【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第一部 異世界での懐かしい人々

139. 異世界686日目 異世界の船旅

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 今日の1時に出航というので朝食をとってから早々に船着き場にやってきた。船は思ったよりも大きいのでちょっと驚いた。地球のクイーンなんとかとかいうレベルではないけど、十分大きい。今まで乗ったことがあるのは瀬戸内のフェリーぐらいだったからなあ。
 資料では見ていたけど実際に見ると余計に大きく感じる。全長200キヤルドで高さは25キヤルドとか書いてあったから高さは10階建てくらいの感じか?

 港には乗船客と見送り客が集まっていてかなりごった返している。ただ乗船は貴族と平民で乗るところが違うようで、貴族用の乗船口はかなり空いている。

 貴族用の乗船口に向かうと、「こっちは貴族用だ、平民はあっちに並べ!!」と厳つい船員に追い返されそうになってしまった。
 チケットを見せると驚いた顔をしていたが、いくら何でも態度が悪すぎだよ。いくら貴族に見えないと言ってもせめてチケットの確認ぐらいしてよね。
 すぐにその上司と思われる人がやって来たのでチケットと身分証明証を提示したら、ハクセンの貴族とわかってかなりうろたえていた。


 貴族の場合は部屋まで案内が付くみたいで、荷物も運んでくれるんだが特に荷物はない。防具も最低限にしているのでかなりの軽装だ。

 貴族エリアと平民エリアは船内では完全に分けられていてお互いに行き来はできないみたい。貴族エリアは乗船してすぐにエレベーターで船の上層階へ移動したところにあった。船室へ向かう途中で船の設備案内をしてもらったが、いろいろ施設があるのでとりあえず退屈はしないですみそうだ。

 部屋に案内されて中を見ると、かなり広くてベランダまであった。ベランダもかなりの広さだ。部屋にはシャワーだけでなくお風呂まであって、お風呂からは外が見えるようになっていた。いい感じの部屋だ。ただ、寝室は別部屋で広いのはいいんだが、ベッドが一つというのはどういうことだ?ジェンの方を見ると目を逸らしてどこかを見ていた。

「なあ、どうしてベッドが一つなのかなあ?」

「ど、どうしてだろうね。こっちの方が上の階で部屋も広そうだったし、良さそうだったからこっちにしたんだよ。
 だってあっちだったら部屋にお風呂もなかったでしょ。いやー、まさかダブルの部屋だったとは思わなかったわ。」

「本当か?」

「・・・ごめんなさい。わかっていたけどお風呂があったほうがいいと思って。だってイチはお風呂大好きでしょ?ダブルってわかったら断ると思って。」

「・・・ありがとう。」

 もう同じベッドでも驚かないよ。だけどこれっていいのかなあ。


 部屋を確認したあと、デッキに行ってみるとプールなどもあった。7日間もあるからいろいろゆっくりはできそうだな。運動するスペースもあるので訓練もできそうだ。
 デッキも貴族エリアの上層階と平民エリアの下層階で分けられているみたいで、こっちはかなりゆったりしているが、下の方は人数に対しては狭い。まあ乗船代金が全く違うのでしょうがないと言えばしょうが無いだろう。まあこのあたりのことは気にしてもしょうがないのでせっかくの優雅な船旅を満喫しよう。


 船の中を色々と探検していると思ったよりも時間がかかってしまった。船の貴族エリアにはレストランが2つ、遊技場、舞台などがあり、舞台では定期的に演劇やコンサートが行われるようだ。遊技場にはトランプのようなゲームやビリヤードのようなもの、ボードゲームなどが置いてあり、ギャンブルのコーナーもあった。
 デッキにはプールがあるんだが、すぐ横にはテーブルやイスが常備されており、自由に使っていいらしい。食事もここで食べることができるようだ。うーん・・・贅沢だねえと思ったんだが、ジェンはもっと豪華な船に乗ったことがあるらしく、まあ及第点ねとか言っている。
 部屋のカードを見せると基本的にすべて無料で使用できるようだが、もちろんギャンブルは別扱いだ。まあ当たり前だけどね。食事代まですべて込みというのはちょっと慣れないが、こんな客船では普通のようにも思う。


