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第一部 異世界ものに出てくる賢者

現-6. 現世界20日目 体育祭

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 夏休み明けから準備が始まっていた体育祭が迫ってきている。とはいっても自分は個人では障害物競走に出るくらいなので特に問題は無いだろう。あとは組み体操とか騎馬戦、ダンスくらいだな。

 準備も大詰めとなっているんだが、もともとそんなに係には参加していなかったので忙しいわけではない。まあ全体練習とか準備を手伝うくらいだ。

 そして迎えた当日は晴れ渡っていた。高校のイベントなんだが、親も結構やってきている。うちの両親も見にやってくるらしいが、詳細は知らない。見るなら勝手に見てくれと言っているしね。



 うちの学校は伝統があるせいか、イベントの時にやることは多いと思う。4つのチームに分かれて点数を競うんだが、チームごとにダンスや応援合戦など個別に評価がされるという感じだ。
 自分は青竜チームでジェンは玄武チームとチームが違うので座っているところも違っている。ジェンは応援団になっているみたいで、いろいろと忙しそうだ。こんな体育祭は初めてだと喜んでいたけどね。
 チアの衣装を着たりするわけではなく、応援団服なんだが、やはり目立っていた。なぜか向けられているカメラが多いのも気のせいではなさそうだ。
 そして写真を撮っている中に玲奈の姿を見つける。あいつ何やっているんだ?わざわざ見に来たのか?

「玲奈!なんでこんなところに来ているんだ?」

「あ、おにいちゃん。それはもちろんジェニファーさんを見るために決まっているじゃない。」

 なんか余計なことを口走りそうだったので少し離れたところに連れて行き問い詰める。

「せっかくのシャッターチャンスなのに何よ。」

「ジェンからいろいろ聞いたのか?連絡先を交換したと言っていたからな。ったく、いつのまに・・・。」

 今日のお昼は友人達と食堂で食べようかと思っていたんだが、朝のうちにジェンからお弁当を渡されたのである。
 どうしたのかと思って聞いたら「玲奈ちゃんから今日はお弁当を準備しないと聞いたから。」と言っていたのである。

「いいじゃない。お兄ちゃんのことで唯一自慢できることなんだからそのくらいいいでしょ。」

「自慢できるって・・・ジェンのこと他にも話したのか?」

「私の親友にだけだよ。とてもうらやましがられちゃった。」

 こいつは・・・。

「ネットとかにアップするのはやめておけよ。わかってるだろ。」

「そのあたりはちゃんと守っているよ。お父さん達にもきつく言われているからね。写真も直接見せただけだよ。」

「あまり変なことはしないでくれよな。」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」

 これ以上突っ込むのは諦めるしかなさそうだ。



 自分の出る障害物競走は特に魔力強化もなく普通に頑張ったくらい。障害物競走なのでそれほど能力差が出るわけでもなかったが、無事に1位となった。
 借り物で「好きな人」とかいうありがちな展開などはない。現実の世界でそんなイベントとかある学校はあるのだろうか?

 騎馬戦では、なぜか狙われていたように思うのは気のせいだろうか?馬役の前になっていたんだが、どう考えても自分を狙って来ていたような気がする。
 なにやら悪意を感じるので体の強化をしていたせいでダメージはなかったが、攻撃してきた方が痛がっていた。何をやっているんだか・・・。
 ジェンのことで嫉妬しているのかねえ?戦う前に馬の方が崩れてしまうので先生に不審がられたが、特に何もしていないから知らないよ。


 お昼は友人達と食堂で食べることにした。「なんかいつもと違う感じの弁当だな。」と突っ込まれるが、「体育祭仕様だ。」とごまかしておいた。
 久しぶりのジェンの料理は美味しかった。最初の頃は結構大変だったけどな。しかしこれって多分あっちの食材使ってるな。食材関係はジェンがほとんど全部管理していたからなあ。

 午後の競技も問題なく進み、ジェンの玄武チームが総合優勝となっていた。自分のチームは残念ながら二位だった。


 体育祭が終わった後、教室に戻っていると、ジェンがうちの家族と挨拶しているのを見かける。ただでさえ目立つのに勘弁してほしい。

「あれはジェニファーさんの家族じゃないよね?どこの両親と話しているのかな?」とか言われているのが気になってしまう。
 うちの両親を知っている人はまずいないはずなので大丈夫なはずだ。



 帰りにジェンの家によってお弁当箱を返す。

「ありがとう、美味しかったよ。久しぶりにあっちの食べ物を食べられて嬉しかったよ。」

「よかった。やっぱりあっちのものって分かった?」

「それはそうだよ。でも、普段はいいからな。変な誤解を受けても面倒だから。」

「わかってるわよ。」

「あと、うちの両親と何か話をしたのか?」

「また遊びにおいでとか簡単な挨拶くらいよ。名前は出さなかったから誰の両親かはわかっていないと思うわ。」

「それならいいか。」


「そうそう、今度の水曜日にうちの両親がやってくるみたいなの。」

「えらく急だな。しかも平日か。」

「そこしか時間がとれないらしいのよ。お願いよ。」

「わかったよ。挨拶しないという選択肢はないだろう。学校には親から休むって連絡してもらおう。」

 なにか用事があって私たちが納得させることができるのなら学校くらい休んでもかまわないからちゃんと言えという両親に感謝だな。

 家に帰るとテンションを上げた玲奈が母と一緒に撮った写真を見ていた。やれやれ。玲奈はかなり上機嫌なのは何かあったのかな?前はリビングにいることなんかほとんどなかったのにな。
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