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第一部 異世界ものに出てくる賢者
108. 異世界471日目 ジェンとさよなら?
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目を覚ますとベッドに寝かされていた。
「ここは?」
辺りを見ると看護兵のような人が近くの椅子に座っていた。
「気が付いたか。身体は大丈夫か?」
そう言われて身体を確かめると肩と腕に激痛が走る。
「えっと・・・。」
「とりあえず簡単に治療はしたつもりだ。見える範囲での治療しか出来なかったがな。」
やっと意識がはっきりしてきた。
そうか、魔獣に襲われたんだったな。なんとか助かったのか?兵士が助けに来てくれたのか?
痛みがある箇所に治癒魔法をかけると痛みが引いていった。自分が治癒魔法を使うことができることに驚いているようだった。
「大丈夫です。痛みはありましたが、とりあえず治療できました。ありがとうございます。」
「治癒魔法が使えたのか。」
「ええ、一応使うことができます。えっと、魔獣に襲われたんですよね。兵士の方に助けてもらったのでしょうか?」
「そこがよくわからないんだが、襲ってきたと思われる魔獣の白狼は遺跡の中で討伐されたらしい。ただ、君たちが見つかったのは遺跡の入り口にある岩の上で、入り口を警備していた兵士がアラームの音を聞いて気がついたようだ。今から30分ほど前だったかな?私はとりあえず君の治療を行ったところだ。」
道しるべの玉が発動したんだろうか?
「っ!!ジェンは?!一緒にいた女性はどこですか?」
そういうと、かなり辛そうな顔になった。
「まさか・・・」
「いや、亡くなったわけではないよ。ただ・・・。」
「どこにいるんですか?」
「隣のテントで治療をしているが、状態が酷くてなんとか生命維持ができている状態なんだ。」
ベッドから飛び起きて隣のテントへと向かう。
「ちょっと!今は立ち入り禁止ですよ!」
静止する声が聞こえたが構わず中に入ると、ベッドに寝かされているジェンが目に入った。
「ジェン?」
治療はある程度されてはいるが、まだ終わっていない状態みたいで巻かれている包帯にも血が滲んでいる。
「えっと、同じパーティーの方ですか?」
「そうです、ジェンの容態は?」
「とりあえず今できる範囲の治療は行っています。タイミング悪く中級の治癒ができる治癒士が薬の仕入れのために席を外しており、今呼び寄せているところです。
おそらくあと1時間ほどで到着できると思います。かなり状態は良くないですが、生命維持として定期的に治癒魔法をかけていますのでそれまでは大丈夫だと思います。ただ、あまりにひどいので治癒したとしてもかなりの傷跡と後遺症が残ってしまうかもしれません。」
残念ながら治療薬は中級までしか置いていないらしく、このレベルの怪我だとほとんど効果が出ないようだ。通常は中級魔法を使える治癒士が対応することになっているようだが、魔獣の討伐も進んでいたためにちょうどいないタイミングだったようだ。
「すみません。二人だけにしてもらえますか?」
先ほどの人が自分が治癒魔法を使えることを説明してくれたので納得してくれた。
他の兵士が出ていったあと、精神を集中して治療に取り掛かる。
浄化魔法をかけて綺麗にしてから傷口を確認すると、右肩から袈裟懸けに切り裂かれている。肉がかなりえぐられて骨が見えているところもある。右手もかなりの損傷を受けていてボロボロになっている。あとは打撲関係だが内臓あたりは大丈夫そうだ。さすがにここにダメージがあると難しいからな。
まずは折れた骨の結合、血管の修復、筋肉の再生、皮膚の再生・・・。細胞の再生を意識して回復をしていく。もちろん完全に基の形がわかるわけではないので、あくまで元の状態に戻すイメージで治療していく。
治療をいろいろと経験していて良かったと改めて思った。絶対に傷跡は残さない。徐々に傷が回復していくが、さすがに精神的にきつい。でも集中を切らすわけにはいかない。
どのくらい時間がたったのかわからないが、やっとジェンの呼吸も落ち着いてきた。よかった。なんとかなったかなあ?見た感じ特に傷跡は見当たらない。
・・・
・・
・
「大丈夫ですか?」
体を揺さぶられて目を覚ます。
「あれ?」
どうやら治療の後、ジェンの横でうつ伏せになって寝ていたみたいだ。
「中級魔法を使える治癒士が戻ってきたのですが、もしかして治療されたのですか?」
先ほどいた治癒士が声をかけてきた。その治療士と一緒にいる女性がその治癒士なのかな?
