【BL】イケメン丁寧語S弟(20)×チャラ男ビッチM兄(22)~■が欠乏したら、どうやって埋めますか~

アヲスナ

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■が欠乏したら、どうやって埋めますか

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╭━――――――――――――――― •●• ―――――――――――――――━╮


 あっという間に押し倒されていた。

 ひとり暮らしをしているマンションの狭苦しいワンルーム。
 ベッドの上で呆然と奴を見上げる。
 くす、と余裕のある笑みが返ってきた。

「大人しくしててくださいね?」
「う……」

 ニヤけた顔でもすればいいのに、こんな時にまで取り澄ましている色男っぷりに腹が立つ。

「ちょっと待てよ! オレぁまだ了承してねーし!」
「……ふうん?」

 わざとらしく語尾を上げた男が、ぐっと顔を近づけてくる。
 のけぞって距離を稼ぎたくても後頭部がマットに沈むだけだった。
 安いパイプベッドが大の男ふたり分の荷重を受けとりきれず、ギシっと軋む。

「もう探す手間も要らないし、お金も要求しませんよ? いいこと尽くめでしょ?」
「く……」

 またがられ、くすくすと涼しい声で笑われる。
 頬を指で触れられて弄ぶように顎の線をなぞられた。

「やめ、ろ、って――んな、ありえねぇ」
「……へえ」

 堪らず顔を振って逸らそうとした矢先、底冷えするような低い声と見下してくる視線。
 ぞっと悪寒が走る。
 ゴミでも見るような蔑みの顔が、しかし一瞬で完璧な笑顔に変貌する。

「いいんですか? 止めても――今後、困るのは貴方ですよね?」
「う……」

 声まで爽やかに切り替えやがったので、思わず頬が引きつった。
 コイツの猫被りには年季が入っている。
 外面そとづらは完璧な好青年を装ってるクセして、オレにだけサイアクな本性を向けてくる。

