【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界の貴族達

118. 異世界512日目 マイムシの町での生活

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 朝起きてから保管してあったもので朝食を取り早速準備に取りかかる。装備を調えてから町の外へでて、昨日目星をつけていた地域へと走って移動する。車で移動できるほど道が整備されていないからしょうがない。まあそれでも他の人たちよりは断然早く着くんだけどね。

 森の入口あたりで索敵をすると、結構魔獣が多い感じだった。上階位以上の魔獣の討伐はまだあまり進んでいないと言っていたからね。冒険者も上階位以上になると拠点が決まってくるので新しい狩り場にはやはり初~並階位の冒険者の方が多くなってしまうようだ。



 接近戦の訓練をかねて狩りをしていくつもりなので、魔法は極力使わずに倒していく。1匹の場合はそのまま対応し、2匹以上の場合は状況を見ながら魔法を使っていく感じだ。

 1匹相手の時は特に問題なく対応できるが、2匹になってくるとやはりうまく裁けないことが出てくる。このあたりは経験不足なのでしょうが無いんだけどね。神経を魔獣の動きに集中して動きの先読みをしながら攻撃と防御を繰り返す。
 威圧のスキルで牽制することも忘れてはならない。このレベルの魔獣だと威圧をかけてもそれほど威力は無いが、動きを少し遅くすることはできる。このスキルのレベルも上げていかないと今後使えなくなってしまうからね。

 やはり魔法を使って倒すよりも魔獣への傷が増えるので、素材の価値が下がってしまうのはしょうが無いところか。お金に関してはそれなりにあるのでそれよりも戦闘能力を上げる方が優先だ。

 ジェンにも前線に出てもらっていろいろと工夫しながら魔獣を倒していく。戦闘時間は長くなってしまうが、訓練と考えるのなら時間の無駄にはならないだろう。


 夕方暗くなる前にミルファーさんたちのところにお邪魔してから夕食を食べさせてもらう。
 この日はいくつか面接を受けに行ったようだ。明後日までいくつかの面接を受けてから合否の結果をもらい、複数あればどこにするか決めればいいらしい。

「面接は紹介されたところを受けているんですか?」

「紹介のところもあるし、人を募集しているところに直接行って面接を受ける感じよ。」

「今日は二人で同じところを面接したのですが、明日からは別々に回ってみるつもりです。」

「そうなんですね。ところでこの町はどんな感じですか?」

「まだいろいろ足りないところはありますけど、治安も結構いいですし、活気があっていいところだと思います。」

「そうだよね。前の町だとこんなに活気もなかったからね。町の規模も今の倍くらいにはなるという話だからとても楽しみだわ。」

 いろいろと今日あったことを話しながら食事をとり、あまり遅くならないうちに宿に戻る。



 翌日からも同じように狩りに行き、毎日ではないけど夕食はミルファーさんの家で食べさせてもらう。
 時々遠征でちょっと遠くにも行ったりしながらひたすら魔獣の討伐に明け暮れる。さすがに防具の傷みも出てきたのでちょこちょこと整備をしなければならなかったのは仕方がないかな。

 もちろん戦闘にはあまり魔法は使わないが、魔法の訓練も欠かさない。イメージもしっかりしてきたのか魔法の威力も上がってきており、スキルが上がってきたのか魔力をためる量も多くなってきた。

 魔法も複数使えるようになってきたので水魔法と雷魔法を同時に放つことでより強く感電させたり、火魔法と水魔法で水蒸気爆発のような爆発も起こせるようになってきた。
 正直魔法はいろいろな組み合わせができるんだが、あまりに多くなってもイメージが大変なので、最近は使う魔法を絞ってきている。やっぱり回数を多く使うとそれだけイメージが洗練されて威力も上がってくるからだ。
 もちろんいろいろと試していつでも使えるように最低限の訓練だけは続けているけどね。

 今よく使う魔法はこんな感じになっている。

火矢:火のついた矢のイメージで威力は小さいが連射することを主眼に置いている。ただ素材とかがだめになってしまうことと、火事の危険性があるので使う場面が限られてしまう。

風斬:かまいたちのように真空に近い刃を飛ばす。魔力をためることで結構な切断威力を持っている。最初の攻撃に使うことが多い。うまく当たれば手足を切り落とすことができるので戦闘にかなり有利となる。

