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冒険の旅

王都へ3

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 日緋色玉鋼の騒動で仮眠中に起こされてしまったら何だか眠れなくなっちゃったので、レストランルームに来て、カモミールティーを飲んで居ると、マカンヌさんが起きて来た。
「あらぁ、エリーちゃんじゃないの~、王都楽しみで眠れないの?」
「流石にそれは無いですよ~、今、山を越える為に掘り進んでるんですけど、さっき巨大な鉱石を掘り当てちゃったので、仮眠中に起こされちゃって、そしたら何だか寝付けなくなっちゃったんですよ、で、こうしてカモミールティーで睡眠導入しようと。」
 私がそう言うと、思い出したように、マカンヌさんもお茶を注文した。
「そうだったのね~、私はあなたのお陰でこうやって夜中に出歩いて居ても、疲れた時にいつでも脳を休ませて電脳で行動出来るから。」
 いや、私にも電脳有るから出来ない事は無いけどちゃんと休もうと思ったらしっかり寝た方が良いんだってば。
 まぁあなたみたいに全身義体は使って無いからちゃんと動けるかは別として、受け答え位なら余裕でできますよ。
「丁度良かった、マカンヌさん、全身義体にもすっかり馴染んで動きやすく成った頃だと思うんで鑑定させてね。」
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 Name:マカンヌ(種族:デミヒューマン・犬)職業:Shinobi—Assassin
 Lv.45(弱体中) HP:2850/2850vi(弱体中)【弱体終了後最大4890vi】 MP:183/183mas SP:100%
 防御力:102 体力:455 腕力:880 精神力:1032 速力:2451 命中力:600 魅力:780
 固有スキル
 ・デザインマスター ・編み物の極み ・洗濯の極意 ・料理の極意 ・清掃王 ・見様見真似 ・変装 ・忍術 ・我流格闘 ・忍具装備 ・忍術札作成 ・忍具作成 ・縄師 ・拷問技師 ・快楽師 
 保有スキル
 ・隠密(lv.80)・家庭医学(lv.48) ・医食同源(lv.70) ・折檻(lv.76) ・真相追及(lv.90) ・拷問(lv.87) ・偽装(lv.MAX) ・暗殺(lv.98) ・投擲(lv.57) ・枝跳び(lv.44) ・刀剣術(lv.30) ・魅了(lv.44)・性感術(lv.57)
 下級忍術(Lv.55)
 〇水遁すいとん:・水柱《みずばしら》 ・水走《みずばしり》 ・水隠《みずがくれ》 ・霧隠《きりがくれ》 ・水纏《みずまとい》
 〇火遁かとん:・火焔《ほむら》 ・火柱《ひばしら》 ・爆炎《ばくえん》 ・微塵隠《みじんがくれ》 ・火纏《ひまとい》
 〇風遁ふうとん:・風塵《ふうじん》 ・風飛《かざとび》 ・風切《かざきり》 ・風聞《かざきき》 ・風纏《かざまとい》
 〇土遁どとん:・岩牙《いわきば》 ・岩砕《いわくだき》 ・土隠《つちがくれ》 ・地割《じくだき》 ・土纏《つちまとい》
 〇木遁もくとん:・木葉隠《このはがくれ》 ・蔦縛《つたしばり》 ・幻森《しんきろう》 ・変り身かわりみ ・木纏《きまとい》
 〇光遁こうとん:・閃光《せんこう》 ・影縫《かげぬい》 ・影分身《かげぶんしん》 ・暗視《やみよみ》 ・光纏《ひかりまとい》
 〇闇遁あんとん:・影渡《かげわたり》 ・影収納《かげしゅうのう》 ・闇躱《やみかわし》 ・闇隠《やみかくれ》 ・闇纏《やみまとい》
 〇他:・煙玉《けむりだま》 ・人隠《ひとがくれ》 ・軽身功《けいしんこう》 ・治癒功《ちゆこう》 ・精神統一
 称号
 ・料理教諭 ・収納上手 ・床上手 ・調薬師 ・調毒師 ・化粧師 ・調香師 ・術札職人 ・忍具職人 ・火薬師 ・気功師 ・堪え忍ぶ者 ・暗殺者 ・偽る者 ・女王様
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 え?何じゃこりゃ、いくら何でも生身の時に鑑定したのと大幅に変化しすぎでしょう?