 あるいは常にいい子ちゃんぶっているストレスをオレで晴らしているのかもしれないが。
 それにしたって今回は度が過ぎている。
 どう考えても異常だ。

「なんでよ……?」

 必死に問う声は喉に引っかかって掠れた。
 それを奴は楽しそうに笑い飛ばす。

「なんで、とは?」
「だからっ……なんで、こんなコトすんだよ!」
「お望みどおりでしょ?」

 ギシッ――シングルサイズのベッドが揺れる。
 身を乗り出され、オレの脱色した髪のサイドに手を差し込まれて鷲掴みにされた。

「だれが、ぁ……ぐっ」

 股間をぐりぐりと膝でにじられている。
 と把握する前に息が止まった。
 反射的にかぶりを振りそうになっても、髪が引っぱられて果たせない。

「う、あぁ、っ」
「あっはぁ、イイ顔しますねえ――!」
「やめっ……ろぉ!!」
「っく、ふふっ」

 それは娯しそうに男が嗤う。
 幼少期から見慣れた底意地の悪い顔で。

 身長を抜かされたのは互いが中学生のころだった。
 今では簡単に押さえ込まれるほどの体格差がある。

「誤魔化さないでくださいよ――ほら、ちゃあんと感じてるじゃないです、か!」
「く、ぁッ」

 抵抗する腕を押さえつけられ、しつこく股間を膝で嬲られる。
 脚のあいだに奴の身体を割り込まされているので拒めない。

「あぅ……ぁ」
「あーあぁ、ダラしない顔して」

 呆れたような声が降ってくる。
 言葉の意味が頭に染み込んでこない。
 ただ荒い息を繰り返す。いつの間にか涙とよだれが垂れていた。

「……」

 滲んだ視界で奴が今どんな表情をしているのかは、わからない。
 なにもわからない。
 どうしてこんな仕打ちをされて感じてしまうのか、なんて、わかりたくもない。

 吐息にも似た笑い声が耳に響く。

「だから大人しくしててくださいねーって言ったのに」
「お、オマエ……本気で」

 しゃくり上げそうになるのをこらえ、鼻をすすりながら、なおも諦め悪く確認する。
 どうしても信じたくない。

 コイツがオレを犯そうとするなんて。
 本気でそんなことを言い出したなんて。

「なんども言わせないでくださいよ――」

 こんな時でさえ涼やかに笑って、手のひらで頬を撫でてくる。

「貴方は全部ボクに任せてくれればいいんです。好きでしょ? そういうの」
「でもオマエは――」
「ねぇ、さっき自分でなんて言ったか覚えてます?」
「は……?」

 突如、顔を寄せられて息を呑んだ。
 近過ぎてピントがボケてすら、コイツの整った造作は分かる。
 その唇が薄く笑みの形に歪んでいることまで。

「貴方ね、『まだ了承してない』って言ったんですよ? 『まだ』って。拒む気ないでしょ?」
「ッ――」
「しますよね? 了承。だって」
「あ、待っ」

 上体を起こした奴がオレの股間に手のひらを添える。
 それだけなのに、びくんと腰が揺れる。

「ほら、さっきから感じまくってるじゃないですか?」
「く、う……」

 コイツの言うとおりだった。
 下着がキツく感じられるほどオレのものは怒張している。
 羞恥と屈辱のあまり目の前が真っ赤に染まった気さえする。

「ホント素直じゃないんだから」
「う、うぅ……」
「して欲しいんでしょ? イヤらしいこと、して欲しくて堪らないって顔してるくせに」
「んな……オレは、そんなん、やだって」
「どこが?」
「くぅ……ンっ」

 股間をぎゅうっと握られ、悶絶する。

「あっ……やめっ」
「さっさと、おねがり、してくださいよっ!」

 服越しに形が浮き彫りになるほど強く握り込まれた。

「ダメ……だっ」
「どこが、ダメなんですか!」
「ふぁっ」

 搾るように執拗にしごかれて、腰を跳ね上げるように何度もくねらせる。
 痺れが走るくらい気持ちよかった。

「ほら、ね? もっと、って言ってください」
「ちが、ぁ……こんなん、ダメだろ……っ」

 こんなことをしながら男は冷ややかな顔で観察するようにオレを見ている。
 冷淡な声を浴びせられた。

「まだ認めないんですか――兄さん?」
「ッ」

 涙がこぼれる。
 指摘されなくたって理解している。
 自覚しているからこそ、こんなことは間違っていると伝えたいのに。

「貴方は何も考えなくていいんですよ?」
「でも……」
「ボクに任せて気持ちよくなっていいんですよ?」
「……」

 ダメだ。ダメなんだ。ダメなはずだ。
 いくら離れて育ったからって。戸籍上は他人だって。
 こんなことは許されない。
 なのに身体に力が入らない。股間の熱がおさまらない。

 また伸し掛かられた。
 せめて身体を背けようとするのに、覆い被さられて、耳もとに唇をぴたりと当てられる。

「……っ」
「兄さん――愛してます」
「あ……ふぅ」

 甘く囁かれ、ぞくりと妖しい恍惚感に襲われる。

「好きです。大好き」
「や……だ」

 ぎゅっと抱き締められ、幼子に対するように優しく言い聞かせられる。

「大好きですよー?」
「う……うぅ」

 オレは泣きながら身をよじって、それでも抗おうとしていた。
 とっくの昔に、その事実を受け入れていた。

 コイツが――心にもないことを平気でそれらしく口にできる奴だと、ずっと知っていた。

 なのに本当に愛されていると錯覚してしまう。

 そんな愚かな自分に絶望しかけて――最後の望みを見出す。

「ほら、言ってくださいよ、欲しいって」
「ぅ……」
「犯して欲しいんでしょ? ほらぁ」
「ア――」

 背後から抱き締められ、下着のなかに手を突っ込まれた。
 ぬるぬるの性器をしっかりと握り込まれる。
 死にそうなほど恥ずかしくて身体を丸めてしまう。
 なのにオレのモノはコイツの手のなかではち切れんばかりに怒張しっぱなしだった。
 それを自覚させるように、さらに痛いほど力を込められる。

