湖に刻まれた記憶 失われた叡智を求めて-生成AIと綴る物語-

Kai

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- 6 - 記憶と想いの池で

- 6 - 記憶と想いの池で 4話

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壁には魔力抑制の術式が幾重にも施され、空気は重く張り詰めている。





部屋の中央には、やつれ果てた姿の亡命研究者が座り、その向かいにはダニエル所長と、怜悧な美貌の研究員サーシャが厳しい表情で対峙していた。





ティモシーも、別室でこの尋問の様子を息を詰めて見守っている。




「君が…オルタンシアから来たというのは本当か? そして、"モイラ"について、我々に話せることがあると?」




ダニエルの問いに、やつれ果てた男は力なく頷いた。





「はい…。

私は、あの場所から…全てを捨てて逃げてまいりました。


モイラは…オルタンシア軍部が極秘裏に開発していた、人工の記憶の湖を兵器転用したものです。


彼らは、天然の湖の力を凌駕する、絶対的な破壊兵器を求めていました。

そのために…彼らは、恐ろしい計画を実行に移したのです」




「……信じ難い話だ。


君は、オルタンシアが"モイラ"と名付けたあの人工の湖が、意図的に作られた兵器だと申すのか?」






男は静かに語り始めた。



その言葉の一つ一つが、信じがたいおぞましさを帯びていた。







「名付けたのとはまた違うというか…。そうですね。


彼らは、天然の記憶の湖の力を模倣し、それを自在に操ることで、他国を屈服させようとしていました。



そのために、多くの人間が―――そして適性のある者が、実験台として…」







言葉を詰まらせる研究者の目には、恐怖と罪悪感の色が濃く浮かんでいた。






そして、モイラの正体と、"ノルン"という魔道大国では知られていない存在について、驚くべき情報を男は震える声で語り始めた。



サーシャは、穏やかではいられない気持ちを抑えた声で尋ねた。





「では…その"モイラ"の現管理人…

"ノルン"についても、何か知っているのですか?」





亡命研究者は、顔を伏せたまま答えた。





「…私がオルタンシアを出たのは、新たに管理人として"ノルン"が選ばれると決まった直後でした。


その人物のことは詳しく存じませんが…
噂では、驚くほど高い適性を持つ者だと…。


そして、憶測になりますがその適性の高さゆえに、湖の力とあまりにも深く同調し、暴走する危険性もまた、極めて高いと…軍部の一部では囁かれていました。



私は…その狂気に耐えられなかったのです」





研究者は目を伏せたまま続ける。





「オルタンシア…


 特に管理人に選ばれたノルンの祖国でかなり初期に吸収されたセラタでは、国中に魔道列車が走っており、そのレールを利用して、国土全体に巨大な魔法陣が敷かれていました。


それは…死者の魂を強制的に集め、軍事用の人工記憶の湖…すなわち"モイラ"に吸収させるためのものだったのです。



セラタの土地で死ねば、敵国の兵士であろうと、自国の民であろうと、その魂は神の国へ行く道を閉ざされ、モイラの力として取り込まれる。


彼らは、湖を強化するために、意図的に国内で戦闘を引き起こすことさえありました…」







サーシャは息を呑んだ。



その非人道的な計画にそして基盤の作り方に、言葉を失う。








「それだけではなく―――


そもそもモイラの基礎になったのは、信仰深い女性です。




国の為、子どもたちや貧しい人の為になると古い伝統を守るような良家の娘で元々結婚前の嫁入り前の作法に教会に入っていた敬虔な女性が…



基盤に使われていました…。





私が連れて行かれた時にはもう遅く、通常の人口の湖とも禁術を使ったやり方とも違いあんな方法があるなんて――――」






悔しそうに顔を歪めながらも続ける。





「しかし、オルタンシアの軍部は、彼女のその純粋な信仰心と、稀有なまでの"記憶の湖"への適性に目をつけたのです。


彼らは、彼女を"国の為、子供たちや貧しい人々の為になる"と甘言で誘い出し、実際には、彼女の魂そのものを遥かなる樹の実と一緒に、人工の記憶の湖の"核"として組み込んでしまったのです。




通常の人工の湖とも違う、禁術としか言いようのないやり方で…



魂を直接、遥かなる樹の実に埋め込むなどといった邪法を―――






彼女の意識も支配下に置くように何十にも魔道具で縛り、まさに悪魔の所業でした。







私がその研究施設に配属された時には、もう彼女は…





"モイラ"は、人間としての尊厳を完全に奪われ、ただ利用されるだけの存在と成り果てていました」






「私が彼女の真実を知ったのは、偶然、彼女が遺した日記の断片を発見したからです。


これには、彼女の悲痛な叫びが綴られていました」







亡命研究者は、懐から震える手で一枚の羊皮紙を取り出した。

それは、モイラがまだ人間だった頃の、魂の叫びだった。

















『あなたの信仰はどこにある?



