GHOST GIRL.hack(ゴーストガールドットハック)

東郷 零士

文字の大きさ
9 / 46
第1章 Reborn

第9話 トリセツ

しおりを挟む
医者が美鈴にベットに座るように指示してきた。
「それでは、この体の取り扱いについて説明しますが、宜しいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
「まずは」
医者が一つ一つ丁寧に説明しはじめた。
まずは、身体のバッテリーの事だった。
左手首の内側に、薄っすらLEDが灯っている。これが身体のバッテリー残量との事。
今はグリーン。グリーンは、バッテリー残量が100%~30%。
これが黄色になると、バッテリー残量が29%~20%。
更に、赤色になると、残量は19%~11%。バッテリーの節約モードになり、一部の動作に遅延が出る。
最後に、赤色が点滅すると残り10%になり、約30秒でスリープモードに移行する。

次は充電の方法だ。
バッテリーの充電は、丸い座布団みたいな器具の上に立つか座るかすると充電が始まる。
ベットの下にしまっていた器具を出して美鈴に見せる。
普段はベットの下にしまっておくらしい。

美鈴に乗ってみるように医者が促す。
「こんな感じですか」
美鈴が器具に乗ると、手首のLEDが白く点滅し始めた。
「これが充電中の表示です」
美鈴が質問する。
「もし、この器具が無かった場合はどうしたらいいんでしょうか」
医者は、美鈴の首のところを触らせる。
「あ、少し窪みがあります」
「ここにUSBケーブルを接続して家庭用電源から充電して下さい」
医者はケーブルを持ってきて、美鈴のコネクタに接続し電源とつなげる。
美鈴は手首を見るとLEDが白く点滅している。

次に、美鈴自身。つまり脳の栄養分に関して説明してくれた。
美鈴の口は、人のように歯と舌が付いていて、舌を動かしたりものを飲み込む事も出来る。
喉の奥に栄養素を流し込むと吸収できる仕組みになっているらしい。
味覚機能も一応あると医者が教えてくれた。
「質問いいですか」
「どうぞ」
「この栄養分ってなんです?」
「これは99%糖分の液体ですよ。脳は糖を吸収するので」
「ちなみに糖分以外のものも摂取したらどうなります?」
「消化はしないので水分以外は定期的にパックを取り出す必要があります」

「もう一つ質問いいでしょうか」
「どうぞ」
「もし口が開かなくなった場合、他に栄養を吸収できる場所はありますか」
「あります」

そういって、医者は腕を触ってきて、一部を美鈴にも触らせる。
腕の内側を触るとパイプのようなものが通っている。
「ここに、点滴するようなイメージで注入できます」
なるほど、人の身体そっくりだ。

最後に一番重要な事を説明された。
「必ず睡眠は取ってください。脳は定期的に休めなければいけないので。
 睡眠中は自動的にスリープモードへ移行します。起きれば通常モードになります」
美鈴は、ますます人と同じなんだと感心した。

医者が、一通り説明を終えた。
最後に後ろポケットから、折りたたみのタブレットを取り出し見ている。
おそらく私の身体のデータを見ているんだろう。

タブレットをパタンと閉じ、
「はい、正常です。今日はゆっくり休んで、明日からリハビリを始めましょう」

カチャっとドアが閉まる音、廊下を歩く医者と看護師の足音と会話が聞こえなくなるのを待ち、
美鈴はベットからおり、姿見に自分を映し覗き込むように観察した。

生前と全く違和感の無い顔。化粧は元々薄い方だった。
更にじっくり見ると、照明が当たるとキラキラと薄い体毛が光っている。
髪はつやがあり、触ってみると以前より品やかさがあって、指の間をすり抜ける感覚が気持ち良い。
前髪をかき上げると生え際も普通で、富士額まで再現してあった。

美鈴はガウンを脱いで、自分の身体を確認する。
右斜め、左斜めに角度を変える。
以前より大きくなった胸以外はそのままだ。くびれた腰、少し大きめのヒップ。
スラっと長くて細い足。
胸の先端も再現していて薄っすらピンク色だ。

ちょっと! この設定は何の資料を見て決めたんだ。私の裸の写真があるのか?
>ワカリマセン
恥ずかしすぎる。

更に腕と足を確認する。
産毛がほんの少し生えている。ここは気に入らない。指で引っ張ってみる。
スキンが引っ張られるが、産毛は抜けないので今はそのままにしておく。
デリケートゾーンにも薄く体毛が生えているのを見て、慌てて両腕を上げて確認する。

じっと、目を凝らし自分の脇を確認する。
ふぅ、腋毛は無かった。良かった。

さて、一番確認しておきたいところがあった。
美鈴は、大きめにため息をつく。
手を下に伸ばし色々直に触って確認した。
それは驚愕だった。ここまで再現しているのか。

正に、人間そのものだ。この身体は。
技術というか、拘りというか。何かこの身体には作り手側の信念を感じる。
何ら、見た目に人と変わりが無い。
これなら恋も仕事も結婚さえ出来るかもしれないとも思える。

よし、明日からリハビリを頑張ろう。
>ハイ、マスター
>ソロソロ、睡眠ヲ取リマショウ

うん。
最後に、美鈴はもう一度だけ鏡の自分を眺める。
そして、ガウンを羽織りベッドで布団に包まった。

>スリープモード起動
>システム側、バージョンアップ確認中。アップデート中――アップデート完了
>外骨格データ、別フォルダヘ格納
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...