水弾:10cmくらいの水の球を高速で飛ばす。殴ったような感じのダメージを与えるので、毛皮などの素材の確保には最も向いている。ただ致命傷を与えるのは厳しい。

風盾、水盾:魔獣の突撃や魔法を防ぐのに使用。通常持っている盾を強化するのに使っている。これをすることでかなりの防御力のアップとなる。

爆発:水魔法に火魔法をぶち込んで一気に水を膨張させて爆発のような威力を持たせている。威力を上げるにはかなりの時間がかかるため、頻繁に使うことはできないが、範囲攻撃としては一番使えるものとなっている。

土壁:複数の魔獣がいたときに誘導したり、分断したりするのに使っている。操る土の量が少ない方が早く発動できるので、今はかなり薄い壁を出すようにしている。すぐに壊されてしまうが、壁があると無意識に避けようとしてくれるので強度はなくても意外と有効。

雷撃:水魔法と一緒に発動することで飛距離がある程度のびた。スタンガンのように感電させることができるので致命傷にはならないがかなり有効。水をかぶるので威力も上がる。

氷矢:楕円形の先のとがった氷を飛ばしてダメージを与える。かなりの威力なんだが、発動までに時間がかかるので最初の攻撃に使う。

 一番使えるのはやはり雷魔法でダメージはあまりないが動きを止めることができるというのが大きい。
 最初の攻撃は風斬や氷矢だ。ほんとはそれだけに絞った方が威力は上がるのかもしれないが、そうすると他の魔法のレベルが上がらないのでできるだけまんべんなく使うようにしている。

 光や闇はやはり戦闘の実用レベルの魔法にはなかなかなってくれない。
 闇魔法は暗闇を生み出すことで夜など隠密と併用するとかなり隠密行動がとれるようになる。影を操るのはなかなか威力が上がらない。
 光魔法はフラッシュのように目くらましが有効だ。ただこれを使う場合は自分も目を背けないといけないため結構危ない。また魔物によっては効果がほとんどないものもいるらしいので使い勝手が難しい。対人には良さそうだけどね。あとは明かり代わりで使うのでかなり頻度は高いのかもしれない。レーザーはまだ使えるレベルにはなっていない。

 ただどの魔法も上位の魔獣には効きにくいと言うことはわかっているので魔法のみに頼っているとまずいことになってしまう。前に戦った白狼とか魔法を避けてくるからね。当たってもダメージが少ないし。


 他にも次元魔法の収納を使った防御についても試してみた。収納バッグは中のものを取り出すのに少し時間がかかってしまうため、戦闘中に使うのはかなり難しいんだが、次元魔法はすぐなので使いやすいことに気がついたからだ。

 土を固めて大きな盾のようなものを作り、地面に刺さるように杭のようなものもつけているので、取り出すと重量の関係で地面に刺さる感じにしてみた。これを突撃してくる魔獣の目の前に取り出すという使い方だ。
 最初は盾が跳ね飛ばされて逆に危ないこともあったが、形を色々と変えて大きさも変えていくと最初の突撃を抑えるのにかなり有効な感じになった。鉄も使ったりしたので強度も上がっていい感じだ。まあこれが今後も使えるかどうかは経験して試していかなければならないだろう。

 他にも少し小さめの盾を用意して自分の周りに取り出したり収納したりすることで別の方向からの攻撃を防ぐこともできるようになってきた。支えるものがないので強い衝撃には意味が無いが、これも使い方を考えればうまくやれるかもしれない。
 自動で攻撃を防いでくれたらいいんだが、流石にその機能は付けられない。いずれはそんな機能のものが作れればいいんだけどね。

 ただ盾を入れたりしたせいで次元魔法の方には他のものは入れられないくらいになってしまったのはしょうが無い。容量が増えるのを待つしか無いな。



 魔獣は森の方では白兎、氷狼、氷豹、白蛇の他にまれに白大蛇、白鹿、白熊であり、草原地帯では大毛牛、氷蜥蜴、まれに大毛角牛などだ。

 白熊はやはり魔法である程度弱らせてからでないとあぶない。真正面からだと盾で防御しても吹き飛ばされてしまいそうなくらいの威力だし。
 白鹿については最初の突撃は次元魔法から出した盾で防ぐことができた。これができるまでは魔法で強化した盾で防いでいたんだが、かなり大変だったからね。目の前に盾が出てきて衝突したしたら、半分意識が飛んだようになったのであっさりと倒すことができたのはありがたかった。

