わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase

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わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

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真知子は、タンスの引き出しをそっと閉めた。手のひらに残ったシフォンのひんやりとした感触が、なぜか妙に生々しく感じられた。十四歳の息子、拓海の仕業に違いない。彼女の下着の畳み方が、昨日自分が整えたときとはほんの少し、しかし確実に違っていた。

気づいてから十日。最初は偶然のいたずらかと思ったが、ネットで検索した「母親の下着 息子」という文字列が示す無数の体験談は、彼女の疑念を確信へと変えた。脱ぎたての洗濯前のものを持ち出すケースが多いと知り、真知子は洗濯かごへパンティーを入れるとき、必ず左端に置くようにした。タンスにしまう際も、前のものと重なる角度を細かく記憶した。

そして今朝。洗濯かごの左端は空で、パンティーは中央にあった。タンスの中も、シームの合わせ方が微妙に乱れている。

「……拓海」

リビングでスマホをいじる息子の後ろ姿は、まだ幼さの残る肩幅だった。その同じ手が、夜中にこっそりと彼女の下着に触れているのかと思うと、複雑な熱が頬を昇った。恥ずかしさ、困惑、そしてどこか切ないような保護欲が入り混じる。

ネットの体験談は残酷だった。直接問い詰めれば心に深い傷を負う子もいれば、逆に抑えきれない衝動から母親に襲いかかるケースさえあるという。思春期の危うい爆発物を、不用意に刺激してはいけない。

「お母さん、今日の夕飯何?」
振り向いた拓海の顔は、無邪気というより、無防備だった。目を合わせるのが少し苦しくなった。

「ハンバーグにしようか。あなたの好きなように」
「やったー! でもその前にゲームするから、飯まで三十分は呼ばないでよ」
「……わかったわ」

BBA(ババア)なんてふざけて呼びながら、彼は彼女の「女性」としての部分に興味を抱いている。この矛盾が、真知子の胸を締め付けた。

夫の誠一には言えない。真面目すぎて、息子を犯罪者のように扱い、家庭がぎくしゃくするのが目に見えている。友人や実家の母にも相談できない。これは拓海だけの、いや、彼と真知子だけの領域に属する問題だ。

その夜、風呂上がりにバスタオル一枚でリビングを通り抜けようとした時、彼女は足を止めた。今まで何気なくやっていたことが、もしかしたら…。すでに「刺激」は与えられてしまっていたのかもしれない。彼女はこっそりと寝室に戻り、パジャマに着替えてからリビングに出た。

選択肢は絞られた。

このまま気づかないふりを続けることにする。

拓海の盗み見るような行為は、彼なりの歪んだ成長の過程なのだろう。それを頭ごなしに否定し、彼の密室でこっそり育んでいる何かを踏みにじりたくなかった。母としての彼女の下着は、たぶん、現実の女性への入り口として、安全な「標本」なのかもしれない。危険な外界に飛び出す前に、彼がそっと触れて確かめる、幻想の代用品。

真知子は、タンスの整理を少しずつ変えた。シルクのスリップや、少しだけ凝ったデザインのランニングパンツを、わざと取り出しやすい場所にしまってみた。洗濯かごに脱ぎ捨てる際も、以前より少し丁寧に、しかし自然に畳むようになった。一種の暗黙の了解、あるいは無言の供与。彼の「探索」が、より現実からかけ離れた変質的な方向へ向かわないように、しかし彼の自尊心を傷つけずに、安全な範囲で満足できるように――そんな危うい綱渡りを、彼女は一人で始めた。

ある雨の夜、真知子は深夜に目が覚め、キッチンで水を飲んだ。拓海の部屋のドアの下から、かすかな光が漏れている。足音を殺して自室に戻ろうとした時、彼のドアがわずかに開き、影が廊下に伸びた。真知子は反射的に物陰に身を隠した。

拓海がそっと洗面所に向かい、洗濯かごを覗き込む後ろ姿。彼は数秒間だけ立ち止まり、そして何も触れずに、ただため息のような息を吐いて自室に戻っていった。ドアが閉まる音。

その瞬間、真知子の目に涙がにじんだ。彼の後ろ姿にあったのは、欲望というより、どこまでも孤独で、どうしようもなくもどかしい「憧れ」のように見えた。母親という、最も近くて最も遠い女性への。

彼女は何も見なかったことにする。翌朝も、拓海の「おはよう」に、いつも通りの笑顔で応えた。

月日は流れ、拓海は高校生になった。背は誠一を追い越し、声は低く変わった。ある日、真知子はタンスの整理をしていて、ふと気づいた。もう何ヶ月も、下着の畳み方が乱されていない。洗濯かごのパンティーの位置も、ずっと左端のままだった。

彼の部屋からは、時折、女子生徒からのラインの通知音らしいものが聞こえるようになった。鞄に忍ばせた、可愛らしい包装紙の小包の切れ端を、真知子はこっそり見つけたこともある。

ある夕食時、拓海が突然言った。
「なあ、母さん」
「何?」
「……なんでもない。ハンバーグ、うまいな」

彼は照れくさそうに俯き、もぐもぐと食べ続けた。その横顔は、もうあの夜、洗濯かごを覗いていた少年ではなく、どこか誇り高い青年の面影を帯びていた。

真知子は温かい米飯を口に運びながら、静かに思った。
(終わったのね、拓海の「探検」は)
そして同時に、少しだけ、名残惜しい気持ちにも駆られた。彼女だけが知っていた、彼の危うくも純粋な秘密の季節が、いつの間にか終わっていた。

彼女は最後まで、一度もそのことに触れなかった。拓海もまた、何も語らなかった。

それは、母と息子の間にだけ存在した、言葉にならない、永久の秘密となった。汚れた秘密でも、輝く秘密でもなく、ただ、ある時期を通過するために二人で無意識に築いた、脆くて温かい、小さな共犯関係。真知子は、それをそっと胸の奥にしまい込んだ。彼がいつか父親になり、自分の子供の不思議な行動に戸惑う日が来ても、この秘密は墓場まで持っていこうと決めていた。

拓海が大学に合格し、引越しの荷造りを手伝っている時、彼がふと呟いた。
「……母さん、いろいろありがとう」
「急にどうしたの。当たり前でしょ」
「いや……ほんとに、なんでもない」

彼は真知子の目をまっすぐ見て、ほんの一瞬、深い感謝とどこか詫びるような複雑な眼差しを浮かべた。そしてすぐに、段ボールを抱えて「重いよこれ!」と明るく叫んだ。

真知子は、その一瞬の眼差しを、しっかりと受け止めた。彼は知っていた。すべてを。そして、彼女が知っていることも、悟っていたのだ。

二人はそれを口に出すことはない。これからも、永遠に。

廊下ですれ違う時、真知子はそっと拓海の背中に手を当てた。彼は振り向かず、しかし背中の筋肉がほんの少し緩むのを感じた。

(よかったね、拓海。あなたの「秘密」は、誰にも傷つけられずに済んだ)
彼女の心のつぶやきは、風に消えるように、静かな家の中に吸い込まれていった。

母と息子の間に、新しい、大人の関係が始まる。その土台には、かつて二人だけが共有した、とびきり恥ずかしくて、とびきり優しい秘密が、しっかりと埋め込まれている。
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