幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一

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第12章 新婚旅行

第46話 新婚旅行(3)~アパートメントホテル~

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 ヒースロー空港に着いた俺たち。
 食事を終えると現地時間でもう午後8時を回っている。
 本格的な行動は明日から。ヒースロー・エクスプレスで一路ロンドンへ。

「似てるようで結構違うよね」

 車内を落ち着きなく見渡す百合。
 疲れ気味だけど興味津々といった様子だ。

「つり革とかないしな。それと結構空いてるもんだな」

 イギリスの中心部。結構混んでいるのではないかと思ったけど、意外にそこまででもない。

「でも、少しだけゆっくりできるかも」

 スペースにも余裕があるので、隣り合って座っていても飛行機のエコノミー席と違って窮屈じゃない。

 うとうとした様子で肩を寄せる百合ゆりは眠そうだ。

「ごめん、修ちゃん。少し眠いかも……」
「着いたら起こすから寝てろって」
「うん……」

 よっぽど疲れていたんだろう。俺に寄り掛かったと思ったらそのまま眠りについてしまった。実は結構俺も眠いんだけど、ここは日本じゃない。二人とも安心して眠ってしまったら窃盗にあわないとも限らない。

「ふわぁー」

 あくびを噛み殺しながら車内を観察すると少し意外な光景。
 ロンドンと言えばヨーロッパでもっとも有名な都市のひとつ。
 てっきり白人が多いと思い込んでいたけど、俺たちと同じような肌の色の人もいるし、黒人だっているし、服装も色々だ。

(こういうのは日本じゃ見られない光景だな)

 日本だって最近は外国人観光客だって多い。それでも、ほとんどの人が日本人でそれが当然のような気がしていたけど実は少し日本を出れば全然当然じゃないんだな。

 それと、日本と違って列車で眠っている人は驚く程少ない。日本だとよく見かける光景が当たり前じゃなくて、日本だと見かけない光景がこっちだと当たり前。やっぱりここは外国なんだと強く意識する。

 慣れない英語のアナウンスを聞きながら、眠気を必死に噛み殺してロンドン中心部の駅までなんとか我慢したのだった。

「修ちゃん、ごめんね……」
「気にするな。もう少しでアパートメントホテルだし」

 駅からはタクシーで。カタコトの英語で伝わるのか不安だったけど運転手さんは親切で、なんどか聞き返してきてくれたおかげで無事に目的のアパートメントホテルに到着。

 ホテルのロビーで英語で色々記入した後、パスポートの提示を求められたので見せる。パスポートが身分証明書ってのはこういうことか。

「とうちゃくー!」

 荷物を入口近くにぽいっと置いたかと思えばダブルベッドにダイブする百合。

「俺も眠い……」

 時差ボケの影響もあるんだろうけど、ダブルベッドに同じく飛び込む。

「ほんっと疲れたよー」
「お疲れな。つか、眠気が凄すぎて困る」

 目を開けているのも辛い強烈な眠気だ。

「うん。時差ボケってこんななんだね」

 眠りに落ちることに抵抗があるのか必死で目を開けていようとする百合だけど、うつらうつらでもう限界らしい。ていうか、俺もだいぶ限界だ。

「あのさ。もうこのまま寝ないか?」
「うん……シャワー浴びたいけど、私も限界」

 見つめ合っているのに色気も何もあったもんじゃない。

「でも……」
「?」
「眠る前にキス」

 眠そうな顔だけど、冗談じゃなくて本気らしく唇を突き出して近づけて来る百合。

「ああ、うん……」

 眠い頭でキスなんてと思うけど、キスの仕方は身体が覚えている。
 しばらく舌を絡ませ合っていると、

「あのね。修ちゃん」
「どうした?」
「新婚旅行、こっちに連れてきてくれてありがとうね」
「それくらいお安い御用だって」
「うん。その……明日は色々しようね」
「ああ。たぶん、明日は眠気もとれてるって」

 正確にはそうあって欲しい、だけど。

「本当は、ホテルに着いたら……もっとイチャイチャしたかった」
「俺もまあ。でも、本気で眠気がやばい」
「それは私も」

 というわけで、

「よし。もう寝る!」
「わたしも寝る!」

 こうして時差ボケ(?)による睡魔に負けた俺たちはベッドでお互いを見つめ合いながら眠りに落ちるという珍しい経験をしたのだった。

 明日から数日間、どうなるやら。
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