 いくら新型の全身義体だっつってもなぁ、確かに、質感がより人の皮膚に近付いたりしただけで無くて、高性能にもなったのは事実だけどさ。
 何故かレベルは下がってるんだし、職業だって、主婦だったのに、何その シノビ‐アサシンって・・・
 後さ、何この貞操の危機を感じ得ないヤバそうな称号やスキル・・・
 私が向いてると思ったからってそんな所忖度しなくても良いのに。
 恐らくは私のイメージをナノマシンが再現しようとした結果のステータスアップな気がしてならない、ンだけどさ・・・
 この忍術に関しては私は知らんぞ!?
 知識は多少あるし、私の知ってる術に近い物は見受けられるけど、こんな術作った覚えは無い、断じて無い!
 大体、全身義体の機能の筈の光学迷彩を利用してるとしか思えないものがスキルとして表記されてるってどう言う事なんだ?
 もしかしたら私はナノマシンのAIに手を加え過ぎたのかも知れない、どう考えてもナノマシンが自から成長してる結果としか思えない。
 まぁ、確かに一部のナノマシンにはある程度の成長を促す機能は付けたけど、こんな大きく成長するようには設定した覚えも無い。
 まさかとは思うけど、許容範囲限界まで成長をしたナノマシンが生み出した次世代が又許容範囲限界まで成長、ってこんなのを繰り返してここまでになったのでは無いだろうか。
 以前の世界には無かった魔素の存在が変革を齎した可能性も否定出来ないところだ。
 だとしたら、短期間にここまで成長した事に驚きを覚える所だ。
 だが今はマカンヌとの対話に集中しよう。
 検証は後でもできる。
 冷や汗をかきながら考えて居ると、ハコンダーZがマカンヌの注文のお茶を運んできた。
「この子可愛いわよねぇ、お名前有るのかしら?」
「ああ、この配膳ロボはね、ハコンダーZって言うんだ。」
「あら、折角だから、名前を、配膳アイドルハコンダーZにして、赤と青と緑の三色作ってくれないかしら?」
 意味が解らんがまぁそう言うならとすぐその場で作って見た。
 スキルですぐに出来ちゃうしね。
「うぅん、良いわぁ~。 赤の子はほっぺにエクボ、付けなきゃね。」
 何の事かは判らないけどマカンヌさんの要望に応えてエクボにあたる凹みを付けると、何だか可愛くなったぞ?
「こんな感じ?」
「うん、良いわよぉ~、とってもかわいい。」
 ご満悦のようで何よりだ。
「ところでマカンヌさんさぁ、鑑定結果、とんでもない成長や変化を見る事が出来たんだけど・・・どうやったらこんな事に成っちゃうわけ?
 何時からシノビに成ったのさ。」
「それがねぇ~、私も昨日気が付いたのよぉ~、それに、新しい知識も増えてるのよねぇ~。」
 多分新しい知識ってのは術札の書き方とか、忍具の製造や術の発動方法に付いてだろう、けど、術に関しては私も一見したい所だ、興味は有る、ナノマシン達がマカンヌさんの為にどんな成長をし、進化を果たしたのか、気になる。
 その為にもマカンヌの術を見せて貰おう。
 早速、甲板上に的になるマネキンを用意し、実践して貰う事にした。
「あのね、エリーちゃん、術札を持って居ないのよぉ~、作れるみたいだから材料の紙は無いかしら?」
「おお、そうだね、この世界の紙って羊皮紙なんだけど、それじゃダメな気がするけど、植物紙で良いの?」
「そうねぇ~、多分植物紙?って奴かしらぁ~? あるの?」
「あるよ、これね。
 それと、マカンヌさんの電脳に植物紙の製法アップしとくね~。
 後、これがインク、多分だけど墨のが良い筈だよね?」
「うふふふ、ありがとう~。」
 うん、いちいち色っぽいのは相変わらずだ。
 早速マカンヌさんスキルを発動して術札を作ったので、それを見せて貰う事にしたんだけど、私の思って居たお札みたいな物では無くて、トランプのカードのようなある程度の弾力のある硬い物だった。
 サイズ的にもトランプだ。
 トランプか・・・今度作って売り出そうかな。
 娯楽室に4セット位作って置いとくか。
 何種類か遊び方の説明書付きでな。
 まぁそれは置いといて、それじゃあ、トンネルも掘り終わったようなので、試して頂きましょう!
