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復興編
森精霊―エルフ―のおまじない
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「わたくしの、胸のここに、テルマさんのキスが欲しいのです」
「……え?」
何がどうなっているのか……天馬はわけが分からずに、ただただ戸惑うばかりであった。
しかも、突きだされたシャーロットの美乳が眼前に迫り、頬に熱を感じてしまう。
「こ、ここにって、え? あの、シャーロットさん?」
「胸の、谷間の上です。ここに、テルマさんのキスを……」
「ちょ、ちょっと待って下さい! シャーロットさん、わたしの話を聞いていましたか?! わたしは、」
「構いません」
「え?」
「たとえ、テルマさんがひとの心を操る術を持っていたとしても、わたくしは貴女というひとの良心を信じております」
「で、でも。シャーロットさんはこんな力を持ったわたしが、怖いんじゃなかったんですかっ?」
「確かに、見えない力は怖かったですわ……でも、今はその力の正体を知りました。そして、テルマさん自身がその力に苦悩していることも、わたくしは知った。そんな貴女なら、信じることができる……そして、信じることができる相手ならば、わたくしは、自分の心に正直になれますわ」
言葉と共に、シャーロットは、天馬の頬に手を添えて、熱の篭った視線で見下ろしてくる。
「わたくしは、テルマさんが好きですわ。綺麗で、お優しく、清楚で、でも、時々天然で……大切な恩人……そんな貴女に、わたくしは自分の心を捧げたいのです……ですから、ここに、テルマさんのキスを……その唇で、わたくしの心臓から、心を持って行ってくださいませ」
「っ?! ま、待って下さいっ、シャーロットさん!」
すっ、とシャーロットは天馬の後頭部に手を当てて、自らの胸に誘おうとする。
森精霊の美しい乳房が目前に迫り、淡く色づく桜色の突起も、天馬の視界は捉えてしまう。
少女の呼吸と共に上下する胸を前に、天馬は顔全体を朱に染めた。
「あぁ……テルマさんの視線を胸に感じます……吐息も熱く湿って……はぁ、はぁ……やはりテルマさんは、『そちらの気《け》』がある方だったんですね……」
「っ?!」
「(そちらの気、って何?! いやいやいや! 俺は普通に男として女の子が好きで……あれ? でも今の俺がそう思うってことは、つまり対外的には女が女を好きになるって意味で……でも中身は男だからノーマルであることも確かなはず……でもやっぱり女の俺が女性にそういう目を向けるってことはやっぱり、って、あああっ、もうわけが分からん!!)」
天馬は盛大に混乱していた。
男の心と女の外見を持つ自分。
そのどちらに心が寄っているのか、判断がつかなくなっていた。
「ふふ……大丈夫ですわ。たとえテルマさんが同性愛者でも、わたくしは一向に……いえ、むしろ」
「シャ、シャーロットさん?! うむっ?!」
「『好都合』ですわ……」
いきなり、シャーロットが天馬の頭を両腕で引き寄せ、自分の胸の谷間に抱き締めてしまう。
化粧など一切していないはずなのに、森精霊の少女から、甘い匂いが漂ってくる。
お陰で脳がくらくらてくる有り様だ。
「ふふ……美人ですのに、可愛い反応をされますね、テルマさんは……」
「か、可愛いいっ?!」
過去に一度も用いられたことのない評価を受けて、天馬の体が、かっと熱を帯びる。
「ええ。本当に可愛らしい……さぁ、テルマさん……わたくしの心を……何でしたら、この場でわたくしの『純潔』まで貰っていただいても……一向に構いませんのよ」
シャーロットの瞳に、妖しい光が宿った。
「さぁ、テルマさん……ン」
シャーロットが体を動かし、天馬の唇を谷間へと導こうとした瞬間、
「――何やってんのよ! あんたは~~~~~~っっ?!!」
鼓膜に響くような金切り声を上げて、一人の少女が天馬たちの方へと走ってきた。
