【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界ものに出てくる賢者

102. 異世界461日目 北の前線基地へ

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 ここから車に乗って交代で運転していく。特にめぼしいところはなかったので途中の町は無視して拠点での宿泊だ。天気もそこまで悪くなく、いいペースで走っているので予定通りトルイトに到着できそうだ。


 さすがに北の方にやってきたせいか、山の方には雪がかかっていてちょっと肌寒い。

「さすがにちょっと寒くなってきたね。」

「そうね、ここ数日で一気に冷え込んできた感じがするわね。事前に衣類とかを買っておいてよかったわ。」

 今は鎧の下に防寒のシャツを着込んでいるのと、車に暖房機能もついているので大丈夫だ。

「ふと思ったんだけど、自分たちは皮鎧だからいいけど、金属系の鎧だと車の運転とかできないよね。乗っているだけでも結構大変そうだしね。」

「そうね。でもアルドさんとかは護衛中は着ていたけど、車での移動中はさすがにつけていなかったわよ。まあ確かに大変そうだったけどね。」

「まあ今のところ金属系の鎧にするつもりはないけど、防御力を高めるなら金属系の方が安いんだよね。」

「でもその分動きが悪くなるから、部分的な使用をするくらいしかできないわね。」

「収納バッグとかから直接着ることができればいいんだけどねえ。」

 収納バッグから取り出したときに直接着ることができないか色々やってみたんだが、残念ながらできなかった。脱ぐときも残念ながら収納できなかったので、やはり袋に入れる際に障害物があるとできないのかもしれない。
 腕輪や指輪などは出し方によっていきなり装備はできるので、籠手とか靴とか紐を緩めた状態からならなんとかなるかもしれない。この辺りは現在挑戦中だ。



 途中から広いエリアの岩場となっているため主要街道は迂回しているんだが、野営をするのであれば早いと言うことで岩場の中を突っ切るルートを走っていくことになった。ちょっと心配ではあるけど、ペースは落ちるがこっちの方が半日ほど早く着きそうなのでいいだろう。
 しばらく走っていると、後ろからすごい勢いで2台の車が近づいてきた。

 「なんかえらく飛ばしてくる車がいるなあ・・・」と思っていると、なんか魔力の膨大を察知する。

「なんかまずい!ジェン風魔法で車を浮かせて!」

「わかったわ!」

 重力軽減装置の切り替えは間に合いそうにないので今の重量軽減の出力を最大まで上げてから重量軽減の魔法を二重がけして車体の重量を軽くする。
 ジェンの風魔法で車体が浮き上がったところに水魔法と思われる水の塊が降ってきた。

「あぶな!!」

 なんとかギリギリで交わすことができたけど、これってどう考えても狙ってきているよね?
 重力軽減装置を強力な方に切り替えてからジェンにはそのまま風魔法で車を大きく迂回させて先ほどの場所あたりに行ってもらう。自分は少しでも見つからないようにするために認識阻害の魔法をかけておく。

 どうやら急に車を浮かせたのと魔法で視界が悪かったせいか自分たちを見失っているみたいだ。索敵も空にまでは行っていないのだろう。
 水魔法が着弾したところに車が2台止まったんだが、なにやら言い合っている感じだ。まあいきなり対象がなくなったら驚くだろうな。


 鑑定してみるともろに賞罰に殺人などがついているし、職業が犯罪者になっている。どう考えても盗賊だよな。
 あたりを索敵してみるが、車に乗っていた8人しか認識できないので仲間が隠れていると言うことはなさそうだ。レベル的には自分たちと同じか強いくらいなので普通にやったらかなわないだろう。といってもこのままほっておくのもまずいと思うので討伐するか?危ないと思ったら飛翔の魔法で逃げればいいだろう。

「ジェン、盗賊なのは間違いないからいくよ。覚悟はいいか?」

「わかったわ。盗賊相手に躊躇なんかしないわ。やられたからにはやり返さないとね。」


 簡単に手順を決めてから攻撃を開始する。

 まずは必要な荷物だけとりだして車から出て車を収納。そのあと準備しておいたカプサイシンの入った袋を迂回させて彼らの横から打ち込んで意識をそらせる。単純な水攻撃と思ったみたいだが、少しすると悲鳴が上がった。やはり油断しているとかなり有効だな。
 ちなみにこのカプサイシンなんだけど、魔獣にはあまり効かなかった。鼻が利かないせいかとも思ったんだけど、鼻がいいと言われる狼系でも効かなかったから、根本的に何かの耐性があるのかもしれない。人にはこんなに効くんだけどね。

 地面に降りてから風の範囲攻撃で全員を吹き飛ばしてダメージを与えたところで土魔法と雷魔法で攻撃しながら二人で一気に切り込んでいく。
 突然の攻撃で混乱している上に目も見えないので抵抗らしい抵抗もない。ちゃんと武器も持っていない人も結構いたからね。
 簡単な防具も着ているので狙うのは首筋だ。やはり車で移動と言うこともあり、重装備の人がいないのは幸いだった。この場合は短剣の方がやりやすいので気配を消しながら首筋に致命傷を与えていく。躊躇なんかしていられない。
 魔法と併用して攻撃していることと、混乱で防御が甘くなっていることでかなり楽に致命傷を与えていくことができる。強いと思われる人から二人で一人ずつ倒していったので徐々に余裕が出てきた。

