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- 新たな物語の始まり -
- 新たな物語の始まり - 2話、第1章から読んでも大丈夫です。
しおりを挟むこことは違う
科学の代わりに魔法が発展した世界の話。
記憶の湖と失われた叡智の時代
遥かなる昔——
神の泉から溢れ落ちた神の叡智は
大地を潤すように各地に流れ込み
やがて世界のあちこちに“記憶の湖"を生み出した。
その湖は
過去の出来事、消えた言葉
見えざる真理までもを宿し
そこから情報を引き出す術を得た人々は
魔道具と呼ばれる装置を作り出していく。
記憶を紡ぎ、時間を読み解き
想像すらできなかった知恵を顕現させる魔道具。
それらは生活を、都市を
世界の構造そのものを変革していった。
夢のような時代。
叡智が日常を支配していた黄金の世紀。
•
世界各地に広がった記憶の湖は
それぞれに異なる性質を持ち
そこから生み出される魔道具も
また、湖に応じて異なる能力を備えていた。
やがて人類はそれだけでは足りず
人工の記憶の湖を作り始め
失われた神の恩寵を模倣しようとした。
模倣は繁栄を呼び
繁栄は欲望を呼び
欲望は、争いを生んだ。
湖を巡る国家の衝突
魔道具技術をめぐる情報戦
魔道師の誘拐、魔道具への呪詛
湖の奪還作戦——
叡智が富となり
富が武器となり
武器が戦争を呼んだ。
•
そして、その時が来た。
ある日いきなり繁栄を司っていたはずの
湖から”アレ”は現れた。
アレが何かもわからないまま
一息の間に
世界の三分の一を引きずり込み
世界は、崩壊の淵に立たされた。
そんな
世界中を震え上がらせた現象は
訪れた時と同じように
ある日、突如として姿を消した。
そして同じ頃——
栄華を極めた叡智を極めた
とある国も忽然と姿を消した。
栄華を極めた叡智の王国と呼ばれた、
魔導大国 レオントポディウム。
多くの記憶の湖に魔道具。
そして、多くの人々もまた——消え去った。
•
それから、250年——
海に消えたと言われる文明の残骸から
10年前発見された遺物から
抽出に成功した古代文の一部が
復元されたと発表された。
それは
失われた魔導大国が残した
叡智の断章だった。
人々は再び
記憶の湖を求めて動き出す。
世界が失ったものを
もう一度手にするために。
これは
再び叡智を求めし人類の旅路と
その果てに手にするもの
そして失うものを綴る物語である。
――――――――――
"人を苦しめるのは神じゃない。
人間だ
君から大事なものを奪ったのは
神なんかじゃない。
まるで神になったが如く
振る舞う人間たちによって奪われたんだ。
ままならない時
助けてくれない神を呪いたくなる
"力があるなら
正しく生きてきたから
ずっと信じて祈ってきたんだ
助けてくれ!"
誰だって
一度はつらい時に
思ったことがあるんじゃないかな?
でも、いくら祈ったって
神は助けてくれず
大事なものは奪われ
蹂躙され
2度と戻らない。
怒りを
理不尽を
どこにぶつけていいか
わからなくなるけど
間違えちゃダメだ
神は争えって言った?
憎しみ合え
殺し合えって
それを君たちに
"立場ある人間の口を介さずに"
神が伝えた?
考えて
誰が
何が
本当の原因だったか。
これ以上、奪われない様に
惑わされないで
そうだ。
一つ、僕が好きな話を教えるよ
子どもの頃に読んだ
古い物語の本に書いてあったんだ。
"良い祈りは良い神の御許へ
悪い祈りは悪い神の御許へ
だから
貴方がどの神に祈ったとしても
良い願いは私の元へ届く。
ただ
私が行うように
導いたことではない事柄に
私が
一つの意見だけを尊重して
通すことは残念ながらない。
不思議に思うかい?
利己的ではない
良い願いが届いたとしても
貴方と
対立している人達の中にも
『心優しき正しい者』がいる事はある。
理不尽で悲しいことさ
私の涙はいつも止まらない
皆、願うのは助けや救いばかり
幸せな気持ちが届くことは少なく
憎しみや怒りで悪い神の力は増し
より多くの悲劇が起きる。
いつ終わるのかも
わかりもしない
苦しみに暮れる
愛しい子らの姿を
見続ける苦行に
私も疲れ果てている。
私を恨むなとは言わない
それで
心の平穏を保てるのであれば
ただ、苦しみや恨みに飲まれず
あなたが祈る原因は
どこから来たのか考えて欲しい。
悪い神と呼ばれる者たちは
君たちの言葉で
別の名で何と呼ばれる者なのかも
そして
できればささやかな幸せがあったら
私に教えて欲しい
喜びや幸せは私の力になる
ああ
せめて多くの愛しい子達が
今日を
憂なく過ごすことを
私は祈ることにするよ"
いい話だと思わないかい?
そうだね。
僕も君が少し楽になる事を祈るよ
考えすぎると
怒りや理不尽で
吐きそうにならないかい?
少し眠るといい
目が覚めたら
また動けばいいのだから"
―――――――
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