「はぁい、行きますよぉ~。 水遁、水柱ぁ~。」
 と言って、マカンヌが術札にマナを注ぎ、人差し指と中指で挟んだカードを親指の付け根辺りで押さえ、弧を描くように軽く曲げ、手首のスナップを聞かせて前方に押し出すように投げると、驚くほどキレイに飛んで行く。
 手品師なんかがカードを投げる要領だな。
 そして、術札が的のマネキンに近づいた頃に、マカンヌさんが両手で印を結び、「発!」
 と念を放つと、術が発動し、カードが現在有ると思われる付近、半径20m程の割と広い範囲で複数本の水柱が発ち、的のマネキンは粉砕して居た。
 成程、これはアレなのね、何かの物語で読んだ事があって知識として知って居たけど、この術札の元ネタは魔術師が占いとかに使うタリスマンと言うカード、そしてそのタリスマンは、攻撃時に投げて使い、その図柄に沿った属性攻撃が出来ると言う物だわ。
 そうか、この世界の書物を検索したナノマシンは、そこで得た知識と私の元々持っている知識を組み合わせてこんな方向に忍術と言う魔法を構成する事にしたのか。
 元々忍者は投擲スキルも高めになるし、暗器や手裏剣等を使うのでその複線的に魔法も、術として同じように投げて使うと言う事か。
 面白いね、私の放ったナノマシンは私の考えの斜め上を良く進化を果たしたらしい。
 この世界でナノマシンを再現し、世界を見聞させた甲斐が有ったと言う気がする。
 ある程度私が直接手を掛ける所もまだまだ多いしナノマシンにも目が離せないけど、面白い世界に成りそうだ。
 もしかするとこんな効果も有って欲しいと思ってあの自称神は私をここに連れて来たのかも知れない。
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 その後、他の忍術も使って貰ったが、攻撃術は全て範囲攻撃だった、成程これならタリスマンが有効だ。
 そして更に言うと、この忍術、魔法と比べて威力の割にマナ消費量が少なく、周囲の魔素を利用して具現化するようで、非常に効率が良い。
 ちなみに手元で発現させる術の発動時には、手品師が手の上等で燃やす紙、フラッシュペーパーのように一瞬で燃え尽きてカスすら残らなかった、触った感じは普通の硬質紙のタリスマンなのにどういう原理なのだろう。
 恐らくは術札は、描かれた模様と言うか、梵字のような文字で周囲のナノマシンに指示を出す指示書のような物になって居て、マナは呼び水のような使用方法でナノマシンへ指示を与える為に使う、それで指示を受けたナノマシンが周囲の魔素を使用して発動させるというシステムだろう。
 これだと、MPのそれほど多くない人物でもそれなりに術を使いこなす事が出来そうだ。
 多少は術によって消費するマナ量は違うみたいだけど、概ね大した量は消費していないように思われる。
 始めて魔法(と言うか忍術)が使えたマカンヌは、自分の新しいスキルに驚きながらも、これで旦那のサポートが出来ると感激して居た。
 で、今度はこっちが詰め寄られる番のようです。
「ねぇエリーちゃん? 私に忍具を作る為の材料を提供して欲しいのだけど。」
「マカンヌさん、あのさぁ、素材の提供は吝かじゃ無いんだけどね、何でワザワザ私を押し倒しておねだりしてるのかな? いちいちエッチな方向に見えて仕方ないのだけど?」
「いやん、気のせいよぉ~? 知っての通り私は亜人の中でも犬人だから、スキンシップが好きなだけよぉ~。」
 と言いながら腰をクネクネするのを辞めれ。
 判らんでも無いけど、それにしても押し倒しておねだりってボルゾイとかラブラドールみたいな方法取るなよ。
 ってか、忍具を作るのに素材かぁ・・・
 そう言えばさっき良いの手に入れたっけな、もっとじっくり調べる積りだったんだけどさ。
「判ったから退いてくれる?良い素材有るんだけどデカイから出すのに邪魔なんだけど。」
「流石エリーちゃん、優しい~。」
「いや、お代は頂くからね?」
「えぇ~、ケチぃ~。」
 ケチって言うなケチって!