「自分なりに治療をしてみました。大丈夫と思うのですが、どうでしょうか?」
そういってジェンの状態を確認してもらうことにした。
「特に傷跡も無いですし、呼吸も安定しています。彼女の着ていた装備を見る限り、後遺症や傷跡が残るレベルだったと思うのですが、ここまで完璧に治療されたんですか?これって上級の治癒魔法になるはずですが・・・。」
「自分の治癒魔法がどの程度なのかはわかりません。あと彼女が目を覚まさないとどこまで治療できているかわかりません。」
とりあえず大丈夫みたいだけど、一応念のためと言うことで治癒魔法をかけてくれた。中級の治癒魔法を初めて見たけど、やっている感じはあまり初級の治癒魔法と変わらない感じだな。まあほとんど治っている状態だからかもしれないけどね。
「呼吸も落ち着いていますし、おそらく大丈夫だと思いますよ。何かあれば言って下さい。」
そういって二人は退出し、再びジェンと二人だけになる。
しばらくすると、ジェンが目を開けた。
「大丈夫?どこも痛くない?」
「え、ええ。特に痛いところはないわ。」
「よかった・・・ほんとによかった・・・・。」
涙が止まらなかった。ジェンに抱きついてちゃんと無事なことを確認する。
ジェンは何があったのかと呆然としていたが、横に置いてあった鎧を見てやっと魔獣にやられたことを思いだしたようだ。
「とりあえず治療はしたけど、血液がかなり失われていたと思うのであまり無理はしないでね。」
「イチが治療してくれたの?」
「うん、タイミングが悪くて中級魔法を使える治癒士が不在だったからね。それに中級だとかなり傷跡も残ったかもしれないんだ。」
「ありがとう。」
「うん、うん。よかった。」
しばらく抱きついていたんだが、何かに気が付いたかジェンが言ってきた。
「えっと・・・わたしね、裸みたいなんだけど・・・」
そう言われてジェンが裸だったことを思い出した。下半身はシーツが掛かっているが、上半身は丸見えだ。
「ご、ごめん!!」
治療の時はとにかく治すことに集中していて皮膚の状態とかは確認していたんだけど、たしかに上半身丸見えだったな。
シーツを手繰り寄せて恥ずかしそうにしている。
「も~~~!・・・でもありがとう。」
「うん。」
ひと段落したところで簡単な食事を用意してもらい、お腹を落ち着かせる。しかし治癒魔法の威力はすごいな。
「もうこんなことにならないようにしないとね。」
「そうだね。」
あのままジェンが亡くなっていたらどうなっていただろう。ほんとに無事でよかった。
~ジェンSide~
遺跡の探索中に高階位の魔獣に襲われてしまった。戦っている途中で相手の強さを体感してどう考えてもかなう相手ではないことがわかたけど、あきらめるわけにはいかないわ。
警報を鳴らし、兵士が駆けつけている間だけでも耐えなければならないと魔獣と戦う。イチが前衛に出たので後ろから牽制をしようかと思っていたんだけど、魔獣は私をターゲットに襲ってきた。
慌てて水と風の盾を展開しようとしたんだけど、間に合わなくて攻撃を受けてしまった。盾だけでも少しは防げるかと思ったんだけど、無理だった。肩に衝撃が走り、吹き飛ばされて背中に強い衝撃を受けた。
全身が痛い。肩はどうなっているんだろう?右手も動かない・・・。治癒魔法をかけようにも集中ができなくてだめだ。とりあえず動脈の止血だけでもしないと・・・。
目の前でイチがやられそうになっているのに何もできない。イチを助けられない。強くなったと調子に乗っていたかな?
イチが吹き飛ばされて私の方に飛んできた。ここまで?こんなことならイチにちゃんと言っておけばよかったかな?
そう思ったらなにやら浮遊した感じになって青空が見えていた。どういうこと?あたりに警報が響き渡っていて、先ほど入り口で警備をしていた兵士の顔が見えたところで意識がなくなった。もしかして転移したの?
