同じ空の下で 幼なじみの目標

MisakiNonagase

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同じ空の下で 幼なじみの目標

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高校生のショウタとミクは、生まれた時から隣同士の家で育った幼なじみ。互いの家の庭は低い生け垣で仕切られているだけ。夕飯を食べに来るのは日常茶飯事で、両親たちは二人を我が子のように扱っていた。

周りからは「付き合ってるんでしょ?」とよくからかわれたが、実際にはまだ告白もしていない。ただ、互いの気持ちは確かだった。

バドミントンで全国大会上位に入る実力を持つショウタだが、勉強のほうは、からっきし。一方、学年トップの成績をキープするミクは、いつも彼の宿題やテスト勉強の面倒を見ていた。

中学三年の秋、地方のバドミントン強豪校から、ショウタに複数の推薦入学の誘いが届いた。彼の心は揺れた。ミクと離れたくない。地元の高校に進み、このままの日々を続けたい。そんな彼の本心を見抜いたミクは、ある放課後、体育館の片隅で彼を呼び止めた。

「行きなよ、ショウタ。あなたのバドミントン、もっと光る場所があるんだから」
「でも…ミクと離れるのは…」
「バカ。離れたって、私はずっとここにいるよ。あなたの試合、全部応援しに行くから」
彼女の笑顔に後押しされ、ショウタは遠方の強豪校への進学を決意した。新幹線で二時間。距離は生まれたが、先輩をはじめ、部員の目を盗んでメールやビデオ通話で二人の絆は変わらなかった。

ショウタは入学早々、その実力で頭角を現した。一年生ながらインターハイ予選の団体戦メンバーに抜擢される。ミクは応援にかけつけ、コート上で躍動する彼の姿に胸を熱くした。しかし、その試合中、ネット前への鋭いダイブを決めた直後、ショウタは着地に失敗し、右足首を複雑骨折してしまった。チームは彼の欠場で敗退。手術とリハビリを経て退院し、部に戻ったショウタを待っていたのは、冷たい空気だった。

「お前のせいで負けた」
「調子に乗ってたからだ」
上級生たちの無言の圧力と、一部の部員の露骨な非難。居場所を失ったショウタは、秋にバドミントン部を退部し、十二月には学校も自主退学した。夢も、自信も、すべてを失い、ぼろぼろの状態で実家に帰ってきた。

通信制高校に編入したショウタは、自室に引きこもりがちになった。窓の外には、ミクの家の明かりが見えた。彼女は毎日のように訪れ、勉強の話をし、おでんを持ってきて、ただ隣に座った。しかし、彼の目から輝きは戻らない。

「もう…バドミントンも、何もかも、どうでもいいよ」
三月のある雨の日、ショウタがふと漏らした言葉に、ミクは決断した。彼女はショウタの手をぎゅっと握りしめ、震える声で言った。

「私、ショウタのことがずっと好きだった。幼い時から、今も、ずっと」
ショウタは息をのんだ。ミクは涙をこらえ、続けた。
「だから、あなたがこんなふうになってるのを見てるのが、辛い。立ち上がって。私と一緒に、未来を作ろう」
「未来…?俺に何ができるってんだ」

「わからないなら、一緒に探せばいい。まずは目先の目標を決めよう」

ミクは深呼吸をして、提案した。

「私、東慶大学の理工学部を目指してる。ショウタも…同じ大学に行かない?」

ショウタは目を丸くした。「東慶大学?冗談だろ。俺の偏差値じゃ及ばないよ」

「できるよ」ミクの声は揺るぎなかった。

「あなたには、誰にも負けない集中力と、一度決めたらとことんやり抜く根性がある。バドミントンでそれを何度も見てきた。勉強だって同じだ」

彼女の確信に満ちた瞳を見つめていると、消えかけた心の奥から、微かな熱がよみがえってくるのを感じた。

「…ミクの目標が、俺の目標か」
「うん。私の目標はショウタの目標。二人の目標は、いつも一緒でしょ?」

その日から、二人の共同受験勉強が始まった。ミクは自分の膨大な受験勉強と並行して、ショウタに中学の基礎からみっちりと教え込んだ。公式の意味、英文法の理屈、歴史の流れ…。ショウタの理解が遅くても、ミクは決して焦らなかった。

ただ「大丈夫、また明日やろう」と笑った。

勉強漬けの日々の中、二人は誕生日やクリスマスを大切に過ごした。ショウタが小さなプレゼントに照れくさそうな顔を見せる時、ミクは昔と何も変わらない彼の優しさを感じた。

しかし、模試の結果はなかなか上がらない。D判定の紙を握りしめ、ショウタはついに潰えかけた。

「やっぱり無理だ…俺があの東慶大学なんて夢のまた夢だよ」

ミクはその紙を静かに取り上げ、破り捨てた。

「この結果は、今のあなたじゃない。あなたの力は確かについてる。知識が繋がって、一気に花開く時が必ず来る。私が保証するから」

彼女の言葉は、単なる励ましではなく、確信に基づく宣言のように響いた。

そして受験の日。

二人は同じ会場の別教室で試験を受けた。終了のベルが鳴り、出口で待ち合わせた時、ショウタはミクにただ一言、「ありがとう」と告げた。

合格発表の日。


ミクは第一志望の理工学部に合格。

ショウタは、はるかに険しい戦いを強いられたが、教育学部スポーツ科学科に合格の二文字を見つけた。同じ大学だ。

春、桜吹雪の舞う東慶大学の正門前。初めてのキャンパスに緊張するショウタの横で、ミクがそっと彼の袖を引いた。

「ねえ、ショウタ」

「ん?」

「大学生になったんだから…そろそろ、『付き合ってる』って言っても、バチは当たらないよね?」

ショウタは一瞬目を丸くすると、恥ずかしそうに顔を赤らめ、ミクの手をそっと握り返した。

「…ああ。ずっと前から、付き合ってたよ」

新しい風が、二人の未来を包み込んでいった。挫折を乗り越え、支え合って掴んだ同じ場所。幼い日から続く物語は、ここから新たな一章を刻み始めるのだった。
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