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第二部 異世界での訓練
246. 異世界2021日目 魔法団で訓練
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翌日は紹介してもらった不動産に行き、賃貸物件を見せてもらう。ジョニーファンさんの紹介状だとさすがに効力が大きすぎるので、ジョニーファンさんの知り合いの貴族に書いてもらった。
それでも上位爵の人に頼んだみたいで、紹介状を渡された担当者はかなり恐縮していたけどね。すぐに店長が挨拶に来たくらいだからね。
雪が多いことを考えると一軒家は大変だと思うので、アパートのようなところで探してもらったんだが、今回も値段は安くて結構豪華なところを借りることが出来た。
3階建てだが、一つのスペースが広いせいで6世帯分しかないという物件だ。他に2件見たんだが、あまり時間も無いし、そんなに悩んでも仕方がないのでここの2階に決定する。
部屋の広さは3LDKなんだがリビングがかなり広く作られているので、ゆっくり出来そうな感じ。一部屋は鍛冶の部屋にして、一部屋は寝室、残りは客間という感じにした。
荷物を設置してからすぐに他の部屋に挨拶へ。ここでは引っ越してきた人が挨拶に行った方がいいと言われたからね。夕方だったせいか、全部の部屋の住人がいたのでよかった。近くの店のことなどいろいろと情報も教えてもらえたし、特に変な住人もいなかったので良かったかも。
翌日の1時に訓練場に行くと、ハーマルさんが入口で待ってくれていた。ここでは1時半から5時までが訓練時間となっているのでぼちぼち他の団員もやって来ている時間のようだ。
まずはお世話になる青の魔法団の団長と副団長に挨拶する。団長は40歳くらい、副団長は30歳くらいという印象だ。
「団長のミルアイだ。そして隣にいるのが副団長のアルイだ。二人ともかなりの実力を持っていると聞いている。それでもいろいろと学ぶこともあると思うのでがんばってくれ。」
「「よろしくお願いします。」」
簡単に魔法団の話を聞いたあと、訓練場に行き、みんなの前で紹介される。なぜかかなりざわついているけどこんなものなのか?
「静粛に!!
今日から約半年間体験入団することになったイチとジェンだ。かなりの実力を持っているのでお互いに学ぶことがあるはずだ。
世話係は・・・コーリン!やってもらえるか?」
「はい!承りました!」
「よし。あとの細かなことはコーリンに聞いてくれ。
解散!!」
この人って・・・。
「初めまして。コーリンと言います。」
「こんにちは。あの、先日マルサカ付近で盗賊退治の時に指揮を執っておられた方ですよね?そのときはお世話になりました。」
「え?・・・あ、もしかしてあのときの冒険者の二人ですか?」
「ええ。そうです。」
「似ているとは思ったのですが、まさかと思いました。あの時は帯剣していたので魔法を使えるのは思いませんでしたよ。」
「一応魔法の方が得意なんですよ。冒険者をやっていると剣もある程度使えないといけない場面も多いですからね。」
このあと施設の案内や使用時間などについて説明を受ける。団員は若干の変動があるが、今は38名で、そのうち10名はまだ地方から戻ってきていないようだ。コーリンさんも先日戻ってきたばかりらしい。
冬の間は遠征することもあるが、町の巡回のほかは訓練などに費やしているみたい。ちなみにコーリンさんは分隊の隊長だった。分隊長が指導係っていいのかな?