目を覚ますとイチの顔が目の前にあった。どうしたんだろう?イチがかなり悲しそうな顔をしている。
「大丈夫?どこも痛くない?」とイチが声をかけてきたので体の状態を確認してみたけど特に異常はなさそうだ。「え、ええ。特に痛いところはないわ。」と返事をすると、イチが泣きながら抱きついてきた。
どうしたの?何があったの?ふと近くに壊れている私の鎧を見て思い出した。白狼にやられたんだった。改めて体の状態を確認してみたけど、特に怪我はないようだ。あれ?かなり深い傷になっていたと思ったんだけど、イチが治療してくれたのかな?
よかったと安心したところでふと気がついた。私裸なんだけど・・・。イチは今気がついたように驚いて謝ってきた。治療と心配で全く気がついていなかったみたい。
あとで治癒士から聞いたんだけど、かなり危ない状況だったらしい。治療をしても完全に治すことはできないというレベルだったらしく、ここまでちゃんと治っていたことに驚いていた。
治癒魔法は上級魔法レベルの能力だと言っていたけど、スキルが上がっていたわけじゃないのよね。治療をしたときに曖昧な感じではなく、きちんと理解して治療をしたのでよかったんだと思う。
イチには感謝しかない。私をおとりに逃げてもよかったのに、最後まで私をかばってくれていたんだから。
感謝?それだけの気持ちなのかな?イチとずっと一緒にいたい。でもイチはどう思っているんだろう?聞きたいけど、聞くのが怖い・・・。
いままで友人には、「好きになったんだったらすぐに告白すればいいじゃない!」と言っていたけど、よくわかってなかったのね。もし断られたらどうしようと思ってしまうと、今のままでいいと思ってしまうんだ。友人が言っていたのはこのことだったのね。
告白してうまくいけばいいけど、うまくいかなかったときにどう付き合えばいいのかわからない。もし断られたらパーティーとしてやっていくのはつらいよね?これからのことを考えると好きではなくても受け入れてくれるかもしれないけど、そんなのはいやだ。そう考えるとやっぱりこのままがいいの?
「ここは?」
辺りを見ると看護兵のような人が近くの椅子に座っていた。
「気が付いたか。身体は大丈夫か?」
そう言われて身体を確かめると肩と腕に激痛が走る。
「えっと・・・。」
「とりあえず簡単に治療はしたつもりだ。見える範囲での治療しか出来なかったがな。」
やっと意識がはっきりしてきた。
そうか、魔獣に襲われたんだったな。なんとか助かったのか?兵士が助けに来てくれたのか?
痛みがある箇所に治癒魔法をかけると痛みが引いていった。自分が治癒魔法を使うことができることに驚いているようだった。
「大丈夫です。痛みはありましたが、とりあえず治療できました。ありがとうございます。」
「治癒魔法が使えたのか。」
「ええ、一応使うことができます。えっと、魔獣に襲われたんですよね。兵士の方に助けてもらったのでしょうか?」
「そこがよくわからないんだが、襲ってきたと思われる魔獣の白狼は遺跡の中で討伐されたらしい。ただ、君たちが見つかったのは遺跡の入り口にある岩の上で、入り口を警備していた兵士がアラームの音を聞いて気がついたようだ。今から30分ほど前だったかな?私はとりあえず君の治療を行ったところだ。」
道しるべの玉が発動したんだろうか?
