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第1章 Reborn
第29話 美鈴スパーク
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西門は美鈴と別れた後、煙の中レベル3のラボに移動した。
目的は発信機を取り除いた後に接続するバッテリーだ。
煙はまだ立ち込め、逃げている職員のシルエットが見える。
室内では退避命令とアラートがけたたましく鳴っている。
白衣を着た職員が機材を移動したり、ラボの中は混乱していた。
西門が誰かの机の上に小型のモバイルバッテリーが置いてあるのを見つけ、ポケットにしまう。
あとは白衣を拝借し、置いてあった眼鏡とマスクをつけた。
椅子に掛けてあった移動用のPCバッグに使えそうなるものを押し込みながら、
キョロキョロと周りを見渡すが、諦めて直ぐにレベル4の部屋へ移動する。
その部屋は入口にビニールのカーテンが吊るされ、防護服等が壁に掛かっている。
恐らくワクチン研究等を行っている部屋だろう。西門は目的のものを見つけたようだ。
「よしよし」と目的のものを手に入れ、混乱に乗じてさっさと合流場所へ急ぐ中、レベル5の部屋でぴたりと止まる。
渡辺と書いてある。
さっきの拝借した警備員のIDカードを使って中に入ると誰もいない。
何か思いついたようにタブレットをカチャカチャやっていた。
部屋の中で『ブーン』と何かが起動した。
「さて」と美鈴と合流するため移動する。
西門が更衣室まで近づくと、看護師が部屋の前に立っている。
こちらに気付いた様子で走ってくる。
これは不味い。と思って逃げようとすると、凄まじい速度で看護師が追いかけて肩を掴まれた。
「私だ。あ、ちょっとまて」
見る見る間に顔が美鈴に戻るのをみて驚いた。
「大分、戦力は削いでおいた」
美鈴が親指で室内を差す。中を見ると裸にされた男たちが床に転がっている。
「これは」
「中にいるのは17人だ。全員気絶している。ドアもロックしてるし、暫くは時間を稼げるな。
多分警備室に残っているのは連絡係ぐらいだから、一人か二人ぐらいだろ。
今のところ私が美鈴だとはバレていないが、身体の機能を知ってる人間なら時間の問題だろう」
ほれと言わんばかりに、美鈴は警備員の服と無線を渡してきた。
西門は着替えながら考えている。
このスーツを使いこなしているのか。
振り返ると顔がまた変わっている。
勿論スーツ自体の能力は僕も知っているが、ここまでとは。
脳自体の拒否反応を感じていないのか。
精神力が強いのか。
軽々しく平凡とか凡人と言ってしまったことは悪い癖だった。後で謝ろう。
◇
「次はエレベータ横の警備室を制圧だな。あそこは情報の塊の筈だ」
施設にサイレンと、緊急放送が流れている。
『不審者は、テロリストの可能性あり。レベル3及びレベル4生物研究エリアに侵入の形跡があります。
発見の場合、速やかに警備室に連絡してください。
繰り返します。不審者はテロリストの可能性あり。レベル――』
放送を聞いた美鈴は落胆する。
警察官のこの私もとうとうテロリストの仲間入りか。
西門が無線を聞いている。
「どうやら、警備室に応援が向かっている様ですね」
西門と美鈴はロッカールームを出て柱の陰に隠れながら移動する。
「17人からの連絡が途絶えて約10分、地下の警備員室からの増援か。
集まっているのは確実だから、目視で数えるしかない」
沢山の荷物を持っている西門を見る。
「窃盗か? 逮捕するぞ」
「んー。今は緊急事態ということでちょっと借りてきただけです」
美鈴はよく考えたら服を拝借している身だ。しょうがない。
[エル]警備室までのルートを。
>ハイ。約50メートル先ノ突キ当リノ部屋デス
煙の中と放送の中、警備室の周りは厳戒態勢が敷かれている様だ。
壁側に隠れ、様子を伺う。
美鈴が一瞬、顔を出して覗く。
[エル]静止画出して。
>ハイ。ミスズ
目を閉じ、止まった画面の中の隊員の人数を数える。
「15人いるな。うち、中央の椅子に座っているのがリーダーだろう。後ろにやたらデカいのが二人居る」
装備も迷彩柄の服を着用し、ヘルメット、更には機関銃まで持っているのもいる。一個小隊並みの装備だ。
「一体この施設はどれだけ雇ってるんだ」
「篠原でも最高機密の実験施設ときいていますので、このくらいは当然ですね」
ここで待っていてもしょうがないが、人数が多すぎる。
西門は美鈴の肩を叩く。
「これを渡しておきます」
渡されたのは液体の入ったビニール袋だった。
「これ、何? 危ないものじゃないだろうな」
「いえ。これは酸素に触れると煙が発生する液体です。煙幕代わりになるかと」
西門が何かを思い付いたようだ。
美鈴に耳打ちをする。
美鈴は足を引きずった演技をしながら進む。
先頭の10名ほどの男達が銃口を向ける。
「そこで止まれ!」
「所属と氏名を名乗れ!」
「チーフの田中です! 助けてください!」
男がPCをカチャカチャやっている、恐らく社員データを見ているんだろう。
「確認できました。田中チーフ、こちらにゆっくりと進んで下さい」
男は別のデータに気付き、もう一度慌てて田中を見る。
田中だけしかいないはずなのに山本美鈴の位置と重なっている!