「この泥棒森精霊~~っ!」
「きゃあ?!」
「っ?!」
泥棒猫、と似たようなニュアンスのことを叫びながら、半ば体当たり同然でシャーロットを天馬から引き剥がしたのは、
「ちょ、危ないではありませんか『アリーチャさん』!」
そう。密着する天馬とシャーロットの間に割って入ってきたのは、アリーチェだった。
服は着ておらず、靴も履いていない。それでこの足場の悪い川原を走ってきたのかと思うと、素直に感心してしまう天馬だった。
「あ、ああ、あんた! お姉さまとナニしてたのよ! あんな風に抱き締めるなんて、羨ま……じゃなくて! ハ、ハハ、ハレンチよ! 私だってまだ生でお姉さまと抱き合ったことなんてない……げふんげふん!」
なにやら先程からアリーチェの言い間違いに不審なものを感じる天馬だったが。
正直、この場に彼女が駆けつけてくれたことには安堵していた。
何せあのままいけば、背景に白百合が描写されるような甘い展開へと、シャーロットと共に突入していた可能性が高いのだ。
まぁ、彼女が天馬を『恋愛対象』として見ているという言質は取れていないため、本当にそうなっていたかは謎ではあるのだが。
「(でも、あの時のシャーロットさん、かなり怪しい雰囲気だったしなぁ……)」
艶っぽい眼差しに、熱く濡れた吐息……状況証拠だけならバッチリである。
「全く! 何か嫌な予感がして来てみれば、何やってんのよ、あんた?!」
「何って……これはそもそも貴女が焚き付けた事ではありませんの」
「こんないかがわしい事までしろとは言ってない!」
「いかがわしいとは、聞き捨てなりませんわね。先程の行為は森聖霊の間で古くから伝わる、由緒ある『契りのまじない』ですのよ」
「ち、『契り』?!」
シャーロットの言葉に、アリーチェは目を見開いて驚愕する。
もちろん、天馬も驚きの表情を浮かべていた。
「自分の大切なひと……家族、恋人、そして伴侶……そういった方へ、己の心を捧げ、愛を伝えるおまじないです。心臓に近い場所……胸にキスをもらい、そして相手からもキスを返していただいたとき……お互いは永久なる縁で結ばれ、生涯離れることはないと、森聖霊の間では伝えられています」
「そ、それって、まんま結婚……」
「男女でならそうですね。そもそもお互いに急所を晒すのですから、それだけ相手との信頼関係ができている必要があります。ですが、これは家族や大切な友人とも行うことができるおまじないです。その場合は、絆や家族愛を深める意味合いで使われます……そして、一方だけがキスをされた場合には、また別の意味があるんですのよ……」
そこで、シャーロットは天馬に熱っぽい視線を向けてきて、そっと胸に手を当てる。
「……相手への絶対的な信頼の証を持っていること……それを証明するために、心を捧げる……そのために、キスを頂くのですわ。よって――」
お互いにキスしあう行為は、もともとあった絆や愛を、より強固にするために。
そして片方だけの場合は、相手に絶対的な信頼があると証明する為に。
前者はすでに好意が相手に伝わっているときに使い、後者は……
「意中の相手へ、想いを告白する際に、このおまじないを用いますのよ」
「お、想いの、こ、告白……っ~~~~~~!」
瞬間、アリーチェの顔が真っ赤に染まる。
しかも、シャーロットと同じくらいに白い肌までも、完全に朱の色へと変化した。
「はぁ……いいところでしたが、思わぬ邪魔が入ってしまいました……今から続きをするという雰囲気でもありませんし。またの機会にいたしましょう……その時は、二人っきりで……ふふっ……」
「え、あ……」
「……まぁ、今回はわたくしの気持ちを打ち明けられただけでもよしといたしましょう。それに、テルマさんのお心の中も知ることが出来ましたし……」
「え? お姉さまの心? なにそれ?! え? お姉さまの心って、ちょ、何のことなのよ?! ねぇ、シャーロット!」
「秘密、ですわ。ね? テルマさん」
