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北城市地区予選 1年生編
第50走 腰ナンバー
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「そういやさっき、俺らが来る直前になんか盛り上がってなかった?」
来て早々に寝袋を広げながら、3年の山口渚は結城達に問いかける。
ちなみにキャプテンの隼人は1、2年生に指示を出して荷物を置いた後、そのまま吉田先生の所へと向かっていた。
「まぁ、おにぎりで色々と衝撃がありまして……」
そう答えた一縷に対し、渚は”ふーん”とだけ返事をする。
そして聞いた理由も答えず、そのまま寝袋の中へと入っていくのだった。
渚の出番は夕方の4継だけなので、基本午前中にする事が無いのだ。
対する1、2年生はというと、基本的に”競技の補助員”を任されている。
そう、先程隼人が出した指示というのは、補助員の確認だったのだ。
補助員は各校から2~3人出さないといけない決まりになっており、基本は1、2年生の中でローテーションして回している。
学校によってトラック競技やフィールド競技・本部の中など仕事は多岐に渡り、どうしても人手が足りない場合は3年も補助員として働くのだ。
大会1日目の今日は、何も出場しない康太と長距離パートの林原まひろ、女子からは2日間どの競技にも出ない陸上初心者の戸松愛が、朝から補助員を務める事になった。
その後は、競技を終えた人から交代していく。
ちなみに市予選という重要かつ大きな大会なので、午前組はお弁当が支給される特典付きだ。
————————
今日の補助員達を見送った結城は、早速アップに行く準備を始めた。
なぜなら100mは2時間後の10:15にスタートするからだ。
結城は先輩達が読み終わった大会冊子を見て、改めて今日の一次予選で走る組とレーンを確認する。
その冊子には大会のルールやスケジュール、全選手が出場する種目が細かく書かれており、いわば大会の説明書のような役割を果たしている。
【第7組 7レーン】
今日の結城が走る組とレーンだ。
どうやら再スタートは縁起のいい数字から始まった。
ちなみに同じく100mを走る翔は第4組3レーンだったらしく、それを確認した翔は……
「お互い、組に1年生1人しかおらんな。俺以外の10秒台は……3年が1人か。6レーンやし、あんまり気にはならなそうやな」
と、冷静にレースの展開を予想しており、意外にも落ち着いた表情だった。
だが対する結城は……。
「うわ、俺は隣が10秒台だぞ。一瞬で置いていかれないようにしないと。てか全体的に北城市レベル高いな。高校はこんなもんなのか?」
「いやいや、本来お前は周りを置いていく立場やねんからな。なに弱気なっとんねん。シャキッとしろ」
そう言って翔は結城の背中を強く叩いた。
だが思ったより叩く力が強かったせいで結城はイラッとしていたのだが、さすがに試合前という事でここは我慢したようだ。
————————
そんな話をしていると、吉田先生とのミーティングを終えた隼人が帰ってきた。
そしてそのままマネージャーの所に行き、今日のレースで使う腰ナンバー(通称:腰番)を手に取った。
するとそれを見た2人も”忘れていた!”と焦り、駆け足でマネージャーの所へ向かう。
この”腰番”というモノは、競技者には必須のアイテムである。
トラック種目においては、右腰の後ろ辺りに”レーン番号”が書かれた腰番を安全ピンなどで付けるのが決まりになっているのだ。※
この腰番の主な役割としては、タイムを判定する本部の人間がレース後に映像に映った腰番を見て”○レーンが○着"と判断する為だ。
「さぁ、アップに行くか!」
そんな腰番を貰った隼人は、早速100mに出場する結城と翔に呼びかけた。
「「はいっ!」」
2人はスグに準備を整え、隼人と共にサブトラックへ向かおうとする。
すると3人が陣地から旅立つ際に、突然マネージャーの楓が一声かけた。
「頑張ってねエース達!」
”エース”という言葉が、妙に結城の耳には残っていた。
————————
3人はメイン競技場を出発し、サブトラックに到着しようとしていた。
するとここで……。
「おぉ、あんた達ナイスタイミングね!」
聞き覚えのある声が結城達を引き止めていた。
そして声の聞こえた方を見た結城は、一瞬にして苦い表情を浮かべる。
「うわぁ、一二三さんじゃん……」
————————
※安全ピンで付ける腰番・・・近畿大会以降はシールタイプの腰番が配布され、肌やユニフォームに直接貼る事が出来るようになる。試合後にそのシールタイプの腰番をカバンやスパイクケースに貼るのは、一種のステータスでもある(地域によって違う場合もあり)
来て早々に寝袋を広げながら、3年の山口渚は結城達に問いかける。
