【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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第二部 異世界での新しい生活

159. 異世界805日目 サクラでの生活

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 ジェンに告白した後、付き合い始めた記念だといってしばらく訓練などもやめて二人でいろいろなところに行った。
 買い物に行ったり、いろいろ食べ歩いたり、演劇などを見に行ったりと今までも休みにはしていたことなんだけど、今までよりジェンとの距離が近くて今まで以上に楽しかった。今まで以上にジェンが愛おしかった。今まで以上にジェンが輝いて見えた。
 ジェンが最初から普通に手をつないでくるので、手をつなぐのをためらうという期間はなかったけど、時々外で腕に抱きついてくるのでちょっと興奮してしまって困ってしまったのは内緒だ。

 知り合いに会うと冷やかされることもあったけど、自分たちのことを祝福してくれてうれしい反面、ちょっと恥ずかしかった。


 本当は今までのようにいろいろと冒険をしてみたい気持ちもあったが、それよりも切実な問題があったのでなかなか踏ん切りがつかなかった。

”いつ地球に戻るのかわからない。”

 このことである。
 お互いにお互いのことを忘れるかもしれないということが心配だったのだ。ジェンのことを絶対に忘れたくないけど、こればかりはどうなるかわからないのだ。
 ただ長い間一緒にいていろいろなことを経験していけば少しでも多くの記憶が残るかもしれない。そのためには他にどうすればいいのかわからないまま、デートを重ねているという状態だった。

 それで出した答えはしばらく一緒に暮らしていこうと言うことだった。いままでも一緒に行動してきたが、やはり冒険者のパーティーメンバーという側面が強かったからだ。それならしばらく冒険に出るのはやめてサクラで暮らしていこうという話になったのである。



 せっかくだから宿ではなく、どこかでちゃんと家を借ることにした。補償の問題もあり、上階位の冒険者が家を借りるというのはなかなか難しいんだが、クリスさんの口利きで借りることができるようになった。あとでコーランさんにも話したら、コーランさんからでも紹介ができたようだったけどね。

 クリスさんに紹介してもらった不動産会社に行くと、すぐに担当者がやってきた。さすがクリスさんの紹介だけあるね。

 事前に調べた感じでは家賃は月に1万ドール以下のところもあるが、せっかくならそこそこいいところに住みたいものだ。2~3万ドールくらい出せばかなりいいところを借りられるらしい。
 今の特許の収入が月に20万ドールくらいあるので正直なところかなり豪華なところに住んでも生活費を含めてやっていけるくらいだ。冒険に出なければ防具とかの修繕費や買い換えも考えなくていいからね。まあ、この収入もあと1年くらいだけど。
 ただあまり大きなところに住んでも人を雇ったりしなければならなくなるし、自分たちが十分暮らせるくらいの広さで十分と考えると2LDKから3LDKくらいあれば十分か?
 サクラはさすがに王都だけあって家賃は高いらしいけど、広さとその建物の場所によって値段も変わってくるようなのでそこは現物を見てからだな。

 ちなみに今泊まっている宿は一泊2000ドールなのでそのまま30日泊まると6万ドールとかなりの額となってしまうので、この金額以内なら宿泊費は安くなると言うことだ。光熱費は別途かかるけどね。6万ドールって60万円だよなあ。この家賃なら東京でもかなりいいところに住めそうな気もする。
 お金もこの間の報奨金とあわせて500万ドールほどあるから普通の生活をするくらいなら十分なので大丈夫だ。


 事前に部屋の希望については連絡しておいたのである程度準備はしてくれているようだ。自分たちの希望を出して絶対に譲れないところ、譲ってもいいところだけはしっかり決めてから見た方がいいというのは以前からよく言われていたからな。


 最初に連れて行かれたところは家賃が40000ドールと結構高いんだが、物件的にはかなりおすすめというところで、町の中心からは少し離れているが一軒家となっている。
 部屋は5LDKに庭まであるので結構広いんだが、ここまで部屋数が必要なのかという気もする。あとやはり中心街からは遠いので車を使わないといけないということと、買い物をする店もすぐ近くにないというのが難点だ。
 次に連れて行かれたのは、町の中心部付近のアパートの4階だった。家賃は20000ドールだが、2LDKで部屋も狭いし、あと台所なども結構古いのが気になるところだ。ちなみにアパートにはエレベーターなどはないせいもあり、階層が低い方が家賃が高くなるみたい。
 このあといくつか見せられたんだが、なかなかこれというところがない。最後にやってきたのは少し郊外のアパートの1階で家賃は32000ドールで3LDKというところだった。ここはリビングキッチンも広いし、小さいけど庭もあっていい感じだった。台所もある程度使い込まれているが使い勝手は良さそうな感じ。周りにも結構お店もあるので環境も良さそうだった。

 いったん店に戻ってからジェンと二人で話をさせてもらう。

「自分的には最後のところが一番いいと思うんだけどどうかな?」

「広さ的には最初のところが一番いいけど、利便性とか考えたらちょっと狭いような気もするけどイチと同じ最後のところかな?」

「ええー、あれで狭い?二人しかいないんだよ。十分だと思うけど。」

「まあ、収納関係はいらないから普通に生活するには十分なのかな?」

 日本人が聞いたら怒られるよ。家族でも住めるレベルだって。

「それじゃあ、あそこで仮契約してから夜とかの状況を後で確認しに行こう。家を借りるときは時間によって周りの環境も変わるからできるだけ違う時間で見た方がいいみたいだからね。」

「わかったわ。」

 係の人に話をして最後のところを仮契約してもらう。保証金として1000ドール納めておけば2日間は確保してくれるらしい。契約すれば最初の家賃に加えることができ、しなければ半分は没収されるがそこは仕方がない。



 朝から回って宿に戻るとすでに夕方になっていた。思ったよりも疲れた・・・。店で早めの夕食をとってから仮契約をしたところに様子を見に行くと、暗くなってきているけれどそれなりに人通りもあって治安も良さそうだった。
 翌日も朝食を食べる前に見に行き、問題ないことを確認したあと、不動産屋に行って契約をすることにした。


 家を借りるときは半年単位での契約となっていて、最初に3ヶ月分の補償金を預けるのが普通らしい。補償金は退去するときに全額返却されるが、部屋に大きな損害が出ている場合は補償金から差し引かれることとなるようだ。日本で言う敷金のようなものだろう。
 家賃は半年おきの支払いとなるみたいで、まずは6ヶ月分支払わなければならない。このため最初に9ヶ月分払わないといけない。結構大きな金額がいるんだな。
 そのあとは半年おきの更新となるが、そのとき半年以内に出るのであれば希望する月数の家賃を払えばいいようだ。
 支払ったあとで、急遽出ることになった場合は、残りの月数から1ヶ月分を引いた月数の80%までが返金されるらしい。かなり貸し手に有利な契約だなあと思ったが、公営の建物以外はこの契約が普通らしい。まあ土地や建物を持っている人が裕福になっていくのは仕方が無いのかね。

 今日からすぐに入居はできるようなので鍵を受け取ってから不動産屋を後にする。鍵はシリンダー錠の鍵だったので、魔法認証の鍵はまだ一般的ではないようだ。まあ宿も普通のところはシリンダー錠だったしね。

 これでジェンとの同棲生活が始まるのか・・・。やっぱり宿に泊まるのとはちょっと違うよね。
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