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イーザリア王国編
約束
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ミゲルとしばらく話していると、涼しげな顔をした兄さんとボロボロで疲れ切っているダリオがやってきた。
「ふたりともお疲れ様。はい、水」
兄さんがお礼を言いながらグラスを受け取りゆっくり水を飲む。
ダリオは無言でひったくるようにグラスを受け取り喉を鳴らして一気に水を飲んだ。
「おかわりいる?」
「ありがとう、お願い」
ダリオは2杯目を飲み切ってやっと落ち着いたらしい。手合わせの様子を語ってくれた。
「アイザックさん強すぎ。手も足も出なかった。剣と盾を吹っ飛ばされて、最後に俺も吹っ飛ばされた時は死ぬかと思った」
「何も出来なかったって本当っすか!ダリオは銅級の中でも飛び抜けて強いから信じられないっす!」
「マジよマジ。泣きながら土下座して、誤解が解けた後にまた手合わせしたけど、俺だけ体力消耗して終了ー。てかミゲル後で覚悟しとけよ」
「謝るから許してほしいっすー!」
ミゲルがダリオに謝りながら言い訳をしている横で、兄さんに報告する。
「ミゲルいいやつだったよ。誤解があったみたい。後で説明するから許してあげてほしい」
「ルカが許すなら俺はそれでいい」
「そっか。兄さんもお疲れ様」
「ありがとう」
ミゲルが兄さんに嫌われたままでは悲しいからね。後でミゲルのことを話そう。
ミゲルの謝罪も終わった様子なので、ダリオに声をかける。
「ダリオ、ちょっとそこに立って」
「どうしたの?」
「いいから早く」
ダリオは怪訝な顔をしながら、僕の言う通りにする。
僕は魔法を使って、ダリオの身体の傷を確認した。直接触らないので兄さんに使った時よりかなり雑だがないよりマシだろう。
なるほど、兄さんは結構手加減したらしい。全身に細かい傷があるがそこまで怪我はしていない。左手の人差し指が突き指をしているくらいだ。僕はダリオに聖属性魔法《回復》をかけた。
「回復の魔法を使ったよ。左手に違和感ない?」
「え?……本当だ、痛くない。ルカは聖属性持ち?」
「弱い魔法しか使えないけどね。魔力もギリギリ。今ルカちゃんって言われても反撃できない」
「いやいや、十分だって。助かったよ。ありがとね、ルカちゃん」
「どういたしまして」
「お、本当だ。ビリビリがこない」
僕の方こそ感謝したい。僕が弱い回復しか使えず、魔力も少ないとアピールできた。
今後人の目があるところで、兄さんを回復することがあるかもしれない。
その時ダリオなら、僕が回復職として使えない人間だとちゃんと周りに説明してくれるだろう。
兄さんより第三者に説明してもらったほうが信憑性もある。勧誘されていちいち断るのも面倒くさいし助かった。
問題は兄さんだ。僕がダリオに回復を使ったことに複雑な顔をしている。
ミゲルの件も説明しないといけない。長くなりそうなのでそろそろ帰りたい。
「僕達はそろそろ帰るね。ミゲルまた話そう!ダリオもまたね」
「ルカ今日はありがとう!また話したいっす!」
「またねー。アイザックさん、今日はありがとうございました」
「……ああ」
部屋に着いた途端、兄さんが一気に不満を語り出した。
数時間に及ぶ話し合いの末、今後僕は兄さん以外の人間に、回復の魔法を使わないと約束させられた。
ダリオを回復した件で兄さんに小言を言われてる間『今の僕って、恋人に浮気がバレて怒られている男の人みたいだなぁ』と思ったことは内緒にしておこう。
「ふたりともお疲れ様。はい、水」
兄さんがお礼を言いながらグラスを受け取りゆっくり水を飲む。
ダリオは無言でひったくるようにグラスを受け取り喉を鳴らして一気に水を飲んだ。
「おかわりいる?」
「ありがとう、お願い」
ダリオは2杯目を飲み切ってやっと落ち着いたらしい。手合わせの様子を語ってくれた。
「アイザックさん強すぎ。手も足も出なかった。剣と盾を吹っ飛ばされて、最後に俺も吹っ飛ばされた時は死ぬかと思った」
「何も出来なかったって本当っすか!ダリオは銅級の中でも飛び抜けて強いから信じられないっす!」
「マジよマジ。泣きながら土下座して、誤解が解けた後にまた手合わせしたけど、俺だけ体力消耗して終了ー。てかミゲル後で覚悟しとけよ」
「謝るから許してほしいっすー!」
ミゲルがダリオに謝りながら言い訳をしている横で、兄さんに報告する。
「ミゲルいいやつだったよ。誤解があったみたい。後で説明するから許してあげてほしい」
「ルカが許すなら俺はそれでいい」
「そっか。兄さんもお疲れ様」
「ありがとう」
ミゲルが兄さんに嫌われたままでは悲しいからね。後でミゲルのことを話そう。
ミゲルの謝罪も終わった様子なので、ダリオに声をかける。
「ダリオ、ちょっとそこに立って」
「どうしたの?」
「いいから早く」
ダリオは怪訝な顔をしながら、僕の言う通りにする。
僕は魔法を使って、ダリオの身体の傷を確認した。直接触らないので兄さんに使った時よりかなり雑だがないよりマシだろう。
なるほど、兄さんは結構手加減したらしい。全身に細かい傷があるがそこまで怪我はしていない。左手の人差し指が突き指をしているくらいだ。僕はダリオに聖属性魔法《回復》をかけた。
「回復の魔法を使ったよ。左手に違和感ない?」
「え?……本当だ、痛くない。ルカは聖属性持ち?」
「弱い魔法しか使えないけどね。魔力もギリギリ。今ルカちゃんって言われても反撃できない」
「いやいや、十分だって。助かったよ。ありがとね、ルカちゃん」
「どういたしまして」
「お、本当だ。ビリビリがこない」
僕の方こそ感謝したい。僕が弱い回復しか使えず、魔力も少ないとアピールできた。
今後人の目があるところで、兄さんを回復することがあるかもしれない。
その時ダリオなら、僕が回復職として使えない人間だとちゃんと周りに説明してくれるだろう。
兄さんより第三者に説明してもらったほうが信憑性もある。勧誘されていちいち断るのも面倒くさいし助かった。
問題は兄さんだ。僕がダリオに回復を使ったことに複雑な顔をしている。
ミゲルの件も説明しないといけない。長くなりそうなのでそろそろ帰りたい。
「僕達はそろそろ帰るね。ミゲルまた話そう!ダリオもまたね」
「ルカ今日はありがとう!また話したいっす!」
「またねー。アイザックさん、今日はありがとうございました」
「……ああ」
部屋に着いた途端、兄さんが一気に不満を語り出した。
数時間に及ぶ話し合いの末、今後僕は兄さん以外の人間に、回復の魔法を使わないと約束させられた。
ダリオを回復した件で兄さんに小言を言われてる間『今の僕って、恋人に浮気がバレて怒られている男の人みたいだなぁ』と思ったことは内緒にしておこう。
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