【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界ものに出てくる賢者

109. 異世界473日目 リハビリ

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 治療をしたあと、簡単に体を動かしたりしながら3日ほど休養をとらせてもらい、なんとか気力も体力も回復する。

 ジェンのことを大切な人と思ったことで、好きなんだろうと認識してしまったせいか、ジェンと話すと少し緊張してしまう。まずいなあ。

 ジェンも一応は大丈夫そうだが、なぜか少しぎこちない。やはりこの間裸を見られたせいなのかなあ?本人は状況が状況だったから気にしないでと言っているが・・・。


 あのあと話を聞くと、警報を聞いて現場に駆けつけた兵士達は白狼を討伐したらしいが、そこに自分たちの姿はなかったようだ。ただ、ボロボロになった装備がいくつか落ちていたらしい。やはり道しるべの玉で転移したのだろう。このことはジョニーファン様には話した方がいいかもしれないね。
 道しるべ玉を鑑定してみるとすでに使用済みになっていた。これが発動していなかったらやばかったかもしれないな。


 例の祭壇についてはすでに報告をしており、見つかったものについても伝えている。収納の宝石の容量は2キリルくらいだったが、収納バッグよりも高級なものらしい。見つけたものについては後でどうするかを決めなければならない。


 ジェンの状態はかなり危なかったらしくて、死んでしまっていてもおかしくなかったほどだと言っていた。事前にジェンが止血をしていたこともよかったらしい。あとから来た治癒士が、装備の状況を見てあそこまで元の状態に治療したことに驚いていた。
 今回防御関係の魔道具を買っていなかったらもっとダメージがひどくて死んでいたかもしれないね。あぶなかったよ。



 体力も戻ったところでリハビリをかねて近くの森で魔獣狩りをすることにした。さすがにまた何かあったら大変だと兵士が護衛についてくれるようだ。申し訳ないです。

 いくつかの装備は使えなくなってしまったので予備で持っていたもので代用する。グレードは下がってしまうがこれはしょうがないな。それでも予備を持っていてよかったよ。本当は町に戻ってから装備を新調する手もあったんだが、護衛がつくこともあり、上階位の魔獣相手であればこの装備でも十分だろうと言うことで予備の装備で当面活動することにした。


 上階位の魔獣を討伐していくが、やはりジェンの動きが悪い感じだ。ジェンもこのままではまずいと思っているのか、しばらく前衛に出て魔獣を倒していくことになった。二日間狩りをしてなんとか動きもよくなってきたので、あとは徐々に慣れていくしかないだろう。氷狼を見たときはちょっと緊張していたしね。

 狩りをしているときはジェンとも特に気にせずに話せるんだが、それ以外の時はちょっと緊張してしまう。うーん、こまったなあ。



 このあとあの魔獣がどこからきたのか気になったので護衛の人と一緒に再び遺跡の中に入り調査を続ける。

 今回はより慎重に索敵をしながら自分たちが襲われたところに行ってみる。その奥で何かが崩れたような音がしていたので行ってみたが特に何も見つからない。やはり普通に湧いたんだろうか?

 ふと見ると通路の上の方に穴を発見。もともと通路の一部が壊れていたので気がつかなかったが、この穴から出てきた?索敵をしてみるが特に魔獣の気配がないというか、どうも探索しにくい感じだが、奥にはちょっと広めの部屋が広がっているっぽい。

 穴の中に入ってから光り魔法で明かりをつけると驚いた。魔獣石が大量に積み重なっていたのである。なんなんだこの部屋?魔獣石の大体の数値の確認などある程度調査を行った後、とりあえず邪魔になるので合成してみると、1000万ドールほどになった。すごい額だな。兵士もかなり驚いていた。


 部屋の中を調査すると、いくつか付与魔法のような文様が描かれていた。残念ながら使われている文字は古代ライハン語のようで意味がわからない。よくある古代の魔道具と同じだな。
 個室になっているので、ここで魔獣が湧いて死んでを繰り返していたのかな?どのくらいの頻度で湧いていたのかわからないけど、古代遺跡と言うことを考えると数千年分のものなのかもしれない。ただ、魔獣石があるけど、骨などが残っていないのが気になるな。
 いくつかの付与魔法は部屋にある魔獣石を取り込むような感じになっているのでまだ稼働しているのか?ある程度調査を行ってから部屋を出る。