妙に小悪魔な表情を作り、人差し指をたてる行為は、普段の凛とした印象の彼女からは考えられない仕草で、一瞬だけドキッとしてしまう。
「そ、そう、ですね……」
天馬は、悪戯っぽい笑みを浮かべるシャーロットを前に、ほんの心臓が跳ねるを止められない。
すると、シャーロットが耳元に近付いてきて、耳打ちしてくる。
「わたくしが聞いたテルマさんの力のお話……あれは、秘密にしておいたほうがいいですわ」
「っ!」
「もうすぐ村人たち全員の埋葬が終わりますわ。そうなりますと、これからは本格的に村の復興が始まるでしょう。そんなときに、先程の話を聞かされれば、小さくない動揺が生まれるのは必至。そしてこの事実を快く思わない方だっているかもしれない。最悪、皆がバラバラになってしまう恐れも……それは、誰の為にもなりませんわ。ですから、このことは黙っておいたほうがいいと、わたくしは思いますわ」
「で、でも、それじゃ……」
天馬が、シャーロットの意見に眉を寄せると、
「ちょっと! 二人でこそこそ何を話してるのよ?! 私を放置しないでよ!」
蚊帳の外に追い出されたアリーチェが、またしても突貫してきた。
そのせいで、これ以上の話はできなくなってしまう。
「全く、この森聖霊は……油断も隙もないんだから。吹っ切れたと思ったら、どれだけ積極的なのよ」
「ふふ……これも貴女のおかげですわね、アリーチェさん」
「……選択を誤った気分よ。最悪だわ」
などと、二人が楽しそうにしている中、天馬は新たに浮上した問題。
シャーロットの気持ちにどう応えたものかと、そのことに頭を悩ませ。
更には、皆へ秘密を抱えたままであることへの苦悩もそのまま。
正直に言って、あまり気分は晴れやかとはいかなかった。
しかし、
「テルマさん、これからは、お一人で悩まないで下さいませ。もし、抱えているものが背負いきれないときは、いつでも甘えて下さい。わたくしは、貴女の味方、ですから」
今まで、ずっと一人で抱えていたものを、知ってくれているひとがいる。
現金なもので、たったそれだけのことで、天馬は己の胸のうちが、相当に軽くなるのを自覚していた。
「……え?」
何がどうなっているのか……天馬はわけが分からずに、ただただ戸惑うばかりであった。
しかも、突きだされたシャーロットの美乳が眼前に迫り、頬に熱を感じてしまう。
「こ、ここにって、え? あの、シャーロットさん?」
「胸の、谷間の上です。ここに、テルマさんのキスを……」
「ちょ、ちょっと待って下さい! シャーロットさん、わたしの話を聞いていましたか?! わたしは、」
「構いません」
「え?」
「たとえ、テルマさんがひとの心を操る術を持っていたとしても、わたくしは貴女というひとの良心を信じております」
「で、でも。シャーロットさんはこんな力を持ったわたしが、怖いんじゃなかったんですかっ?」
「確かに、見えない力は怖かったですわ……でも、今はその力の正体を知りました。そして、テルマさん自身がその力に苦悩していることも、わたくしは知った。そんな貴女なら、信じることができる……そして、信じることができる相手ならば、わたくしは、自分の心に正直になれますわ」
言葉と共に、シャーロットは、天馬の頬に手を添えて、熱の篭った視線で見下ろしてくる。
「わたくしは、テルマさんが好きですわ。綺麗で、お優しく、清楚で、でも、時々天然で……大切な恩人……そんな貴女に、わたくしは自分の心を捧げたいのです……ですから、ここに、テルマさんのキスを……その唇で、わたくしの心臓から、心を持って行ってくださいませ」
「っ?! ま、待って下さいっ、シャーロットさん!」
すっ、とシャーロットは天馬の後頭部に手を当てて、自らの胸に誘おうとする。
森精霊の美しい乳房が目前に迫り、淡く色づく桜色の突起も、天馬の視界は捉えてしまう。
少女の呼吸と共に上下する胸を前に、天馬は顔全体を朱に染めた。
「あぁ……テルマさんの視線を胸に感じます……吐息も熱く湿って……はぁ、はぁ……やはりテルマさんは、『そちらの気《け》』がある方だったんですね……」
