湖に刻まれた記憶 失われた叡智を求めて-生成AIと綴る物語-

Kai

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- 5 - 湖の庭園と

- 5 - 湖の庭園と 3

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研究所奥の立ち入り制限区域、その中枢に位置する白い神殿のような建物。


重厚な扉が、テオの手によって静かに開かれた。


先導されるように中へ足を踏み入れると、ひやりとした空気が肌を刺す。



魔力を吸収する特殊な建材で覆われているのか、外の喧騒はおろか、自身の魔力さえも希薄になるような感覚だった。




「こちらです、局長が待ちかねてるよ」



テオの快活な声が、やけに響く。



局長室の扉の前に立つと、レンは軽く息を吐いた。




ネイトは普段と変わらぬ落ち着いた様子を装ってはいたが、その瞳の奥には微かな疲労の色が滲んでいる。



扉が開かれると、ジョッシュ局長が大きな執務机の向こうで、肘掛け椅子に深く身を沈めていた。



いつもの飄々とした雰囲気は鳴りを潜め、その表情には珍しく真剣な色が浮かんでいる。





「おう、やっと来たか。まあ、座れや」





ジョッシュ局長は顎でソファを示す。レンとネイトが腰を下ろすと、テオとイーサンは扉の横に控えめに立った。




「さて、単刀直入に言うが、ネイト王子、お前さんの昨夜からの状態について、至急確認が必要だ。


レン、お前さんもだ。


"悪夢"の影響がどう出てるか、詳しく調べさせてもらう」




局長の声は、普段の軽口とは裏腹に重々しい。




「それで、この特別棟だがな。

お前さんたち"保護対象者"にあてがわれることになった。


ここは、外部からの魔力干渉をほぼ完全に遮断できる。

魔道具や魔力の影響を極限まで抑える特殊な材質で作られていてな。


隣室同士でも影響はほとんどないし、一度封鎖しちまえば、部屋から外への影響も最小限に抑えられる構造だ。


外部への影響が最も少ないってんで、白羽の矢が立った」





レンは腕を組み、冷めた視線を局長に向ける。




「随分とご丁寧な"保護"だな。まるで隔離でもされるみたいだ」




「まあ。そういうな。


実際、お前さんたちが見た"夢"が、どういう影響を及ぼすか分からん以上、最悪の事態も想定しなきゃならんのでな」





ジョッシュ局長は肩をすくめる。




「この棟の中にはな、検査用・処置用の最新魔道具が一式揃ってる。


それから、レン。


お前さんが過去の遺物とやらと共鳴するかどうかを見るための、ちいとばかし"面白い"実験室もあるぞ。


お前さんとネイト王子の他に、今回の保護対象としてエオス嬢と、あとでケイリーと一緒にここに来ることになる」





ネイトが静かに口を開いた。




「エオス嬢も……やはり、彼女にも何らかの影響が出ていると?」



「今のところ、顕著な症状は報告されてねえ。


だが、あの“抽出のコツ”とやらだけじゃなく抽出された欠片を考えれば、無関係とは言えんだろう。



予防的措置だ。


それに、研究員も揃えにゃならん。


俺とオリバー、ケイリー。


それからネイト王子の付き人としてサイラスと、そこのイーサンもここに詰めることになる」




レンが眉をひそめる。



「随分な大所帯になるな。何を調べるんだ?」

「全てだ。

影響の範囲、深度、そして何より、"夢"だけではなく、あの"現象"の正体と、お前さんたちの"適性"とやらの意味もだ。



それと、表向きの話も作らにゃならん。




エオス嬢はまだ若いし、女性一人をこんな場所に閉じ込めるわけにもいかんからな。



ケイリーに一時的にここの研究部門付きになってもらって、そのアシスタントとしてエオス嬢が付く、という体制で公表する。



これで、多少は外聞も保てるだろう」




テオがそこで口を挟んだ。




「俺は、この棟の警備担当ってことでいいんですよね、親父殿?」



「ああ、そうだ。

お前さんはここの守りを固めてもらう。


ネイト王子の護衛については、サイラスが王宮の些事を片付け次第、一緒にこちらに合流して専任で付く。


それまでは、テオとテオの指揮下の騎士が棟の周りを固める。


それでいいな、ネイト王子」





ネイトは静かに頷いた。




「承知しました。手配、感謝いたします」




ジョッシュ局長は、一度言葉を切り、二人を真っ直ぐに見据えた。




「さて、ここまでで何か質問はあるか?」




レンは即座に口を開いた。




「今後の具体的な流れはどうなる? 


