名器と呼ばれて…

MisakiNonagase

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第21章:午前九時の禁忌、名器の深淵

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午前九時。玄関のドアが閉まり、夫・謙介の足音が遠のいていく。  加代子は深い溜息をつき、ようやく手に入れた一人きりの時間を享受しようと、キッチンでハーブティーを淹れ始めた。康助を見送って以来、彼女は「母親」としての緊張感から解き放たれ、再び男たちとの密やかな悦びに身を浸していた。その肌には、今もなお男たちの残香が微かに残っている。

 その時だった。背後で、カチリと鍵の開く音が響いた。

「……? 謙介さん、忘れ物?」

 振り向いた加代子の瞳が、驚愕に大きく見開かれた。そこに立っていたのは、赴任先へ向かったはずの息子・康助だった。大きな荷物も持たず、その瞳は見たこともないほど暗く、鋭い。

「康助……!? あなた、どうして……。もう向こうに着いているはずじゃ……」 「……母さん。ずっと見ていたよ。あんたがどんな顔をして、あの男たちの元へ向かっていたのか。再赴任なんて嘘だ。俺はあの日からずっと、この近くで、あんたを観測していたんだ」

 康助の冷徹な告白に、加代子の全身から血の気が引いた。康助は一歩、また一歩と距離を詰め、加代子をキッチンカウンターへと追い詰めた。

「調べたよ。母さんは金で男を釣っているわけじゃない。むしろ、あいつらが母さんに縋り付いている。……ただの55歳の母親が、どうしてそこまで男を狂わせる? 俺にだって、その男たちの血が流れているんだ。確かめないわけにはいかないだろ」

「……何を言っているの、康助。疲れているのね。ちょっと座って、落ち着きなさい。あなたの言っていることは、全部何かの間違いよ」

 加代子は震える手でティーカップを置き、母親としての慈愛に満ちた微笑みを取り繕った。しかし、康助はその微笑みを冷たく一蹴する。

「間違いなもんか。昨日の午後、あのマンションに入っていくところも見た。あいつ、俺より若かったよ。あんなガキに、母さんは何をしてやってるんだ? 一体どんな魔法を使えば、あいつらがあんなに必死な顔で母さんを求めるようになるんだよ」

「……ただのお友達よ。相談に乗っていただけ。康助、あなたは少し過敏になっているわ。海外での仕事が大変だったのね。お母さんがゆっくり話を聞いてあげるから」

「友達? 友達が女の腰に手を回して、あんなに熱い視線を送るか? 嘘はやめてくれ。母さんの中に、俺の知らない『何か』がある。それを知らずに、俺はもう一歩も動けないんだ」

「……妄想よ。母さんはずっとここで、お父さんとあなたの帰りを待っていただけ。変な想像で私を汚さないで」

「汚しているのは、俺じゃない。……あんたのその、見たこともないほど艶やかな肌だよ。隠したって無駄だ。全身から、男を誘う匂いがしてる」

 康助の手が、カウンターに置かれた加代子の手に重なった。その熱量に、加代子は反射的に身を竦める。

「何を……っ、やめて! あなたは私の息子なのよ!」

 必死に突き放そうとする加代子の両手首を、康助は片手で容易く封じ込めた。一年前よりも逞しくなった息子の筋力が、加代子の抵抗を無効化する。強引に奪われた唇、そして荒々しく服を剥ぎ取られた瞬間に現れたのは、55歳という年齢を忘れさせるほど、瑞々しく男を誘う加代子の肉体だった。康助の理性は、その視覚的な暴力に一瞬で消し飛ばされた。

「息子だからだよ。俺を産んだその体が、今、他の男たちのためにこれほど美しくなっていることが……我慢できないんだ」

 連結した瞬間、康助の全身に電流が走った。これまで抱いてきたどの女とも違う。自分を産み、慈しんできた母の肉体。その奥底にある「名器」は、侵入してきた我が子の熱を、まるで長年待ちわびていたかのように、驚異的な吸着力で迎え入れた。

「……っ!!」

 声にもならない呻きとともに、康助の体は大きく跳ねた。挿入からわずか数秒。名器が放つ極上の締め付けと、実の母子という逃れられない血の結びつきがもたらす相乗効果。それは、生物としての極限の相性だった。康助は一瞬で、その深淵の底まで叩きつけられるように絶頂を迎えた。

 加代子の頭の中では、激しい拒絶の叫びが木霊していた。 (ダメ、こんなこと……あの子は私の……ダメ、ダメ……っ)  しかし、彼女の「名器」は、自らの意思を無視して、康助のすべてを飲み込もうと波打っている。

 二度目、そして三度目。康助は野獣のような執着で、母の深淵へと何度も突き進んだ。加代子の意識は白濁し、これまでの男たち……和文、大輝、凛音……彼らから与えられた快楽など足元にも及ばない、根源的な悦びに塗り替えられていく。

「……っ、あ、あああっ!!」

 ついに加代子も、喉を反らせて絶叫した。頭では否定し、最悪の罪だと罵りながらも、その肉体は初めて出会う「完璧な番(つがい)」との邂逅に、歓喜の産声を上げていた。  キッチンに溢れる、濃厚な精の匂いと、甘い蜜の香り。行為を終え、乱れた呼吸の中で重なり合う二人。康助は、放心したように天井を見つめる加代子の耳元で、獲物を仕留めた男の掠れた声で囁いた。

「母さん……これだったんだね。あいつらが、死んでも離したくないと思った理由は。……俺も、もう戻れないよ」

 加代子の頬を、一筋の涙が伝い落ちた。それは罪への後悔か、あるいは、あまりにも完璧すぎた悦びへの絶望か。55歳の秋。加代子は自分を縛っていた「母親」という最後の鎖を、自らが産んだ息子によって、粉々に打ち砕かれた。
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