「っ!!ジェンは?!一緒にいた女性はどこですか?」
そういうと、かなり辛そうな顔になった。
「まさか・・・」
「いや、亡くなったわけではないよ。ただ・・・。」
「どこにいるんですか?」
「隣のテントで治療をしているが、状態が酷くてなんとか生命維持ができている状態なんだ。」
ベッドから飛び起きて隣のテントへと向かう。
「ちょっと!今は立ち入り禁止ですよ!」
静止する声が聞こえたが構わず中に入ると、ベッドに寝かされているジェンが目に入った。
「ジェン?」
治療はある程度されてはいるが、まだ終わっていない状態みたいで巻かれている包帯にも血が滲んでいる。
「えっと、同じパーティーの方ですか?」
「そうです、ジェンの容態は?」
「とりあえず今できる範囲の治療は行っています。タイミング悪く中級の治癒ができる治癒士が薬の仕入れのために席を外しており、今呼び寄せているところです。
おそらくあと1時間ほどで到着できると思います。かなり状態は良くないですが、生命維持として定期的に治癒魔法をかけていますのでそれまでは大丈夫だと思います。ただ、あまりにひどいので治癒したとしてもかなりの傷跡と後遺症が残ってしまうかもしれません。」
残念ながら治療薬は中級までしか置いていないらしく、このレベルの怪我だとほとんど効果が出ないようだ。通常は中級魔法を使える治癒士が対応することになっているようだが、魔獣の討伐も進んでいたためにちょうどいないタイミングだったようだ。
「すみません。二人だけにしてもらえますか?」
先ほどの人が自分が治癒魔法を使えることを説明してくれたので納得してくれた。
他の兵士が出ていったあと、精神を集中して治療に取り掛かる。
浄化魔法をかけて綺麗にしてから傷口を確認すると、右肩から袈裟懸けに切り裂かれている。肉がかなりえぐられて骨が見えているところもある。右手もかなりの損傷を受けていてボロボロになっている。あとは打撲関係だが内臓あたりは大丈夫そうだ。さすがにここにダメージがあると難しいからな。
まずは折れた骨の結合、血管の修復、筋肉の再生、皮膚の再生・・・。細胞の再生を意識して回復をしていく。もちろん完全に基の形がわかるわけではないので、あくまで元の状態に戻すイメージで治療していく。
治療をいろいろと経験していて良かったと改めて思った。絶対に傷跡は残さない。徐々に傷が回復していくが、さすがに精神的にきつい。でも集中を切らすわけにはいかない。
どのくらい時間がたったのかわからないが、やっとジェンの呼吸も落ち着いてきた。よかった。なんとかなったかなあ?見た感じ特に傷跡は見当たらない。
・・・
・・
・
「大丈夫ですか?」
体を揺さぶられて目を覚ます。
「あれ?」
どうやら治療の後、ジェンの横でうつ伏せになって寝ていたみたいだ。
「中級魔法を使える治癒士が戻ってきたのですが、もしかして治療されたのですか?」
先ほどいた治癒士が声をかけてきた。その治療士と一緒にいる女性がその治癒士なのかな?
「自分なりに治療をしてみました。大丈夫と思うのですが、どうでしょうか?」
そういってジェンの状態を確認してもらうことにした。
「特に傷跡も無いですし、呼吸も安定しています。彼女の着ていた装備を見る限り、後遺症や傷跡が残るレベルだったと思うのですが、ここまで完璧に治療されたんですか?これって上級の治癒魔法になるはずですが・・・。」
「自分の治癒魔法がどの程度なのかはわかりません。あと彼女が目を覚まさないとどこまで治療できているかわかりません。」
とりあえず大丈夫みたいだけど、一応念のためと言うことで治癒魔法をかけてくれた。中級の治癒魔法を初めて見たけど、やっている感じはあまり初級の治癒魔法と変わらない感じだな。まあほとんど治っている状態だからかもしれないけどね。
「呼吸も落ち着いていますし、おそらく大丈夫だと思いますよ。何かあれば言って下さい。」
そういって二人は退出し、再びジェンと二人だけになる。
しばらくすると、ジェンが目を開けた。
「大丈夫?どこも痛くない?」
「え、ええ。特に痛いところはないわ。」
「よかった・・・ほんとによかった・・・・。」
涙が止まらなかった。ジェンに抱きついてちゃんと無事なことを確認する。
ジェンは何があったのかと呆然としていたが、横に置いてあった鎧を見てやっと魔獣にやられたことを思いだしたようだ。
「とりあえず治療はしたけど、血液がかなり失われていたと思うのであまり無理はしないでね。」
「イチが治療してくれたの?」