「ッ~~~」
「ね?」
「……ぁ、あ……」
「兄さん……?」

 甘くとろけるような声。
 耳も脳も痺れるのに必死に抗う。

「……て」

 オレは最後の賭けに出た。
 コイツの目的はオレを甚振いたぶることなんだから。

「ふふ、なんですか?」
「……かし……」
「ちゃんと言ってくださいね?」

 ゆるゆると扱かれて性器がびくびくと跳ねる。

「ん、ぅ……おかし、てぇっ」
「――は、ははッ」

 コイツの性格の悪さは筋金入りだ。
 だからこそ、精神的に嬲りたいからこそ――獲物オレが泣いてすがった途端に、逆に突き放してくるんじゃないかと予想した。

「はは……ねぇ、本気で言ってるんですか――弟に犯されたいなんて」
「ッな」

 反射的に否定しそうになった声を必死に殺す。
 一時の屈辱にさえ耐えれば、解放されるはずだ、と。

「ねぇ、兄さん?」
「……ぅん」

 上体をひねって、涙に濡れた目で見上げる。
 視線が絡む。
 ぐっとうなじを掴まれた。

「な……っ、ン」

 無理やり唇をふさがれる。
 と同時に下着に突っ込まれている手で、激しく緩急をつけてしごかれる。

「ッ……ンぅ、んーっ」

 もう耐えられなかった。
 きゅっと搾られて、びくんと腰が跳ねる。

「ふぁっ」

 そのまま熱い精液が迸る。
 下着と指をたっぷりと汚して出切ってしまう。

「ア……ぁ」
「兄さん……」

 おかしい。
 蔑みの目で見られるはずなのに。
 なんでコイツは、こんな、熱い目で。
 濡れた指をそのまま後ろに持っていかれる。

「ン……だ、め」

 指先が穴にたどり着いて、いやらしい動きで弄られる。

「なにが……ダメなんです?」
「だ、って……あぅ」

 ずっと指が入る、そこは柔らかくなっている。
 最前に準備していたせいだ。
 だって今夜も男漁りに出る予定だったから――まさかコイツと鉢合わせするなんて思わずに。

「自分だけ気持ちよくなって済ませる気ですか?」
「ぅ……あ、ぁ」

 自分の精液を内側になすり付けられる。
 何度も、なんども。
 指をねじるように挿入され、逆に指先ぎりぎりまで引き抜かれ、そしてまた入れられる。

「ン……ん、っ」

 おかしい。
 なんで。
 オレは初めてじゃない。清い身体なんかじゃない。
 他人でも玩具でも、こんなに感じたことないのに。
 必死に声を堪える。

「ふふ……兄さんのナカ、びくびくしてますよ? ねぇ?」
「ぅ、く……」

 低く嗤われて、ねちっこく絡んでくる視線から逃れたくて、必死に顔を逸らして目をつぶる。
 不意に指を抜かれた。

「これ、足しますね」
「……ん……」

 目を開けて見上げると、手にしたチューブからジェルを押し出していた。
 ローションを持参していた?
 じゃあ最初からコイツは、そのつもりで――指をぬるぬるにしている男を、ぼんやりと見上げる。
 ジェルを指先からしたたらせながら奴が笑う。

「次は指、増やしますからね――?」
「ァ……あ」

 数本の指を抵抗もなく深くまで呑み込んでしまう。
 丹念に抜き差しされて、さらに弛むのが分かる。
 ゆっくりと進められたかと思えば、急にずんっと奥を突かれた。

「うンっ」

 信じられないほど深いところで、指先を蠢かされる。
 襞が、ひくひくと痙攣を始めた。
 声を抑えようとしても堪え切れない。

「っん、ッ――ぁっ、くぅ、ンっ……」
「へぇ……イイみたいですね?」

 指を止められた。
 それなのに、ひくつきが大きくなる。
 まるで指を必死にしゃぶっているような、もっと奥に飲み込みたがっているような収縮を引っ切りなしに続けている。