「っ?!」
「(そちらの気、って何?! いやいやいや! 俺は普通に男として女の子が好きで……あれ? でも今の俺がそう思うってことは、つまり対外的には女が女を好きになるって意味で……でも中身は男だからノーマルであることも確かなはず……でもやっぱり女の俺が女性にそういう目を向けるってことはやっぱり、って、あああっ、もうわけが分からん!!)」
天馬は盛大に混乱していた。
男の心と女の外見を持つ自分。
そのどちらに心が寄っているのか、判断がつかなくなっていた。
「ふふ……大丈夫ですわ。たとえテルマさんが同性愛者でも、わたくしは一向に……いえ、むしろ」
「シャ、シャーロットさん?! うむっ?!」
「『好都合』ですわ……」
いきなり、シャーロットが天馬の頭を両腕で引き寄せ、自分の胸の谷間に抱き締めてしまう。
化粧など一切していないはずなのに、森精霊の少女から、甘い匂いが漂ってくる。
お陰で脳がくらくらてくる有り様だ。
「ふふ……美人ですのに、可愛い反応をされますね、テルマさんは……」
「か、可愛いいっ?!」
過去に一度も用いられたことのない評価を受けて、天馬の体が、かっと熱を帯びる。
「ええ。本当に可愛らしい……さぁ、テルマさん……わたくしの心を……何でしたら、この場でわたくしの『純潔』まで貰っていただいても……一向に構いませんのよ」
シャーロットの瞳に、妖しい光が宿った。
「さぁ、テルマさん……ン」
シャーロットが体を動かし、天馬の唇を谷間へと導こうとした瞬間、
「――何やってんのよ! あんたは~~~~~~っっ?!!」
鼓膜に響くような金切り声を上げて、一人の少女が天馬たちの方へと走ってきた。
「この泥棒森精霊~~っ!」
「きゃあ?!」
「っ?!」
泥棒猫、と似たようなニュアンスのことを叫びながら、半ば体当たり同然でシャーロットを天馬から引き剥がしたのは、
「ちょ、危ないではありませんか『アリーチャさん』!」
そう。密着する天馬とシャーロットの間に割って入ってきたのは、アリーチェだった。
服は着ておらず、靴も履いていない。それでこの足場の悪い川原を走ってきたのかと思うと、素直に感心してしまう天馬だった。
「あ、ああ、あんた! お姉さまとナニしてたのよ! あんな風に抱き締めるなんて、羨ま……じゃなくて! ハ、ハハ、ハレンチよ! 私だってまだ生でお姉さまと抱き合ったことなんてない……げふんげふん!」
なにやら先程からアリーチェの言い間違いに不審なものを感じる天馬だったが。
正直、この場に彼女が駆けつけてくれたことには安堵していた。
何せあのままいけば、背景に白百合が描写されるような甘い展開へと、シャーロットと共に突入していた可能性が高いのだ。
まぁ、彼女が天馬を『恋愛対象』として見ているという言質は取れていないため、本当にそうなっていたかは謎ではあるのだが。
「(でも、あの時のシャーロットさん、かなり怪しい雰囲気だったしなぁ……)」
艶っぽい眼差しに、熱く濡れた吐息……状況証拠だけならバッチリである。
「全く! 何か嫌な予感がして来てみれば、何やってんのよ、あんた?!」
「何って……これはそもそも貴女が焚き付けた事ではありませんの」
「こんないかがわしい事までしろとは言ってない!」
「いかがわしいとは、聞き捨てなりませんわね。先程の行為は森聖霊の間で古くから伝わる、由緒ある『契りのまじない』ですのよ」
「ち、『契り』?!」
シャーロットの言葉に、アリーチェは目を見開いて驚愕する。
もちろん、天馬も驚きの表情を浮かべていた。
「自分の大切なひと……家族、恋人、そして伴侶……そういった方へ、己の心を捧げ、愛を伝えるおまじないです。心臓に近い場所……胸にキスをもらい、そして相手からもキスを返していただいたとき……お互いは永久なる縁で結ばれ、生涯離れることはないと、森聖霊の間では伝えられています」
「そ、それって、まんま結婚……」