 お昼はレストランで海鮮料理を味わってからせっかくなのでプールに入ることにした。もちろん外は暑いという季候ではないんだが、ここは暖房設備が設置されており、プールの水も温かいというなんとも贅沢な状態である。冬なんだか夏の雰囲気が味わえるというのもいいねえ。
 ジェンの水着姿は下着姿も見ているので見慣れているんだけど、他の人の視線がちょっと気になる。心が狭いなあ・・・。だけど、プールであまり体を寄せられるとちょっと・・・。プールサイドでジュースを飲んだりしてくつろいでから夕食はレストランのミニコンサートを聴きながらとる。


 夕食の後は海を眺めながらのんびりと湯船に浸かる。大きな湯船なのでかなりリラックスできる。贅沢だなあ・・・。寝るのは同じベッドなんだが、ベッドは広いので特に問題は無い。まああとは寝ているときに何もしないことを祈るだけだ。



 翌日からは午前中に色々と訓練をして、午後にはゆっくりと過ごすという形で船旅を楽しんだ。運動のできるエリアがあったのでちょうどよかった。一人だったらかなり寂しいと思うが、ジェンと一緒にいると退屈しなくていい。

 コンサートを行っていた楽団にお願いしてジェンもバイオリンを弾かせてもらったんだが、かなり好評だった。せっかくだからと2回ほどプロに交じって一緒に演奏していた。しかも伴奏付きとはいえ、ソロでの演奏はすごかったなあ。かなり勧誘されていたけどね。

 航海の途中で水生の魔獣も襲ってくることはあったが、そこは慣れた船員が速攻で倒していた。まあ襲ってくると言っても小型の魔獣なので結局は船に損害を与えられるレベルではないんだけどね。
 倒した魔獣は回収することもあるが、基本的に放置だ。まあいちいち船を下ろしたりはできないよね。できれば解体作業とか行ってみたかったんだけどねえ。水生の魔獣を解体する機会は少ないからな。


 途中で船の見学会があったので参加してみた。船の推力はプロペラではなくジェット水流という感じの推進方式だった。水魔法と風魔法で船の後方に海水を勢いよく噴出することで前に進み、左右方向には舵と横についたジェット噴射で方向変換するようだ。
 船の設計は古代の遺跡で発見された構造に基づいて造られているらしいので、船の大きさは何段階で決まっているらしい。前に船の黄金比のような物があるとか言っていたような気がする。特に運河とかも無いようなので船の幅もあまり気にしなくていいのだろう。地球ではパナマ運河の大きさに合わせているとか言う話を聞いたことがある。

 途中嵐に遭うことも、大型の魔獣に襲われることもなく、順調に航海は進み、予定通りにオカニウムの町に到着できた。帰ってきたぞ~~~~!!

~ジェンSide~
 タイガ国では神獣と言われるものをみた。イチは龍と言っていたけど、ちょっと違うよね?ただイチは国の雰囲気とかが日本に似ているところがあるとちょっと懐かしそうにしていた。両親が旅行が好きで日本のいろいろなところ、日本の文化をいろいろと体験させてくれたみたいだからね。

 帰りは船で移動することになっただけど、個室がないと聞いたときはちょっと困ってしまったわ。雑魚寝というものがどんなものなのかよく知らなかったけど、イチに聞いた限りではさすがに7日間はきつそうだったのよね。貴族の職位をもらっておいてほんとによかったと思ったわ。

 開いている部屋を見ると残っているのは3つだけだった。一番下で6万ドールだけど、宿屋と比較すると十分な広さがあった。イチは広さや設備などを確認して6万ドールの部屋を予約しようとしたみたいだけど、8万ドールの部屋にしてもらった。
 6万ドールの部屋にはシャワーしかないんだけど、8万ドールの部屋にはお風呂がついているみたいだったからね。イチにはそう説明したんだけど、実はそっちの部屋はベッドが一つだけだったんだよね。イチは気を遣うかもしれないけど、せっかくならお風呂がついている方が喜ぶと思うのよね。
 それにもう今更だと思うのよね。いつも寝ているのとほとんど変わらないのに、同じベッドというのになぜか抵抗するのよね。

 船に乗った後、イチには問い詰められたけど、お礼を言われてやっぱりこの部屋にしてよかったと思ったわ。やっぱり海を見ながらお風呂に入れるというのはよかったみたい。夕日を見ながら珍しくお酒とかを飲みながら湯船に浸かっていたしね。

 船の旅は久しぶりにのんびりできたわ。もちろん訓練とかはやったんだけど、それでもくつろげた。たまにはこういう風にのんびりするのもいいわね。こっちの世界に来てから2、3日休憩することはあったけど7日間ものんびりすることはなかったからね。
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