「ふ、ぅ……ァ、っ」
「あー……」

 チッ、と舌打ちされた。
 びくっと見上げると、蔑んだ目で見下げられる。

「ホントに……変態ですね」

 低い声で吐き捨てるように嘲られた。
 息を呑んだ瞬間に、また指を動かされる。

「……っ……くぅ、ッ……」

 感じたくない。これ以上、軽蔑されたくない。
 口を抑えても、喉から高い声が漏れる。

「っ……ぅ……ンー、ぅ……ッ」
「自分で開発したんですか? それとも歴代カレシに調教された?」

 違う。ちがう!
 こんな反応は初めてだ。
 でも白状したくない。
 自分の指を噛んで耐えても吐息は誤魔化せない。

「んっ……ふっ、ぅ、う」

 その隙に下着を取り去られ、だらしなく開脚してしまう。

「ふぅん……ここ、そんなにイイんですかぁ?」

 いじられつづけて、最も感じるところを完全に知られてしまった。
 指先でぐりぐりとなぞられて、押されて、揉まれる。

「……ぁー……っア、あー……あぅ……」

 上体は完全に力が失せてしまった。
 口をふさいでいた手は、もはや握ったり閉じたり無意味な動きを繰り返している。
 同じように、だらしなく外に開いた両膝が上下動を反復している。

「ほら、はやく言ってくださいよ」
「ぁ……なにぃ……」
「……どうして欲しいんですか?」
「んァ……あ」
「分かるでしょう……?」
「…………あ、ぅ」

 どうして欲しいのか、って……?

 そんなの――決まっている。

「あ、ぁ……あ――犯してぇ……っ」

 両脚を大きく開いて、誘う。
 もう自分が直前まで何を考えていたのかも分からない。
 尊厳も倫理もどうでもいい。
 どうせ侮蔑されるなら、もっと何も考えられなくして、めちゃくちゃにして欲しい。

「――兄さん」
「ア、早くぅ……いれてぇ……奥ぅ」
「……好きですよ」
「ん……」

 ずるりと指がぜんぶ引き抜かれた。

「兄さんは――――…」

 かすかに息を吐く気配がして。
 それから、すっかり開いた穴に、ぴたりと肉があてがわれる。

 ――もう犯されることしか考えられない。

 力が抜けた瞬間、ずっとナカに押し込まれた。

「ぁ」

 左右に開いた太股を裏返しに押され、尻が浮き上がる。
 内側をいっぱいに押し広げながら一気にねじ込まれる。

「ぅ、んーっ……ン――ァ、あーっ――」

 奥に行き付く感覚に身震いする。

「っ……ァ……あ、はぁ」

 しばらくはお互いの荒い呼吸の音だけが聞こえていた。

 それから小さく笑う声。

「兄さん?」
「ン……」

 つながっている部分を強調するように、腰を軽く振られる。

「ぁ……っ」
「……ほら、入ってるの、わかります?」

 分からないわけがない。
 まるで返事でもするように、深くまで挿入されているモノを、きゅっと締め付けてしまう。

「イイんですかぁ? ねぇ」
「……、っん」

 犯されている事実を確かめるように、なんども内側がひくついて、しだいに止まらなくなる。
 その太さも大きさも硬さも、浅ましいほどに吸いついて味わってしまうせいで、よく分かる。
 涙に濡れた頬が熱い。

「答えてくださいよ」
「……ぃ……」
「ね?」

 いっそ可愛らしく重ねて促されて、思考すら手放した。
 尻を浮き上がらせて、両脚をだらしなく胴の左右に広げて。
 犯されるためだけの姿勢をとったままで、熱い息を吐く。

「……きもちいぃ……」
「はは、素直で可愛いですよ。そんなやらしい顔して……なに期待してるんです?」
「……あ」

 深くつながっている体勢で、顔を寄せられて、間近に覗き込まれる。
 身体をくの字に曲げられて、なお一層、奥に差し込まれて、お腹が苦しい。
 なのに期待で震えてしまう。

