檻(女子校)の外は底なし沼。 JK解放感と背伸びの性

MisakiNonagase

文字の大きさ
6 / 7

CASE 5:ノーブル・ケージ(名門の温室)

しおりを挟む
​偏差値という物差しすら存在しない。幼稚園から高校まで、外界と遮断された「純粋培養」の15年間。

裕香が通う学校は、財界の重鎮や高級官僚の令嬢たちが、代々その血筋と品位を守るために通う真の「お嬢様学校」だった。中学や高校からの編入生は一人もおらず、そこにあるのは血統と資産による強固な階級社会。男性への免疫など、育つはずもない環境だった。

​多くの同級生たちが中堅大学で満足する中、裕香には人知れず野心があった。自らの意志で猛勉強を始め、高校3年生の冬、ついに実力で名門私立大学の合格を勝ち取った。温室から一歩踏み出し、自力で掴んだ「自由」の切符。その全能感が、彼女の警戒心を無にしていた。

​合格直後、裕香は期待に胸を膨らませ、その大学の「合格者コミュニティ」に登録した。そこで出会ったのが、同じ大学への内部進学を決めていた男子高校生、大輔だった。

「へえ、あのお嬢様学校から一般入試で? 根性あるんだね。僕の周りにはいないタイプだな」

系列校育ち特有の余裕と、洗練されたファッション。女子校の箱庭で生きてきた裕香にとって、大輔の放つ奔放なオーラは、これまで見たことのないほど眩しく見えた。

​合格後の2月。大輔とのデートは、裕香にとって驚きの連続だった。門限を気にする彼女を「もう大学生になるんだからさ」と笑い飛ばし、都会の喧騒へと連れ出す彼。大輔に惹かれるほど、裕香は「お嬢様」という殻を脱ぎ捨てたいという欲求に駆られた。

​3月の春休み。大輔の誘いで、彼の自宅にある広大な敷地内の「離れ」へと招かれた。

初めての日。裕香の心には強い躊躇と恐怖があったが、それ以上に「彼に嫌われたくない、子供だと思われたくない」という一心で、彼を受け入れた。しかし、大輔にとって彼女の「うぶさ」は、愛情の対象ではなく、格好の「おもちゃ」に過ぎなかった。大輔は高校時代から遊び慣れた、その界隈では有名なプレイヤーだった。

​「そんなに固まらないでよ。もっと僕を楽しませて?」

​離れの部屋という、誰にも邪魔されない密室で、裕香の奉仕は次第にエスカレートしていった。大輔は裕香の純真さを利用し、彼女の自尊心を削るような要求を「愛の証明」として求めた。

悲劇はさらに深まった。ある夜、離れの部屋にいたのは大輔だけではなかった。彼の悪友たちが集まっており、裕香は大輔に言われるがまま、彼らの間を「まわされる」という地獄を味わう。

拒絶すれば、この唯一の「外の世界との繋がり」が消えてしまう。その恐怖が、彼女の足をすくませた。

​さらに追い打ちをかけたのは、現実の「外の世界」の洗礼だった。大輔には、公立高校に通う派手な交際相手のギャルがいたのだ。裕香の存在を知った彼女は、大輔の仲間と共に裕香を呼び出し、「名門校の泥棒猫」と罵詈雑言の嵐。

それだけでは飽き足らず、実力行使に出た。

​彼女たちは裕香が言い訳できないよう、顔や足などの目立つ場所を巧妙に避け、服に隠れるお腹や背中を何度も殴りつけた。お嬢様として守られてきた柔らかい肌に、どす黒い痣が刻まれていく。肉体的な痛み以上に、自分が信じていた「自由」の代償がこれほどまでに醜悪で暴力的なものであるという事実に、裕香の精神は崩壊した。

​3月31日。春の光が差し込む中、裕香は一人、自室で震えていた。あんなに憧れ、猛勉強して手に入れたはずの名門大学。けれど、入学式の案内を見るだけで、あの「離れ」での吐き気のするような記憶と、服の下に隠した痣の痛みがフラッシュバックする。

​結局、裕香はその大学へ籍は置いたものの、一度も門をくぐることはなかった。

「どうしても体調が優れなくて……」

心配する両親に、彼女はそれ以上の理由を口にすることはできなかった。財界に名の知れた父に、母に、自分が「離れ」で何をさせられ、見知らぬ女に殴られたなど、死んでも言えるはずがない。
​自力で掴んだはずの自由が、あまりにも残酷な形で彼女を壊した。

一生消えない傷跡を抱えたまま、彼女の時計は、あの春休みで止まったままになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。 その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。 全15話を予定

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

48歳主婦の宅建試験挑戦―そして年下彼がくれた勇気と恋

MisakiNonagase
恋愛
「お母さん」でも「奥さん」でもない、私の名前を呼び止めたのは、26つも年下の彼だった。 「48歳、主婦。私が手に入れたのは、資格(ライセンス)と、甘く切ない自由だった。」 スーパーのパートに明け暮れる平凡な主婦・中西京香、48歳。 目的もなく始めた宅建試験への挑戦が、枯れかけていた彼女の人生を激変させる。 インスタの勉強垢で出会ったのは、娘よりも年下の22歳大学生・幸正。 「不倫なんて、別の世界の出来事だと思っていた――」 そんな保守的で、誰より否定的な考えを持っていたはずの京香が、孤独な受験勉強の中で彼と心を通わせ、気づけば過去問演習よりも重い「境界線」を越えていく。 資格取得、秘めた大人の恋。そして再スタート、 50歳を迎えた彼女が見つけた、自分だけの「地平線」とは。 不動産、法学、そして予期せぬ情熱が交錯する、48歳からの再生と自立の物語。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...