
立ち上がってこちらに歩いてくる大きな身体。武術を嗜んでいるとわかるしっかりとした無駄のない動き。
「お前がルカか。俺はアイザック、お前の兄だ。短い間だがよろしく頼む」
「うん、よろしく」
驚きすぎて素っ気ない返しになってしまった。
兄さんが屈んでくれなかったら首を思いっきり上げても顔が見えなかっただろう。でかい、本当にでかい。これはまるで……山かな?
僕は将来あんなにでかくなれるのだろうか。少し不安になった。
※ルカが司祭様に見せたのはカリグラフィーで書いた文字
「お待たせしました。さっそく始めましょう。ここグレイセル王国で使われている文字は2種類。大陸共通文字と神聖文字です」
司祭様に渡された木の板を見る。
「板の上の方に書かれているのが大陸共通文字。この国だけではなくほぼ全世界で通じる文字です」
「次に神聖文字。下の方に書かれてる文字です。これは主に聖職者が使う文字です。創造神様や女神様への祈りの言葉などに使われます。聖職者以外の方にはあまり必要とされない文字ですね」
世界中で通じる文字があるとは思わなかった。これは是が非でも読み書きを習得したい。
「板にはどちらも女神プリシアと書かれています」
文字を見比べると、どちらの文字も前世の記憶にかすりもしない記号が並んでいた。
「文字は左から右に読みます。左からめ、が、み、ぷ、り、し、あですね」
ん?これはもしかすると?いやまだ早い。
「司祭様。女神様のめという文字は女神様と書く時だけの文字ですか。メイスのめでも同じ文字になりますか?」
「ルカの言う通りメイスのめも同じめです。面白いことに気づきますね」
この後いくつか質問したり実際に文章を読んだ結果、大陸共通文字が表音文字であることがわかった。見た目は変な記号っぽいけどひらがなと同じだ。ちなみに神聖文字はカタカナみたいなものだった。
5日後、僕は大陸共通文字を完璧に読み書きできるようになった。なんなら時間が余ったので神聖文字も覚えた。
「ルカ!あなたは天才です!代書屋の才能があります!ピーターさんには上手く言っておくので冬に仕事がない日はぜひ教会に来て下さい!美しく字を書く練習をしましょう」
やりすぎてしまった。まさかここまで賞賛されるとは…。
「私は今まで正式な書面以外、文字は読めるように書ければ十分だと思っていましたが、考えが変わりました。これからマリアに大陸共通文字を華麗に、美しく書くよう指導しに行きます」
マリアごめん。僕がノリで大陸共通文字と神聖文字を超カッコよく書いたら司祭様はすごく感動したみたいで清書の鬼になってしまった。
本当にごめん。次にマリアに会うときは謝罪から入ろうと決意した。
心地よい風に冷たさを感じるようになった。収穫祭が近い。夏に文字を覚えたと思ったらもう秋だ。
その間にいろいろあった。
司祭様が厳しくなったのはお前のせいだとマリアにボコボコにされたり、僕に代書屋の才能があると聞いた父が「農家の子は農業だけを…」とぶつぶつぶつぶつ壊れたテープのように呟き続けたり、司祭様から魔力を使い切ったら魔力量が上がると教わったから、寝る前に試しに使い切ったら大寝坊して母に一日中罵られたり。
うん、司祭様と関わると碌な事にならないと学んだ。
そんなことより収穫祭といえばアイザック兄さんだ。
正確な日にちはわからないが、そろそろ来るだろう。剣を教わりたいが、兄さんと会って話しをするのも普通に楽しみだ。
アイザック兄さんはわずか8歳で伯爵様の私兵にとスカウトされた逸材だ。魔物を狩らせたら領内で右に出るものはいないと言われるほどの兵士で、その戦いっぷりは化け物狩りをする化け物と評されるほど。
僕も強くなるために魔法と身体を鍛えている。アイザック兄さんは言うなれば僕の未来の姿だ。僕が10年後どれだけムキムキになるか兄さんを見たらわかるだろう。
「ただいま」
仕事を終えて家に帰る。扉を開けると知らない男の人がリビングの椅子に座っていた。
くすんだ金髪に日に焼けた肌。スッと通った鼻筋に力強い眉、意志を感じる緑の目。
着ている服はシンプルだけど上等な生地を使っている事がわかる。
立ち上がってこちらに歩いてくる大きな身体。武術を嗜んでいるとわかるしっかりとした無駄のない動き。
「お前がルカか。俺はアイザック、お前の兄だ。短い間だがよろしく頼む」
「うん、よろしく」
驚きすぎて素っ気ない返しになってしまった。
兄さんが屈んでくれなかったら首を思いっきり上げても顔が見えなかっただろう。でかい、本当にでかい。これはまるで……山かな?
僕は将来あんなにでかくなれるのだろうか。少し不安になった。
※ルカが司祭様に見せたのはカリグラフィーで書いた文字
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