「ぅ……もっとぉ……」
「どうして欲しいんです? ちゃんと言ってくださいよ」
「うごい、て……おかしてぇ……っ」

 喉がひくついて、涙が止まらない。頬が熱く火照って収まらない。

「ふふっ……ホント淫乱ですねぇ、兄さんは」
「……ぅ、ぐ」

 両膝が左右の肩に付くほど身体を曲げられ、自分の性器が腹にぶらんと落ちる。
 ほぼ真上から荷重ごと、ぐちゅんっと勢いよく突かれた。

「うンっ」

 引き抜かれて、また突き入れられる。
 なんども、なんども、激しく襞をこすって熱いものが行き来する。
 突き入れられて、弛んでは締まって、奥まで呑み込んで食らいつこうとする。

「ぁンっ……アん、はぁんっ」

 逆手にシーツをぎゅっと握り締めてイきそうになるのを耐える。

「っ……ぁンっ、ア、っだしてぇ……おねが」
「そんなにっ、欲しいんですか……!」
「んっ……ナカぁ、ほしいぃ……ッ」

 熱に浮かされて何を口走っているのか分からない。

「ぁ、あっ、はやくぅ……」
「……っええ、今、あげます、からぁ」

 思い切り奥までねじ込まれた。
 動きが止まって、それから。

「っア――」

 激しい勢いで注がれた。
 潤滑ジェルと粘液で角度がぬるっとズレる。

「ンぁッ」

 狙いすましたように熱い精液が感じるところに当たる。

「ふぁっ――ぁ、ウソぉ……っ、アん、う――」

 宙に浮かせた腰がびくんびくんと跳ねつづける。
 注がれるのが終わってもナカの痙攣が止まらない。
 完全に尻だけで雌イキしていた。

「あ、だめ……ァ……あー……ぁ、ぅン」

 やっと治まったかと思うと、また感じてしまう。
 きゅんっ、と穴がひくつくたびに快感が背筋を上ってくる。
 涙で頬が熱い。
 もう口は開きっぱなしで、だらしなく伸びた舌の先から涎が垂れている。