 残り二人になったところで雷魔法を使ってしびれさせてから後ろ手に腕を縛り付けて目隠しをする。倒した相手は鑑定で生死を確認してから生きている場合はとどめを刺して身分証明証を回収していく。死んだふりされてから攻撃を受けるとかしゃれにならないからね。

 あたりも警戒してみるが、やはり仲間と思われる人は見当たらない。とりあえず盗賊達の車の影に二人を引きずっていき、尋問することにした。


 風魔法で声を変え、できるだけ低音で残った二人に声をかける。

「聞こえるか?おまえ達が盗賊だと言うことは確認済みだ。他の仲間はすべて殺した。反抗するのなら反抗すればいい、その場合はここで処分していくだけだ。」

「ふざけるな!」

「別にふざけてはいない。攻撃をされたから反撃した。しかも盗賊相手に躊躇する必要はないだろう?盗賊の討伐証明は別に生きている必要はないからな。他の奴らの身分証明証を確認したので言い逃れはできないぞ。」

 ジェンには奴らの車の中を確認してもらったが、いくつかの武器と食料がのせられているだけのようだ。ただこの付近のものと思われる地図があって襲撃場所やルートなどがいろいろと書かれていたようだ。

「改めて聞くぞ。他に仲間はいるのか?」

「ああ、いるさ。さっさとこの縄を解いて解放しろ!もうすぐ仲間たちが団体でやってくるぞ。」

「そうか。」

 尋問が得意なわけでもないし、これ以上の情報は得られそうにない。本当に仲間がやってきても困るので二人にとどめを刺して身分証明証を回収しておく。


 盗賊とはいえ、なんか人を殺すことに躊躇がなくなってきているなあ。生きていくためには攻撃してきた相手に躊躇する必要はないと思ってきているのもあるんだろうけどね。
 死体についても魔獣とかで散々血や死体を見てきたので今更血のにおいでむせかえることもない。もちろんまったく平気になっているわけではないけどね。

 ちょっと気分的にはいやなんだが、浄化魔法をかけてから遺体や車などの荷物はすべて収納バッグに回収してから移動する。とりあえずここから離れた方がいいのは間違いないだろう。


 車だと目立つので索敵をしながら走って地図に載っていた情報からアジトと思われる方向に移動するが、特に他の気配は感じられない。道路ではないんだが、車のタイヤの跡があるのでわかりやすくていい。
 途中からタイヤの跡が消されているのでアジトがわからないようにしているんだろう。ただまだ時間がたっていないせいか消した跡が少しあるのでなんとかなるけどね。
 しばらくすると、またタイヤの跡を発見できたので跡を追っていくと、岩山の中の洞窟へとつながっていた。おそらくここがアジトだろう。洞窟の中なのでわかりにくいがそれほど人が多い感じではなさそうだ。
 襲撃するのなら本当は夜とかの方がいいのかもしれないが、出て行った仲間が戻ってこないとかわかったら面倒だ。やはり一気に始末した方がいいだろう。


 洞窟の入り口には見張りと思われる男が一人立っていた。周りだけを注意しているので飛翔魔法で上から近づいていく。風魔法のサイレントをかけてから風魔法でダメージを与えてから切り倒す。中を確認するが特に気付かれた感じはない。遺体を回収してから浄化魔法で綺麗にしておく。

 洞窟の少し入ったところに入り口が作られているので近づいて中の状況を確認する。特に強い人がいるわけではないみたいで人数は6人という感じか?さすがに隠密などは使っていないと思いたい。2人だけはかなり弱いし、場所が離れているのでもしかしたら捕まっている人かもしれない。

 残った盗賊はどうも料理か何かしているのか、いい匂いが漂ってきている。まあ食事くらいするだろうしな。しばらくすると料理ができたのか、一人がドアの方に近づいてきた。
 近くにあった物陰に隠れてやり過ごすと、「おーい、飯ができたぞ。」と入り口の方へと向かっていく。ここでもサイレントで音を遮断してから切り倒す。さすがに防具とかもつけていないし、油断しすぎだな。


 ドアが開いていたので中の様子をうかがうと、3人が早々に食事をとっていたので一気に潜入してとどめを刺した。土魔法で頭を攻撃してからとどめに心臓をひとつきだ。
 あたりを確認するが他には気配はないので大丈夫そうだ。

 奥にドアがあったので行ってみると、中に気配が2人。中をのぞいてみると、手足をロープで縛られた裸の女性が二人いた。こっちをみてかなり驚いている。

「盗賊は退治しました。少し確認したらちゃんと開放するのでしばらくは我慢してください。
 申し訳ないけど、あなたたちも仲間でない保証はないのでしばらくは拘束させてもららいますよ。」

 さすがにかわいそうなんだが、本当に捕まった人かどうかもわからないので油断もできない。鑑定して見る限りは盗賊の仲間ではなさそうだ。とりあえずジェンに浄化魔法をかけてもらい、服を着てもらう。ただし拘束だけはさせてもらうことにした。
 さすがにこんな状況でも少し興奮してしまうのはしょうがないよね。男の子だし・・・。

 かなりおびえていたんだが、女性がやってきたことで少しは安心したようだ。ただ拘束についてははっきりするまではこのままで対応することだけは理解してもらう。
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