ちなみにキャプテンの隼人は1、2年生に指示を出して荷物を置いた後、そのまま吉田先生の所へと向かっていた。
「まぁ、おにぎりで色々と衝撃がありまして……」
そう答えた一縷に対し、渚は”ふーん”とだけ返事をする。
そして聞いた理由も答えず、そのまま寝袋の中へと入っていくのだった。
渚の出番は夕方の4継だけなので、基本午前中にする事が無いのだ。
対する1、2年生はというと、基本的に”競技の補助員”を任されている。
そう、先程隼人が出した指示というのは、補助員の確認だったのだ。
補助員は各校から2~3人出さないといけない決まりになっており、基本は1、2年生の中でローテーションして回している。
学校によってトラック競技やフィールド競技・本部の中など仕事は多岐に渡り、どうしても人手が足りない場合は3年も補助員として働くのだ。
大会1日目の今日は、何も出場しない康太と長距離パートの林原まひろ、女子からは2日間どの競技にも出ない陸上初心者の戸松愛が、朝から補助員を務める事になった。
その後は、競技を終えた人から交代していく。
ちなみに市予選という重要かつ大きな大会なので、午前組はお弁当が支給される特典付きだ。
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今日の補助員達を見送った結城は、早速アップに行く準備を始めた。
なぜなら100mは2時間後の10:15にスタートするからだ。
結城は先輩達が読み終わった大会冊子を見て、改めて今日の一次予選で走る組とレーンを確認する。
その冊子には大会のルールやスケジュール、全選手が出場する種目が細かく書かれており、いわば大会の説明書のような役割を果たしている。
【第7組 7レーン】
今日の結城が走る組とレーンだ。
どうやら再スタートは縁起のいい数字から始まった。
ちなみに同じく100mを走る翔は第4組3レーンだったらしく、それを確認した翔は……
「お互い、組に1年生1人しかおらんな。俺以外の10秒台は……3年が1人か。6レーンやし、あんまり気にはならなそうやな」
と、冷静にレースの展開を予想しており、意外にも落ち着いた表情だった。
だが対する結城は……。
「うわ、俺は隣が10秒台だぞ。一瞬で置いていかれないようにしないと。てか全体的に北城市レベル高いな。高校はこんなもんなのか?」
「いやいや、本来お前は周りを置いていく立場やねんからな。なに弱気なっとんねん。シャキッとしろ」
そう言って翔は結城の背中を強く叩いた。
だが思ったより叩く力が強かったせいで結城はイラッとしていたのだが、さすがに試合前という事でここは我慢したようだ。
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そんな話をしていると、吉田先生とのミーティングを終えた隼人が帰ってきた。
そしてそのままマネージャーの所に行き、今日のレースで使う腰ナンバー(通称:腰番)を手に取った。
するとそれを見た2人も”忘れていた!”と焦り、駆け足でマネージャーの所へ向かう。
この”腰番”というモノは、競技者には必須のアイテムである。
トラック種目においては、右腰の後ろ辺りに”レーン番号”が書かれた腰番を安全ピンなどで付けるのが決まりになっているのだ。※
この腰番の主な役割としては、タイムを判定する本部の人間がレース後に映像に映った腰番を見て”○レーンが○着"と判断する為だ。
「さぁ、アップに行くか!」
そんな腰番を貰った隼人は、早速100mに出場する結城と翔に呼びかけた。
「「はいっ!」」
2人はスグに準備を整え、隼人と共にサブトラックへ向かおうとする。
すると3人が陣地から旅立つ際に、突然マネージャーの楓が一声かけた。
「頑張ってねエース達!」
”エース”という言葉が、妙に結城の耳には残っていた。
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3人はメイン競技場を出発し、サブトラックに到着しようとしていた。
するとここで……。
「おぉ、あんた達ナイスタイミングね!」
聞き覚えのある声が結城達を引き止めていた。
そして声の聞こえた方を見た結城は、一瞬にして苦い表情を浮かべる。
「うわぁ、一二三さんじゃん……」
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※安全ピンで付ける腰番・・・近畿大会以降はシールタイプの腰番が配布され、肌やユニフォームに直接貼る事が出来るようになる。試合後にそのシールタイプの腰番をカバンやスパイクケースに貼るのは、一種のステータスでもある(地域によって違う場合もあり)
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