一通りの説明を受けた後、さっそく魔法の訓練に入る。団員とは別に退役した人たちが指導員としているので、いろいろと聞くことが出来て助かる。魔法の威力などは十分にあるようなので、魔素の扱い方を中心に訓練を行った。
他にも魔法のバリエーションについてもいろいろと聞いてみたが、残念ながら思ったよりはイメージが広がっていなかった。まあジョニーファンさんと話していたからそのくらいが限度だろうな。
毎日訓練に明け暮れていたんだが、一度ジョニーファンさんがやって来てちょっと困ってしまった。訓練場に顔を出すことはほぼないので、かなり周りが騒がしいのに、自分たちに声をかけてくるんだもんなあ。さすがに周りの空気に気がついて少し話した後、すぐに離れたけどね。
「あのジョニーファン様に声をかけられるなんてすごいな!」とかいろいろと言われたよ。やっぱり屋敷を訪問するときは変装しておいて良かったな。
あと、魔法団とはいえ近接戦闘の訓練を行うのだが、なぜか自分たちの相手をする指導員達は他の指導員達とレベルが違うのは気のせいだろうか?新人が指導に来ると言っていたのだが、ハクセンの騎士団のレベルくらいの人も結構いる。おかげで頻度は少ないけど、近接戦闘もいろいろと経験が出来て良かったよ。
~コーリンSide~
魔法団に体験入団するものがいるという話を聞いて驚いた。しかも他国からの体験入団と言うのでなおさらだ。
魔法については秘匿にする技術もあるため、他国からの体験入団はよほど入団させる価値がなければ許可されないはずだからな。
体験入団者は入団試験の実技でかなりの好成績を出したらしい。すべての属性魔法で的を攻撃できただけでもそのすごさが分かる
火魔法は結界の中で的を破壊するレベルだったようなのでかなりの熟練者なのだろう。我々も色々と学ぶことがあるかもしれない。
団長と共にやってきた二人を見て驚いた。まさかあの二人なのか?そう思ったのは私だけでなくほぼ全員が同じように思ったようで、かなりざわついている。
ただ、試験官の3人は含み笑いをしながら周りの様子を見ていた。通りで今回の体験入団の2人のことをあまり喋らなかったはずだ。驚かせようと思っていたな。
私が世話係として任命されることになったが、何かあるのだろうか?と言うのも通常はもっと若い人間に頼むものだし、事前に話があるものもなのだがな。まあ他国からの人だし、その辺りは詮索しない方がいいだろう。
挨拶をすると、前に盗賊退治の時にあった冒険者だと分かった。そのときの格好から剣士かと思っていたのだが、実際は魔法の方が得意と聞いて驚いた。どうやら良階位の冒険者らしい。成人したばかりの様に見えたが、年齢は22歳だった。それでも聞いていた実力からすると十分若い。
魔法の確認をさせてもらったが、火魔法と風魔法については間違いなく私よりも威力が上だろう。魔素の取り扱いはまだ未熟なのに威力がここまで高いことが驚きだった。他の団員もかなり驚いていたくらいだからな。
いろいろと話をしているとかなり高度な知識を持っていることが分かった。しかもその理論はあのジョニーファン様が最近提唱し始めたことと同じなのだ。すでにその知識を実践しているのか?
多くの団員もジョニーファン様の書かれた理論を理解しようとしているが、まだ完全に理解できている者はいない。何人かが話しを聞きにいったところ、丁寧に説明してくれたらしく、とてもわかりやすかったと言っていた。その話しを聞いた団員達はこぞって聞きに行っていた。
私も話を聞いてみたが、たしかに彼らの説明はかみ砕いているのでかなりわかりやすい。よくここまで理解できたものだと思ったくらいだった。おかげでみんな魔法の威力が上がったと喜んでいた。
他国からの体験入団と聞いたときは不思議に思ったが、彼らの実力を考えると正直納得できた。いろいろと上の方に伝があったのかもしれないが、実力だけでも十分だろう。
一部の団員はやっかみなのかちょっと距離を置いているようだが、さすがに他の団員の目もあるので変なちょっかいはかけていないようだ。そういう態度だが、講義はまじめに聞いていたのはちょっとおかしかったけどな。まあジェンさんを妻にしている嫉妬から来ているようにも見えるがな。
最初に二人を見たときに特に独身の男どもは目の色を変えていたが、二人が夫婦と聞いて見るからに落ち込んでいたくらいだ。まあその気持ちは分からないでもない。
魔法使いと言っても護身のために最低限の近接戦闘は出来ないとまずいので、戦闘の訓練も行っている。訓練には騎士団から指導員がやって来るのだが、二人のレベルは明らかに違っていた。どう考えても指導員の方が押されているように見えたくらいだった。
魔法使いなので通常は杖や短剣を使うことが多いのだが、イチは普通に剣を使っているのだ。あの戦いぶりを見ると剣士にしか見えないな。しかも鎚や杖の扱いも慣れており、私たちではかなわないレベルだった。
通常は騎士団の新人が指導にやって来るのだが、次の時からはどう考えても上のクラスの人間がやって来て相手をしていた。しかし二人で訓練している様子を見ると、騎士団の相手をしているとき以上の実力があるように思えるのは気のせいだろうか?