「うん、タイミングが悪くて中級魔法を使える治癒士が不在だったからね。それに中級だとかなり傷跡も残ったかもしれないんだ。」
「ありがとう。」
「うん、うん。よかった。」
しばらく抱きついていたんだが、何かに気が付いたかジェンが言ってきた。
「えっと・・・わたしね、裸みたいなんだけど・・・」
そう言われてジェンが裸だったことを思い出した。下半身はシーツが掛かっているが、上半身は丸見えだ。
「ご、ごめん!!」
治療の時はとにかく治すことに集中していて皮膚の状態とかは確認していたんだけど、たしかに上半身丸見えだったな。
シーツを手繰り寄せて恥ずかしそうにしている。
「も~~~!・・・でもありがとう。」
「うん。」
ひと段落したところで簡単な食事を用意してもらい、お腹を落ち着かせる。しかし治癒魔法の威力はすごいな。
「もうこんなことにならないようにしないとね。」
「そうだね。」
あのままジェンが亡くなっていたらどうなっていただろう。ほんとに無事でよかった。
~ジェンSide~
遺跡の探索中に高階位の魔獣に襲われてしまった。戦っている途中で相手の強さを体感してどう考えてもかなう相手ではないことがわかたけど、あきらめるわけにはいかないわ。
警報を鳴らし、兵士が駆けつけている間だけでも耐えなければならないと魔獣と戦う。イチが前衛に出たので後ろから牽制をしようかと思っていたんだけど、魔獣は私をターゲットに襲ってきた。
慌てて水と風の盾を展開しようとしたんだけど、間に合わなくて攻撃を受けてしまった。盾だけでも少しは防げるかと思ったんだけど、無理だった。肩に衝撃が走り、吹き飛ばされて背中に強い衝撃を受けた。
全身が痛い。肩はどうなっているんだろう?右手も動かない・・・。治癒魔法をかけようにも集中ができなくてだめだ。とりあえず動脈の止血だけでもしないと・・・。
目の前でイチがやられそうになっているのに何もできない。イチを助けられない。強くなったと調子に乗っていたかな?
イチが吹き飛ばされて私の方に飛んできた。ここまで?こんなことならイチにちゃんと言っておけばよかったかな?
そう思ったらなにやら浮遊した感じになって青空が見えていた。どういうこと?あたりに警報が響き渡っていて、先ほど入り口で警備をしていた兵士の顔が見えたところで意識がなくなった。もしかして転移したの?
目を覚ますとイチの顔が目の前にあった。どうしたんだろう?イチがかなり悲しそうな顔をしている。
「大丈夫?どこも痛くない?」とイチが声をかけてきたので体の状態を確認してみたけど特に異常はなさそうだ。「え、ええ。特に痛いところはないわ。」と返事をすると、イチが泣きながら抱きついてきた。
どうしたの?何があったの?ふと近くに壊れている私の鎧を見て思い出した。白狼にやられたんだった。改めて体の状態を確認してみたけど、特に怪我はないようだ。あれ?かなり深い傷になっていたと思ったんだけど、イチが治療してくれたのかな?
よかったと安心したところでふと気がついた。私裸なんだけど・・・。イチは今気がついたように驚いて謝ってきた。治療と心配で全く気がついていなかったみたい。
あとで治癒士から聞いたんだけど、かなり危ない状況だったらしい。治療をしても完全に治すことはできないというレベルだったらしく、ここまでちゃんと治っていたことに驚いていた。
治癒魔法は上級魔法レベルの能力だと言っていたけど、スキルが上がっていたわけじゃないのよね。治療をしたときに曖昧な感じではなく、きちんと理解して治療をしたのでよかったんだと思う。
イチには感謝しかない。私をおとりに逃げてもよかったのに、最後まで私をかばってくれていたんだから。
感謝?それだけの気持ちなのかな?イチとずっと一緒にいたい。でもイチはどう思っているんだろう?聞きたいけど、聞くのが怖い・・・。
いままで友人には、「好きになったんだったらすぐに告白すればいいじゃない!」と言っていたけど、よくわかってなかったのね。もし断られたらどうしようと思ってしまうと、今のままでいいと思ってしまうんだ。友人が言っていたのはこのことだったのね。
告白してうまくいけばいいけど、うまくいかなかったときにどう付き合えばいいのかわからない。もし断られたらパーティーとしてやっていくのはつらいよね?これからのことを考えると好きではなくても受け入れてくれるかもしれないけど、そんなのはいやだ。そう考えるとやっぱりこのままがいいの?
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