 オレの肩の外側に両手をついた男に、溜息を吐かれた。

「はは……すごい顔してますよ?」
「ぁん、っ」

 そんな些細な動きも刺激になって、びくんと跳ねた膝で腰を挟んでしまう。

「んぁ、っ、ン……」
「っ、あは、まだ感じるんですか?」

 軽く揺すぶられる。
 顔を覗き込まれる。
 息を荒くつきながら、小さくうなずく。

「ん……ァ、すごぃ……きもちぃー……」
「……ふふ、ホント淫乱で可愛いですねぇ、兄さんは」

 身を乗り出されて、ちゅっと口付けられて、また離される。

「やだぁ……もっと……」

 駄々をこねるように足をバタつかせると、苦笑された。

「へぇ、キスされるの好きなんですか?」
「ぅん……もっと、ほしぃ……」
「…………」

 背の下に腕を通され、上体を起こされる。
 膝の上に乗り上げる。
 向かい合って、まだ尻に挿入されている状態で、肩から背に両腕を回して自ら抱きつく。

「兄さん……」
「……ぅン」

 艶やかな笑みに誘われて唇を合わせた。
 舌をすり寄せて、熱い吐息ごと唾液を絡めて、喉を鳴らして飲む。
 何度も、何度も。

「ン……ん、兄さん、いつもそうやって男を誘ってるんですか?」
「っは……してねー、し」

 言いながら少し目を逸らしてしまう。
 事実、そんなことは誰にもしていない。
 でもオマエだけが特別だなんて言いたくない。

「ホントに?」
「ぅん、っ」

 尻を抱えられ、腰を揺らされて、深く入ってしまう。

「してっ、ねぇって!」
「本当に?」
「ぁんっ、ア……っんと、にぃ」

 脚でもぎゅうっと抱きついて、なんとか息を整えようとする。

「んぁ、おまっ……さっき出したクセに、そんなおっきくすんなぁ……っ」
「あは、仕方ないでしょ? 兄さんが搾るのがいけないんですよ」

 きゅんきゅんと窄まったり弛んだりしている穴の動きが激しくなる。

「ァん、だってぇ……はいってんの……きもちぃ、からぁ」
「……そう、ですか、ふふ」

 下顎を指でなぞり上げられる。
 後頭部に回された指で、ぐっと顔を寄せられる。
 慌ててバランスを取ろうとして、ナカを抉られる。

「ンっ、ぁ、あ」
「ボクだけって言ってください」
「え……う?」
「違うんですか? 誰にでも、こんなにとろっとろになっちゃうんですか?」
「ち、がう、ケドぉ」
「言ってくださいよ、ねぇ」
「う、あ……もぉ」

 泣きながらオレは観念した。

「お、オマエ、だけっ、だからぁ……!」
「ふふ、そうなんですかぁ?」
「マジでぇ、こんな感じんの、オマエだけだっ、から……」

 鼻をぐずらせながら白状する。

 本当はコイツの気持ちなんてどうでもいいんだ。
 オレのことを嬲りたいだけでもいい。
 それでもいい。
 どんな酷い目に遭わされても――

 いや違う。違った。

「お、オレは……オマエに」
「――はい」
「っ……こうやって、酷いことされて。厭らしく犯されたかった……変態なんだ」

 こんな本音、言いたくなかったのに。

 どうして暴いたりするんだ。

「は、はは、兄さん……」

 オレのナカに入ってるものが、そそり立っている。
 お腹がぎゅうぎゅうで苦しい。

「やっと認めてくれましたね――」
「……え」

 嬉しそうに見つめてくる。
 コイツを大嫌いになりたかった。

 外面の良さで、ひとりだけ金持ちの家に引き取られていった。
 置いていかれたオレはずっと苦労していたのに。
 昔から小生意気なヤツではあったけど。
 顔を合わせるたびに恵まれた環境をひけらかしたり、見下すようなことばかり言ってくる。

 コイツを売り払った金で豪遊した親が破滅して施設に入ったから、やっと自由になれた。
 実家の土地を売り払って、このマンションでひとり暮らしを始めた。

 出会い系アプリで男を漁っては適当に一夜を過ごしていた。
 でも満たされなかった。
 いつも何かが物足りなくて、その何かを埋めるカケラを探していた。

 そしてコイツと久しぶりに顔を合わせた瞬間、欠けた隙間にきっちり当てはまってしまったことに絶望した。
 気づいてしまったんだ。
 それまで選んだ相手に弟と似てる部分を探してしまっていたことに。

 認めたくなくて追い返そうとしたのに強引に部屋に上がり込まれた。
 興信所にでも依頼したのか、オレがいろんな男とラブホに入っていく複数の写真を見せつけられた。


 終わりだと思った。


 これまで以上に蔑まれて、詰られて、完全に縁を切られる。
 そうされて仕方ないと思った。

 なのに、コイツは提案してきたんだ。

 そんなに男に飢えてるのなら自分が相手になってやる――なんて。

 必死に欲望を隠そうとしたのに、最初から見抜かれていたなんて、あんまりだ。

 弟は笑いつづけている。楽しそうに。
 昔からオレを苛めることが大好きなコイツが――オレは。
 オレにだけ本性を見せてくることに優越感と独占欲を覚えていた。
 執着されていることが、うれしかった。