しばらくした頃、かなり珍しいことにジョニーファン様が訓練場にやって来た。みんな張り切っていたが、なんと声をかけられたのはあの二人だった。しかもジョニーファン様がかなり親しげに話しているように見えるのは気のせいだろうか?
我々でも声をかけられたものは数えるほどなのに、いきなり声をかけられるというのは驚きだ。たしかに目を見張るような実力ではあるがな。
~ミルアイSide~
ジョニーファン様から直々に体験入団させたい人物がいるという話を聞いてかなり驚いた。残念ながらどういう人物なのか詳細については私のところまで来なかったが、ヤーマンの冒険者と言うことは確認できた。
このことはかなり上の地位のものしか知らされておらず、魔法団でも知っているのは魔法団をまとめる総隊長と私だけらしい。
詳細が隠されているが、それ以外は普通の体験入団者として扱って良いと言われている。これは本人達も希望していることであり、何かあっても責任を追及することはないと明言しているようだ。
分隊長のハーマルには体験入団の試験を行うことだけ伝え、変わった経歴であるが特別扱いも不要だとだけ説明した。これだけである程度察したようで、特に深く追求することもなく引き下がった。
当初の予定より4ヶ月ほど遅れて試験することとなったが、試験結果を聞いて驚いた。ジョニーファン様が推薦するくらいなので大丈夫とは思っていたが、予想以上に優れた才能を示したらしい。しかも年齢が22歳と聞いて余計に驚いた。
ジョニーファン様の推薦を受けているくらいの人物なので他の団員とうまく交流できるか心配したが、杞憂だった。訓練場での雑用なども率先してやっているし、他の団員とも普通に接している。一番の年下と言うこともあってか態度も言葉遣いも丁寧で、高飛車な態度もなくうまくなじんでいるようだ。
魔法の技術がかなり高いこともあり。何人かの団員が魔法の使い方について聞きに行ったようだ。かなり考え方がわかりやすかったらしく、他の団員達も同じように聞きにいっていた。しかし、さすがに全員が個別に聞きに行くと説明が大変だろうと言うことになり、二人にお願いして簡単な講義をしてもらうことになった。
教材はジョニーファン様の書かれた論文だが、それをわかりやすく解説してくれて驚いた。ここまでこの内容を理解しているというのに驚いたが、もしかしてこの論文の共同執筆者に書かれている二人と言うことはないだろうか?
ジュンイチとジェニファー、イチとジェンか・・・。そういうことであればジョニーファン様直々の推薦という意味も分かるし、この内容について講義できるほど理解していることもうなずける。
今回のことが他の魔法団に伝わったせいでそちらからも講義をお願いされてしまった。対立する程ではないが、お互いに牽制している立場なのに依頼してくると言うのはよほど気になったのだろう。
護身用に近接戦闘の訓練も行っているのだが、騎士団から「体験入団の二人は何者だ?」と問い合わせがあった。話を聞くと、指導に来てもらった新人達がまったくかなわなかったらしい。新人と言っても騎士団に入るくらいだからかなりの実力者のはずだが・・・。
たしかに良階位の冒険者と言っていたのである程度の実力があるとは思っていたが、そこまでの実力とは思っていなかった。
二人が訓練しているところを見に行ったが、正直驚いた。魔法のレベルがあそこまであってこの剣と短剣の実力なのか?この年齢でここまで鍛錬するというのは正直驚きだ。しかも鎚と杖もかなりの実力を持っていたし、他の武器についても一通り使っていたのだ。