俺たちは、いつまでここに"保護"されるんだ?」



「それについては、まずお前さんたちの状態次第だ。


今後の流れを伝える前に、今現在の状態を精密に検査する必要がある。


これから専門の医療班と解析班を呼んで、ネイト王子、あんたから診させてもらう。


レン、お前さんもその後だ」




ネイトがわずかに眉根を寄せた。




「私から、ですか。

レンの方が、あの現象との関わりは深いように思いますが」




その声には、わずかな不満と、レンを気遣う色が混じっていた。




レンも忌々しげにわざと舌打ちする。





「俺は後回しか。まあ、いいがな」




その反応を見て、ジョッシュ局長もわざとらしく大きなため息をついた。




「ネイト王子、分かってんのか? 

王子の影響状態によってはな、最悪、王家の後継者問題にまで発展しかねんのだぞ? 



だから、王子の確認が最優先なんだ。これは決定事項だ」





その言葉に、ネイトは表情を硬くし、レンも皮肉を飲み込んで黙り込んだ。

王家の血筋という、逃れられない重圧が、そこにはあった。




ジョッシュ局長は、場の空気が変わったのを見て、少しだけ口調を和らげた。





「ま、そういうこった。

細かい調整はこれからだが、ひとまずお前さんたちは、割り当てられた自室へ行って少し休め。


長丁場になるかもしれんからな。準備ができ次第、呼びに行く」




その言葉に、レンは無言で立ち上がり、ネイトも静かに一礼して部屋を出ようとした。



その背中に、ジョッシュ局長のどこか楽しんでいるような、それでいて全てを見通しているような声がかけられた。





「せいぜい、悪夢の続きを見ないようにな、お二人さん」











局長室の重い扉が閉まると、4人はしばし無言だった。



先ほどまでの張り詰めた空気が、まだ肌にまとわりついているようだ。




「さてと、それじゃあ、お二人さんを部屋にご案内しますかね」


最初に沈黙を破ったのはテオだった。



頭をかきながら努めて明るい声で、レンとネイトを促す。




イーサンは少し緊張した面持ちで、ネイトの半歩後ろに控えている。



テオに先導され、三人は再び魔力を吸うような特殊な建材でできた廊下を歩き始めた。




足音だけがやけに大きく響き、窓のない壁がどこまでも続いているように錯覚させる。


「しかし、すごい場所ですね、ここは。本当に外界と遮断されてるって感じです」




イーサンが、感嘆と不安が入り混じったような声で呟く。


ネイトは彼に穏やかな視線を向けた。




「ああ、そうだね。

だが、それだけ重要な場所ということだろう。


イーサン、君も王宮からの移動の連続で疲れただろう。

部屋に着いたら少し休むといい」


「いえ、殿下のお部屋の準備が先決です。お荷物もまだですし」





イーサンは慌てて首を振る。

レンはそんな二人を横目に、黙って歩を進めていた。




この閉鎖的な空間は、どうにも性に合わない。




やがて、テオがとある区画の前で立ち止まった。




そこには、他の場所よりもさらに厳重な認証の魔道具が備え付けられた扉が並んでいる。





「ここが、今回お二人に使っていただく区画だな。

レン兄の部屋がこっちで、ネイト殿下の部屋がその隣。


執務スペースもそれぞれについてる。

まあ、実験室はまた別で――あっちに入口がある」



テオは手際よく認証を済ませ、それぞれの部屋の扉を開けてみせる。

中は、機能的ではあるが、どこか無機質で殺風景な印象だ。




「さて、それじゃあイーサン、ネイト殿下のお荷物を運び込むの手伝ってくれるか? 

あとサイラスやイーサンの部屋もここの続きにあるから、確認してもらっていいか?


俺も、一度自分の部隊の配置を確認しに行きたいんでな。

その後、本格的にここの警備体制を整える」





テオがイーサンに声をかける。




イーサンは「はい、もちろんです!」と元気よく返事をした。





「殿下、レン様、失礼いたします。すぐに執務室と寝室を整えますので」



そう言うと、ネイトに一礼し、テオと共に荷物が集積されているであろう方向へと足早に去っていく。

その背中からは、まだ若者らしい張り切りようと、わずかな緊張感が伝わってきた。




レンは腕を組み、テオたちの背中を見送りながら小さく息を吐いた。




「やれやれ、本格的に監禁生活の始まりってわけか」




ネイトは苦笑を浮かべた。




「そう言わないでください、レン。

必要な措置なのでしょうから。


それに、まだ君と一緒なら、少しは気も紛れます」


「そいつはどうも。」




レンはそう言いながらも、ネイトの言葉にどこか救われたような、複雑な表情をしていた。





――――――――――










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