 ときどき良階位の魔獣も索敵に引っかかるが、速攻で逃げることにしている。まだ倒すのはさすがに厳しすぎるからねえ。上階位が進化したと思われるので同じ良階位でも経験値が高いので余計やっかいだ。
 もちろん向こうの索敵に引っかかってしまっては逃げられないので、この間死にかけた後で作っておいた隠密の能力アップの魔道具を使うようにしている。
 一般的に出回っている魔道具だと隠密のレベルで言うと1くらいのもので、自分たちにはほとんど意味が無い。おそらくもっと上のものもあると思うんだが、犯罪に関わってくることも有り余り出回っていないのだと思われる。

 それならと魔道具に文字を刻んでお互いに索敵に引っかかるかを試しながら作ってみた。隠密、認識阻害、視覚阻害、音遮断、臭い遮断、魔力遮断と言う感じで魔道具を作ってみたんだが、まだ付与魔法のスキルが低いので効果が出るものとなると結構な大きさとなってしまうんだがこれは仕方が無い。今の自分たちのスキル以上の効果が出ないと意味が無いからね。
 それでも非常の場合に備えて2段階の大きさで作成しているので、最悪の場合は魔獣石の消費を無視すれば優階位くらいまでの魔獣であれば逃げられるのではないかと思っている。


 魔獣の素材は素材買い取りの店や役場に卸しているが、肉に関しては時々差し入れでミルファーさんたちに渡している。夕食は結構ごちそうになっているからね。



 二人はいくつかの候補の面接を受けて、ミルファーさんはカサス商店で、スイートさんは自分たちの泊まっていた宿のマルミニアで働くことにしたらしい。

 ミルファーさんの勤務は朝の1時から5時半までで時々残業があるようだが、やり応えがあると言っている。店長に話をこっそり聞いて見たところ、お金の計算に慣れており、いい人材が入ってよかったと言っていた。
 スイートさんは朝食の準備があるので朝が0時からなんだが、その分4時には仕事が終わるのでちょうどいいらしい。この宿は夕食を提供していないので、朝食の準備と宿の掃除と経理の仕事が中心となるようだ。ただ時々は延長して宿の受付もやっているようだ。

 二人とも充実した日々を送っているみたいでよかった。思い切って町を出てきてよかったと言われてこっちもうれしかった。

~魔獣紹介~

大毛牛:
並階位上位の魔獣。寒い地域の草原や林に多く生息している牛の形状をした魔獣。体長1キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力はかなりあるが、直線的に突進してくるだけなので、焦らずに動きをよく見て対応すればよい。壁に誘導してよけると勝手に自滅する。何もない場合は方向転換する際に攻撃することが有効。
素材としての買い取り対象は肉となるが、なかなか美味しくて人気が高い。魔牛よりも脂分が多い。

氷蜥蜴:
上階位上位の魔獣。寒いエリアの草原に生息している蜥蜴の形をした魔獣。体長は2キヤルドほどで、体の半分は強靱な尻尾となっている。
鋭い牙を持っており、唾液に多くの病原菌が含まれているため、かまれると炎症を起こし、数日間高熱を出す場合がある。子供は死亡する事例も報告されている。また強靱な尾を使って攻撃をしてくる。また三潴法で攻撃にしてくることもあるので遠距離からも注意が必要。
体は白い皮膚に覆われており、思ったよりも固いためできるだけダメージを与えたあと、ひっくり返してからおなか側からとどめを刺す方がよい。魔法に対する耐性も高い。
素材としての買い取り対象は肉で脂も多く人気が高い。

大毛角牛:
上階位上位の魔獣。寒い地域の森や草原に生息している牛の形状をした魔獣。体長は2キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力が強力で、風魔法を使って方向を変えることができるみたいで突進を躱すのは難しい。ただし魔法で攻撃をされたという報告はされていないため、あくまで補助的な使い方しかしないと言われている。
最初の突進を止めた後は周りを囲って徐々に体力を奪っていくのが有効となる。
素材としての買い取り対象は毛皮で、寒い地域の防寒具として加工される。肉はかなりの量がとれる上、人気も高いため買取額は高くなる。
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