しかしどう見ても田中本人だ。
男は慌ててリーダーにデータを見せる。
「これは、どう言う事だ?」
確かに田中しかいない筈がどうして。
山本美鈴の取り扱いには厳重な注意が必要と本部から連絡があったのを思い出す。
暴走するととんでもない破壊力を持つ兵器同然のパワーを出すことが出来るらしい。
もう一つ信じられないが容姿を変えられる機能も持っている。
男は青ざめる。
いかん!
美鈴はゆっくりと隊員達の前まで移動した。
リーダーは叫んだ。
[エル]格闘パターンをサイレント・キリングモードへ。
>ハイ、ミスズ。モードONにシマシタ
「その女は、田中チーフではない!」
よろけながら一人の隊員に寄りかかる。
「きゃ! ごめんなさい」
隊員の手をつかむと、そのまま蹴り上げながら美鈴は宙に浮く。
リーダーが叫ぶ!
「その女は実験体の山本美鈴だ! 暴走している気を付けろ!」
強烈なローリングソバットが二人を吹っ飛ばす。
美鈴はゆっくりと着地し周りを見た。
目的は発信機を取り除いた後に接続するバッテリーだ。
煙はまだ立ち込め、逃げている職員のシルエットが見える。
室内では退避命令とアラートがけたたましく鳴っている。
白衣を着た職員が機材を移動したり、ラボの中は混乱していた。
西門が誰かの机の上に小型のモバイルバッテリーが置いてあるのを見つけ、ポケットにしまう。
あとは白衣を拝借し、置いてあった眼鏡とマスクをつけた。
椅子に掛けてあった移動用のPCバッグに使えそうなるものを押し込みながら、
キョロキョロと周りを見渡すが、諦めて直ぐにレベル4の部屋へ移動する。
その部屋は入口にビニールのカーテンが吊るされ、防護服等が壁に掛かっている。
恐らくワクチン研究等を行っている部屋だろう。西門は目的のものを見つけたようだ。
「よしよし」と目的のものを手に入れ、混乱に乗じてさっさと合流場所へ急ぐ中、レベル5の部屋でぴたりと止まる。
渡辺と書いてある。
さっきの拝借した警備員のIDカードを使って中に入ると誰もいない。
何か思いついたようにタブレットをカチャカチャやっていた。
部屋の中で『ブーン』と何かが起動した。
「さて」と美鈴と合流するため移動する。
西門が更衣室まで近づくと、看護師が部屋の前に立っている。
こちらに気付いた様子で走ってくる。
これは不味い。と思って逃げようとすると、凄まじい速度で看護師が追いかけて肩を掴まれた。
「私だ。あ、ちょっとまて」
見る見る間に顔が美鈴に戻るのをみて驚いた。
「大分、戦力は削いでおいた」
美鈴が親指で室内を差す。中を見ると裸にされた男たちが床に転がっている。
「これは」
「中にいるのは17人だ。全員気絶している。ドアもロックしてるし、暫くは時間を稼げるな。
多分警備室に残っているのは連絡係ぐらいだから、一人か二人ぐらいだろ。
今のところ私が美鈴だとはバレていないが、身体の機能を知ってる人間なら時間の問題だろう」
ほれと言わんばかりに、美鈴は警備員の服と無線を渡してきた。
西門は着替えながら考えている。
このスーツを使いこなしているのか。
振り返ると顔がまた変わっている。
勿論スーツ自体の能力は僕も知っているが、ここまでとは。
脳自体の拒否反応を感じていないのか。
精神力が強いのか。
軽々しく平凡とか凡人と言ってしまったことは悪い癖だった。後で謝ろう。
◇
「次はエレベータ横の警備室を制圧だな。あそこは情報の塊の筈だ」
施設にサイレンと、緊急放送が流れている。