「男女でならそうですね。そもそもお互いに急所を晒すのですから、それだけ相手との信頼関係ができている必要があります。ですが、これは家族や大切な友人とも行うことができるおまじないです。その場合は、絆や家族愛を深める意味合いで使われます……そして、一方だけがキスをされた場合には、また別の意味があるんですのよ……」
そこで、シャーロットは天馬に熱っぽい視線を向けてきて、そっと胸に手を当てる。
「……相手への絶対的な信頼の証を持っていること……それを証明するために、心を捧げる……そのために、キスを頂くのですわ。よって――」
お互いにキスしあう行為は、もともとあった絆や愛を、より強固にするために。
そして片方だけの場合は、相手に絶対的な信頼があると証明する為に。
前者はすでに好意が相手に伝わっているときに使い、後者は……
「意中の相手へ、想いを告白する際に、このおまじないを用いますのよ」
「お、想いの、こ、告白……っ~~~~~~!」
瞬間、アリーチェの顔が真っ赤に染まる。
しかも、シャーロットと同じくらいに白い肌までも、完全に朱の色へと変化した。
「はぁ……いいところでしたが、思わぬ邪魔が入ってしまいました……今から続きをするという雰囲気でもありませんし。またの機会にいたしましょう……その時は、二人っきりで……ふふっ……」
「え、あ……」
「……まぁ、今回はわたくしの気持ちを打ち明けられただけでもよしといたしましょう。それに、テルマさんのお心の中も知ることが出来ましたし……」
「え? お姉さまの心? なにそれ?! え? お姉さまの心って、ちょ、何のことなのよ?! ねぇ、シャーロット!」
「秘密、ですわ。ね? テルマさん」
妙に小悪魔な表情を作り、人差し指をたてる行為は、普段の凛とした印象の彼女からは考えられない仕草で、一瞬だけドキッとしてしまう。
「そ、そう、ですね……」
天馬は、悪戯っぽい笑みを浮かべるシャーロットを前に、ほんの心臓が跳ねるを止められない。
すると、シャーロットが耳元に近付いてきて、耳打ちしてくる。
「わたくしが聞いたテルマさんの力のお話……あれは、秘密にしておいたほうがいいですわ」
「っ!」
「もうすぐ村人たち全員の埋葬が終わりますわ。そうなりますと、これからは本格的に村の復興が始まるでしょう。そんなときに、先程の話を聞かされれば、小さくない動揺が生まれるのは必至。そしてこの事実を快く思わない方だっているかもしれない。最悪、皆がバラバラになってしまう恐れも……それは、誰の為にもなりませんわ。ですから、このことは黙っておいたほうがいいと、わたくしは思いますわ」
「で、でも、それじゃ……」
天馬が、シャーロットの意見に眉を寄せると、
「ちょっと! 二人でこそこそ何を話してるのよ?! 私を放置しないでよ!」
蚊帳の外に追い出されたアリーチェが、またしても突貫してきた。
そのせいで、これ以上の話はできなくなってしまう。
「全く、この森聖霊は……油断も隙もないんだから。吹っ切れたと思ったら、どれだけ積極的なのよ」
「ふふ……これも貴女のおかげですわね、アリーチェさん」
「……選択を誤った気分よ。最悪だわ」
などと、二人が楽しそうにしている中、天馬は新たに浮上した問題。
シャーロットの気持ちにどう応えたものかと、そのことに頭を悩ませ。
更には、皆へ秘密を抱えたままであることへの苦悩もそのまま。
正直に言って、あまり気分は晴れやかとはいかなかった。
しかし、
「テルマさん、これからは、お一人で悩まないで下さいませ。もし、抱えているものが背負いきれないときは、いつでも甘えて下さい。わたくしは、貴女の味方、ですから」
今まで、ずっと一人で抱えていたものを、知ってくれているひとがいる。
現金なもので、たったそれだけのことで、天馬は己の胸のうちが、相当に軽くなるのを自覚していた。
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