 折角のレア金属出してやろうってんだからさぁ。
 取り出した日緋色玉鋼を見て改めて驚く、こんな巨大な鉱石がゴロンと丸ごと埋まってたってんだから絶対隕石だろ、これ。
 こんなにいっぱい要らんだろうから10㎏分位割って提供。
 オリハルコンと同系金属なので、魔素の影響を受けにくく加工し辛い金属で、まぁもしもこの金属で剣を作ったとすると、魔法をそんな剣で受け止めると、霧散する、多分ね。
 だから盾や小手に加工するのもアリだろう。
 魔法は通さないし硬いので剣の攻撃も受け止める良い防具になる筈。
 でも多分それだけでは不足だろうから、帝国に侵攻した時に集めて置いたミスリルも提供、こっちは逆にマナや魔素を良く通す。
 他にも、オーガニウムとタングステンなどの前の世界にもあった金属を提供。
 恐らくオーガニウムの特性を利用すると、ミスリルの特性を生かしつつ日緋色金の特性も持ち合わせた、アダマンタイトも驚きの金属が出来る事だろう。
 私も今度色々合わせて見よう、日緋色金が隕石金属と言うならば、アルミやクロムをニッケルと混ぜた時のように変った性質を発現する可能性も少なくは無い筈だ。
 勿論、ニッケルと合わせる事も検討しよう。
「あらぁ、素敵な材料ねぇ、これで忍刀作っちゃおうかしら? 他にも何種類か欲しいわねぇ。」
 普通の鉄鉱石にボーキサイト、輝水鉛鉱、灰重石辺りを提供して様子を見てみよう。
「はい、んじゃこの辺りで良いかな?」
「後、クロムとチタンも欲しいかもぉ~。」
 これまで主婦してた人と思えない発言、スキル欄に乗って居る忍具作成の権能か、やたらと金属の知識が増えて居るらしいな。
 そして私の錬成のようにナノマシンを器用に使い熟して錬成を始めるマカンヌさん、待て待て、何で勝手に手伝ってんのよ!??ナノマシン!
 マカンヌ周辺のナノマシンを1個体捕まえて私の権限レベルで検査して見たら、0から10の11段階の権限中、マカンヌの権限が一部の錬成用ナノマシンの使用可に成るレベル6にまで引き上げられていた。
 当然私の権限は10の最高値なんだけどさ、レベル6権限なんて、薬の精製を許可してるクリスとあの神父だけだったんだけど、ナノマシンが恐らくこの権限レベルを与えないとこのジョブは使い物に成らないとでも思ったって事か・・・ああ、そうか、この世界には基本植物紙が無いので、術札を作る為には植物紙を錬成する必要があった訳だな、さっき渡した紙がトランプみたいに精製されてた時に気が付くべきだった。
 私もマダマダだな、自分で作ったナノマシンに予想の斜め上をいかれるなんてなぁ。
 完成した忍具は、忍刀、苦無、撒きビシ、四方手裏剣、鎖鎌、忍び小手、そして、風魔手裏剣だった・・・
 あのでけぇ手裏剣作っちゃったよこの人。
 風魔手裏剣は、封魔手裏剣とも書くのだけど、その字の通り、この手裏剣にはアンチマジックの追加効果があった、これってもしかして日緋色金の効果かな?
 ってかアンチマジックは今未だあんまり意味を成さない、なんたって魔法使えるの私達だけだ、封魔手裏剣は私を裏切る気で作ったように見えてしまうのは気のせいだろうか?
 忍具が完成してご満悦のマカンヌは、早速影収納に整頓するように丁寧に仕舞いながら鼻歌を歌っている。
 その鼻歌には少し気になる所があった。
 何故かその鼻歌は、NA〇UTO のオープニングにも使われた事のある曲、たしかブ〇ーバード?だったからだ。
 まさかとは思うけど・・・マカンヌ転生者?
 それで、忍びのジョブ獲得でこんな異様に覚醒したのか!?
 ん~~?絶対そうだ、これまでの振る舞いと良い、そんな気がしまくってる私がそこに居たのだ。
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