話を聞くと、通常は剣と短剣だが、金属系の魔獣の狩りのために鎚と杖を訓練したらしい。他の装備についても最低限は使えるようにと習ったようだ。どう考えても魔法使いの近接戦闘のレベルを超えているよな。
次からは新人だけでなく、二人の相手をするために中堅クラスの騎士がやって来ていたが、それでも十分に対抗していた。しかも二人で訓練しているときよりも動きを押さえているようにも感じたくらいだった。途中で騎士団から本格的にこっちに体験に来ないかと言われたが、さすがにそれは断らせてもらったよ。
それでも上位爵の人に頼んだみたいで、紹介状を渡された担当者はかなり恐縮していたけどね。すぐに店長が挨拶に来たくらいだからね。
雪が多いことを考えると一軒家は大変だと思うので、アパートのようなところで探してもらったんだが、今回も値段は安くて結構豪華なところを借りることが出来た。
3階建てだが、一つのスペースが広いせいで6世帯分しかないという物件だ。他に2件見たんだが、あまり時間も無いし、そんなに悩んでも仕方がないのでここの2階に決定する。
部屋の広さは3LDKなんだがリビングがかなり広く作られているので、ゆっくり出来そうな感じ。一部屋は鍛冶の部屋にして、一部屋は寝室、残りは客間という感じにした。
荷物を設置してからすぐに他の部屋に挨拶へ。ここでは引っ越してきた人が挨拶に行った方がいいと言われたからね。夕方だったせいか、全部の部屋の住人がいたのでよかった。近くの店のことなどいろいろと情報も教えてもらえたし、特に変な住人もいなかったので良かったかも。
翌日の1時に訓練場に行くと、ハーマルさんが入口で待ってくれていた。ここでは1時半から5時までが訓練時間となっているのでぼちぼち他の団員もやって来ている時間のようだ。
まずはお世話になる青の魔法団の団長と副団長に挨拶する。団長は40歳くらい、副団長は30歳くらいという印象だ。
「団長のミルアイだ。そして隣にいるのが副団長のアルイだ。二人ともかなりの実力を持っていると聞いている。それでもいろいろと学ぶこともあると思うのでがんばってくれ。」
「「よろしくお願いします。」」
簡単に魔法団の話を聞いたあと、訓練場に行き、みんなの前で紹介される。なぜかかなりざわついているけどこんなものなのか?
「静粛に!!
今日から約半年間体験入団することになったイチとジェンだ。かなりの実力を持っているのでお互いに学ぶことがあるはずだ。
世話係は・・・コーリン!やってもらえるか?」
「はい!承りました!」
「よし。あとの細かなことはコーリンに聞いてくれ。
解散!!」
この人って・・・。
「初めまして。コーリンと言います。」
「こんにちは。あの、先日マルサカ付近で盗賊退治の時に指揮を執っておられた方ですよね?そのときはお世話になりました。」
「え?・・・あ、もしかしてあのときの冒険者の二人ですか?」
「ええ。そうです。」
「似ているとは思ったのですが、まさかと思いました。あの時は帯剣していたので魔法を使えるのは思いませんでしたよ。」
「一応魔法の方が得意なんですよ。冒険者をやっていると剣もある程度使えないといけない場面も多いですからね。」
このあと施設の案内や使用時間などについて説明を受ける。団員は若干の変動があるが、今は38名で、そのうち10名はまだ地方から戻ってきていないようだ。コーリンさんも先日戻ってきたばかりらしい。
冬の間は遠征することもあるが、町の巡回のほかは訓練などに費やしているみたい。ちなみにコーリンさんは分隊の隊長だった。分隊長が指導係っていいのかな?