『不審者は、テロリストの可能性あり。レベル3及びレベル4生物研究エリアに侵入の形跡があります。
発見の場合、速やかに警備室に連絡してください。
繰り返します。不審者はテロリストの可能性あり。レベル――』
放送を聞いた美鈴は落胆する。
警察官のこの私もとうとうテロリストの仲間入りか。
西門が無線を聞いている。
「どうやら、警備室に応援が向かっている様ですね」
西門と美鈴はロッカールームを出て柱の陰に隠れながら移動する。
「17人からの連絡が途絶えて約10分、地下の警備員室からの増援か。
集まっているのは確実だから、目視で数えるしかない」
沢山の荷物を持っている西門を見る。
「窃盗か? 逮捕するぞ」
「んー。今は緊急事態ということでちょっと借りてきただけです」
美鈴はよく考えたら服を拝借している身だ。しょうがない。
[エル]警備室までのルートを。
>ハイ。約50メートル先ノ突キ当リノ部屋デス
煙の中と放送の中、警備室の周りは厳戒態勢が敷かれている様だ。
壁側に隠れ、様子を伺う。
美鈴が一瞬、顔を出して覗く。
[エル]静止画出して。
>ハイ。ミスズ
目を閉じ、止まった画面の中の隊員の人数を数える。
「15人いるな。うち、中央の椅子に座っているのがリーダーだろう。後ろにやたらデカいのが二人居る」
装備も迷彩柄の服を着用し、ヘルメット、更には機関銃まで持っているのもいる。一個小隊並みの装備だ。
「一体この施設はどれだけ雇ってるんだ」
「篠原でも最高機密の実験施設ときいていますので、このくらいは当然ですね」
ここで待っていてもしょうがないが、人数が多すぎる。
西門は美鈴の肩を叩く。
「これを渡しておきます」
渡されたのは液体の入ったビニール袋だった。
「これ、何? 危ないものじゃないだろうな」
「いえ。これは酸素に触れると煙が発生する液体です。煙幕代わりになるかと」
西門が何かを思い付いたようだ。
美鈴に耳打ちをする。
美鈴は足を引きずった演技をしながら進む。
先頭の10名ほどの男達が銃口を向ける。
「そこで止まれ!」
「所属と氏名を名乗れ!」
「チーフの田中です! 助けてください!」
男がPCをカチャカチャやっている、恐らく社員データを見ているんだろう。
「確認できました。田中チーフ、こちらにゆっくりと進んで下さい」
男は別のデータに気付き、もう一度慌てて田中を見る。
田中だけしかいないはずなのに山本美鈴の位置と重なっている!
しかしどう見ても田中本人だ。
男は慌ててリーダーにデータを見せる。
「これは、どう言う事だ?」
確かに田中しかいない筈がどうして。
山本美鈴の取り扱いには厳重な注意が必要と本部から連絡があったのを思い出す。
暴走するととんでもない破壊力を持つ兵器同然のパワーを出すことが出来るらしい。
もう一つ信じられないが容姿を変えられる機能も持っている。
男は青ざめる。
いかん!
美鈴はゆっくりと隊員達の前まで移動した。
リーダーは叫んだ。
[エル]格闘パターンをサイレント・キリングモードへ。
>ハイ、ミスズ。モードONにシマシタ
「その女は、田中チーフではない!」
よろけながら一人の隊員に寄りかかる。
「きゃ! ごめんなさい」
隊員の手をつかむと、そのまま蹴り上げながら美鈴は宙に浮く。
リーダーが叫ぶ!
「その女は実験体の山本美鈴だ! 暴走している気を付けろ!」
強烈なローリングソバットが二人を吹っ飛ばす。
美鈴はゆっくりと着地し周りを見た。
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