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第13章:小さな一歩
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仕事での会話をきっかけに、リサと翔太は、いつの間にか下の名前で呼び合うようになり、時折仕事帰りにカフェで話すようになった。最初は月に一度ほどだったが、次第に頻度が増え、今ではほぼ毎週、同じカウンター席で顔を合わせていた。
ある金曜日、翔太が珍しくもじもじしながら言った。
「あの…リサさん、もしよかったら…今度の日曜日、オフラインで会いませんか? カフェじゃなくて。実は、僕が編集した動画、もっと大きな画面で見てほしいんです。ノートPCの小さな画面だと、細かい色調がわからなくて…」
リサは一瞬、驚いた。プライベートでの約束。これは今までの「たまたま会った同僚」という関係から一歩進んだものだ。彼女の胸の奥で、小さな灯りがゆらめいた。
「いいですよ。どこで?」
「えっと…リサさんのご自宅か、僕の自宅か…親がいますが。どちらがいいですか? 僕のパソコンを大画面にミラーリングします」
リサは少し考えた。母・和子は日曜は老人会の役員会がある。昼間は家を空けると言っていた。
「じゃあ…私の家で。母は出かけるので、静かですよ」
日曜日、翔太はパソコンとケーブル類をリュックに詰め、緊張した面持ちでリサの家を訪れた。
「お邪魔します…」
「いらっしゃい。上がってください」
リサの部屋は、シンプルで整然としていた。翔太は丁寧にノートPCをリサのテレビへ接続した。彼が編集した動画は、風景の美しい4K映像で、音楽とナレーションが絶妙にシンクロしていた。リサは大きな画面で見るその仕上がりに、息をのんだ。
「翔太さん、これ…本当にすごい。プロみたい」
「で、ですか? ありがとうございます!」
翔太の顔が、得意げに、そして純粋に輝いた。その笑顔を見ているうちに、リサはあることに気づいた。彼の細長い指がキーボード上を軽やかに動く様子、真剣に画面を見つめる横顔、そして何かを説明する時の、少し早口だけれど熱のこもった声。
彼を、異性として見ている。
その思いが頭をよぎった時、リサは自分自身に驚いた。39歳。年下の、障害を持つ同僚。現実的に考えれば、難しいとわかっている。でも、心はそんな理屈をすり抜けて、翔太の無邪気な笑顔に吸い寄せられていくのを感じた。
帰り際、翔太は玄関で深々とお辞儀をした。
「今日は本当にありがとうございました! リサさんに褒めてもらえて、すごく嬉しいです!」
「私も楽しかった。また…編集の様子、見せてください」
「はい! ぜひ!」
ドアが閉まり、静かになった部屋で、リサは自分の鼓動が少し早いことに気づいた。
ある金曜日、翔太が珍しくもじもじしながら言った。
「あの…リサさん、もしよかったら…今度の日曜日、オフラインで会いませんか? カフェじゃなくて。実は、僕が編集した動画、もっと大きな画面で見てほしいんです。ノートPCの小さな画面だと、細かい色調がわからなくて…」
リサは一瞬、驚いた。プライベートでの約束。これは今までの「たまたま会った同僚」という関係から一歩進んだものだ。彼女の胸の奥で、小さな灯りがゆらめいた。
「いいですよ。どこで?」
「えっと…リサさんのご自宅か、僕の自宅か…親がいますが。どちらがいいですか? 僕のパソコンを大画面にミラーリングします」
リサは少し考えた。母・和子は日曜は老人会の役員会がある。昼間は家を空けると言っていた。
「じゃあ…私の家で。母は出かけるので、静かですよ」
日曜日、翔太はパソコンとケーブル類をリュックに詰め、緊張した面持ちでリサの家を訪れた。
「お邪魔します…」
「いらっしゃい。上がってください」
リサの部屋は、シンプルで整然としていた。翔太は丁寧にノートPCをリサのテレビへ接続した。彼が編集した動画は、風景の美しい4K映像で、音楽とナレーションが絶妙にシンクロしていた。リサは大きな画面で見るその仕上がりに、息をのんだ。
「翔太さん、これ…本当にすごい。プロみたい」
「で、ですか? ありがとうございます!」
翔太の顔が、得意げに、そして純粋に輝いた。その笑顔を見ているうちに、リサはあることに気づいた。彼の細長い指がキーボード上を軽やかに動く様子、真剣に画面を見つめる横顔、そして何かを説明する時の、少し早口だけれど熱のこもった声。
彼を、異性として見ている。
その思いが頭をよぎった時、リサは自分自身に驚いた。39歳。年下の、障害を持つ同僚。現実的に考えれば、難しいとわかっている。でも、心はそんな理屈をすり抜けて、翔太の無邪気な笑顔に吸い寄せられていくのを感じた。
帰り際、翔太は玄関で深々とお辞儀をした。
「今日は本当にありがとうございました! リサさんに褒めてもらえて、すごく嬉しいです!」
「私も楽しかった。また…編集の様子、見せてください」
「はい! ぜひ!」
ドアが閉まり、静かになった部屋で、リサは自分の鼓動が少し早いことに気づいた。
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