一通りの説明を受けた後、さっそく魔法の訓練に入る。団員とは別に退役した人たちが指導員としているので、いろいろと聞くことが出来て助かる。魔法の威力などは十分にあるようなので、魔素の扱い方を中心に訓練を行った。
他にも魔法のバリエーションについてもいろいろと聞いてみたが、残念ながら思ったよりはイメージが広がっていなかった。まあジョニーファンさんと話していたからそのくらいが限度だろうな。
毎日訓練に明け暮れていたんだが、一度ジョニーファンさんがやって来てちょっと困ってしまった。訓練場に顔を出すことはほぼないので、かなり周りが騒がしいのに、自分たちに声をかけてくるんだもんなあ。さすがに周りの空気に気がついて少し話した後、すぐに離れたけどね。
「あのジョニーファン様に声をかけられるなんてすごいな!」とかいろいろと言われたよ。やっぱり屋敷を訪問するときは変装しておいて良かったな。
あと、魔法団とはいえ近接戦闘の訓練を行うのだが、なぜか自分たちの相手をする指導員達は他の指導員達とレベルが違うのは気のせいだろうか?新人が指導に来ると言っていたのだが、ハクセンの騎士団のレベルくらいの人も結構いる。おかげで頻度は少ないけど、近接戦闘もいろいろと経験が出来て良かったよ。
~コーリンSide~
魔法団に体験入団するものがいるという話を聞いて驚いた。しかも他国からの体験入団と言うのでなおさらだ。
魔法については秘匿にする技術もあるため、他国からの体験入団はよほど入団させる価値がなければ許可されないはずだからな。
体験入団者は入団試験の実技でかなりの好成績を出したらしい。すべての属性魔法で的を攻撃できただけでもそのすごさが分かる
火魔法は結界の中で的を破壊するレベルだったようなのでかなりの熟練者なのだろう。我々も色々と学ぶことがあるかもしれない。
団長と共にやってきた二人を見て驚いた。まさかあの二人なのか?そう思ったのは私だけでなくほぼ全員が同じように思ったようで、かなりざわついている。
ただ、試験官の3人は含み笑いをしながら周りの様子を見ていた。通りで今回の体験入団の2人のことをあまり喋らなかったはずだ。驚かせようと思っていたな。
私が世話係として任命されることになったが、何かあるのだろうか?と言うのも通常はもっと若い人間に頼むものだし、事前に話があるものもなのだがな。まあ他国からの人だし、その辺りは詮索しない方がいいだろう。
挨拶をすると、前に盗賊退治の時にあった冒険者だと分かった。そのときの格好から剣士かと思っていたのだが、実際は魔法の方が得意と聞いて驚いた。どうやら良階位の冒険者らしい。成人したばかりの様に見えたが、年齢は22歳だった。それでも聞いていた実力からすると十分若い。
魔法の確認をさせてもらったが、火魔法と風魔法については間違いなく私よりも威力が上だろう。魔素の取り扱いはまだ未熟なのに威力がここまで高いことが驚きだった。他の団員もかなり驚いていたくらいだからな。
いろいろと話をしているとかなり高度な知識を持っていることが分かった。しかもその理論はあのジョニーファン様が最近提唱し始めたことと同じなのだ。すでにその知識を実践しているのか?
多くの団員もジョニーファン様の書かれた理論を理解しようとしているが、まだ完全に理解できている者はいない。何人かが話しを聞きにいったところ、丁寧に説明してくれたらしく、とてもわかりやすかったと言っていた。その話しを聞いた団員達はこぞって聞きに行っていた。
私も話を聞いてみたが、たしかに彼らの説明はかみ砕いているのでかなりわかりやすい。よくここまで理解できたものだと思ったくらいだった。おかげでみんな魔法の威力が上がったと喜んでいた。
他国からの体験入団と聞いたときは不思議に思ったが、彼らの実力を考えると正直納得できた。いろいろと上の方に伝があったのかもしれないが、実力だけでも十分だろう。
一部の団員はやっかみなのかちょっと距離を置いているようだが、さすがに他の団員の目もあるので変なちょっかいはかけていないようだ。そういう態度だが、講義はまじめに聞いていたのはちょっとおかしかったけどな。まあジェンさんを妻にしている嫉妬から来ているようにも見えるがな。
最初に二人を見たときに特に独身の男どもは目の色を変えていたが、二人が夫婦と聞いて見るからに落ち込んでいたくらいだ。まあその気持ちは分からないでもない。
魔法使いと言っても護身のために最低限の近接戦闘は出来ないとまずいので、戦闘の訓練も行っている。訓練には騎士団から指導員がやって来るのだが、二人のレベルは明らかに違っていた。どう考えても指導員の方が押されているように見えたくらいだった。
魔法使いなので通常は杖や短剣を使うことが多いのだが、イチは普通に剣を使っているのだ。あの戦いぶりを見ると剣士にしか見えないな。しかも鎚や杖の扱いも慣れており、私たちではかなわないレベルだった。
通常は騎士団の新人が指導にやって来るのだが、次の時からはどう考えても上のクラスの人間がやって来て相手をしていた。しかし二人で訓練している様子を見ると、騎士団の相手をしているとき以上の実力があるように思えるのは気のせいだろうか?