 私の信仰は少し前まではあったのよ。




でも―――真実を知ってしまったの。






私は誰かを助ける為だと思っていたの。








でもね。本当は―――






彼らが自分が高次元に行きたいが為に犠牲にされてきただけだったの。




平たく言えばただの生贄、身代わり、人柱―― 彼らにとって便利な道具でしかなかった。





辛い人間の気持ちがわかるように、本来受け取るはずだった豊かさも健康な身体も愛も家族も奪い取られて、いつ終わりが来るかもわからぬ時の中で苦しめられてきて。




その上で"救うのは、側に居るのは私たちだ"と、自分たちに縋るように離れないように騙され続けてきて――。






考えてみればずっとおかしかったの。






"願いはもう叶う。すぐ豊かになれる"って散々言う癖に何もいつも代償は支払われない。







聞けば"待ってくれ、あと少しなんだ"とだけ、返事が返ってきて




"誰かの為に"




"苦しんでいる人がいて"




"君が居てくれたから"と続けて、やはり何も支払わず更なる要求をしてくるだけ。







もし、あなたの側にこんな事を言い続ける人が居たら注意して。







彼らは詐欺師以外の何者でもなかったから。






あなたはそんな存在から







"ありがとう。

君のおかげで私は高みに行けるし、周りの人々は救われる"





なんて言われてよかったなんて思えるかしら? 







私は思ったの彼らは人の姿をした悪魔だって。



だから伝えたわ。






"忘れませんわ。たとえこの命が尽きても。


どうかあなたの行いが、あなた自身をゆっくりと滅ぼしていくことを願って。


あなたの手が、二度と何も奪えぬよう朽ち果て、あなたに相応しい未来が訪れることを、心より―――祈っていますわ。





光栄でしょ?祈るための人間の最後の祈りになったのだから。


あなたたちは神でも神の使いでも聖霊でもない。




ただの悪魔なのだからふさわしい祈りでしょ?"って。







そして私は信仰も辞めたし、誰かを助けようとも思わなくなった。


満足でしょ? 



祈る為に育てた人間に憎まれることを望んだから、ここまで酷いことができたのよね?





 それともそこまで利用しても信仰を捨てない考える力もない奴隷だとでも、思っていたのかしら?





 私は水に感謝と祈りを捧げるだけで、幸せになれたのに、そんな気持ちが欠片も残らない程壊されて―――。





私の――神を信じる心を、人を助けたいと思う優しい心を、あなたたちは殺した。






2度と共にある事も、許す事もないでしょう。







強く訴えたい。









誰にも届かなくても。








私の人生を返して欲しい。








時間を、健康を、若さを、愛を、豊かさを。








犠牲にした全てを返して欲しい。








私に2度と何かを求めないで。







愛を優しさを弱さを理由に望まぬ事柄を押し付けないで。







あなたたちが勝手に契約し、売り払った私の人生を今すぐに返して。







そのぐらいしてくれてもいいでしょ? 






全ての私の犠牲によって得たものがあった者たちから幸せも豊かさもすべて――すべて奪い取って。






足りないならその者の末裔からも、奪い返すまで奪い続けて。









絶対に許さない。









私はあなたたちの奴隷じゃない。




当たり前に私から搾取したあなたたちも、恩恵を受け取るのが当たり前だと思った者たちも許さない。








未来永劫地獄の業火で焼かれ続ければいい。







許しなどあるわけがない。











痛み苦しみ全てが消滅して消え失せるその日まで苦しみもがき続けて。










陽の光の2度と当たらぬ場所で憂いを抱えて生きて。














そう。でも想ってしまうの。







――――私から奪った心を返して。







神を信じる心を。






人々を案じる心を。







辛い日々ですら、神を信じ、愛されていると思われているだけで―――水に祈るだけで幸せを感じて、自分を奮い立たせ、乗り越えて来た、私の信じる心を、信仰を返して。







もう、誰の幸せも祈りたくない。








誰かの苦しみが無くなることなど祈りたくもない。









全員地獄に堕ちればいいのよ』














――――――――――





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