【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

文字の大きさ
132 / 430
第一部 異世界の貴族達

116. 異世界499日目 新たな町へ

しおりを挟む
 クリアレントを出発してから西にある建設中の町へと向かう。もともと小さな前線基地のようなところはあったんだが、魔獣討伐の基地と王都クリアレントからの新たなルート確保の拠点として町を大きく変えることにしたらしい。
 今はまだクリアレントからの街道が整備されていないのでクリアミント経由で行かなければならないがこれはしょうが無いだろう。

 バスだとかなりの時間がかかるが、車でいつものペースで走って行けばおそらく10日はかからないだろう。二人には拠点の話はすでにしているので大丈夫だ。

 ここからの街道はかなり整備されており、車の往来も結構多いので盗賊の心配は無いと考えていいだろう。まあ一応索敵だけはしておくけどね。


 この日は拠点の改造をしなければならないので少し早めに場所を決めて拠点を出す。前はちょっと見せただけだったので簡単に設備の説明をしていく。
 壁には出入り口はないので中に入るには飛んでいくしかないのでここは自分とジェンが手をつないで連れて行くことにしたが、さすがに飛翔の魔法には驚いていた。前は建物とキッチンセットしか出さなかったから、こんなに高い塀を出すとは思っていなかったようだ。

 中にあるトイレとシャワーについては基本的に家にあるものと同じなので大丈夫そうだ。消音や消臭の効果もあるので喜んでいた。浄化魔法は簡単なものは使えるようなのでトイレの後のことは問題無いらしい。

 台所になるところには冷蔵庫も出して食材を一通り入れておいた。さすがに毎回収納バッグから出すわけにもいかないからね。調味料関係も購入していたので調理については問題ないはずだ。調理用具も一通りそろっていたし、追加で購入しているからね。
 部屋は今から改造を行うので後で説明することにして、その間に夕食の準備に取りかかってもらう。

 拠点にある建物は最初作ったときよりも少し大きくしていたのでよかった。前は10畳くらいの部屋(4m四方)だったんだが、今は15畳(5m四方)くらいの部屋だからね。ちょっと狭くはなってしまうが、部屋の仕切りを入れて分けておいた方がいいだろう。

「狭くはなるけど、やっぱり彼女たちのプライベートのことを考えると部屋を仕切った方がいいと思うんだ。ジェンは自分と同じ部屋になってもかまわないか?ベッドがすぐ隣になるけど。」

「いまさらでしょ。」

「まあ、今までも特に仕切っていたわけじゃないけどね。それじゃあ、イメージはこんな感じでいいかな?」

 ある程度の枠組みを決めてからいったん荷物を部屋のしきりに合わせておいてみる。一部屋だったところを”円”の字みたいな形で3つの部屋に別けて左上は自分たちの寝室、右上は彼女たちの寝室、下の長方形のところはソファーなどを置いた共用スペースとした。ベッドの大きさの関係で、自分たちの部屋が6畳、彼女たちの寝室が4畳くらいとなったのは我慢してもらおう。
 事前に固めて付与魔法まで刻印した壁を取り出して部屋を仕切り、それぞれの寝室から長方形の共用スペースに扉でつながるようにする。簡単だけど扉もつけているし、壁には簡単な防音の効果を入れておいたので、話声くらいは聞こえないだろう。プライベートも考えておかないと困るだろうしね。

 一通り配置が終わった頃に食事の準備ができたというので外のテーブルへ。

「お口に合うかわかりませんが、とりあえずいろいろと作ってみました。」

 テーブルにはお肉の炒めたものやシチューのようなもの、サラダなど色々と並んでいた。美味しそうだけどかなり多くないか?

「保存はできると言うことでしたのでちょっと多めに作っています。残ったもので明日の朝食やお昼を作りますよ。」

 さっそく席についていただくことにした。お店の食事という感じではないけど、家庭料理という感じでなんか懐かしい感じがした。

「なんか懐かしい感じの味だなあ・・・。最近は外で食べることがほとんどだったからねえ。」

「かなり立派なコンロセットがあったので張り切りましたよ。すごいですね。普通の家庭にあるものよりも立派ですよ。」

「せっかくだから買ったんですけど、なかなか使う機会もなくてね。」

「お料理はされないのですか?」

「一応自分もジェンもできるけど、本格的にはやっていなかったのでそこまで得意じゃないんですよ。」

「もしよかったら今回の移動の間だけでも教えましょうか?」

「お願いします!!」

 なぜかジェンが食い気味に返事をしていた。

「それじゃあ、1日に走るペースは少し落ちるけど夕食はきっちり料理することでやってみようか?もともと10日はかかる日程だからあまり強行軍で行くのも大変だからね。」

 後片付けは浄化魔法を使って速攻で終わらせるのを見て驚いていた。

 部屋の中に案内して申し訳ないけど小さい方のベッドでお願いというと、十分な大きさですと言われて助かった。消音の簡単な魔道具もあるので少々話をしても問題ないこと、明かりなどの使い方などを説明していく。光魔法がないので今回は照明を用意しておいたのである。

 この後シャワーに入ってもらい、ソファーでお茶を飲みながら色々と話をしてからそれぞれの部屋に分かれて寝ることとなった。


~ミルファーとスイートSide~

「二人に再会してから驚くことばかりですね。」

「そうね、町であんなことになってどうしようもなくなっていたけど、二人に連れ出してもらえて希望が出てきたわ。」

「移住のことはとても助かりましたし、まさか魔道士様の紹介状までもらえるなんてとてもびっくりしましたわ。」

「ほんとにびっくりだわ。でもいろいろと見ていると、魔道士様と知り合いって言うのもうなずけるのよね。」

「たしかにそうですね。話している内容もそうなのですが、持っている魔道具もかなり効力の高いものですよね。冒険者だけではなくて他にも副収入があるからなんとかなっているとは言っていましたが、あの年齢であの知識と行動力は正直信じられないくらいです。」


「かなりの優良物件だけど、ジェニファーさんのことを考えると手を出せないわよねえ。」

「そうですよね。あれで付き合ってないって信じられません。この部屋割りにしても、私たちが気を遣うからと言っても、付き合っていない男女で同じ部屋ってあまり聞きませんよね?
 宿に泊まった時も普通に同じ部屋に泊まっていましたからね。おそらく二人の中ではこれが普通なのでしょう。」

「ジュンイチさんはジェニファーさんの気持ちに気がついていないみたいだし、ジェニファーさんは告白できなくて悩んでいるみたいだし、なんとか応援してあげたいんだけどね。」

「まだ若いからなんとかなるのではないでしょうか?」

「そうだね。なにかきっかけがあれば一気に進展しそうだけど、さすがに私たちだとそこまで突っ込めないからねえ。」

 二人のことでかなり盛り上がっていることは全く知らないまま、ジュンイチとジェンは普通に眠りについていた。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...