しばらくした頃、かなり珍しいことにジョニーファン様が訓練場にやって来た。みんな張り切っていたが、なんと声をかけられたのはあの二人だった。しかもジョニーファン様がかなり親しげに話しているように見えるのは気のせいだろうか?
我々でも声をかけられたものは数えるほどなのに、いきなり声をかけられるというのは驚きだ。たしかに目を見張るような実力ではあるがな。
~ミルアイSide~
ジョニーファン様から直々に体験入団させたい人物がいるという話を聞いてかなり驚いた。残念ながらどういう人物なのか詳細については私のところまで来なかったが、ヤーマンの冒険者と言うことは確認できた。
このことはかなり上の地位のものしか知らされておらず、魔法団でも知っているのは魔法団をまとめる総隊長と私だけらしい。
詳細が隠されているが、それ以外は普通の体験入団者として扱って良いと言われている。これは本人達も希望していることであり、何かあっても責任を追及することはないと明言しているようだ。
分隊長のハーマルには体験入団の試験を行うことだけ伝え、変わった経歴であるが特別扱いも不要だとだけ説明した。これだけである程度察したようで、特に深く追求することもなく引き下がった。
当初の予定より4ヶ月ほど遅れて試験することとなったが、試験結果を聞いて驚いた。ジョニーファン様が推薦するくらいなので大丈夫とは思っていたが、予想以上に優れた才能を示したらしい。しかも年齢が22歳と聞いて余計に驚いた。
ジョニーファン様の推薦を受けているくらいの人物なので他の団員とうまく交流できるか心配したが、杞憂だった。訓練場での雑用なども率先してやっているし、他の団員とも普通に接している。一番の年下と言うこともあってか態度も言葉遣いも丁寧で、高飛車な態度もなくうまくなじんでいるようだ。
魔法の技術がかなり高いこともあり。何人かの団員が魔法の使い方について聞きに行ったようだ。かなり考え方がわかりやすかったらしく、他の団員達も同じように聞きにいっていた。しかし、さすがに全員が個別に聞きに行くと説明が大変だろうと言うことになり、二人にお願いして簡単な講義をしてもらうことになった。
教材はジョニーファン様の書かれた論文だが、それをわかりやすく解説してくれて驚いた。ここまでこの内容を理解しているというのに驚いたが、もしかしてこの論文の共同執筆者に書かれている二人と言うことはないだろうか?
ジュンイチとジェニファー、イチとジェンか・・・。そういうことであればジョニーファン様直々の推薦という意味も分かるし、この内容について講義できるほど理解していることもうなずける。
今回のことが他の魔法団に伝わったせいでそちらからも講義をお願いされてしまった。対立する程ではないが、お互いに牽制している立場なのに依頼してくると言うのはよほど気になったのだろう。
護身用に近接戦闘の訓練も行っているのだが、騎士団から「体験入団の二人は何者だ?」と問い合わせがあった。話を聞くと、指導に来てもらった新人達がまったくかなわなかったらしい。新人と言っても騎士団に入るくらいだからかなりの実力者のはずだが・・・。
たしかに良階位の冒険者と言っていたのである程度の実力があるとは思っていたが、そこまでの実力とは思っていなかった。
二人が訓練しているところを見に行ったが、正直驚いた。魔法のレベルがあそこまであってこの剣と短剣の実力なのか?この年齢でここまで鍛錬するというのは正直驚きだ。しかも鎚と杖もかなりの実力を持っていたし、他の武器についても一通り使っていたのだ。
話を聞くと、通常は剣と短剣だが、金属系の魔獣の狩りのために鎚と杖を訓練したらしい。他の装備についても最低限は使えるようにと習ったようだ。どう考えても魔法使いの近接戦闘のレベルを超えているよな。
次からは新人だけでなく、二人の相手をするために中堅クラスの騎士がやって来ていたが、それでも十分に対抗していた。しかも二人で訓練しているときよりも動きを押さえているようにも感じたくらいだった。途中で騎士団から本格的にこっちに体験に来ないかと言われたが、さすがにそれは断らせてもらったよ。
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