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第十五章:新しい家族
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それから半年後、祐輔と来夏は婚約した。披露宴では、留美が母親として晴れやかな笑顔を見せた。彼女は祐輔と目が合っても、平静を保っていた。ただ、乾杯の音頭を取る時、ほんの一瞬だけ声が詰まった。
「祐輔君、来夏をよろしくお願いします」
「はい。一生、幸せにします」
結婚後1年、来夏は妊娠した。出産は順調で、女の子が生まれた。名前は結花と決まった。
産院の病室で、留美は生まれたばかりの孫を抱きしめた。
「結花ちゃん…こんにちは。私はおばあちゃんよ」
その横で、祐輔と来夏が幸せそうに微笑んでいる。留美は複雑な思いを抱えながらも、この光景が真実の幸せだと認めざるを得なかった。
ある日、祐輔が一人で留美を訪ねてきた。結花の写真を見せながら、彼はさりげなく言った。
「留美さん、元気ですか?」
「ええ。おばあちゃん業に忙しいわ」
留美は微笑んだ。彼女の目には、かつての情熱はないが、深い慈愛が宿っていた。
「結花が大きくなったら、留美さんにいろいろ教えてほしいです。美術のこと、教養のこと…」
「ええ、喜んで」
短い会話の後、祐輔が帰ろうとすると、留美がそっと声をかけた。
「祐輔くん」
「はい?」
「…ありがとう。そして、ごめんなさい」
祐輔は深くうなずき、そっとドアを閉めた。廊下を歩きながら、彼は思った。人生には、言葉にできない愛がある。それは決して表には出せないが、心の奥底で永遠に輝き続けるのだと。
数年後、結花が幼稚園に上がる頃、家族で公園に来ていた。祐輔と来夏がベンチで話している傍らで、留美が結花に花の名前を教えていた。
「おばあちゃん、すごい! なんでも知ってる!」
「ふふ、それはね、おばあちゃんにも素敵な先生がいたからよ」
留美はふと遠い目をした。そして結花を抱き上げながら、そっと囁いた。
「あなたが大きくなったら、きっと素敵な恋をするのよ。年齢なんて、関係ないからね」
風がそよぎ、桜の花びらが舞った。新しい季節が始まる予感が、そこにはあった。
(完)
「祐輔君、来夏をよろしくお願いします」
「はい。一生、幸せにします」
結婚後1年、来夏は妊娠した。出産は順調で、女の子が生まれた。名前は結花と決まった。
産院の病室で、留美は生まれたばかりの孫を抱きしめた。
「結花ちゃん…こんにちは。私はおばあちゃんよ」
その横で、祐輔と来夏が幸せそうに微笑んでいる。留美は複雑な思いを抱えながらも、この光景が真実の幸せだと認めざるを得なかった。
ある日、祐輔が一人で留美を訪ねてきた。結花の写真を見せながら、彼はさりげなく言った。
「留美さん、元気ですか?」
「ええ。おばあちゃん業に忙しいわ」
留美は微笑んだ。彼女の目には、かつての情熱はないが、深い慈愛が宿っていた。
「結花が大きくなったら、留美さんにいろいろ教えてほしいです。美術のこと、教養のこと…」
「ええ、喜んで」
短い会話の後、祐輔が帰ろうとすると、留美がそっと声をかけた。
「祐輔くん」
「はい?」
「…ありがとう。そして、ごめんなさい」
祐輔は深くうなずき、そっとドアを閉めた。廊下を歩きながら、彼は思った。人生には、言葉にできない愛がある。それは決して表には出せないが、心の奥底で永遠に輝き続けるのだと。
数年後、結花が幼稚園に上がる頃、家族で公園に来ていた。祐輔と来夏がベンチで話している傍らで、留美が結花に花の名前を教えていた。
「おばあちゃん、すごい! なんでも知ってる!」
「ふふ、それはね、おばあちゃんにも素敵な先生がいたからよ」
留美はふと遠い目をした。そして結花を抱き上げながら、そっと囁いた。
「あなたが大きくなったら、きっと素敵な恋をするのよ。年齢なんて、関係ないからね」
風がそよぎ、桜の花びらが舞った。新しい季節が始まる予感が、そこにはあった。
(完)
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