「ねぇ、おねだりしてくれたら、すぐに相手してあげたのに。どうして遠回りなんてしたんです?」
「だ、って、兄弟……だぞ」

 いくら幼いころに離れ離れになったからって。
 戸籍上では、もう他人だとしたって。
 生まれつきの血縁者で、兄弟であることに違いはないんだから。

「違うでしょ? 兄さん」
「なに」
「弟に犯されるから興奮するんでしょ?」
「ッ――」

 かっと顔が熱くなる。

「ちが」
「違いませんよ。兄さんが変態で淫乱なのなんて昔っからだし」
「なんだよそれっ、オレはそんな」
「だいたい先に手を出したのは兄さんですよ? まぁ、出させたというか」
「え」
「……覚えてないんですか? 小さいころ、よくお医者さんごっこしたの」
「………………」

 した、ような気がする。
 まだいっしょに暮らしていたころ。
 貧乏で、遊び道具なんてなくて、ほかに誰の目もない家で。

「ボクに医者役をさせて、兄さんは患者になって」
「……あ、あ」
「いっぱい弄らせましたよねぇ?」
「――――――~~~~~ッ」

 思い出した。

 下着を脱いで、股間を露出して、けばだった畳に寝転がって。
 性器の周りを隅から隅まで見られて、触らせて。
 薬を塗りましょう、とか言われてアレなことをされたり。
 手術しましょうね、なんて言われて――ちょっと痛いこともされたけど、それもヨかったり、して。

「ぅあ、あ」
「あー……、ホントに忘れてたんですね」

 呆れたように言われても顔も見られない。
 だって、そういうコトに興味が出るお年頃だったし。

「……」

 アレ?
 ひょっとしてコイツの取って付けたような丁寧語。
 この、わざとらしく諭すような喋り方って、まさか……ごっこ遊びの延長だったりするのか?

「お、オマエだってノリノリでやってたじゃん!?」
「兄さんのせいでボクの性癖が歪んだんですよ? 責任は取ってもらわないと」
「うぅ」

 反論できない。
 確かオレは小学校の高学年だったけど、コイツはまだ低学年だったはず。
 どちらに責任の所在があるかと問われれば反論の余地すらない。

 しかも思い出したら興奮してきてしまった。
 コイツを奥まで受け入れている穴がまたひくひくと動いている。

 耳に唇を押し付けられ、毒のように声と吐息を注がれる。

「――とってくれますよね、責任」
「ぅ、ん」
「ちゃんと言ってください」
「……せ、責任とってぇ……ん、一生、オマエだけに触らせっ、からぁ」
「ええ」
「………………いっぱい、いじめて……おかして……」
「ええ。分かりました」

 くすくすと耳元で笑われる。

「大好きですよ、兄さん」
「…………オレも、オマエのこと、っす……す」
「はい」
「……………………すき。」
「知ってますよ」
「……ばかっ」

 一生に一度の初めてを最初で最後の覚悟で自白コクったのに、当然みたいな顔で受け止めて笑いやがって。

 だからオレは――ずっとコイツが憎かった。

 オレはコイツ無しじゃ絶対に幸せになれないのに。
 コイツはオレ抜きで平気だなんて許せなかった。

 ずっと癒されなかった。足りなかった。欠けていた。満ちなかった。
 探していた。求めていた。欲しがっていた。


「もう……オレを、おいてかないで」
「――ええ、一生、離しませんからね」


 やっと見つけた、思い出した。
 たぶん最初から持っていたはずのもの。


「うん……オレ、もう……オマエ以外、なんにもいらない」
「兄さん――」

 久しぶりに見た、裏表のない笑み。
 コイツの取り繕っていない本性も、心からの笑顔も、オレだけが一生、独占する。








【了】




╰━―――――――――――――― ☽ ◯ ☾ ――――――――――――――━╯




兄:田村競一けいいち
 小さい時の呼ばれ方は「けーちゃ(けーち兄ちゃんが訛った)」
弟:高城たかきわたる
 小さい時の呼ばれ方は「わっくん」。

名付けの由来は親がボートレース賭博を好きだったせい。
ふたりとも自分の名前を普通に呼ばれるのは好きじゃない。
普通じゃない時に呼ばれるのは好き。

その後、似たもの百合ップルと良好に偽装結婚し、幸せに暮らしましたとさ。
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