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101.ブルサンダー公爵家に到着しました

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「来てくれてありがとう。どうしてもお礼を言いたくてね。本当はこちらから伺うべきかとも思ったんだけど、セチアはまだ外出は無理そうだから、マリー嬢が来てくれると聞いて本当に嬉しかったよ。」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。まだ体が動かせないので、このたまご型の乗り物の中からで失礼します。」
「無理を言ってきてもらったのはこちらなんだからいいんだよ。こんな所ではなんだから部屋でゆっくりと話を聞かせてくれるかい?」
「もちろんです。」

アーサーのお父様に案内されて入った部屋はとても可愛らしい部屋だったの。えっ?ここでお話しするの?
「父上この部屋はなんですか?」
「この部屋はね、セチアがどうしても女の子が欲しいと言ってアーサーが生まれる前に作っておいたのだが、またしても男の子(アーサー)だったから使わずじまいになってしまった部屋だよ。それでセチアがこの部屋をマリー嬢に使って欲しいと言ってね。セチアはだいぶ良くはなっているがまだ長い間起きていることはできなくてね。」

「そうでしたか…。」
「では、セチア様のお部屋でお話しませんか?」
「いいのかい?」
「もちろんです。ねぇ、アーサーいいでしょう?」
「父上、そうしましょう。」
「セチアが喜ぶよ。」
あら、公爵様が涙ぐまれているわ。アーサーの泣き虫はお父様譲りなのかしら?

セチア様の部屋に行くとアーク様とリック様もみえて、
「父上、母上、ご報告が遅れましたが、マリー嬢と婚約をいたしました。そして、つい先程改めて、マリー嬢に了承を得ることもできました。」
「アーサーおめでとう。こんなに素敵なお嫁さんをもらえて良かったわね。」
「マリー嬢、これからは、私のことも父だと思ってもらえると嬉しい。」
「もちろんです。アーサーのお父様とお母様ですもの。マリーとお呼びください。よろしくお願いいたします。」

「僕たち殺されないよね。」
「アーク、それはどういう意味だい?」
「だって、この間、僕たち一人ずつの心臓を…。」
「あ、あれは冗談でして、ごめんなさい。」
やっぱり、悪役令嬢決定なのかしら?忘れて欲しいのに。

「兄上、それ以上マリーをからかうなら僕は兄上と口を聞きません。」
「私もよ、アーク。アークがそんなに意地悪さんだとは思わなかったわ。」
「すみません母上。マリー嬢が余りにも可愛らしいので、つい、ふふふ、からかってしまいました。マリー嬢ごめんね。」
「いえ、その節は緊急事態だったとはいえ、物騒なことを言いまして本当にごめんなさい。」
「マリー嬢、謝らないで、アーサーからの地味な攻撃魔法が痛いよ。」
「「「アークが悪い。」」」

「ふふふ。こんな楽しい日が来るなんて思わなかったわ。」
セチア様にとっては本当につらくて苦しい時間だったわよね。誰にも気づいてもらえないなんて…。あれから一年以上経っているのにまだこんなに痩せているし、大丈夫なのかしら。私は思わずセチア様に電動車椅子で近づいていったわ。
「セチア様、私も回復するためにいまは訓練中です。一緒に頑張ってくださいますか?]
「もちろんよ、私は何をすればいいのかしら?」
「私の手を握っていただけますか?」

セチア様は私の手を優しく握ってくださって、私はセチア様が元気になるように祈って光魔法を送ってみたわ。できるかしら?リハビリだものね。
「なんだか気持ちが良くて、温かいわ。あら、薄っすら光ってる?」
「マリー大丈夫なの?」
「だから、リハビリよ。魔力も訓練あるのみって言われてるもの。」

「そう言えば、マリー嬢は光魔法が使えるんだよね。」
「はい、リック様。」
「母上はたぶん魔力の核がだいぶ傷んでいるんだよ。もしよかったら、そうやって、時々光魔法を流してあげてくれないかい?」
「もちろんです。でも、見ての通り流れているかどうか怪しい程度ですけどね。」
「マリーちゃんの手が握られるだけで、私は治りそうよ。」

それから色々なお話を聞いたわ。一番驚いたのはセチア様がアーク様の本当のお母様の妹さんだったこと。アーク様のお母様はアーク様を産んですぐにセチア様にアーク様を預けて遊びまわる様になり、ある日、お酒を飲んで階段を踏み外して亡くなられたのだとか。とても我がままで自由奔放なかただったようだわ。そのままセチア様はアーク様と過ごすうちに情が湧き、徐々に公爵様とも仲良くなり、公爵様からプロポーズをされて結婚されたんですって、通りでリック様とアーク様がそっくりな訳だわ。。ちなみにアーク様は小さい頃はずっとセチア様を本当のお母様だと思っていたのだとか。そんな素敵な思い出もあったのね。良かったわ。でもこの話、リック様も知らなかったみたいね。目が点になってしまっているわ。この家は会話が足りなさすぎたのね。

今度はアーサーのお話を私がする番ね。アーサーが嫌な予感がするのかそわそわしているわ。
「アーサーは小さい頃は泣き虫で、すぐに泣いていましたわ。だから私がそばにいてあげたんです。私がいれば大丈夫だったんですよ。私が見当たらなくなるとすぐに泣いちゃうんです。でも、優しくて怒ったところなんてほとんど見たことありません。それに、すごく器用なんです。あとは、剣の腕もすごいんですよ。苦手なものは…。」
「マリー、恥ずかしいよ。もうそれくらいにして…。」
アーサーが真っ赤になっていたわ。悪いことしちゃったかしら?でもお母様もお父様も嬉しそう…。

「アーサーのこと泣き虫って、マリーちゃんはすごいね。あの頃アーサーはみんなに恐れられていたんだよ。」
「そうみたいですね。アーク様の言いたいことは分かります。だからたぶん、私はもっと恐れられていたんじゃないですか?王宮で仁王立ちしてアーサーに説教している女の子って。」
公爵様が何かを思い出したようで、にこにこしながら、
「ふふふ、そんなこともあったね。たしかに、そんな噂があったよ。クライムが僕のところに、うちの娘が魔獣の子を従えてる怪物だと噂されているって怒っていたよ。」

ある意味間違っていなかったかもしれないわ。だって私、アーサーの頭をぺちぺち叩いていたもの…。アーサーごめんなさいね。それから私は一日おきにセチアお母様に手を握ってもらい光魔法の練習をするという口実でブルサンダー公爵家をアーサーと一緒に訪れるようになったの。

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