 テントに戻ってからジェンと少し話をした。

「今回いろいろとあったけど、二人とも無事でよかったね。」

「ほんとにそうね。あのときはこれで終わりと覚悟しちゃったわ。」

「ジェン・・・」

「だからね、イチにはほんとに感謝しているの。いつもとの世界に戻れるのかわからないけど、それまで改めてよろしくね。」

「・・・うん、わかった。もとの世界に戻るまで、絶対に生き延びよう。無茶をするつもりはないけどね。」

「もちろん。死にそうにはなったけど、冒険をやめる気はないわよ。普通の生活ということも考えたけど、せっかくだからね。」

「それじゃあ、これからもよろしく!」

「うん」

 お互いに握手して今後のことを誓う。

 ジェンのことを好きだという気持ちはこの際置いておこう。もし告白しても、もとの世界に大事な人がいるのに答えてくれるとも思えない。もし戻れることがわかったらそのときには告白しよう。たとえ消えてしまう記憶だとしても、自分の気持ちだけは伝えておきたい。ジェンには迷惑になるかもしれないけどね。



 このあと7日ほど遺跡の調査や壁画の文字の解読など行い、一通りの調査が終わったところで今回の結果について報告する。古代ライハン語の解読の結果や最後に見つかった部屋の付与魔法に関する考察などをまとめていたのでかなり驚かれた。
 ちなみに発見した魔道具の売却は自由だが、魔獣石については12.5%が取り分となるようだ。これは事前に決められていたことなので仕方が無い。こういう調査の時には価値を判断するために魔獣石の魔素を測定する機械が持ってきてあり、それで魔素量を計測し、そのあと3回分割したものが取り分となるのである。

 一通りの説明も終わったので明日の朝には出発することにして、最後にお世話になった人たちに挨拶して回り、眠りについた。


~デイストリフSide~
 私の名前はデイストリフ。アルモニア王国の兵士団のサルマン・クリファー隊の副官を務めている。剣の才能があったこともあり、任官してから徐々に階級を上げ、副官にまでなることができた。残念ながら結婚という縁には恵まれなかったが、今の立場には満足している。

 現在私たちは発見された遺跡の調査を行っているところだ。付近で山が崩れたと報告があったため調査をしていて見つかった遺跡で、盗掘もされていない貴重なところだった。

 いつものように仕事をしていると、門番の兵士から紹介状を持った冒険者がやってきたと連絡が来た。その紹介者があこがれのジョニーファン様と言うから驚きだ。この国で魔道士様の名前をかたる人間はほとんどいない。すぐにサルマン様に連絡を取り、紹介状を渡す。
 紹介状は間違いないもので、冒険者だが遺跡などの知識に長けているものなので調査に協力させてやってほしいと書かれていた。

 さっそくサルマン様と挨拶にいくと、そこにいたのは若い男女だった。もっと年配の人たちかと思ったんだが、その見た目にかなり驚いた。実際の年齢はもっと上なのかと思ったが、年齢は見た目通りでさらに驚いた。

 挨拶の後、二人と話をすると、なんとジョニーファン様から数時間魔法について指導を受けたらしい。少し話すだけでも名誉なことなのに魔道士様が数時間も時間を割いてくれるなんて、どれだけの知識を持っているのだろう?

 さすがに魔道士様の紹介状を持った人を一般の扱いはできないので急遽テントを増設して部屋を用意した。かなり簡易的なところだったんだが、十分満足してくれたようだ。


 翌日から調査に入ってもらっていたんだが、2日目に遺跡の入り口で二人が血だらけでいるのが発見された。どういうことなの?訓練の様子を見る限り上階位の魔獣であれば十分倒せるレベルだったはず。あとで白狼がいたということをきいて驚いた。


 運が悪いことにちょうど中級の治癒士がいなかったため、すぐに呼び出しをかけ、それまでは初級の治癒士に対応してもらっていたんだが、なんと上級の治癒魔法を使って治療したらしい。本人は中級と言っているが、あそこまで完璧に治療をするというのは中級の治癒士には無理だ。やはり魔道士様に認められるだけのことはある。

 リハビリを行っているときに調査結果を聞いたが、その内容を聞いて驚いた。古代ライハン語の解読につながりそうな壁画を発見したようだ。壁画のかなり上の方のためまだ調査を行っていなかったところだったが、飛翔魔法で見つけたらしい。現在は足場を作り調査を行っているが、「これはすごい発見だ!」とヤルマンがかなり興奮していた。


 その後、白狼がいたと思われる部屋も発見し、その後の調査でも見つかっていなかった小部屋などをいくつか発見していた。地中の探索能力が高いようだ。

 10日ほどの調査で戻ることにしたらしく、最後に報告を受けたが、こういうことにあまり詳しくない私でもかなりの成果だと言うことがわかる内容だった。古代ライハン語の解読もある程度進めており、白狼のいた部屋の考察もかなり興味の引かれるものだった。

 今回の調査結果については「あくまで自分たちは調査の協力でしかないから隊からお願いします。」と譲らなかった。ただジョニーファン様には後で自分たちから話してもいいかと申し出があり、サルマン様も同意されていた。

 二人はかなり謙遜していたが、やはり魔道士様の指導を受けるにはこのくらいの知識が無ければならないのだろう。
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